【不貞慰謝料】LINE・DMはどこまで証拠になるのか
この記事は2026年9月時点の法令に基づいています。2026年4月1日に施行された改正民法(令和6年法律第33号)により、財産分与の考慮要素や請求期間、認知した子の親権に関する規定が見直されており、その内容を反映しています。個別の事情によって結論は変わりますので、実際の対応はご相談ください。
婚姻届は出していない。ただ、10年一緒に暮らし、家計も一つで、周りからは夫婦として見られてきた。その関係を解消することになったとき、自分は何を求められるのか、逆に何を求めることができるのか。この見通しが立たないというご相談を受けることがあります。
内縁や事実婚をめぐる説明は、「法律婚とほぼ同じ」と書かれていたり、「届出がないので保護されない」と書かれていたりと、正反対のことが並んでいることがあります。どちらも一面では正しく、場面によって扱いが分かれるというのが実際のところです。
この記事では、内縁と認められるための考え方、法律上の夫婦と同じ扱いになる場面、扱いが変わる場面、住まいや生活費や財産の整理の仕方、そして内縁と認められない場合に残る手立てを、順に整理します。
内縁と認められるかどうかが、すべての出発点
まず押さえておきたいのは、内縁かどうかは届出の有無で決まるのではなく、実態で判断されるということです。
年金の実務では、事実婚関係にある者の認定について、次の2つを備えることが必要とされています。一つは、当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること。もう一つは、当事者間に、実際にそのような事実関係が存在すること。厚生労働省の通知で示されている考え方です。
言い換えると、夫婦になるつもりがあったかと、実際に夫婦としての生活があったかの2点です。この2つが揃っていれば内縁、片方でも欠けていれば単なる同居に近づく、という見方をします。
判断の材料になるもの
実際の場面では、次のような事実を積み上げて判断します。
| 材料 | 意味するもの |
|---|---|
| 住民票の続柄が「夫(未届)」「妻(未届)」 | 夫婦として届け出る意思の表れ |
| 同居の期間 | 関係の継続性 |
| 家計が一つになっているか | 生活の共同性 |
| 互いの親族との交流 | 周囲からの承認 |
| 挙式や披露宴の有無 | 夫婦になる意思の表明 |
| 健康保険の被扶養者になっているか | 公的な手続での取扱い |
| 職場や学校への届出、緊急連絡先 | 外部への表示 |
一つひとつが決め手になるわけではなく、全体として夫婦の共同生活といえるかを見ます。ですから、同棲と内縁の境目は程度の問題であり、どちらとも言い切れない事案は珍しくありません。
法律上の夫婦と同じように扱われる場面
内縁は、婚姻に準じる関係として保護されるという考え方が定着しています。同じ扱いになる主なものは次のとおりです。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 同居・協力・扶助の義務 | 夫婦と同様に認められる |
| 貞操義務と不貞への慰謝料 | 請求できる場合がある |
| 生活費の分担 | 婚姻費用に準じて求められる場合がある |
| 関係解消時の財産分与 | 離婚の規定を当てはめる扱いが認められている |
| 一方的な不当破棄 | 損害賠償の対象になり得る |
| 健康保険の被扶養者、国民年金第3号被保険者 | 要件を満たせば対象になる |
| 遺族年金 | 法律の定義に事実婚が含まれている |
| 賃借人が相続人なしに死亡した場合の借家の承継 | 同居者として承継できる |
このうち不貞の慰謝料については、婚約中・内縁関係でも不貞慰謝料を請求できるかで整理しています。
年金と健康保険については、法律の条文そのものに「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」という定めが置かれています(国民年金法5条7項、厚生年金保険法3条2項)。届出がないことを理由に一律に排除されるわけではありません。
借家については、居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、事実上夫婦と同様の関係にあった同居者が賃借人の権利義務を承継すると定められています(借地借家法36条1項)。ただし、相続人がいる場合には、この規定は働きません。
一方的に関係を打ち切られた場合
内縁を一方的に解消された側が、損害賠償を求められる場合があります。婚姻に準じる関係である以上、正当な理由なく打ち切れば責任を問われ得る、という考え方です。
もっとも、関係を続けるかどうかは本来自由であるという前提は変わりません。ですから、別れたこと自体が直ちに賠償につながるわけではなく、打ち切りに至った経緯や、相手方が置かれた状況を含めて評価されます。長年にわたって家事に専念してきた側が突然放り出されたような場合と、双方が納得して別々の生活に移る場合とでは、扱いが変わってきます。
扱いが変わる場面
逆に、届出の有無が決定的に効いてくる場面があります。
相続権がない
最大の違いはここです。どれだけ長く生活を共にしていても、内縁の相手に法定相続人としての権利はありません。配偶者居住権も、法律上の配偶者を対象とする制度ですので取得できません。
しかも、この点は財産分与とつながっています。最高裁は、死亡によって内縁が解消した場合には、離婚に伴う財産分与の規定を類推適用することはできないと判断しました(最高裁平成12年3月10日決定)。同じ決定の中で、離別による内縁解消の場合に財産分与の規定を類推適用することは準婚的法律関係の保護に適するものとして合理性を承認し得る、とも述べています。
つまり、生きているうちに別れれば財産分与を求められるが、死別ではそれも相続も及ばないという、結論の分かれ方になります。この差を知らずにいると、備えの機会を逃すことになります。
税制の扱い
所得税の配偶者控除や配偶者特別控除は、民法上の配偶者を対象とする制度ですので、事実婚では適用されません。社会保険では同じ扱いを受けられる一方、税制では扱いが分かれる、という理解になります。
子どもの扱い
婚姻していない父母の間に生まれた子については、父が認知しなければ法律上の父子関係が生じません。親権についても、従来は母が行い、父母の協議で父を親権者と定めたときに限って父が行うという仕組みでした。
この点は2026年4月1日施行の改正で変わりました。認知した子に対する親権は母が行うことを原則としつつ、父母の協議で、父母の双方または父を親権者と定めることができるようになっています(民法819条4項)。父母の双方を親権者とする選択肢が加わった、ということです。
日常の手続で立ち止まる場面
条文の話とは別に、生活の場面での違いもあります。医療機関での手術の同意、危篤時の面会、住宅ローンや保険の受取人の指定など、配偶者であることを前提に運用されている手続は少なくありません。取扱いは機関ごとに異なりますが、届出がないことで説明を求められる場面は残ります。
解消のときには、こうした手続に相手の名前を残していないかを確認してください。保険の受取人、緊急連絡先、賃貸契約の連帯保証人などは、放置すると後々の連絡につながります。
住まい・生活費・財産をどう整理するか
実際の解消の場面では、次の3つを順に決めていくことになります。
住まい
どちらの名義かによって進め方が変わります。賃貸であれば契約者が誰か、持ち家であれば登記の名義が誰かを、まず確認してください。名義人でない側が住み続けたい場合は、賃貸人の承諾や名義の変更が必要になります。
退去に伴う敷金や原状回復の負担については、同棲解消の敷金・原状回復・退去費用は誰が払う?で整理しています。
生活費
関係が続いている間の生活費は、婚姻費用の分担に準じて求められる場合があります。別居してから解消が確定するまでの期間について、支払いを求めるかどうかは検討の対象になります。
解消した後については、原則として支払義務は残りません。ただし、一方が生活に困窮する事情がある場合には、財産分与の中で扶養的な要素として考慮される余地があります。
共有財産
ここでも、2026年4月1日施行の改正が関係します。改正後の民法768条3項は、財産分与を定める際の考慮要素を条文に明記し、あわせて財産の取得や維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは相等しいものとすると定めました。いわゆる2分の1の考え方が条文になったということです。
また、離婚後に財産分与を請求できる期間が、2年から5年に伸長されました(同条2項ただし書)。内縁の場合はこの規定を当てはめて考えることになりますが、「いつ解消したか」の起算点が争いになりやすい点には注意が必要です。別居した日、荷物を運び出した日、住民票を移した日のどれを取るかで結論が動きます。
実務としては、解消の意思を伝えた日付が残る形にしておくこと、住民票の続柄の記載を変更した日を控えておくことが、後の主張を支えます。
内縁と認められない場合に残る手立て
交際期間が短い、家計が別だった、周囲に関係を明かしていなかった。こうした事情から内縁と認められにくい場合もあります。その場合でも、手立てがなくなるわけではありません。
共有物については、いつでも分割を請求でき、協議が調わないときや協議をすることができないときは裁判所に分割を請求できます(民法256条1項、258条1項)。金額が小さい場合に裁判所の手続まで進めることは現実的でないことも多いのですが、根拠があること自体が交渉の支えになります。
- 二人で出し合って買った物について、共有物の分割を求める。
- 一方が立て替えた費用について、その返還を求める。
- 婚約が成立していたといえる場合には、不当な破棄として損害賠償を求める。
- 既婚であることを隠されていた場合など、事情によっては別の請求を検討する。
なお、内縁と認められるかどうかは、不貞の相手方への慰謝料請求の場面でも正面から問題になります。実際の事案の進み方は、【解決事例】事実婚パートナーの不貞相手への慰謝料請求でご覧いただけます。
解消するときにやっておくこと
最後に、順序を整理します。
- 内縁といえる事実を裏づける材料を集める(住民票、健康保険証、写真、親族とのやりとり)。
- 解消の意思を伝えた日付が残る形で連絡する。
- 住まいの名義と、今後どちらが住むかを決める。
- 共有と考えられる財産を一覧にし、取得の経緯と負担割合を書き出す。
- 子どもがいる場合は、認知の有無、親権、養育費を分けて検討する。
1番目を先に置いたのは、関係が終わった後では集めにくくなるからです。共通の知人との関係が疎遠になり、写真も見返しづらくなります。解消を切り出す前の段階で手元にまとめておくと、後の負担が違います。
婚姻届を出さないという選択には、それぞれの事情があったはずです。ただ、その選択が解消の場面でどう効いてくるかは、あらかじめ説明を受けていないと分からない部分が多い領域でもあります。ご自身の関係がどちらに寄っているのか、何を求められて何を求められるのかを、早い段階で一度整理しておくことをおすすめします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


