結婚詐欺に遭ったかも|結婚詐欺の立証と損害賠償請求
交際相手から殴られる、物を壊される、「別れるなら画像をばらまく」と言われる——こうした交際関係の中の暴力は「デートDV」と呼ばれます。被害に遭った方からは「夫婦ではないから法律で守ってもらえないのでは」というご相談をよくいただきます。
結論から言えば、恋人同士でも保護命令を使える場合があります。ただし利用できるかどうかは、法律上「同棲していたかどうか」で大きく分かれます。ここを取り違えたまま準備を進めると、時間を失うことになりかねません。
この記事では、DV防止法(配偶者暴力防止法)の保護命令が交際相手に使える条件、命令の種類と手続きの実際、そして同棲していない場合に取れる別のルートを、男女どちらの立場からも整理して解説します。
この記事の要点
- 保護命令の対象になる交際相手は「生活の本拠を共にする(同棲している)交際相手」に限られる
- 同棲していた元交際相手も対象になり得るが、別れた後に初めて暴力を受けた場合は対象外
- 2024年4月の改正で、対象となる脅迫が「自由・名誉・財産」にも広がり、命令期間は1年に延びた
- 2025年12月30日施行の改正で、紛失防止タグを使った所在把握も禁止行為に加わった
- 同棲していない場合は、ストーカー規制法・刑事手続・民事の手段を組み合わせて対応する
※身の危険が差し迫っているときは、まず110番へ通報してください。緊急でない相談は警察相談専用電話#9110、DV相談ナビ#8008、DV相談+(0120-279-889/24時間)でも受け付けています。
デートDVは「痴話げんか」ではない
デートDVとは、交際相手との間で起きる暴力全般を指す言葉です。殴る・蹴るといった身体的なものに限らず、人格を否定する暴言や交友関係の制限といった精神的なもの、同意のない性的行為、お金を取り上げる・貢がせるといった経済的なものも含まれます。
被害者は女性に限りません。DV防止法は男女の別を問わず適用され、内閣府も男性被害者が保護等を受けられることを明記しています。同性カップル間の暴力について保護命令が出された例もあります。「男が被害を訴えても取り合ってもらえないのでは」「同性同士だから対象外では」と諦める必要はありません。
一方で、交際関係の中で起きる暴力は外から見えにくく、当事者自身も「自分にも非があったのかもしれない」と考えてしまいがちです。判断に迷う段階でも、記録を残しながら相談先を確保しておくことに意味があります。
保護命令とは何か
保護命令は、被害者の申立てにより、裁判所が加害者に対して接近などの一定の行為を禁じる命令です。警察が出すものではなく、地方裁判所の手続きである点が、ストーカー規制法の警告・禁止命令(こちらは警察・公安委員会が主体)との大きな違いです。
命令には次の6種類があります。
| 命令の種類 | 期間 |
|---|---|
| 被害者への接近禁止命令 | 1年 |
| 被害者への電話等禁止命令 | 1年(接近禁止命令の有効期間内) |
| 被害者と同居する子への接近禁止命令 | 同上 |
| 被害者と同居する子への電話等禁止命令 | 同上 |
| 被害者の親族等への接近禁止命令 | 同上 |
| 退去等命令 | 2か月(一定の場合は6か月) |
接近禁止命令は、被害者本人へのつきまといや、住居・勤務先など被害者が通常いる場所の付近をうろつくことを禁止するものです。
電話等禁止命令では、面会の要求、行動を監視していると告げること、著しく粗野・乱暴な言動、無言電話、緊急時以外の連続した電話・メール・SNS送信、深夜早朝(22時〜6時)の連絡、名誉を害する告知、性的羞恥心を害する物の送付、GPSによる位置情報の取得などが禁じられます。これは接近禁止命令と同時か、その後に発令されるもので、単独では使えません。
退去等命令は、一緒に住んでいる住居から相手を退去させ、その付近をうろつくことも禁じる命令です。期間は原則2か月ですが、住居の所有者または賃借人が被害者だけである場合は、申立てにより6か月とすることができます。
命令に違反すると2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が科されます。違反行為があったときは110番通報が想定されています。
交際相手に保護命令は使えるのか——分岐点は「同棲」
ここが本記事の中心です。DV防止法は本来「配偶者からの暴力」を対象とする法律ですが、2014年1月施行の改正により、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力にも準用されるようになりました。
保護命令の対象となる相手を整理すると、次のとおりです。
- 法律婚の配偶者
- 事実婚の相手方
- 生活の本拠を共にする交際相手(=同棲している恋人)
- 上記1〜3の「元」に当たる者(別れる前から引き続き暴力を受けている場合)
「生活の本拠を共にする」とはどこまでか
内閣府は、「生活の本拠を共にする交際」に当たるかどうかは共同生活の外形的・客観的な状況を原則として判断するとしています。住民票を移しているかどうかで機械的に決まるものではありません。
注意点が二つあります。
一つは、単なる同居では足りないとされている点です。条文上、婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいない者は除かれます。友人同士のルームシェアのような関係は想定されていません。
もう一つは、避難中でも対象から外れるとは限らない点です。生活の拠り所としている主な住居を共にしていれば、暴力から逃れるため一時的にホテルや実家に身を寄せていたり、一時保護を受けていたりする場合も含まれると考えられています。「家を出てしまったから、もう使えない」と早合点する必要はありません。
別れた後の暴力は対象になるか
同棲していた元交際相手に対する保護命令も認められています。ただし内閣府は、関係を解消する前には対象となる暴力を受けておらず、解消後に初めて暴力を受けた場合は認められないとしています。
つまり「同棲中から暴力があり、別れた後も続いている」ケースは対象になり得ますが、「同棲中は何もなかったのに、別れを切り出してから豹変した」ケースは、この制度の枠外になります。この場合はストーカー規制法など別のルートを検討することになります。
同棲していない交際相手は対象外
デートDVという言葉の対象は広いのですが、保護命令については、同棲していない恋人からの暴力は制度の対象外です。ここは正確にお伝えしておくべき点だと考えています。ただし、後述するとおり打つ手がなくなるわけではありません。
発令の要件——2024年4月改正で広がった部分
接近禁止命令等が出されるためには、次の2点が必要です。
- 相手からの身体に対する暴力、または生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知する脅迫を受けたこと
- さらなる暴力等により、生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいこと
2023年に成立し2024年4月1日から施行された改正で、この要件は次のように広がりました。
- 脅迫の対象に「自由・名誉・財産」が追加された(従来は生命・身体のみ)
- 危害のおそれの要件が「身体に」から「心身に」に拡大された
- 接近禁止命令等の期間が6か月から1年に延長された
- 同居する子への電話等禁止命令が新設された
- 違反の罰則が2年以下の拘禁刑・200万円以下の罰金に引き上げられた
内閣府は「自由・名誉・財産」に対する脅迫の例として、「言うことを聞くまで外に出さない」と告げる行為(自由)、「性的な画像をネットで拡散する」と告げる行為(名誉)、「キャッシュカードを取り上げる」と告げる行為(財産)を挙げています。交際関係で実際に起きやすい言動が正面から拾われた改正といえます。
ただし、拡大されたとはいえ土台は暴力または脅迫です。暴言や無視が中心で、暴力も害悪の告知も伴わない場合、この制度に乗せるのは容易ではありません。またインターネット上には改正前の説明のまま更新されていない記事も残っていますので、期間や要件は現行のものでご確認ください。
精神的な被害を理由とする場合は診断書が必要
「心身に重大な危害」の「心」の部分について、内閣府は、少なくとも通院加療を要する程度の危害であり、うつ病、PTSD、適応障害、不安障害、身体化障害などが考えられるとしています。そのうえで、申立ての際に診断書を添付することが必要になると明示しています。
気分が落ち込んでいるという状態にとどまり、通院加療を要すると認められない場合は、この要件を満たさないと考えられています。精神面の被害を主張して申し立てるのであれば、早い段階で医療機関にかかり、記録を残しておくことが実務上重要になります。
2025年12月30日施行の改正——紛失防止タグ
2025年12月に成立・公布された改正法が、同年12月30日から施行されています。内容は、接近禁止命令等の禁止行為に次の2つを追加するものです。
- 紛失防止タグの位置情報を取得する行為
- 紛失防止タグを取り付ける行為等
従来はGPS機器等の位置情報を無断取得する行為が対象でしたが、落とし物対策として市販されている小型タグが所在把握に使われる事案が増えたことへの対応です。内閣府の資料では、元交際相手の車両にタグを取り付けて位置情報を取得しつつつきまとった例などが挙げられています。
同種の規制はストーカー規制法側でも整備されています。心当たりがある場合は、鞄や車内、贈られた物の中を確認してみてください。
申立ての流れと、知っておきたい実務上の注意
提出先と費用
申立書は、①相手の住所地、②自分の住所または居所(一時保護先を含む)、③暴力や脅迫が行われた場所——のいずれかを管轄する地方裁判所に提出します。手数料は1,000円のほか、書類送達のための費用を予納します。
相談実績があると手続きが軽くなる
申立書には、配偶者暴力相談支援センターの職員や警察職員に相談した日時・場所・内容などを記載する欄があります。相談歴がない場合は、代わりに必要事項を記載した書面について公証人の認証を受ける必要があり、その手数料は1万1,000円です。
裏を返せば、迷っている段階でも一度公的窓口に相談しておくことが、後の手続きを進めやすくします。相談自体は匿名でも可能です。
相手にも言い分を聞く手続きがある
裁判所は、基本的には相手方から話を聞いたうえで保護命令を出します。つまり、申立てをすれば相手に知られることになります。ただし、相手の話を聞いていては目的を達せられない緊急の事情があり、要件の証明ができるときは、相手を呼ばずに発令されることもあります。相手が出頭しない場合も、機会を放棄したとみなして発令され得ます。
期間が足りないとき・取り消したいとき
1年では足りない場合は、再度の申立てが可能です。逆に被害者側が取消しを申し立てれば命令は取り消されます。相手側からの取消しの申立ては、接近禁止命令の効力発生から3か月経過後に、被害者に異議がないことを裁判所が確認したときに認められます。
なお、暴力を受けてから数か月経っていることが直ちに障害になるわけではありません。期間はあくまで「さらなる暴力のおそれ」を判断する材料の一つとされています。
同棲していない場合に取れる手段
保護命令が使えなくても、次のような手段があります。実際には複数を組み合わせることが多いです。
ストーカー規制法
つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、監視していると告げる行為、拒まれたにもかかわらず連続して電話やSNSを送る行為などが対象です。警察本部長等による警告、公安委員会による禁止命令という段階があり、禁止命令に違反すれば刑事罰の対象になります。2025年末の改正では、被害者の申出がなくても警察の職権で警告ができる仕組みが設けられました。
保護命令と違って裁判所の手続きではないため、同棲の有無を問わず利用できます。詳しい該当性や手続きの流れは、別のコラムで解説しています。
刑事手続
殴られてけがをすれば傷害罪、けがに至らなくても暴行罪に当たり得ます。「殺す」「家族に危害を加える」といった言葉は脅迫罪、義務のないことを強いれば強要罪、性的画像をネタに金銭を求めれば恐喝罪、同意のない性的行為は不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の問題になります。診断書や写真、やり取りの記録を保全したうえで、警察への相談・被害届・告訴を検討します。
民事の手段
弁護士名義での接触禁止の通知、接触禁止条項を入れた合意書の締結、面会強要禁止の仮処分、暴力による精神的苦痛についての慰謝料請求などが考えられます。交渉窓口を弁護士に一本化することで、直接やり取りせずに済む点も実務上の利点です。
相談する前にしておきたい準備
- 記録を残す:いつ・どこで・何をされたかを時系列でメモし、けがの写真、診断書、破損した物の写真、脅しのメッセージのスクリーンショットを保存する。元データは消さずに残す
- 医療機関を受診する:身体的な被害はもちろん、精神面の不調も受診記録が要件の立証に直結する
- 公的窓口に相談しておく:配偶者暴力相談支援センター、警察(#9110)、DV相談ナビ(#8008)、DV相談+(0120-279-889・24時間)
- 相手が握っている情報を棚卸しする:合鍵、位置情報の共有設定、SNSのログイン情報、勤務先や実家の所在
- 住民票の閲覧制限などの支援措置を検討する
よくあるご質問
Q. 同棲を始めたばかりでも対象になりますか。
期間の長さで一律に決まるものではなく、共同生活の客観的な状況から判断されます。家賃や生活費の負担、生活実態を示す資料が判断材料になり得ます。
Q. 男性が申し立てることはできますか。
できます。DV防止法は男女の別を問いません。
Q. 保護命令が出れば相手は逮捕されますか。
命令自体は加害者の行為を禁じるものです。命令に違反した場合に刑罰の対象となり、通報を受けて警察が対応することになります。
Q. 別れ話をする前に相談しても意味がありますか。
意味があります。別れ話の前後は状況が動きやすい時期です。相談歴を残しておくことは、後に手続きを進める際の助けにもなります。
まとめ
交際相手からの暴力について保護命令を使えるかどうかは、同棲していた(している)かどうかで分かれます。同棲していれば配偶者と同様に扱われ、接近禁止命令は1年間、退去等命令は原則2か月。同棲していなければ、ストーカー規制法・刑事手続・民事の手段を組み合わせて対応することになります。
いずれのルートを選ぶにせよ、出発点は同じです。記録を残し、公的窓口に相談歴をつくり、安全を確保したうえで手続きを選ぶ——この順序が結果を左右します。判断に迷う段階でご相談いただいて構いません。


