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聴竹居を訪ねて⑧~食堂と調理室

鈴木敏広

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テーマ:四方山話

居間から食堂への入口は半円を真中で90度折った斬新なデザインで、戸はなく居間とつながっていて現代のリビングダイニングのようです。食堂の床は居間より一段上がり、窓の外を歩く人と視線が合わないようにしてあります。何より驚いたことは、料理は調理室のからハッチを通して直接出せるようになっていました。食堂へ料理をお盆で運ばなくてもよく、非常に機能的でした。

聴竹居⑧

最後に調理室に入りました。外にお湯を沸かすためにレンガ積みの釜がありますが、なんとこの家は昭和の初めにお湯を作る以外はオール電化住宅で、90年前の冷蔵庫(スイス製)と、今はありませんが電気コンロが据えてあったようです。昭和3年ではほとんどの家庭でおくど(薪でご飯や煮物を煮炊きする場所)で調理するため、土間と床を上がったり下がったりしないといけませんでしたが、聴竹居では現代のように平坦な床で調理していたことになります。

流し台と調理台の反対側に冷蔵庫とコンロの配置は振り返るだけで手が届きます。おまけに床下収納庫とダストシュートも設置してありました。電気コンロの上には排気口が付いています。設備としては古いですが、その内容は現代と変わらない調理室でした。

調理室の横にお手伝いさんの部屋がありますが、その壁に巨大な分電盤があります。現在のような分電盤ではなく、板に回路がむき出しで固定してある分電盤です。こんな大量の電気が当時あったのだろうかと思い案内人の方に尋ねると「工場と同じような契約です。聴竹居の当時の電気代は現在の価格に換算して、月約20万だったそうです。」と答えてくれました。その金額に見学者から一斉に「エー!!!」と声が上がりました。

勝手口から出て見学は終了しました。

次回は、聴竹居を訪ねて⑨~見学を終えて です。

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鈴木敏広(一級建築士)

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木造住宅からマンション、市の施設まで建築業界の最前線で培った経験を生かし、安心、安全、快適で長く暮らせる住環境を提案。大工経験から現場の声を大切にする家づくりは職人にも施主にも好評。リピート率も高い。

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