「新耐震住宅でも倒壊の恐れ8割」の記事より~なぜ倒れない家を調査しないのか?②
4月25日発売のフライデーに神戸のマンションで手抜き工事の記事がありました。記事の内容は、「コンクリートマンションの床の不陸(床のデコボコ、床が平らでない)を直すために床のコンクリートを削り、鉄筋が見えている、その鉄筋が写真を見る限り、間隔がバラバラで格子状に組まれていない。そしてその床をすでに是正工事をした」という内容です。
記事の中でマンション関係者A氏の写真(鉄筋が見えている写真)と記事とそれについて別の建築士の解説、販売主広報のコメントが書いてありますが、私は書いてある内容に疑問があります。
コンクリートの建物は床、梁、柱の配筋(鉄筋を組むこと)をしてコンクリートを流し入れ一体化して設計した強度を得ます。ですから、鉄筋の入っている床を削ることはすでに構造に影響があります。しかも、鉄筋が見えるまで。
記事を読んでも「床を整えるために削ったとしても…。」とか「コンクリリートの不陸調整で…。」と床の不陸を直すためにコンクリートを削ることが当然の工事のように書いてありますが、コンクリートの床は構造体の一部、それを削ることは間違った工事だと思います。
販売主の広報部は是正工事したので問題ないと書いていますが、まず削ることが問題で本来一体化しないと意味がないコンクリート工事でどんな是正工事をしたのか私には全く考えられません。
また、解説者の文に「たぶん稚拙で技能の低い業者を使ったのでしょう」と書いてありますが、床の鉄筋の配筋は、鉄筋の配筋工事の中でも簡単な方です。私も現場監督の時に鉄筋業者の職人と一緒に工事したことがあります。床の配筋がまともに出来ない、コンクリートを簡単には削る業者では大丈夫かと考えてしまいます。
記事の中でA氏が床を削っている職人に「こんな工事をなぜするのかと問いただしたら、元請け業者の指示ですからという返事をした」ということに対して「アゼンとした、寝ぼけた事を言った」と書いていますが、A氏は建築について知識があるらしいですが、下請けと元請けの関係については知らないようです。削っていた職人はダメな事を知っていても元請けに言われたら削ります。お金をくれるのは元請会社ですから。
重層下請構造の弊害だと思います。下請けの職人はお金を払ってくれる元請けの顔を見ています。住宅建築でも工事は下請けに丸投げで管理する側はほとんど見ていないのではと思います。今、コラムでリフォームを取り上げていますが、その中にも私の経験が載る予定です。