家族が逮捕されたと連絡が来た|最初の24時間にやること

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

「ご家族を逮捕しました」という電話を受けたとき、落ち着いていられる方はほとんどいません。何を聞かれたのかも、何を答えたのかも覚えていない、という方もいます。

 この記事は、逮捕された本人ではなく、その連絡を受けたご家族に向けて書いています。配偶者の場合も、子や親、きょうだいの場合もあるでしょう。立場によって事情は違いますが、最初の一日でご家族が向き合うことは、実はよく似ています。

 ここでは、連絡を受けてからの二十四時間を時間の流れに沿って区切り、その時々にできること、まだできないこと、急いで決めなくてよいことを整理します。

最初の二十四時間で、家族が決めることは多くない


 情報が少ないまま、たくさんのことを決めなければならない気がしてしまいますが、この段階でご家族が実際に決められることは、おおむね次の三つに絞られます。

  • 弁護士をどうするか
  • 本人の生活と、勤務先や学校との関係をどうつなぐか
  • お金の話が出てきたときにどう向き合うか


 逆に、この二十四時間では決まらないこと、決めようがないこともあります。

  • 最終的にどのような処分になるのか
  • いつ帰ってこられるのか
  • 被害を受けた方との話し合いができるかどうか


 この二つを分けておくだけでも、判断はかなり楽になります。決まらないことを今日中に決めようとすると、焦りから不利な行動につながりやすいためです。

〇〜一時間|その連絡が本物かを確かめる


「家族が逮捕された」は、詐欺で使われてきた言い回しでもある


 意外に思われるかもしれませんが、最初に確かめたいのは連絡そのものの真偽です。警察庁が公表している特殊詐欺の手口分類には、親族や警察官、弁護士などを装い、親族が起こした事件や事故の示談金などの名目で金銭をだまし取る類型が挙げられています。「息子さんが逮捕された」という切り出し方は、この類型で長く使われてきたものです。

 判断の手がかりになるのは、制度の側です。たとえば保釈は、起訴されたあとの被告人について、裁判所が判断する制度です。逮捕された直後の段階で「保釈金が必要だ」と求められることは、制度の建て付けからは考えにくいことになります。捜査費用、身元保証金、供託金といった名目で現金の振込みや受け渡しを求められた場合も、いったん立ち止まる材料になります。

 着信のあった番号にそのままかけ直すのではなく、自分で調べた警察署の代表番号にかけ直して確認する。これだけで多くのことがはっきりします。本物の連絡であれば、担当者につないでもらえます。

確認しておきたい六つのこと


 本物の連絡だと確認できたら、次の点を書き留めておきます。あとで弁護士に相談するとき、この六つがそろっているかどうかで話の進み方が変わります。

  1. どの警察署にいるのか(署名と所在地)
  2. 担当している部署と担当者の氏名
  3. 本人の氏名と生年月日
  4. どのような容疑なのか(罪名)
  5. 逮捕された日時
  6. その警察署の連絡先


 容疑の内容について、警察が詳しく説明してくれないことはよくあります。捜査の途中であり、外部に伝えられる範囲が限られているためです。教えてもらえなかったことも、そのまま記録しておいてください。

一〜三時間|弁護士について決める


入口は三つある


 逮捕された方に弁護士がつく道筋には、次の三つがあります。名前が似ているため混同されやすいのですが、使える時期が違います。

 当番弁護士私選弁護人被疑者国選弁護人
使える時期逮捕された直後からいつでも勾留状が出てから
依頼できる人本人からも家族からも本人からも家族からも本人が裁判官に請求する
費用初回の接見は無料事務所ごとの費用国が負担する
回数同じ事件では原則として一回制限なし
窓口逮捕された場所の弁護士会法律事務所へ直接勾留の手続の中で


 ここで押さえておきたいのは、被疑者国選弁護人は勾留が決まってからの制度だという点です。逮捕から勾留が決まるまでの数日間は対象になりません。つまり、連絡を受けた当日に動かせるのは当番弁護士か私選弁護人ということになります。なお、国選を請求する際には資力申告書の提出が必要で、資力が政令で定める基準額(五十万円)以上のときは、あらかじめ弁護士会に私選弁護人の選任を申し出ていることが求められます。

 当番弁護士は、逮捕された場所を管轄する弁護士会に連絡して依頼します。初回の接見は無料ですが、同じ事件で使えるのは原則として一回です。その後も継続して弁護活動を頼みたい場合は、あらためて契約を結ぶことになります。

家族は、本人の同意を待たずに弁護人を選ぶことができる


 あまり知られていませんが、刑事訴訟法は、配偶者、直系の親族、きょうだいなどが本人とは独立して弁護人を選任できると定めています。本人と連絡が取れない状況でも、ご家族の判断で弁護士を頼むことができるということです。

 さらに、立会人なしで本人と面会できるのは、すでに選任された弁護人だけではありません。同法は「弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者」も同じように面会できるとしています。つまり、ご家族が今日依頼した弁護士は、正式な選任の手続が済む前でも、その日のうちに本人に会いに行くことができます。

 これは、この二十四時間でご家族が動かせることの中で、最も大きなものだと思います。逮捕された直後の本人は、外部と連絡を取る手段をほとんど持ちません。携帯電話は押収されていることが多く、自由に電話をかけられるわけでもありません。その状況で、外の情報を届け、話を聞き、ご家族に状況を伝えられるのが弁護士です。

最初の相談で伝えられるとよいこと


  • 先ほどの六項目(警察署、担当者、氏名、罪名、逮捕日時、連絡先)
  • 本人の職業と勤務先の状況、休みの取りやすさ
  • 同居の有無と、家族の中で誰が動けるか
  • 過去に同種の件で警察と関わったことがあるか
  • 思い当たることがあるかどうか(分からなければ「分からない」で構いません)


 「何も分からないので相談してよいか迷う」という声をよく聞きますが、分からない状態こそ相談の入口です。当事務所でも、初回のご相談は無料でお受けし、夜間や休日を含めて受付をしています。事案によっては、その日のうちに接見に向かうこともあります。

三〜十二時間|面会と差し入れの現実を知っておく


逮捕の段階では、家族の面会は原則として認められていない


 多くの解説記事に「逮捕から三日間は家族でも面会できない」と書かれています。結論としてはそのとおりなのですが、理由を知っておくと、そのあとの見通しが立てやすくなります。

 刑事訴訟法には、勾留されている人が弁護人以外の人と面会できるという規定があり、これは勾留された被疑者にも準用されています。ところが、逮捕されただけでまだ勾留されていない段階については、これに対応する規定が置かれていません。そのため、逮捕の段階での一般の面会は、権利として認められているとは考えにくいというのが一般的な理解です。捜査機関の判断で面会が実施される余地まで否定されているわけではありませんが、当てにできるものではありません。

 一方で、弁護士の接見は逮捕直後から可能です。制度の作りとして、この時期に本人と会える人が弁護士に限られている、と理解しておくとよいと思います。

段階家族の面会弁護士の接見
逮捕から勾留が決まるまで(おおむね三日間)原則として認められていない時間の制限なく可能
勾留が決まったあと時間や人数の制限のもとで可能なことが多い同じく可能
接見等の禁止が付いたとき弁護人以外は会えない同じく可能


 勾留が決まったあとの面会は、平日の日中に限られ、一回あたり十五分から二十分程度、警察官の立会いのもとで行われるのが通例です。一日に一組までと定めている警察署もあります。共犯者がいる事件などでは、裁判官の判断で弁護人以外との面会が禁じられることがあり、その場合は勾留後も会えません。

差し入れは、面会より先にできることがあります


 面会ができない時期でも、現金や衣類などの差し入れは受け付けてもらえることがあります。ただし、細かい運用は警察署ごとに違うため、行く前に留置を担当している係に電話で確認してください。

  • 衣類は制限が厳しく、紐やチャック、ボタンの付いたもの、伸縮性のある素材は受け付けてもらえないことがあります
  • 食品は受け付けていない警察署が多く、現金と衣類、書籍が中心になります
  • 本人が検察庁や裁判所に行っていて、日中は署にいないことがあります
  • 夕方は留置担当の職員が食事の対応に入るため、対応してもらえないことがあります


 当日の朝に電話をして、本人が署にいるかどうかと、受付の時間帯を確かめてから向かうのが確実です。

十二〜二十四時間|生活と勤務先をどうつなぐか


勤務先や学校への説明は、決め打ちしない


 逮捕されたことを警察が勤務先や学校に連絡しなければならない、という法律上の義務規定はありません。実際に伝わるきっかけとして多いのは、本人が出勤・登校しないまま連絡が取れないことです。

 だからといって、その場の思いつきで説明してしまうのは避けたいところです。あとで事実と食い違うと、かえって立場が悪くなります。休みの連絡が必要な場合でも、どこまで伝えるかは弁護士と方針を決めてからにするのが安全です。この点は、勾留がどのくらい続くかの見通しとも関わってきます。

家族自身の生活を止めないための確認


 競合する解説記事ではあまり触れられませんが、実際にご家族が困るのはここからです。身柄の拘束が続けば、本人が担っていた役割はそのまま止まります。

  • 本人名義の口座からの引き落とし(家賃、光熱費、保険料、ローン)
  • 車の駐車場や、放置すると問題になるもの
  • ペットや、送り迎えが必要な子どもの予定
  • 本人が個人事業主や会社の代表者である場合の、取引先への対応
  • 本人のスマートフォンは押収されていることが多く、連絡先や予定を確認できないこと


 これらは弁護士が接見の際に本人に確認し、ご家族に伝えることができます。最初の接見で聞いてきてほしいことをメモにまとめておくと、限られた時間を有効に使えます。

この二十四時間で避けたい五つの行動


  1. 被害を受けた方や、事件の関係者に直接連絡する
  2. 本人の部屋を片づけたり、パソコンやスマートフォンのデータを整理する
  3. 事情をSNSに書いたり、必要のない範囲まで知人に相談する
  4. その場で示談金や解決金を支払う約束をする
  5. 「認めれば早く帰れるから」と本人に伝えるよう頼む


 いずれも、本人を思う気持ちから出てくる行動です。ただ、外から見たときには別の意味を持ってしまいます。

 被害を受けた方への連絡は、謝罪のつもりでも威圧と受け取られることがあり、その後の話し合いを難しくします。本人の持ち物の整理は、証拠を隠したと評価されるおそれがあります。刑法には、親族が本人のためにこうした行為をした場合の特例が置かれていますが、これは刑を免除することが「できる」という定めであり、当然に免除されるものではありません。

 最後の一つは特に注意が必要です。事実と違う内容を認めた供述は、あとから覆すのが難しくなります。早く帰ってきてほしいという気持ちが、結果として長い不利益につながることがあります。

二十四時間を過ぎたあとに起きること


 最初の一日を越えると、手続は次のように進みます。

  • 逮捕から四十八時間以内に、警察は事件を検察官に送ります
  • 検察官は、送致から二十四時間以内、かつ逮捕から通じて七十二時間以内に、勾留を請求するかどうかを決めます
  • 勾留が請求されると、裁判官が本人に直接質問をしたうえで判断します
  • 勾留が認められると、原則十日間、必要があるとされればさらに最長十日間、身柄の拘束が続きます


 身柄が解かれる可能性がある分岐点は、勾留を請求するかどうか、勾留を認めるかどうかという判断の前後に集中しています。この時期に弁護人から意見を出せるかどうかで、伝わる材料は変わります。

 ただ、判断するのは検察官と裁判官です。早く動けば身柄が解かれる、という関係にはありません。正確に言えば、早く動くことで選べる手が残っているうちに選べる、ということです。この違いは、期待の持ち方に関わるので、あえて書いておきます。

よくある疑問


警察はどうして詳しく教えてくれないのですか


 捜査の途中であり、外部に伝えられる範囲が限られているためです。ご家族に対して不親切なわけではありません。事件の内容を確かめる方法としては、弁護士が接見して本人から直接聞くのが現実的です。

当番弁護士に来てもらったら、そのまま依頼することになりますか


 なりません。初回の接見は、状況を確かめて助言を受けるためのものです。その弁護士に続けて依頼するかどうかは、あらためて選ぶことができます。別の弁護士に依頼しても差し支えありません。

費用の見通しが立たないのですが


 弁護士費用は事務所ごとに定められており、事件の内容や見込まれる期間によっても変わります。相談の段階で、どの範囲までを頼むといくらになるのかを確認してから決めて構いません。勾留が決まったあとに一定の要件を満たせば、国が費用を負担する被疑者国選弁護人の制度もあります。

まとめ


 最初の二十四時間でご家族ができることは、限られています。それでも、その限られた行動の中身は、あとの流れに関わってきます。

  1. 連絡が本物かを確かめ、六項目を書き留める
  2. その日のうちに弁護士と話す(家族の判断で依頼できます)
  3. 面会はまだできない前提で、差し入れの準備をする
  4. 勤務先への説明は、方針を決めてから行う
  5. 善意からの行動が不利に働く場面があることを知っておく


 情報が少ないまま判断を迫られる状況は、それ自体が大きな負担です。分からないことが多い段階でも相談はできますので、抱え込まずにご連絡ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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