留置場への差し入れと手紙|家族ができる支援の実務

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

ご家族が警察署に留置されると、会える機会は大きく限られます。そのなかで、外にいる家族が比較的早い段階から具体的に動けるのが、差し入れと手紙です。

 もっとも、何をどこまで渡せるのかは、逮捕の段階か勾留の段階か、事件の状況、そしてその留置施設の運用によって変わります。この記事では、留置施設での差し入れと手紙について、根拠となっている法令と実際の運用の両面から整理します。読み手として想定しているのは、逮捕・勾留された方のご家族です。

差し入れと手紙は、家族が最初にできる具体的な支援


「留置場」は法律上の「留置施設」


 日常的に「留置場」「留置所」と呼ばれる場所は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」といいます)では「留置施設」と呼ばれます。都道府県警察に置かれ、警察署の留置施設では警察署長が運営の責任者にあたります。同じ法律のなかでも、法務省が所管する拘置所や刑務所とは章立てが分かれ、扱いも異なります。調べた情報が留置施設について書かれたものかどうかは、先に確かめておいてください。

「差し入れ」が指しているもの


 差し入れとは、本人以外の方が本人に渡すために、現金や物品を留置施設に持参し、または送付することをいいます。警察庁の通達でも、こうして持参・送付された現金と物品は「差入金品」として整理されています。郵送も差し入れにあたる、という点は覚えておくと動きやすくなります。

 渡した物は本人に直接手渡すのではなく、いったん職員が受け取り、検査を経てから本人に渡されます。誰が差し入れたのかは、本人に分かる形で処理されるのが一般的です。

差し入れの可否を決めているのは誰か


逮捕の段階と勾留の段階では、判断の仕組みが違う


 刑事収容施設法は、刑事訴訟法の定めにより本人が交付を受けることを許されていない物品について、差し入れた方に引き取りを求めることとしています。そして、この「許されていない物品」の中身が、段階によって違います。

 警察庁の通達は、弁護人以外の方からの差し入れについて、逮捕されている段階の方は捜査官が交付を許可しない物品、勾留されている方は刑事訴訟法81条により授受が禁じられている物品を指す、と説明しています。実際の手続でも、逮捕段階の方への差し入れや面会の申出については、留置の担当者が捜査の担当者の意見を聴く仕組みが定められています。

 逮捕直後に差し入れが通りにくいのは、留置の担当者が冷たいからではなく、捜査部門の判断が入る建て付けになっているためです。窓口で押し問答をしても状況は動きにくい、と知っておくだけでも消耗を減らせます。

接見等禁止がついても、渡せるものは残る


 勾留の段階で「接見等禁止」がつくと、弁護人以外の方との面会や、書類その他の物のやり取りができなくなります。ただし刑事訴訟法81条は、糧食の授受まで禁じたり差し押さえたりすることはできない、とただし書で定めています。実務上も、糧食・現金・着替え類・寝具・洗面具などの日用品や、書き込みのない市販の書籍・雑誌・新聞を禁止の対象から除く書き方が用いられることが多いとされています。

 「接見等禁止がついた=何も渡せない」と受け止めてしまう方は少なくありませんが、生活を支える物が届く余地は残っているのが通常です。一方で、手紙は「書類」にあたるため、この場合は本人に届きません。

段階面会手紙現金・衣類・日用品
逮捕直後(勾留前)弁護人以外は認められにくい捜査部門の判断が入る捜査部門の判断が入る
勾留後(接見等禁止なし)平日の日中に可能なことが多いやり取りできる差し入れできる
勾留後(接見等禁止あり)弁護人以外はできない届かず保管される決定で除外されていれば差し入れできる


 接見等禁止は、弁護人の申立てによって一部が解除され、特定の家族との面会だけが認められることもあります。表は目安で、実際の扱いは事件ごとに異なります。

差し入れできるもの・できないもの


品目一般的な扱い補足
現金差し入れできる施設が預かり、施設内での購入に使える
衣類・下着差し入れできるひも・フード・金具・伸縮性の強いものは断られやすい
書籍・雑誌差し入れできる書き込みのないもの。内容によって制限されることがある
便箋・封筒・切手差し入れできる施設内で購入できることも多い
眼鏡・コンタクト用品要確認洗浄液などは施設内で新品を購入する扱いが一般的
食品・飲料差し入れできない施設内での購入で対応する
医薬品差し入れできない施設の診療の仕組みで対応する
タオル・石けん等差し入れできない施設から貸与・支給される
たばこ差し入れできない庁舎内は禁煙
携帯電話等の電子機器差し入れできない外部との連絡手段になり得るため


「タオルは差し入れできない」の正確な意味


 タオルや石けんが差し入れできないと知って、「本人はタオルも使えないのか」と受け取ってしまう方がいます。刑事収容施設法は、寝具や日用品などを施設が貸与または支給することを定めており、警察庁の通達も、日用品としてタオル類・食器類・ちり紙・石けん・洗面器・洗剤・スリッパなどを、筆記具とあわせて挙げています。食事と湯茶は支給されます。差し入れが断られるのは、中身を確認しにくい物や事故につながり得る形状の物についての判断であって、生活そのものが立ち行かなくなるわけではありません。

迷ったときは現金が使いやすい


 留置施設には、預かられている現金を使って自弁の物品を購入する仕組みがあります。差し入れできない品目でも、施設内での購入なら対応できることがあり、便箋や切手、菓子類、日用品などがこれにあたります。いくら入れればよいかに一律の答えはありませんが、1回あたりの上限を設けている施設もあるため、金額は事前に確認しておくと安心です。

量にも上限がある


 刑事収容施設法は、本人が手元に置ける量と、施設が預かる量について、それぞれ上限を留置業務管理者が定めることとしています。心配のあまり大量に差し入れると、上限を超えた分について引き取りを求められることがあります。少しずつ、必要に応じて、というほうが結果的に無理がありません。

差し入れの手順と、行く前に確認しておくこと


まず留置管理の担当へ電話をする


 行ってから断られるのを避けるため、電話で次の点を確認しておくことをおすすめします。

  1. 本人が現在その警察署にいるか(別の署へ移されていることがあります)
  2. 差し入れの受付時間と、その日の受付が可能かどうか
  3. 差し入れできる品目と、1日あたりの回数・数量の制限
  4. 現金の1回あたりの上限があるかどうか
  5. 接見等禁止がついているかどうか


 日中は取調べや検察庁・裁判所への移動で本人が不在のこともあります。1日の回数を定めている施設では、先に別の方が差し入れをしていると受け付けてもらえないこともあります。

窓口での手続きと郵送


 窓口では所定の用紙に、差し入れる方の氏名や連絡先、本人の氏名、品目と数量などを記入します。物品は職員が検査し、問題がなければ本人に渡されます。受け付けられなかった物は、その場で返されるか、後日引き取りを求められます。

 遠方の場合や平日の日中に動けない場合は、郵送も使えます。宛先は、警察署の住所に続けて警察署名と留置施設であることを示し、本人の氏名を書く形が一般的です。表記の指定がある施設もあるため、電話で確かめてから送ってください。

面会の場で直接渡すことはできない


 面会と差し入れは別の手続きです。弁護人以外の方が面会するときは、時間内に終えること、録音機・カメラ・携帯電話などを使わないこと、承認を受けた場合を除き外国語を使わないこと、面会の際に直接金品のやり取りをしないことなどが、あらかじめ告げられる扱いになっています。持参した物は、面会とは別に窓口で手続きしてください。

手紙は「読まれる前提」で書く


検査は原則として行われる


 刑事収容施設法は、本人が発受する手紙について検査を行うことを定めています。まだ判決を受けていない立場の方の手紙は、原則として検査の対象になると理解しておいてください。家族が疑われているという意味ではなく、制度としてそう設計されているということです。

 検査の結果、暗号などが用いられていて職員が理解できない内容、施設の規律や秩序を害する結果を生じるおそれのある内容、罪証隠滅の結果を生じるおそれのある内容などが認められた場合には、その部分が削られたり、やり取り自体が認められなかったりすることがあります。

本人が出せる手紙は「1日1通」が下限


 留置業務管理者は、手紙の作成の要領、発信を申請できる日や時間帯、通数などについて、管理運営上必要な制限を設けることができます。ただし通数を制限する場合でも、1日につき1通を下回ってはならないと法律で定められています。多くの施設で「1日1通まで」とされているのは、この下限に沿った運用です。便箋の枚数に制限を設けている施設もあります。

 なお、弁護人などに宛てて出す手紙は、この通数制限の対象から外れています。本人と弁護人との連絡が細らないようにするための扱いです。

接見等禁止がついている間の手紙


 接見等禁止がついている間は、家族から送った手紙は本人に渡されません。届いた手紙は施設が保管し、禁止が解けた後に渡される扱いになります。本人には手紙が来ていること自体が伝わらないため、返事がないからといって気持ちが離れたわけではない、という前提で受け止めてください。

 どうしても伝えたいことがあるときは、弁護人に託し、面会の場で内容を伝えてもらうという方法があります。

手紙に何を書き、何を書かないか


書いておくと本人の助けになること


  • 家の生活が回っていること(引き落とし、家賃、子どものこと、ペットのこと)
  • 勤務先や学校への対応が今どうなっているか
  • こちらの体調、差し入れた物、次に何を送る予定か
  • 弁護士とつながったかどうか、その弁護士の名前
  • 返事に書いてほしいこと


 本人が出せる手紙は1日1通が上限とされていることが多いため、聞きたいことは絞って書くほうが、必要な情報が返ってきやすくなります。

避けたほうがよいこと


 供述の内容についての具体的な指示は避けてください。「こう言え」「この話はするな」といった書き方は、罪証隠滅を疑わせる材料になり得ます。手紙は読まれる前提であり、結果として勾留の判断や接見等禁止の判断に影響することも考えられます。同じ理由で、事件関係者への連絡や伝言を頼む書き方も避けたほうが安全です。被害を訴えている方への連絡は、弁護人を通す以外の方法をとらないでください。

 また、早く帰ってきてほしいという気持ちから、認めることを勧めたくなる場面もあります。ただ、事実と違うことを認めた供述は後から動かしにくく、本人の見通しをかえって狭めてしまうことがあります。何がどうだったのかは本人と弁護人が確認していく部分です。家族の手紙は、外の生活が続いていることを伝える役割に絞るほうが、結果として力になります。

物や手紙では解決できない場面


持病や常用薬がある場合


 医薬品は差し入れできません。一方で、留置施設には健康を保つための仕組みが置かれています。留置の開始時に健康状態を聴き取ること、おおむね1か月に2回の健康診断を行うこと、必要な診療を行うことが定められており、本人が医師を指名して自弁で診療を受けられる場合の規定もあります。

 家族にできるのは、常用薬の名称と量、かかりつけの医療機関、アレルギーの有無といった情報を、弁護人と留置の担当者に早い段階で伝えることです。物を届けるより、この情報のほうが役に立つ場面があります。眼鏡や補聴器などについても、本人が不自由していないかを面会や手紙で確認しておきたいところです。

本人から受け取る「宅下げ」


 本人が持っている物や施設が預かっている金品を、外の家族に渡してもらう手続きを宅下げといいます。刑事収容施設法は、本人の申請により、一定の場合を除いてこれを許すこととしています。ただし文書や図画にあたるものは対象から外れており、書類の類はこの手続きでは受け取れません。

 なお、事件の証拠として押収された物は、留置施設が預かっている金品とは別の手続きになります。いつ返ってくるかも別に判断されますので、混同しないようにしてください。釈放の際には、預かられていた金品は本人に返されます。所持金がなく迎えに来る方もいない場合に、帰るための旅費が支給される規定もあります。

差し入れと手紙だけでは届かないところ


弁護人の立場は家族とは違う


 弁護人は、立会人なしで本人と会うことができ、手紙の通数制限も受けません。接見等禁止がついている場面でも会えます。家族には渡せないものを渡し、聞けないことを聞ける立場です。差し入れと手紙で生活を支え、事件そのものは弁護人と本人の側で進める。この役割分担ができると、家族の負担もいくらか軽くなります。

処遇に納得できないとき


 留置施設での扱いについては、審査の申請、事実の申告、苦情の申出といった不服申立ての仕組みが用意されています。また、留置施設視察委員会という第三者の機関があり、本人がこの委員会に宛てて出す書面は検査してはならないと定められています。いずれも本人が申し出るものですが、そうした道があること自体を手紙で伝えることはできます。

家族が抱え込まないために


 差し入れが通るかどうかも、手紙が届くかどうかも、施設ごと・事件ごとに違います。問い合わせを重ねても答えが揃わず、それ自体が家族を消耗させることがあります。分からないことは弁護人に整理してもらい、家族は外の生活を守ることに力を使ってください。

 当事務所でも、ご家族からの初回無料でのご相談と、即日の接見に対応しています。差し入れや手紙をどう使うかを含めて、早い段階でご相談いただけます。

まとめ


  1. 逮捕の段階と勾留の段階では、差し入れの可否を判断する仕組みが違う
  2. 接見等禁止がついても、生活を支える物が届く余地は残っている
  3. 差し入れできない日用品は、施設から貸与・支給される
  4. 迷ったときは現金が使いやすいが、量にも上限がある
  5. 手紙は検査される前提で、外の生活のことを中心に書く
  6. 本人が出せる手紙は1日1通を下限として制限されることがある
  7. 供述の内容に踏み込む指示や、関係者への伝言依頼は書かない


 できることが限られている状況でも、外に自分を待っている人がいると分かることは、本人にとって小さくない支えになります。無理のない範囲で、続けられる形を選んでください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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