痴漢・盗撮で後日逮捕されるのはなぜか|防犯カメラとICカード履歴
ご家族が逮捕され、勾留が決まったと聞いて警察署へ向かったところ、窓口で「接見禁止がついているので面会はできません」と告げられる。手紙を出しても返事がない。何が起きているのかも分からないまま日だけが過ぎていく。性犯罪の疑いがかけられた事件では、こうした状態になることが少なくありません。
接見禁止は、いったんついてしまうとご家族の力だけで動かすことが難しい処分です。ただ、まったく手がないわけでもありません。この記事では、接見禁止がどのような処分なのか、なぜ性犯罪の事件でつきやすいのか、そして解除に向けてどう動けるのかを、ご家族の立場から整理します。
接見禁止は、勾留に上乗せされる処分です
根拠となる条文
接見禁止は、刑事訴訟法81条に定められた処分です。同条は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときに、裁判所が、検察官の請求により又は職権で、勾留されている人と弁護人以外の者との接見を禁じ、書類その他の物の授受を禁じることができると定めています。捜査段階の被疑者についても、同法207条1項によってこの規定が準用されます。
押さえておきたいのは、接見禁止が勾留とは別の処分だという点です。勾留そのものの要件も、罪証を隠滅するおそれや逃亡のおそれです。接見禁止は、勾留による拘束をもってしてもなお防ぎきれないほどのおそれがあるとみられたときに、さらに上乗せされる処分という建て付けになっています。
決まるのは勾留質問の日
接見禁止がつくかどうかは、勾留が決まる日に併せて判断されるのが通常です。検察官が勾留請求とともに接見禁止を求め、裁判官がこれを認めると、勾留質問の場で本人に接見等禁止決定書が渡されます。
なお、逮捕されてから勾留が決まるまでの間は、まだ接見禁止はついていません。もっとも、この時期は取調べや検察庁・裁判所への移動が優先されるため、弁護士以外の方が面会できることは実際にはほとんどありません。「接見禁止がついたから会えなくなった」というより、会えない状態がそのまま続いている、と受け止めたほうが実態に近い場面もあります。
判断する主体は段階によって変わります。第1回の公判期日より前は担当の裁判官が、公判が始まったあとは事件を審理する裁判所が判断します。
禁じられるのは面会だけではありません
条文が挙げているのは「接見」と「書類その他の物の授受」です。つまり、面会ができなくなるだけでなく、手紙のやり取りも止まります。ご家族が出した手紙が本人の手元に渡らず、届いたこと自体が本人に伝えられないこともあります。返事が来ないことを「怒っているのだろう」と受け取ってしまう方もいますが、そもそも読める状態にないという場合が少なくありません。
性犯罪の事件で接見禁止がつきやすいのはなぜか
中心的な証拠が供述になりやすい
接見禁止の例として語られやすいのは、特殊詐欺のような組織的な事件や、共犯者がいる事件です。ただ、性犯罪の疑いがかけられた事件でも、接見禁止がつくことは珍しくありません。
理由の一つは、事件の性質にあります。この種の事件では、当事者以外に目撃者がいない場面が問題になることが多く、防犯カメラの映像などから分かるのは前後の状況にとどまります。結果として、何があったのかを示す中心的な証拠が、被害を訴えている方の供述になりやすい。供述が動けば事件の見え方が大きく変わるため、その方や周囲の人への働きかけを、捜査機関も裁判所も強く警戒します。
接見禁止が意識されやすい事情
実務でよく見られるのは、次のような事情です。ご家族から見れば「そんなつもりはない」と言いたくなるものばかりですが、裁判官が見ているのは本人やご家族の内心ではなく、外形的な事実です。
| 事情 | どのように見られやすいか |
|---|---|
| 本人と相手方に面識がある | 連絡先や生活圏を知っており、働きかけが可能とみられやすい |
| 職場・学校・地域などに共通の知人がいる | 第三者を介して間接的に伝わる経路があるとみられやすい |
| 事実関係を争っている、同意があったと述べている | 説明の食い違いを埋める動機があるとみられやすい |
| 複数の人が関わった疑いがある | 関わった人どうしの説明合わせが懸念されやすい |
| 本人が携帯電話やSNSで相手方とつながっている | 拘束が解ければ連絡を取り得るとみられやすい |
「性犯罪だから必ずつく」わけではありません
一方で、罪名だけで接見禁止が決まるわけではありません。本人が事実関係を認めていて、相手方と面識がなく、住居も勤務先も定まっているといった事件では、勾留はされても接見禁止まではつかないことがあります。逆に、財産に関する事件であっても共犯が疑われれば接見禁止はつきます。判断されているのは罪名ではなく、罪証を隠滅するおそれの具体的な中身です。
接見禁止でも禁じられていないもの
糧食の授受は禁じられません
81条には但書があり、糧食の授受を禁じたり差し押さえたりすることはできないと定められています。加えて、実際の決定の主文では、現金・着替え・寝具・洗面具といった日用品や、書き込みのない市販の書籍・雑誌・新聞などを禁止の対象から外す書き方がされるのが一般的です。ただし、どこまで除外されるかは決定の内容によって差があります。
差し入れは届くことがあります
このため、接見禁止がついていても差し入れ自体はできることが多いというのが実情です。面会に行けない以上、郵送や宅配便での差し入れを受け付けている警察署を使うことになります。受け付けられる品目は施設ごとの運用にも左右されますので、送る前に留置の担当部署へ電話で確認しておくと行き違いが減ります。
ただし、手紙は「書類」にあたるため、除外されていなければ届きません。物を届けられることと、気持ちを伝えられることは別だと考えておいてください。
弁護人は接見禁止の対象外です
81条が禁じているのは、弁護人や弁護人になろうとする弁護士以外の方との接見です。弁護人はこの制限を受けず、接見禁止がついていても本人と会い、書類のやり取りをすることができます。ご家族と本人をつなぐ経路が、事実上そこだけになるということでもあります。
| 接見禁止中でもできること | 接見禁止中はできないこと |
|---|---|
| 弁護人との面会・書類のやり取り | 家族・友人・恋人との面会 |
| 糧食や主文で除外された物の差し入れ | 手紙のやり取り(除外されていない場合) |
| 弁護人を通じた本人への伝言・本人からの伝言 | 電話での会話 |
| 勾留理由開示の期日を法廷で傍聴すること | 法廷で本人と会話すること |
解除に向けた三つの道
一部解除の申立て
実務でまず検討されるのが、接見等禁止の一部解除の申立てです。「母親だけ」「配偶者だけ」というように対象者を特定し、その方に限って接見を認めるよう求めます。
この申立てには、実は法律上の根拠となる規定がありません。裁判官が自ら決定を変更する権限を持っていることを前提に、その職権の発動を促す申立てという位置づけです。決まった形式がない分、対象者が誰で、本人とどのような関係にあり、なぜ会う必要があるのかを具体的に示せるかどうかが問われます。対象となる方の身分を確かめられるよう、運転免許証の写しなどを添えることもあります。
また、裁判官は検察官の意見を踏まえて判断します。そのため、申立ての前後に検察官と話し合いを持つことも重要になります。本人が事実関係を争っている場合や黙秘している場合には、検察官が難色を示し、認められにくくなる傾向があります。
準抗告と抗告
接見禁止の決定そのものが誤りだと主張する場合には、不服申立てをします。第1回の公判期日より前であれば準抗告、公判が始まったあとであれば抗告という手続です。
これらには申立ての期限が特に定められておらず、勾留が続いている間であれば申し立てることができます。ただし、裁判所が一度した判断を正面から覆す手続であるため、認められる例は多くありません。実務では、不服申立てと一部解除の申立てを事案に応じて使い分けたり、組み合わせたりすることになります。
時間の経過によって終わる場合
接見禁止は、起訴の時点で外れることが多いといわれます。起訴までに捜査が一巡し、証拠の確保が進むためです。もっとも、事実関係を争っている事件や複数の人が関わった疑いのある事件では、起訴後も続くことがあります。その場合は「第1回公判期日が終了するまでの間」といった期限が付され、必要があると判断されれば順次延ばされていきます。判決まで続くことはまれで、検察官の立証が終わった段階で終了することが多いとされています。
解除に向けた動きを考えるときは、「あと何日で会えるか」ではなく、どの節目で状況が変わり得るかを押さえておくほうが現実的です。
ご家族の側で用意できる材料
会う必要のある人を絞る
家族全員がすぐに会えるようにしてほしい、という形の申立ては通りにくくなります。対象が広がるほど、働きかけの経路も広がるとみられるためです。まずは一人に絞り、その方から順に認めてもらう組み立てのほうが、結果として早く会える場合があります。
面会の目的が事件から離れていること
説得力を持ちやすいのは、面会の目的が事件の中身と関係しないと示せる場合です。たとえば、本人が個人で営んでいた仕事の後始末、家賃や保険料の支払い、幼い子どもの養育、同居していた高齢の親の介護、持病の経過といった事情です。これらは具体的に書けるほど伝わります。「心配だから会いたい」という気持ちは当然のものですが、それだけでは判断を動かす材料になりにくいのが実情です。
事件の話をしないという約束
面会の場で事件の内容には触れない、供述の内容について助言しない、関係者との連絡役にならない。こうした点を明確にしておくことも材料になります。実際に解除された場合、ご家族の面会には職員が立ち会い、やり取りは記録されます。約束が守られるかどうかは、その場で確かめられていると考えておいてください。
よかれと思ってしたことが解除を遠ざけることがあります
相手方や関係者に自分から連絡を取らない
ご家族が最もしてしまいがちで、最も影響の大きいのがこれです。謝罪をしたい、事情を聞きたいという気持ちからであっても、被害を訴えている方やその周囲にご家族が直接接触すると、まさに接見禁止が想定している働きかけそのものと受け取られます。解除が遠のくだけでなく、本人の処分にも不利に働きます。
そもそも性犯罪の事件では、被害を訴えている方の氏名や住所などが手続の中で秘匿される仕組みが設けられており、ご家族が連絡先を知り得ない場合も少なくありません。示談を含めた働きかけは、弁護人を窓口として行うのが原則です。
本人の部屋やデータに手をつけない
本人の部屋を片づける、パソコンやスマートフォンのデータを整理するといった行為も避けてください。片づけのつもりであっても、あとから証拠を処分したと見られる可能性があります。家族なら責任を問われないと考えている方もいますが、法律上そこまでの扱いにはなっていません。
SNSや広い範囲での相談は避ける
事情を知ってほしい気持ちから、SNSで発信したり、共通の知人に広く相談したりする方がいます。ですが、情報は本人の意図しない形で広がり、関係者にも伝わります。相談先は、弁護人と、生活を支えるうえで必要な最小限の範囲にとどめておくほうが安全です。
会えない間にご家族ができること
弁護人を通じた報告と伝言
接見禁止がついている間、本人の様子を知る手段は弁護人からの報告が中心になります。体調はどうか、食事は取れているか、取調べで何を聞かれているか、家族に伝えたいことはあるか。逆に、ご家族から本人へ伝えたいことを預けることもできます。ただし、供述の内容に関わる伝言は、弁護人であっても取り次ぐことはできません。当事務所では即日の接見に努めていますが、伝えられる内容には手続上の限界があります。
勾留理由開示という機会
あまり知られていない手続に、勾留理由開示があります。なぜ勾留されているのかを明らかにするよう裁判所に求めるもので、刑事訴訟法82条により、本人や弁護人のほか、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹なども請求することができます。請求があると、原則として5日以内に期日が開かれ、公開の法廷で理由が告げられます。
この期日には本人が出廷しますので、傍聴席から姿を見ることができます。接見禁止がついている間に、ご家族が本人の顔を見られる数少ない機会です。ただし、法廷で会話をすることはできません。また、同じ勾留について理由の開示を受けられるのは一度だけで、告げられる理由も定型的な表現にとどまることが多い点は、あらかじめ知っておいたほうがよいでしょう。
生活を止めないための手当て
本人名義の家賃や公共料金の引き落とし、勤務先への連絡、車やペットの扱いなど、日々の生活は待ってくれません。会えない期間が長引くほど、この部分の負担が重くなります。会えるようにする努力と並行して、生活を回す段取りを進めておくことをおすすめします。
解除されたあとに気をつけたいこと
面会には立会いと時間の制限があります
一部解除が認められても、ご家族の面会は弁護人の接見とは異なり、職員の立会いがあり、時間も限られます。おおむね平日の日中に限られ、一日に会える組数が決まっている施設もあります。会えるようになったからといって、事件の相談ができるわけではありません。
再び逮捕されると改めてつくことがあります
別の事実で再び逮捕・勾留された場合には、その事実について改めて接見禁止がつくことがあります。一度解除されたから終わり、とは限りません。一方で、いったん対象から外れた方については、その後も同じ扱いが続く例もあります。
見通しは幅でしか語れません
解除できるかどうかを決めるのは裁判官と裁判所であり、ご家族の熱意や弁護人の努力だけで結論が決まるものではありません。「必ず解除できます」と言い切る説明があれば、その根拠を確かめたほうがよいと思います。できるのは、判断の材料を早い段階で整えて示すことです。勾留が決まる前の意見書の段階から動けるかどうかで、選べる手が変わることもあります。当事務所では初回のご相談を無料でお受けしていますので、迷われている段階でお声がけいただいて構いません。
まとめ
- 接見禁止は勾留に上乗せされる処分で、面会だけでなく書類その他の物の授受も対象になる
- 性犯罪の事件では供述が中心的な証拠になりやすく、相手方や関係者への働きかけが強く警戒される
- 糧食や主文で除外された日用品の差し入れはできることが多く、弁護人は接見禁止の影響を受けない
- 解除に向けた手段は、一部解除の申立て、準抗告や抗告、そして起訴などの節目を待つことの三つ
- 会う人を絞り、面会の目的が事件と離れていることを具体的に示せるかどうかが材料になる
- 相手方や関係者への直接の連絡、本人の持ち物やデータの整理、SNSでの発信は解除を遠ざける


