【刑事事件】交際相手が逮捕された|交際相手の立場でできること

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は、2026年10月時点の刑事訴訟法・刑事訴訟規則・刑法の規定をもとに、逮捕された方の交際相手(彼女・彼氏)の立場から整理したものです。面会や差し入れの細かな取扱いは警察署ごとに異なるため、実際の手続は留置先や弁護人にご確認ください。


「彼氏と急に連絡が取れなくなり、共通の知人から逮捕されたと聞いた。警察署に電話したが、家族でなければ答えられないと言われた」。「同棲している部屋に警察が来て、彼の荷物と一緒に私のパソコンまで持っていかれた」。交際相手が逮捕されたというご相談では、本人のことが心配な気持ちと、自分は何をしてよい立場なのかが分からない戸惑いが、同時に語られることが少なくありません。

 家族が逮捕されたときの対応を説明した情報は多く、その内容自体は誤りではありません。ただ、刑事手続は、配偶者や親・兄弟姉妹といった「親族」を名指しして権利を与えている場面が多く、交際相手は、そこから外れる場面があります。家族向けの説明をそのまま当てはめると、「できるはずのことができない」「やってはいけないことに気づかない」というずれが生じます。

 この記事では、交際相手という立場に絞って、法律上できること・できないこと、担える役割、慎重になりたい行動を整理します。逮捕後の手続全体の流れは逮捕から解決までの流れ【フローチャート】|今どの段階かがわかるで、ご家族の初動は家族が逮捕されたと連絡が来た|最初の24時間にやることで扱っています。

この記事で扱うこと

 交際相手が逮捕されたときに、次のような疑問を持つ方を想定しています。

  • 家族ではない自分が、弁護士への依頼や面会をどこまでできるのか。
  • 身元引受人や裁判での証人として、交際相手が担える役割はあるのか。
  • お金を出すとき、本人から何かを頼まれたときに、注意すべき点はどこか。
  • 同棲していた場合に、自分の持ち物や自分自身に何が起きうるのか。


 なお、ご自身が交際相手から暴力を受け、その件で相手が逮捕された場合は、守るべきものの順序が大きく異なります。その場合は交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応をご覧ください。

交際相手は、刑事手続では「家族」と同じ扱いにならない

法律が「親族」を名指ししている場面

 刑事訴訟法には、逮捕・勾留された本人のために、本人以外の者が動けることを定めた規定がいくつかあります。その多くは、対象を「法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹」と列挙しており、交際相手はこの中に含まれていません。主な場面を並べると、次のようになります。

場面配偶者・直系の親族・兄弟姉妹交際相手
弁護人の選任(刑事訴訟法30条2項)本人とは別に、独立して選任できる独立して選任することはできない。弁護士に相談し、本人との接見を頼むことはできる
勾留されたことの通知(同法79条)本人が指定すれば通知を受ける原則として通知の対象ではない。近い親族がいない場合に、本人の申出で指定されることはある(刑事訴訟規則79条)
勾留理由開示の請求(同法82条2項)請求できる「その他利害関係人」に当たるかが個別に判断される
勾留取消し・保釈の請求(同法87条1項・88条)請求できる請求できる者に含まれていない
一般面会・差し入れ(同法80条)接見禁止がなければできる接見禁止がなければ、家族と同じようにできる
本人をかくまう・証拠を隠す行為(刑法105条)刑が免除されることがある免除の規定は及ばない


 表のとおり、交際相手が単独でできる手続は限られており、多くの場面で「本人の意思」か「弁護人の活動」を通すことになります。逆に、面会や差し入れのように、家族と同じ扱いになる場面もあります。この違いを踏まえておくと、何を自分で行い、何を弁護人に任せるかを整理しやすくなります。

婚約中・内縁関係の場合

 刑事訴訟法でいう「配偶者」は、一般に法律上の婚姻関係にある者を指すと解されています。そのため、婚約中であっても、長く同居している内縁関係であっても、上の表では交際相手と同じ列に入ると考えておくのが無難です。もっとも、婚約や同居の事実は、後で触れる身元引受人や情状証人としての説得力に関わってきます。内縁関係の法的な位置づけは【男女トラブル】内縁・事実婚を解消するとき|法律上の夫婦と何が同じで、何が違うのかで整理しています。

逮捕を知った直後にできること

情報が入ってこないのは珍しくない

 逮捕の事実は、本人が希望すれば家族や交際相手に伝えられることもありますが、法律上の通知の宛先は弁護人や親族が中心です。警察署に問い合わせても、交際相手には留置先や容疑の内容を答えてもらえないことがあります。これは交際相手を軽んじているというより、本人の情報を家族以外に伝えることに慎重な運用によるものです。

 まずは、いつ、どこで連絡が途絶えたのか、誰から逮捕を聞いたのか、本人の家族の連絡先が分かるかといった、手元の情報を書き出しておくと、弁護士に相談するときに状況を伝えやすくなります。

本人の家族と連絡が取れるかどうか

 本人の親や兄弟姉妹と連絡が取れる場合は、家族が弁護人を選任したり、警察から連絡を受けたりしている可能性があります。家族が交際相手の存在を知らないこともあるため、連絡するかどうかは慎重に考えたいところです。家族と連絡が取れない、または本人が家族との連絡を望んでいない事情がありそうなときは、自分で判断を重ねるよりも、弁護士を通じて本人の意向を確かめる方が、後のすれ違いを避けやすくなります。

弁護士への依頼は、最後は本人が決める

 交際相手は独立して弁護人を選任できませんが、弁護士に相談し、本人のもとへ接見に行ってもらうことはできます。接見した弁護士が本人の意向を確かめ、本人がその弁護士を選べば、正式に弁護人となります。費用を交際相手が負担する形での依頼も実務上行われていますが、誰を弁護人にするかを決めるのは本人であり、交際相手が本人に代わって決めることはできません。

 費用の面で難しい場合は、弁護士会の当番弁護士制度を利用する方法もあります。多くの弁護士会では、本人だけでなく家族や知人からの申込みも受け付けており、初回の接見は本人の費用負担なく行われます。また、勾留された後であれば、一定の要件のもとで国の費用による国選弁護人が付く制度もあります。違いについては国選と私選はどう違う|途中で切り替えられるのか、接見の中身については「接見」で弁護士は何をするのか|依頼から面会までの流れをご覧ください。

面会・差し入れ・手紙

逮捕直後と勾留後で変わる

 逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間は、取調べや送致の手続が続くため、家族や交際相手との一般面会は認められないのが通常です。勾留が決まった後は、接見禁止が付いていなければ、交際相手も家族と同じように面会できます(刑事訴訟法80条)。面会できる回数や時間、人数、受付時間は留置先ごとに決められており、警察官が立ち会うため、事件の内容について話すことは控えるのが一般的です。

差し入れと手紙で気をつけること

 衣類や本、現金などの差し入れは、交際相手からでも行えます。ただし、ひもの付いた衣類や一部の物品は受け付けられないなど、留置先ごとに細かな決まりがあります。手紙は内容を確認されるため、事件の経過や関係者についての記載は避け、生活の様子や気持ちを伝える内容にとどめる方が無難です。具体的な取扱いは留置場への差し入れと手紙|家族ができる支援の実務で解説しています。

接見禁止が付いたとき

 共犯者がいる事件や、関係者と口裏を合わせるおそれがあると判断された事件では、弁護人以外との面会や手紙のやり取りが禁止されることがあります(同法81条)。この場合、交際相手も家族も面会はできませんが、弁護人を通じて本人の様子を聞いたり、伝言を頼んだりすることはできます。弁護人が一部解除の申立てを行い、特定の人との面会が認められることもあります。詳しくは接見禁止がついて家族が会えない|解除に向けた動きをご覧ください。

釈放や処分に向けて、交際相手が担える役割

身元引受人になる

 身元引受人は、法律で資格が定められているわけではなく、釈放後の本人の生活を見守り、呼び出しに応じさせることを引き受ける人です。同居の親族が担うことが多いものの、親族が遠方にいる、関係が途絶えているといった事情があれば、交際相手が引き受けることもあります。その際、捜査機関や裁判所が見ているのは、肩書きよりも、実際に本人の生活に目が届くかどうかです。同居しているか、交際がどの程度続いているか、日常的にどのように関わるのかを具体的に説明できるかが、説得力を左右します。

 書面の書き方は身元引受書は誰が何を書くのか|記載事項と文例、親族が引き受けられない場合の考え方は【刑事事件】家族が身元引受人になれない|代替の環境調整で扱っています。

情状証人として法廷に立つ

 起訴されて裁判になった場合、交際相手が情状証人として、今後どのように本人を支えるかを述べることがあります。ここでも、関係の長さや同居の有無、今後の生活の具体的な見通しが問われます。結婚の予定などを述べる場合は、その場の勢いではなく、実際に実行できる内容かどうかを弁護人とよく確認しておくことが大切です。証言の場面については情状証人として家族が法廷に立つ|実際に聞かれることをご覧ください。

お金を出すときに確認しておくこと

 弁護士費用、被害者との示談金、保釈の際に納める金銭(いわゆる保釈金)など、交際相手がお金を用意する場面もあります。保釈金については、裁判所の許可を得て、本人以外の者が納めることも認められています(刑事訴訟法94条2項)。ただし、本人が保釈中の約束を守らなかった場合には、納めた金銭の全部または一部が戻らないことがあります。

 また、交際相手として出したお金は、後に関係が終わったとき、贈与だったのか貸したものだったのかで争いになることがあります。貸すのであれば、金額と返済の約束を書面やメッセージで残しておくことが、自分を守ることにつながります。貸したお金の考え方は恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?で整理しています。

交際相手だからこそ慎重になりたい行動

本人から頼まれても、引き受けない方がよいこと

 面会や手紙、知人を介した伝言で、本人から何かを頼まれることがあります。次のような依頼は、内容によっては交際相手自身が罪に問われるおそれがあります。

  • 本人のスマートフォンやパソコンのデータを消す、物を処分する、別の場所へ移す。
  • 事件の関係者や被害者に連絡し、話の内容を合わせるよう頼む。
  • 逃げている共犯者などをかくまう、居場所を伏せる。


 他人の刑事事件の証拠を隠すことや、罪を犯した者をかくまうことは、それ自体が犯罪とされています(刑法103条・104条)。親族がこうした行為をした場合には刑が免除されることがある一方で(同法105条)、交際相手にはこの規定は及びません。事件の関係者を威迫するような行為も別に処罰の対象です(同法105条の2)。本人の頼みを断りにくい場合は、「弁護士に確認してから」と伝えて、弁護人に相談するのが一つの方法です。親族の特例については家族をかくまった|犯人蔵匿罪と親族の特例をご覧ください。

被害者に連絡しない

 謝りたい、事情を説明したいという気持ちから、被害者に直接連絡を取ろうとする方もいます。しかし、交際相手からの連絡は、被害者にとって強い負担となるうえ、口裏合わせや圧力と受け取られるおそれがあります。被害者への謝罪や示談は、弁護人を通じて進めるのが基本です。

SNSや職場への連絡

 事件のことをSNSに書いたり、共通の知人に詳しく話したりすると、思わぬ形で情報が広がることがあります。本人の勤務先への連絡も、欠勤の扱いや今後の働き方に関わるため、交際相手の判断だけで行うのではなく、弁護人を通じて本人の意向を確かめてからにする方が安全です。

同棲している場合に起きること

自宅の捜索と、自分の物の押収

 本人と同居している場合、その住居が捜索の対象になることがあります。本人以外の者の物であっても、事件に関係する物があると認められる状況があれば、捜索や押収の対象となりえます(刑事訴訟法102条2項)。自分のスマートフォンやパソコンが押収された場合は、交付された押収品目録を手元に残し、事件と関係がないことを説明して返還を求めることになります。手順は押収品目録交付書から分かること|還付請求の手順で解説しています。

参考人として話を聞かれたら

 同居している交際相手は、本人の生活や事件前後の様子を知る立場として、参考人として事情を聞かれることがあります(同法223条1項)。参考人の取調べは任意であり、出頭を断ることや途中で退去することも法律上は認められています。ただ、話した内容は調書として残り、本人の事件の証拠となることがあるため、記憶があいまいな点は推測で補わず、分からないことは分からないと伝えることが大切です。立場の違いについては『参考人』として呼ばれた|被疑者に切り替わる瞬間をご覧ください。

自分も関わりを疑われているとき

 自宅から違法な物が見つかった場合や、本人の口座管理を手伝っていた場合などには、交際相手自身が関与を疑われることもあります。このとき、本人の弁護人は本人の利益のために活動する立場にあるため、交際相手の弁護を兼ねることはできないのが通常です。ご自身について不安がある場合は、別の弁護士に相談することを検討してください。考え方は共犯者がいる事件で弁護人を分ける理由で整理しています。

関係を続けるか迷うとき

交際相手に、支え続ける法的な義務はない

 逮捕をきっかけに、交際を続けるかどうか迷う方も少なくありません。夫婦や親子と異なり、交際相手には法律上の扶養義務はなく、身元引受人や証人を引き受ける義務もありません。支えると決めることも、距離を置くと決めることも、交際相手自身が選んでよいことです。

迷いがある段階で約束しすぎない

 一方で、身元引受人や情状証人として述べた内容は、捜査機関や裁判所が本人の処分を判断する材料になります。「釈放後は一緒に暮らして見守る」と約束した後に関係を解消すると、その前提が崩れることになります。迷いがあるうちは、その気持ちも含めて弁護人に率直に伝え、自分が実際に担える範囲で役割を引き受けることが、結果として本人のためにもなります。

よくあるご質問

弁護士費用を私が払えば、事件の内容は私に報告してもらえますか。

 費用を誰が負担しても、弁護人が守るべきなのは本人の利益です。事件の内容や本人の話をどこまで交際相手に伝えるかは、本人の意向によって決まり、本人が望まない情報は伝えられないことがあります。依頼の段階で、どの範囲を報告してよいか本人に確認してもらうようお願いしておくと、すれ違いを減らせます。守秘義務の考え方は弁護士に相談した内容は家族や警察に伝わる?守秘義務の範囲をご覧ください。

彼の家族は私の存在を知りません。家族と別々に弁護士を頼んでもよいですか。

 家族と交際相手がそれぞれ弁護士に相談すること自体は可能ですが、最終的に弁護人を選ぶのは本人です。複数の弁護士が同時に接見に向かうと、本人が戸惑うこともあります。家族がすでに弁護人を選んでいる可能性がある場合は、その弁護人に連絡を取り、交際相手としてできることを相談する方が、本人にとって負担が少ないことが多いでしょう。

勾留中に別れを伝えてもよいのでしょうか。

 関係をどうするかは、交際相手が決めてよいことです。伝え方としては、面会や手紙で直接伝える方法のほか、弁護人に事情を話して伝言を頼む方法もあります。ただ、身元引受人や証人になる予定があった場合は、本人の釈放や処分の見通しに影響するため、早めに弁護人に伝えておくことが望ましいといえます。

まとめ


  1. 交際相手は、弁護人の選任や保釈の請求など、法律が親族を名指しする手続を単独では行えない(刑事訴訟法30条2項・87条1項・88条)。
  2. 勾留の通知は親族が中心で、交際相手に情報が届かないことは珍しくない(同法79条、刑事訴訟規則79条)。
  3. 弁護士に相談し、接見を頼むことはできるが、弁護人を選ぶのは本人である。
  4. 接見禁止がなければ、交際相手も家族と同じように面会・差し入れができる(同法80条・81条)。
  5. 身元引受人や情状証人は、肩書きよりも本人の生活に実際に目が届くかが問われる。
  6. 証拠を隠す・かくまう行為について、親族の刑の免除は交際相手には及ばない(刑法103条〜105条)。
  7. 同棲している場合、自分の物の押収や参考人としての聴取がありうる(刑事訴訟法102条2項・223条1項)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルや刑事事件に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。交際相手が逮捕され、自分に何ができるのかが分からない方、本人から頼まれたことに応じてよいか迷っている方からのご相談も承っています。

同棲先の捜索や押収、参考人としての呼び出しなど、交際相手ご自身に関わる不安がある場合も、早い段階でご相談いただければ、ご本人の事件とは切り分けたうえで対応を検討いたします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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