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佐々木裕介

子連れ離婚の不安に寄り添い、子どもの権利を長期的に守る弁護士

佐々木裕介(ささきゆうすけ) / 弁護士

チャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所

コラム

養育費Q&A、児童扶養手当について詳しく解説します!

2024年4月8日

テーマ:離婚

コラムカテゴリ:法律関連

養育費について詳しく解説

養育費とは、離婚した場合に、子供の養育に必要な費用を、養育しない親が養育する親に支払う義務のことです。養育費の支払い義務者は、子供と血縁関係のある親であり、養育費の受給者は、子供と同居して養育する親です。養育費の支払い期間は、子供が18歳になるまでですが、特別な事情があれば延長することも可能です。この記事では、養育費に関する疑問をQ&Aの方式で答えていきます。

養育費とはなんですか?
養育費とは、子供の生活や教育にかかるお金のことです。離婚したら、子供を引き取った方が親権者になりますが、もう一方の親も子供の面倒を見る義務があります。そのため、子供と住んでいない方は、養育費を払って子供の生活を支える必要があります。養育費は、子供が幸せに暮らせるように、十分な額を決めることが理想です。

養育費は子供が何歳まで支払ってもらえますか?
成人年齢が18歳に改正されましたが、養育費の支払終期については、夫婦で話し合って決めることが大切です。子どもが成人するまでというのは一つの目安ですが、必ずしもそうとは限りません。子どもの将来のためにどれくらいの期間支払う必要があるかを考えましょう。子どもが高校を卒業して働き始めるなら、その時点で支払をやめることもできますし大学や専門学校などに進学するなら卒業するまで支払いを続けることもできます。養育費の支払終期は子が自立するまでという観点から決めると良いでしょう。

養育費と婚姻費用の違いはなんですか?
養育費と婚姻費用は、どちらも離婚や別居に関係するお金のことですが、違いがあります。 養育費は、子供のために払うお金です。子供を引き取った方がもらうことができます。子供の衣食住、教育費などに使います。養育費は、離婚した後も払わなければなりません。一方 、婚姻費用は夫婦のために払うお金です。別居している方がもらうことができます。別居している相手方や子供の生活費を維持するために使います。婚姻費用は、別居している間だけ支払われます。別居が解消されるか、離婚するまでの間、支払われ続ける費用です。

養育費の取り決め方はどのような方法がありますか?
養育費の決め方は、次の3つの方法があります。

1つ目は、夫婦で話し合って自分たちで決める方法です。この場合は、口約束だけではなく、離婚協議書にするといいでしょう。
2つ目は、夫婦で話し合って決めたことを、公証役場に行って公正証書という書類にしてもらう方法です。この場合は、公証役場が決めたことを確認してくれるので、より安心です。
3つ目は、家庭裁判所の調停・審判を利用する方法です。

離婚協議書を作成する方法、公正証書を作成する方法、それぞれのメリット・デメリットはなんですか?
離婚協議書
メリット⇒費用が掛からない
デメリット⇒法的な効力がない

公正証書
メリット⇒養育費の支払いがされない場合に、公正証書に基づき給与の差し押さえなどの強制執行ができる。
デメリット⇒手数料が必要。当事者同士が行う場合、基本的に当事者が公証役場に出向く必要があり、相手方が公証役場に出向かない場合は公正証書作成ができない。代理人を弁護士に依頼もできるが多額の費用が必要になる。

養育費の取り決めをせず、離婚することは可能ですか?
可能です。

離婚時に養育費について取り決めをしていませんでした。養育費を支払ってもらうことは可能ですか?
離婚時に養育費について決めていなくても、養育費を必要とする事情がある場合には、養育費をもらうことができます。その場合は、元夫と元妻で話し合って養育費を決めるか、家庭裁判所に相談して養育費を決めてもらうことができます。しかし、養育費をもらえるのは、養育費を請求したときからです。過去の分の養育費をもらうことは、難しいです。相手が払うことに同意してくれた場合は別ですが、そうでなければ、裁判所も過去の分の養育費を認めてくれないことが多いです。 そのため、養育費をもらいたいと思ったら、早めに行動することが大切です。

養育費は請求しないという約束をしてしまいました。もう請求はできないのですか?
養育費を必要とする事情がある場合には、元夫と元妻の話し合いや、調停や審判によって養育費の取り決めをすることで支払ってもらえます。父母の間で養育費を請求しないという約束をしていた場合であっても養育費の請求をすることは可能です。

養育費の額はどのように決めたらいいですか?
家庭裁判所の簡易算定表が参考にされます。それをもとに個別の事情などを考慮した上で、養育費の額を決めます。

子どもを大学に進学させたいと考えています。入学金や授業料などについて取り決めをすることは可能ですか?
双方の教育方針や諸々の要因を考慮した上で、毎月支払われる養育費とは別に、大学の入学金や授業料について相手に負担を求めることは可能です。これらの費目を明確に公正証書に記載することで将来の費用負担が確実に約束されます。

子どもに病気や障がいがある場合、養育費額を取り決めるに当たって、そのことは考慮してもらえますか?
子供が病気や障がいでお金がかかるときは、そのことを考慮してもらえます。裁判所で決めるときは、病院や薬局などの診断書や領収書などを見せて、どれだけお金がかかっているかを証明します。元夫と元妻で決めるときは、相手にも病気や障がいのことで特別な費用がかかっていることを伝えて、養育費に入れてもらうようにします。 子供が病気や障がいで自立できないときは、成人しても養育費をもらうことができます。その場合も、病気や障がいの程度を示す書類が必要です。

養育費を決めましたが、大きく収入が減りました。相手に増額を求めることは可能ですか?
養育費は、決めた後でも、生活状況に大きな変化があれば、見直すことができます。例えば、病気や失職で収入が減ってしまったら、養育費をもらう人は、増額を求めることができます。

養育費を取り決めた後に再婚した場合、養育費はどうなりますか?
親の生活状況が変われば、養育費も変わることがあります。養育費を払う親が再婚して、扶養家族が増えたら、養育費の金額を変更することができます。逆に、養育費をもらう側の親が再婚して、新しいパートナーが子供を引き取り養子縁組した場合、養父が扶養義務者になりますので、養育費の減額理由になります。新しいパートナーが子供と養子縁組をしなくても、子供の養育に協力しているという事実から、養育費の減額理由になることがあります。

養育費の支払いはどのような方法ですか?
養育費とは、子どもの現在の生活水準を維持するために必要な金銭であり、原則として月払いです。しかし、夫婦が合意の上で、将来にわたる養育費を一括して支払うことも可能です。その場合であっても、後日の事情の変更により、再び養育費の支払いを請求することができることを、互いにわかっておきましょう。また、過去の養育費の請求については、家庭裁判所の審判でも、さかのぼっては認定されないことが一般的です。養育費を支払う方法としては、後日、支払いの有無についてトラブルが生じないように、預貯金口座への送金方法が望ましいです。送金先口座を親権者名義とするか、子ども名義とするかは、夫婦間で話し合い決めます。

子どもに学資保険を掛けていると、養育費との関係でどのようにしたら良いですか?
学資保険とは、子どもの教育費用を積立するための保険契約であり、通常は契約者が保険金の受取人となっております。したがって、子どもが直接保険金を受け取ることはできません。また、契約者は中途解約することも可能です。そのため、学資保険の保険料を負担していることを理由に、養育費の支払額を減額してもらうことはできません。養育費は子どもの現在の生活水準を維持するために必要な金銭であり、学資保険とは別に考えなくてはいけません。離婚の際には、養育費の支払いに代えて、相手に離婚後も保険料を負担してもらい、満期になった時に子どもに対して満期金を支払うという約束がされることがあります。しかし、そのような約束は相手が無断で保険を解約してしまったりするリスクがあります。離婚の際には、学資保険の契約者を親権者になる方に変更し、その親権者が今後は保険料を支払っていくことを前提として養育費の額を決めるという取り決めの方が安心で確実です。

養育費の支払に代えて、今住んでいる元夫所有の住居の住宅ローンを元夫に支払って貰うことは可能ですか?
養育費の代わりに、今住んでいる家のローンを元夫に払ってもらうことは可能です。でも、その約束は守られないことがあります。しかし、元夫が家のローンを払わなくなった場合、住宅会社が抵当権を実行しその家に住めなくなる可能性があります

養育費を一括で支払ってもらうことは可能ですか?
上記でお話したように一括で支払ってもらうことは可能です。しかし、一括で支払ってもらい、その後事情の変更がない場合、一括分の養育費を全額使ってしまっても、改めて養育費を請求することは難しいです。もし、養育費を一括で受け取っている場合は、計画的に金銭を使っていく必要があります。

ボーナス時に養育費を増やして支払ってもらうことは可能ですか?
養育費の額は、基本的にはお互いの年収によって決まるので、ボーナス額も養育費の額に反映されていることが通常です。そのため、ボーナス時に養育費の額を増やすことはできません。しかし、養育費の支払いを確実にするため、ボーナス時に養育費の額を増やしその分通常時の養育費の額を減らすなど、調整することはできます。

親に養育費の連帯保証人になってもらうことは可能ですか?
親の同意があれば、連帯保証人になってもらうことは可能です。

養育費の取り決めましたが、支払が滞っています。どうしたらいいですか?
養育費について強制執行約款付き公正証書にしている場合は、給与等の差し押さえが可能です。ただし、差し押さえには相手の勤務先や銀行等の名称、支店名などの情報が必要になります。

養育費の取り決めをしたけれど、その後、相手方が多重債務を理由として自己破産した場合、養育費はどうなりますか?
相手が自己破産をしたとしても、養育費の支払い義務はなくなりません。養育費の請求債権は、税金等と同様に免責がされない「非免責債権」(支払い義務がなくならない債権)とされています。ただ、この問題は様々な状況もかかわってくるため、相手が依頼している弁護士か破産管財人に相談することをお勧めします。

相手方に養育費を支払ってもらっていますが、子どもと必ず会わせなくてはダメですか?
子どもと会うことは、養育費とは別の問題です。子どもの福祉に沿うものなら、会わせなければいけません。子どもが小さくて、直接会えないなど事情がある時は、写真や手紙で連絡を取りましょう。会うことについて調整や話し合うこのが難しい場合は、調停を利用して決めることもできます。

未婚で出産した場合、子どもの父親に養育費を請求できますか?
請求できます。ただ、子供の父親が自分の子供と認めていない場合、認知をしてもらう必要があります。まずは、自分で相手に交渉します。そこで拒絶された場合は、家庭裁判所に認知の調停の申し立てを行います。

児童扶養手当制度

児童扶養支払制度について解説します。児童扶養支払制度というのは、離婚などにより一人親家庭になった子供のために支払われる金銭のことです。今回は、「児童手当」との違いや、「児童扶養手当」とはどのような制度なのか?支給用件、支給金額、手続き方法など、を詳しく解説致します。

「児童扶養手当制度」は、離婚等により父母の一方と同居しない18歳になり最初の3月31日が到来するまでの児童を養育する家庭に対し、児童の生活の安定と自立の支援を目的として、都道府県知事,市長(特別区の区長を含む)及び福祉事務所を管理する町村長から手当が支給される制度です。この制度は、児童扶養手当法に基づいており、児童の福祉の増進に資するものです。この制度は、「児童手当」とは異なるものであり、「児童手当」は、日本国内に住む全ての中学生までに支給される手当であり、児童手当法に基づいています。このように、児童扶養手当と児童手当は、支給の対象や法的根拠が異なるので、混同しないように注意が必要です。

支給対象

  • 「児童」の世話や教育(監護)をしている母親です。
  • 「児童」の世話や教育(監護)をし、生計を同じくする父親です。
  • 「児童」と、同居し世話や教育(監護)し、生計を維持している養育者です。


生計維持とは家計が同じで、収入が一定以下の状態であることです。また上記の「児童」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子供をさします。

支給対象者が重複して存在する場合の取扱いについては、母>養育者>父の順で優先され、1人の対象者にのみ支給されます。

子に支給される場合

  • 両親が婚姻解消
  • 両親どちらかと死別
  • 両親どちらかの障害
  • 両親どちらかの生死不明


両親が離婚していたり、母親と父親のどちらかが死んでしまっていたり、どちらかに障害があったり、また、どちらかの生死が不明の状態にある場合「児童扶養手当」が支給されます。

支給されない場合

  • 子供が国内に住んでいない。
  • 子供が里親に育ててもらっている。
  • 子供の父親(障害の状態を除く)と生計を同じにしている。
  • 子供の母が再婚し、その相手に養育されている。
  • 母親、父親、養育者が日本に住んでいない。


公的年金等との併給禁止は撤廃

なお、公的年金等(老齢年金・遺族年金・障害年金・労災年金遺族補償)との併給禁止は2014年12月に撤廃されました。年金等の金額が児童扶養手当の支給額より低い場合に限っては差額分が支給されます。

申請方法について

児童扶養手当をもらうには、市町村の窓口で申請書を取って、必要書類を添えて提出する必要があります。その後、市区町村長の認定を受けると、手当が支給されます。 必要書類は、以下のものが一般的ですが、自治体によって違う場合がありますので、事前に確認してください。

  • 請求者と児童の戸籍謄・抄本
  • 請求者と児童が含まれる世帯全員の住民票の写し(続柄・本籍が分かるもの)
  • 前年の所得証明書
  • 請求者本人名義の預貯金通帳(普通口座)
  • 個人番号が確認できるもの(マイナンバーカード) 身分証明書


※ 添付する各種書類は,請求日より1か月以内の発行のものが必要ですので,注意してください。

支給額について

児童扶養手当の支給額は、一人親の所得によって「全部支給」と「一部支給」に分かれます。子供が2人以上いれば加算されていきます。

子供の数全部支給一部支給
1人     43,070円43,060~10,160円
2人目加算額10,170円10,160~5090円
3人目加算額6,100円6,090~3,050円

支給時期
児童扶養手当の支給月は、現在は6回になっています。令和元年までは3回でした。

1月・3月・5月・7月・9月・11月です。

支給日は自治体によって違います、お住まいの自治体に確認するとよいでしょう。新たに申請をした場合、その翌月分から支給されるので、離婚したら早めに申請を行うようにしましょう。

所得制限
児童扶養手当には所得制限があります。所得制限とは、児童扶養手当をもらうためには、所得がある程度以下でなければならないという規定です。所得が高すぎると、児童扶養手当の金額が少なくなったり、もらえなくなったりします。

※扶養親族の数0人とは、扶養義務が課されるのは、本来の親族のうちの一部である3親等内の親族であるため、4親等の子を養っているような場合などです。

支給を受けるときに注意すべきこと

児童扶養手当は、申請する時期によって支給金額や条件が異なる場合があります。そのため、以下のポイントを把握しておく必要があります。

  • 所得の計算に使われる年度は、申請する時期によって変わる
  • 支給開始から5年または7年が経過すると、支給金額が半分に減る
  • 支給が打ち切られる可能性がある



これらのポイントについて、詳しく説明します。

所得の計算に使われる年度は、申請する時期によって変わる

申請する時期によって、所得の基準年度が変わります。そのため、支給額も変わる可能性があります。 1月から9月の間に申請した場合は、2年前(一昨年)の所得が基準になります。 10月から12月の間に申請した場合は、1年前(昨年)の所得が基準になります。 全部支給か一部支給かは、基準年度の所得によって決まります。例えば、1年前の所得なら全部支給が可能だが、2年前の所得なら全部支給ができないという場合は、申請する時期を工夫する必要があります。

支給開始から5年または7年が経過すると、支給金額が半分に減る

手当の支給開始から5年、あるいは、支給の条件となる事情が起きた日から7年が過ぎると(早い方が優先されます)、手当の金額が半分に減らされる場合があります。 これは、ひとり親が仕事を見つけて自立できるようにするための制度で、仕事を探すことや働くことが難しい理由(障害、病気、介護など)がないのに、就職活動や就労をしていない人には、手当の半分を止めるというものです。 しかし、減額の対象外となる理由(仕事をしている、就職活動をしている、仕事を探すことや働くことが難しい理由があるなど)があるときは、決められた期限内に申告すれば、減額されません。 減額の対象となる人には、5年または7年が経過するころに市町村から「児童扶養手当の受給に関する重要なお知らせ」などの通知が届きます。そのときに、減額の対象外となる理由があることを役所に伝えれば、引き続き同じ金額の児童扶養手当を受けることができます。

支給が打ち切られる可能性がある

児童扶養手当の受給資格は、受給条件に変更が生じた場合には、喪失することがあります。そのような場合の具体例は、以下のようなものです。

  • 手当の受給者である父又は母が婚姻(事実婚を含む)し、その配偶者の養育を受けることとなった場合
  • 対象児童の養育を行わなくなった場合(児童の施設入所、里親委託等)
  • 行方不明であった父又は母が帰還した場合(電話若しくは文書による連絡があった場合を含む)
  • 国内に住所を有しなくなった場合 等


これらの場合には、所轄の役所に届出を行うことが義務付けられています。届出を怠った場合、その期間に受給した児童扶養手当の返還を請求される恐れがあります。

児童扶養手当と養育費の関係について

養育費

養育費とは、子供を育てるのに必要な費用のことです。具体的には、子供の生活費・教育費・医療費・小遣い・交通費などがあります。これは離婚して子供と離れて暮らす親が、子供をひきとって暮らす親側に支払う費用です。養育費の金額は、夫婦が話し合いで決めることができます。どちらの親と暮らすかによって子供の生活レベルが変わらないように、収入が多い親と同レベルの生活が送れることを目処にした金額で取り決めをします。支払い方法は、毎月一定額を振り込む方法が一般的ですが、一括払いという方法もあります。夫婦の話し合いでは養育費が決まらない場合は、家庭裁判所の調停や審判で金額を取り決めます。そのため、夫婦が離婚したからとどちらかが養育費を支払わないということはありえないのです。まずは夫婦間の話し合い、話し合いが成立しなければ家庭裁判所の手続きを使うことにより、養育費は、しっかりとした請求さえすれば、100%貰えることを約束された権利になります。養育費の算定には児童扶養手当の受給金額は影響を与えません。

児童扶養手当は養育費を受け取ると受給額が減る可能性があります。それは児童扶養手当の算出方法とかかわってきます。児童扶養手当をもらうには、都道府県の認定が必要です。認定を受けるには、児童扶養手当認定請求書と「養育費用に関する申告書」を提出しなければなりません。養育費用に関する申告書には、養育費の金額などを書く必要があります。養育費をもらっている場合は、その金額を役所に報告する必要があります。そして、養育費の8割が所得として計算されるため、児童扶養手当の金額にかかわってきます。以下の計算式が児童扶養手当の算出式です。

同居する家族がいる場合(実家に住んでいる場合)

ひとり親であれば、実家に住んでいても児童扶養手当を受けることができますが、同居している直系血族(両親、祖父母)や兄弟姉妹の所得によっては、手当が減らされたりもらえなくなったりすることがあります。 それは、受給資格者とその直系血族や兄弟姉妹は、法律で互いに扶養しなければならない(民法877条1項)と定められているからです。その為、児童扶養手当の受給額は、扶養義務者である直系血族や兄弟姉妹の所得が高いと、手当が全部または一部止められます。 ただし、受給資格者と扶養義務者の所得を足したもので判断するのではなく、それぞれの所得で判断します。ですから、実家で両親などと一緒に住むときに、児童扶養手当がもらえるかどうか、もらえるとしたら全部もらえるか一部しかもらえないかは、それぞれの所得と扶養する人の数で決まります。

現状届

現況届とは、正式には「児童扶養手当現況届」といいます。児童の養育状況や前年の所得を申告する届出です。最近はでは、郵送で受け付ける役所も出て来ましたが、ほとんどの場合は窓口まで直接行くことになります。この届けの提出がないと、8月分以降の手当が受けられなくなりますから、注意が必要です。現況届によって、新年度の受給資格の認定と手当額の決定がなされます。所得制限によって、手当の支給が全額停止されている方についても、現況届の提出が必要です。2年続けて提出されない場合には、手当の受給資格がなくなります。

Q&A形式で解説

今回は児童扶養手当についてさらに詳しく書いていきたいと思います。前回の記事では、児童扶養手当の制度概要や支給対象者の条件について詳しく解説しましたが、実際に自分が受給できるかどうかは、さまざまな要因によって変わってきます。人それぞれ状況も違いますので、今回は支給対象者について具体的に詳しく見ていきたいと思います。児童扶養手当を受けようと考えている方や、すでに受給している方も、ぜひ参考にしてください。

離婚後子どもを、育てながら仕事をすることが難しく、子どもを自分の母(子どもの祖母)に預けている場合、(子どもは祖母と暮らしている)児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
母親が子どもを育てていない場合、現実の養育者である子どもの祖母が受給できます。

夫が死亡した場合、児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
父又は母の死亡は受給できます。遺族年金等の公的年金を受給する場合、手当額の全部又は一部を受給できません。公的年金等の額が児童扶養手当額より低い場合に、その差額分が児童扶養手当として支給されます。

夫と別居した場合、別居で児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
原則別居しているだけでは、受給できません

夫が病気をし重い障害が残り仕事ができなくなり、離婚はせず夫婦で子どもを育ている場合、児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
夫が「政令で定める程度の障害の状態にある」児童につき、児童扶養手当が支給されます。

障害の程度は以下のものになります。

  • 1両眼の視力の和が〇・〇四以下のもの
  • 2 両耳の聴力レベルが一〇〇デシベル以上のもの
  • 3両上肢の機能に著しい障害を有するもの
  • 4両上肢のすべての指を欠くもの
  • 5両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
  • 6両下肢の機能に著しい障害を有するもの
  • 7両下肢を足関節以上で欠くもの
  • 8体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
  • 9前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働することを不能ならしめ、かつ、常時の介護を必要とする程度の障害を有するもの
  • 10精神に、労働することを不能ならしめ、かつ、常時の監視又は介護を必要とする程度の障害を有するもの
  • 11傷病が治らないで、身体の機能又は精神に、労働することを不能ならしめ、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の監視又は介護とを必要とする程度の障害を有するものであつて、厚生労働大臣が定めるもの



(備考)視力の測定は、万国式試視力表によるものとし、屈折異常があるものについては、矯正視力によって測定する。


夫が事業に失敗したために失踪し、現在行方不明になっています。離婚するにも色々と手続が必要と言われ、直ぐに離婚もできません。このような状況の時、児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
支給を受けられる可能性があります。「1年以上生死が明らかでない児童」「引き続き1年以上遺棄している児童」にあたるとされれば、受給可能です。詳しくはお住まいの市町村にお問合せしてみてください。

精神疾患を持っていた夫が「自殺する」などと書き置きを残して行方不明になりました。現在でもどこにいるかも、生きているのかもわかりません。児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
支給を受けられる可能性があります。詳しくはお住まいの市町村にお問合せ下さい。

離婚し、自分(妻)が子どもを引き取り養育していますが、子どもは元夫の扶養親族(所得税法上の扶養親族)とされています。実際に養育している私が児童扶養手当の支給を受けることができますか?
所得税法上の扶養親族とされているだけでは、支給除外要件である「父と生計を同じくしている」には該当しないため、受給できる可能性があります。ただし、所得税法上の扶養親族とされている場合、事実婚と疑われる場合がありますので、説明する必要があります。

夫のDVに耐えられず、子どもを連れて逃げたけれど、離婚はまだ成立していない場合、児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
裁判所からDV保護命令の発令を受けた場合、離婚しなくても児童扶養手当が受給できます。DV保護命令とは、DVの被害者が裁判所に申し立て発令される命令です。DV保護命令の申し立てを行う前に、まずは警察や配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)などに相談をする必要があります。

夫が、罪を犯し、逮捕・勾留されました。児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
夫が1年以上拘束されている場合は、受給可能です。

夫が、浮気をして家を出て行き、生活費も入れてもらっていない場合、児童扶養手当の支給を受けることはできますか?
夫が1年以上、 子どもを「遺棄」していると認められる場合は、児童扶養手当を受給できます。「遺棄」とは子の世話や教育する気がなく、実際に世話や教育をしていないて状態です。1年以上の「遺棄」の要件として、警察への捜索願の提出や役所・民生委員等への相談から1年以上が経過しているかどうかが考えられます。万が一たまに子供に会いに帰ってくる場合は、「遺棄」にはならず、児童扶養手当の受給はできません。

離婚後にひとり親で子どもを育ててきたけれど、子どもが高校から海外に留学することになった場合、児童扶養手当はどうなりますか?
子どもが日本国内に住所を有しない場合、原則として、児童扶養手当を受給することはできません。夏休みなどの長期休みの間の短期留学であれば大丈夫ですが、長期間の留学は、国内に住所がないものと判断され受給できない可能性が高いでしょう。

離婚後ひとり親で子どもを育ててきたけれど、子どもが家庭内暴力を振るうようになり、児童相談所で一時保護されることになった場合、児童扶養手当はどうなりますか?
 子どもが一時保護された場合、支給要件である「監護する」に該当しなくなるため、児童扶養手当は受給できません。「監護する」とは生活を一緒にし、世話や教育をすることです。

ひとり親として子どもを育ててきましたが、自分の精神状態が不安定で虐待の危険があるということで、子どもが一時保護され、現在は里親の元で暮らしています。児童扶養手当は引き続き受給できますか?
受給できません。子どもが里親に委託されている場合やこれに準ずる小規模住居型児童養育事業を行う者に委託された場合、乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設に入所している場合、児童扶養手当は支給されません。

役所から元夫が自宅に訪問しているのではないかと問い合わせがありました。家裁で面会交流について取り決めをし、子どもが小さいので自宅に元夫が訪問して、面会交流を実施することになっているからです。どうやらご近所の方が通報したらしいのですが、児童扶養手当はどうなりますか?
元夫自宅を訪問しているという連絡だけで、いきなり児童扶養手当が打ち切られるとことは通常ないかと思われます。しかし、同居しており事実婚とみなされ受給が打ち切られるということもあるようです。家裁の取り決めた内容に従って面会交流を自宅で実施せざるを得ないことになっていることを説明してください。ご近所の方から偽装離婚や事実婚を疑われる状況は複雑で辛いと思いますが、児童扶養手当の受給との関係では全く問題はありません。

婚姻届は出していないけれど、同居している交際相手がいて、交際相手の住民票 は移動しておらず、住民票上の世帯は別の場合、児童扶養手当はどうなりますか?
もし事実婚だと認められたら、結婚しているのと同じで、児童扶養手当は受給できません。事実婚かどうかは、住民票だけではなく、子どもの面倒を見ているかどうかで判断されます。しかし、事実婚の判断はケースバイケースで、難しいこともあります。場合によっては、事実婚ではないと判断され、児童扶養手当が支給されます。

離婚後、異性と交際するようになり、子どもが小さいので、外で会うことはなかなかできず、週に数回、交際相手と自宅で会っている場合、児童扶養手当はもらえる?
事実婚かどうかが問題となりますが、交際しているだけであれば事実婚と認められることはないので、児童扶養手当は支給されます。

今回は、さまざまなケースに応じた具体的なお話をお伝えしてまいりました。皆様のお役に立てれば幸いです。しかし、どうしても個々の状況や条件によって適切な方法は異なってくるものです。ですから、もしも不明な点や気になる点がございましたら、ぜひともお住まいの市区町村の担当窓口にご相談されることをお勧めいたします。

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