家族・身元保証人に請求が来た|どこまで払う義務があるか
家族が起訴され、弁護人から「情状証人として法廷で話してもらえないか」と言われて戸惑っている——。法廷に立った経験のある方はほとんどいませんから、何を聞かれるのか、答えられなかったらどうなるのかと不安になるのは自然なことです。
情状証人の尋問は、思いつくままに質問される場ではありません。誰がどの順番で、どの範囲のことを聞けるのかが、刑事訴訟法と刑事訴訟規則で決められています。この記事では、その枠組みを手がかりに、法廷で実際に聞かれることと、答え方の考え方を整理します。
この記事で扱う範囲
- 情状証人として法廷に立つ家族などの立場から見た、尋問の流れと質問の中身。
- 宣誓と偽証罪、答えられないときの扱い。
- 当日の実務(出頭、服装、所要時間、費用の扱い)。
- 量刑がどのように決まるかという刑の枠組みそのものや、示談交渉の進め方は扱いません。
情状証人は何をする人か
情状証人とは、被告人の生活状況や人となり、事件後の変化、これからどのように関わっていくのかといった、犯罪事実そのものではない事情を法廷で述べる証人です。こうした事情は一般情状と呼ばれ、有罪か無罪かではなく、刑をどの程度にするかを判断するための材料になります。
そのため、情状証人が意味を持つのは、被告人が起訴された事実を認めている事件が中心です。事実の有無そのものを争っている事件では、まずその点が審理の中心になります。
誰が引き受けることが多いか
多いのは同居している家族です。日常的に顔を合わせている人のほうが、これからの関わり方を具体的に語ることができるからです。同居の家族がいない場合には、別居の家族、職場の上司や雇用主、長く交際している相手が引き受けることもあります。
人数に決まりはありませんが、同じような内容が重なると裁判所が採用しないこともあります。家族と職場の上司のように関わる場面が異なる場合は、それぞれ採用されることがあります。
書面ではなく「質問に答える場」であること
監督を約束する誓約書や身元引受書を提出する方法もあります。書面は自分のペースで整えられますが、法廷ではその場で質問に答えるという違いがあります。裁判官は、答え方そのものからも、監督する意思とその現実性を見ています。
尋問は「順番」と「聞ける範囲」が決まっている
証人尋問は、法律上は裁判官が先に尋ねる建て付けになっていますが(刑事訴訟法304条1項)、意見を聴いて順序を変えることができ(同条3項)、実務では当事者が先に尋ねる交互尋問の方法がとられています(刑事訴訟規則199条の2)。そして段階ごとに、聞ける範囲が規則で定められています。
| 段階 | 質問する人 | 聞ける範囲 |
|---|---|---|
| 主尋問 | 弁護人 | 立証しようとする事項とこれに関連する事項(規則199条の3第1項) |
| 反対尋問 | 検察官 | 主尋問に現れた事項と関連事項、証言の信用性を争うために必要な事項(規則199条の4第1項) |
| 再主尋問 | 弁護人 | 反対尋問に現れた事項と関連事項(規則199条の7第1項) |
| 補充尋問 | 裁判官 | 裁判所が確かめたいと考えた事項 |
検察官が反対尋問の機会に新しい話題を持ち出すには裁判長の許可が必要で、許可された部分は主尋問と同じ扱いになります(規則199条の5)。何を聞かれるか分からないという不安は、この枠組みを知るだけでも小さくなります。
答えを丸暗記しても、そのとおりには進まない
主尋問では、答えを誘導する質問は原則として禁じられています(規則199条の3第3項)。「〜ということで間違いありませんね」と尋ねて「はい」と答えてもらう形は、準備的な事項や争いのない事項といった例外を除いて使えません。
そのため弁護人は、「そのとき息子さんはどのような様子でしたか」というように、自分の言葉で答えるほかない聞き方をすることになります。答えを一言一句覚えても、想定した質問文がそのまま出てくるとは限りません。覚えておくのは文章ではなく、伝えたい事実の中身です。
どのような聞き方でも許されるわけではない
尋問は、できる限り個別的かつ具体的で簡潔に行うこととされ、威嚇的または侮辱的な尋問は禁じられています。重複する尋問、意見を求めたり議論にわたる尋問、証人が直接経験していない事実についての尋問も、正当な理由がなければ許されません(規則199条の13)。裁判長は、事件に関係のない事項にわたる尋問などを制限することができます(刑事訴訟法295条1項)。
主尋問で実際に聞かれること
弁護人からの質問は、おおむね次の柱に沿って組み立てられます。事件の内容や関係性によって重点は変わりますが、柱そのものは大きくは変わりません。
| 質問の柱 | 典型的な問い |
|---|---|
| 本人との関係と生活状況 | 同居しているか、どのくらいの頻度で連絡を取っていたか |
| 事件をどう受け止めたか | いつ、どのようにして事件を知ったか、そのとき何を感じたか |
| これまでの関わり方 | 事件の前、本人の様子に変わったところはなかったか |
| これからの関わり方 | 同居するのか、生活費や仕事はどうするのか、何をどう確認するのか |
| 被害弁償や生活基盤への関与 | 示談金を援助したか、その返済についてどう考えているか |
このうち裁判官の関心が特に向くのは、四つ目のこれからの関わり方です。「責任を持って監督します」という言葉だけでは、中身が分かりません。誰が、どこで、どのような頻度で、何を確認するのか。生活の形として語れるかどうかが問われます。
「できること」と「約束できること」を分ける
実行できない約束を法廷で述べると、反対尋問で確かめられたときに答えに詰まります。仕事や年齢、健康状態、住まいの事情から難しいことは難しいと述べたうえで、代わりに何ができるのかを述べるほうが現実的です。
反対尋問で確かめられること
検察官の反対尋問は、証言の信用性を確かめるために行われます。情状証人に対しては、次の三つの角度から質問されることが多いといえます。
- 事件の前、本人に関われていたか(連絡の頻度、様子の変化に気づいていたか)。
- 本人が何をしたのかを分かっているか(事件の内容を自分の言葉で説明できるか)。
- これからの監督が具体的か(抽象的な決意にとどまっていないか)。
いずれも、証人を困らせること自体を目的とした質問ではなく、監督の実効性を確かめるための質問です。過去のことを尋ねられて思わしくない事実があるときは、事実は事実として述べたうえで、これからどうするのかを続けて述べる形が自然です。取り繕った答えは、続く質問で食い違いが出やすくなります。
なお、反対尋問で尋ねられそうなことは、弁護人があらかじめ主尋問で聞いておくこともできます。打ち合わせの段階で、触れられたくないと感じている事情こそ弁護人に伝えておく意味があります。
宣誓と、答えられないときの扱い
証人は、尋問の前に宣誓をします(刑事訴訟法154条)。宣誓書には、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、何事も付け加えないという趣旨の文言が記されています(刑事訴訟規則118条2項)。裁判所が公開している法廷の紹介資料でも、情状証人として父親が出廷し、宣誓のうえで弁護人、検察官の順に尋問を受ける場面が示されています。
宣誓した証人が虚偽の陳述をすると、偽証罪の問題になります(刑法169条)。ここでいう虚偽とは、判例上、記憶に反する陳述をいうとされています。記憶のとおりに述べた内容が結果として客観的な事実と違っていた場合とは区別されます。ですから、覚えていないことは「覚えていません」、知らないことは「知りません」と述べてかまいません。曖昧な記憶で話を合わせるほうが危うい対応です。
答えたくないことは拒めるのか
自分または近親者が刑事訴追を受け、あるいは有罪判決を受けるおそれのある事項については、証言を拒むことができます(刑事訴訟法146条・147条)。もっとも、これは限られた場面の権利で、答えたくないことを一般的に拒める制度ではありません。正当な理由なく宣誓や証言を拒んだ場合には、過料や刑罰の定めがあります(同法160条・161条)。
正当な理由なく出頭しない場合についても制裁の定めがあります(同法150条・151条)。都合がつかないときは、自分の判断で欠席せず、早めに弁護人に伝えてください。
当日のことと、費用の扱い
当日は傍聴席で待ち、名前を呼ばれてから証言台に進みます。出頭カードや宣誓書に氏名などを記入し、宣誓を読み上げてから着席して質問を受けます。尋問が終われば傍聴席に戻り、そのまま審理を傍聴することも、退廷することもできます。
服装に決まりはありませんが、初めて顔を合わせる裁判官が短い時間で受け取る印象は小さくありません。落ち着いた色合いの服装が無難です。所要時間は事件によりますが、事実を認めている事件では、審理全体が1回の期日で終わることも珍しくありません。
傍聴人に見られたくない場合
法廷は公開されています。もっとも、証人と傍聴人との間について、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相互に相手の状態を認識できないようにする措置を採ることができるとされています(刑事訴訟法157条の5第2項)。裁判所が事情を考慮して判断するもので、申し出れば認められるというものではありませんが、事情がある場合は弁護人に相談してみる価値はあります。
日当は請求しない取り扱いが一般的
証人は、旅費や日当を請求することができます(刑事訴訟法164条1項)。ただし、有罪の言渡しがあったときは訴訟費用を被告人に負担させることがあるため(同法181条1項)、家族が情状証人になる場合には請求しない取り扱いが一般的です。
証言がかみ合わなくなりやすい型
- 答えを文章で暗記し、質問がずれた瞬間に止まってしまう。
- 事件を「大したことではない」と述べてしまい、受け止めが伝わらなくなる。
- 実行できない約束を述べ、反対尋問で確かめられて答えに詰まる。
- 尋ねられていないことまで長く話し、要点が埋もれる。
- 記憶にないことを推測で補い、他の証拠と食い違う。
- 本人をかばおうとして、事実そのものを曖昧に述べる。
打ち合わせで確かめておきたいこと
- 事件の内容と、本人が何を認めているのか。
- 主尋問で尋ねられる項目と、その順序。
- これからの生活設計(住まい、仕事、金銭の管理、連絡の取り方)。
- 答えにくい事情があるかどうかと、その扱い。
- 期日、集合場所、当日の流れ。
まとめ
- 情状証人は、犯罪事実ではなく、人となりやこれからの関わり方を述べる証人です。
- 尋問は主尋問、反対尋問、再主尋問、補充尋問の順に進み、段階ごとに聞ける範囲が規則で定められています。
- 主尋問では誘導尋問が原則として禁じられているため、答えの丸暗記は働きません。
- 反対尋問は、事件前の関わり、事件の理解、監督の具体性という三つの角度から確かめられます。
- 宣誓した以上、記憶に反する陳述は偽証罪の問題になります。覚えていないことはそのまま述べてかまいません。
- 実行できる約束を、生活の形として具体的に述べられるかどうかが要点です。
当事務所では刑事事件のご相談を初回無料で受け付けており、ご本人だけでなくご家族からのご連絡にも対応しています。情状証人としての打ち合わせは、証言の練習というより、これからの生活をどう組み立てるかを一緒に整理する場でもあります。期日が決まっている場合でも、まずはご相談ください。


