【不貞慰謝料】不貞相手が妊娠した場合に生じる問題
この記事は、2026年10月時点の民法、刑法、犯罪による収益の移転防止に関する法律(2026年7月10日施行の改正を反映)をもとに、一般的な考え方を整理したものです。個別の事情によって結論は変わりますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
マッチングアプリで知り合い、一度か二度会っただけの相手から「実は困っていて」とお金の相談をされた。こうした場面を経たご相談は、当事務所にも寄せられます。貸すかどうか迷っている段階の方もいれば、渡した後に連絡が途絶えた方、反対に「借りただけなのに詐欺だと言われている」という方もいます。
相手の事情が本当であれば、納得したうえでお金を貸すこと自体は自由です。ネット上の注意喚起では、よくある頼み方の例が数多く紹介されており、それ自体は参考になります。ただ、実際に貸すかどうかを決める場面で必要になるのは、手口に当てはまるかどうかよりも、「後で困ったときに取り戻す道筋が残っているか」という視点です。
この記事では、お金を渡す前の段階に絞り、確認しておきたい点と、貸すと決めた場合の記録の残し方を整理します。すでに渡してしまった後の回収や、詐欺被害の回復については、それぞれ別の記事に譲ります。
会って間もない相手からの相談が難しい理由
相手について分かっていることが少ない
アプリのプロフィールに書かれた名前・年齢・職業は、本人の申告です。年齢確認や本人確認の仕組みを設けているアプリでも、運営会社が確認した情報が利用者どうしに開示されるわけではありません。会った回数が少ないうちは、相手の本名や住所、勤務先を確かめる機会もほとんどありません。プロフィールの記載が事実と違っていた場合の法的な評価については、【男女トラブル・マッチングアプリ】プロフィールの嘘はどこから違法になるか|年収・職業・独身の詐称で詳しく扱っています。
取り戻す手続は「相手が誰か」から始まる
貸したお金の返還を求める手段には、交渉、内容証明郵便、支払督促、訴訟などがありますが、いずれも相手の氏名と住所が分かっていることが前提になります。貸す前の段階で確認できることのうち、後の対応にもっとも影響するのは、金額よりも「相手を特定できる情報を持っているか」です。LINEのアカウントと呼び名しか分からない状態で渡したお金は、返してもらえなかったときに、まず相手を探すところから始めることになります。
頼まれ方を整理する|「貸して」の中身は一つではない
一口に「お金の相談」といっても、頼まれている内容によって、法的な性質も、確認すべき点も変わります。
| 頼まれ方 | 法的な性質の目安 | 貸す前に確認したいこと |
|---|---|---|
| 「今月だけ貸してほしい」 | 金銭の消費貸借(返す約束のある貸し借り) | 相手の本名・住所、返す時期と方法、書面に残せるか |
| 「代わりに払ってほしい」 | 立替払い(実質は貸し借り) | 支払先がどこか、請求書など支払の根拠を見せてもらえるか |
| 「一緒に投資しよう」 | 出資・投資の勧誘(貸し借りとは別の話) | 運用先の実態、業者の登録の有無、利益の約束が具体的すぎないか |
| 「口座を使わせてほしい」 | 名義・口座の提供(お金を貸す話ではない) | 応じること自体が法律に触れるおそれがないか |
お金そのものを貸す・立て替える場合
返す約束をしてお金を渡すと、民法上は「金銭消費貸借」という契約になります(民法587条)。借用書がなくても、返す約束とお金の受け渡しがあれば契約自体は成立しますが、後で「もらったものだ」と言われたときに、それを覆す材料が手元に残りにくくなります。立替払いも、相手が後で返す約束をしている以上、実質は同じ構造です。
投資や副業の話に変わる場合
「お金を貸して」ではなく「一緒に資産を増やそう」と持ちかけられる場面もあります。こうした話は貸し借りとは別の問題で、各地の消費生活センターも、アプリで知り合った相手からの投資や副業の勧誘について注意を呼びかけています。運用先とされる業者の実態がつかめないまま送金した場合の被害回復の難しさは、国際ロマンス詐欺で送金してしまった|被害回復の可能性と限界で整理しています。
お金ではなく、名義や口座を求められる場合
「自分の口座が止まっているから、あなたの口座で受け取ってほしい」「受け取ったお金を指定の口座に送ってほしい」といった頼まれ方は、お金を貸す話ではありません。通帳やキャッシュカードを他人に渡すことは犯罪による収益の移転防止に関する法律で禁じられており、2026年7月10日に施行された改正では、その罰則が引き上げられたうえ、報酬を受け取って他人のために送金を引き受ける、いわゆる送金バイトやその依頼などにも罰則が設けられました。自分名義で契約した携帯電話を相手に渡すことも、別の法律で制限されています。この種の依頼は、相手を信じるかどうか以前に、応じること自体が自分の責任につながりかねない点に注意が必要です。改正の内容は出し子・送金バイトをしてしまった|2026年改正で何が変わったのかで解説しています。
貸す前に確認したい5つの点
お金を貸すかどうかを決める前に、次の点を確認しておくと、後で問題が起きたときの選択肢が変わります。
- 相手の本名と住所を、本人の申告以外の方法で確かめられるか。
- 渡すお金が「貸す」のか「あげる」のかを、お互いの言葉で確認したか。
- 返す時期と返し方が決まっているか。
- 送金先が相手本人の名義の口座か。
- このやり取りを、家族や友人に話せる内容か。
本名と住所を確かめる
身分証を見せてもらうのが確実ですが、会って間もない相手には求めにくいのも実情です。ただ、相手からお金の相談を持ちかけられた場面であれば、「貸すなら借用書を書いてほしい」と伝えるのは不自然なことではありません。借用書への署名や住所の記載を嫌がる、身分証を見せることを強く拒む、といった反応があれば、それ自体が判断材料になります。
「貸す」のか「あげる」のか
交際の初期には、この点をはっきりさせないまま渡してしまうことが少なくありません。後で返還を求めたときに「援助してくれたと思っていた」と言われると、貸したことを示す責任は、返してほしいと求める側が負うのが通常です。また、贈与であれば、書面によらないものでも、すでに渡し終えた部分は後から取り消せません(民法550条)。渡す時点で「貸す」と言葉にしておくことが、後の争いを避けるもっとも簡単な方法です。貸し借りと贈与の分かれ目は、別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで詳しく扱っています。
返す時期・送金先・人に話せるか
返す時期を決めずに貸した場合でも、相当の期間を定めて返すよう求めることはできます(民法591条1項)。しかし、時期が曖昧なままでは、いつ催促すればよいのか、どの時点で返済が滞ったといえるのかがはっきりしません。
送金先として相手以外の名義の口座を指定された場合は、その理由を確認する必要があります。「急いでいる」「誰にも言わないでほしい」と念を押されるときは、一度持ち帰り、信頼できる第三者に話してみることをおすすめします。人に話せない形でお金を動かすことは、それだけで後の確認を難しくします。
それでも貸すと決めたときの残し方
借用書に書いておきたい内容
借用書は、貸し借りがあったことを後から示すための書面です。書式に決まりはありませんが、次の内容を入れておくと、後で役に立ちます。
- 作成した日付と、お金を渡した日付。
- 貸した金額と、渡した方法(振込か現金か)。
- 返す期限と、分割にする場合は各回の金額と期日。
- 借りた人の氏名・住所・連絡先と、本人の署名。
- 利息を付けるかどうか(付けない場合はその旨)。
なお、利息は特約がなければ請求できません(民法589条1項)。
渡し方とやり取りの保存
現金の手渡しよりも、相手本人の名義の口座への振込のほうが、受け渡しの事実と相手の名義が記録に残ります。振込の明細は、借用書と並ぶ大切な記録です。あわせて、お金の相談が始まったときのメッセージや、金額・返す時期についてのやり取りは、スクリーンショットなどで保存しておきます。アプリを退会したり、相手がアカウントを削除したりすると、やり取りが見られなくなることがあるため、保存は早めが安心です。保存の順序については【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序をご覧ください。
返してもらう権利には期限がある
貸したお金の返還を求める権利は、返してもらえる時期が来たことを知った時から5年で時効にかかるのが原則です(民法166条1項1号)。関係が気まずくなって催促をためらううちに時間が過ぎることもあるため、返す期限は書面に残しておくことが大切です。
断るときに押さえておきたいこと
その場で返事をしない
お金の相談は、会っている最中や深夜のメッセージなど、すぐに答えを求められる形で持ちかけられることがあります。返事を急がされたときは、「考えさせてほしい」と伝えて持ち帰るだけで構いません。断る理由を詳しく説明する必要もありません。即答しないことは失礼ではなく、相手の事情を確かめるための時間を確保することです。
断った後に態度が変わったとき
断ったとたんに強い言葉が続く、繰り返し連絡が来る、といった場合は、やり取りを保存したうえで、アプリの運営会社に通報することが考えられます。利用規約で金銭の要求や外部サービスへの誘導を禁止しているアプリもあります。脅すような内容が含まれる場合や、身の危険を感じる場合は、警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署への相談も選択肢になります。
すでに渡してしまった場合
この記事は貸す前の段階を扱っていますが、すでに渡してしまっている場合も、記録を集めて整理することから始める点は変わりません。借用書がない場合の回収の考え方は恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?で、投資名目の送金については先に挙げた国際ロマンス詐欺の記事で扱っています。被害の回復をうたって高額な費用を求める相談先もあるため、依頼先を選ぶ際にはロマンス詐欺の「二次被害」に注意|高額着手金を謳う相談先の見分け方も参考にしてください。
よくあるご質問
数万円程度の少額でも、借用書は作ったほうがよいですか。
金額が小さいと書面を求めにくいものですが、少額の貸し借りが何度も重なり、気づけば大きな額になっていたというご相談は少なくありません。書面が難しくても、メッセージで「○日に○円を貸す」「○日までに返す」と確認しておくだけで、後の記録になります。
返してもらえなかったら、詐欺として警察に相談できますか。
詐欺罪(刑法246条1項)が成立するかどうかは、お金を受け取った時点で、相手に返すつもりがあったかどうかが大きな分かれ目になります。借りた後に事情が変わって返せなくなっただけであれば、民事上の貸し借りの問題として扱われるのが通常です。警察への相談は可能ですが、お金を返してもらうこと自体は、民事の手続で求める場面が多いといえます。
アプリの運営会社に、相手の本名を教えてもらえますか。
運営会社は、利用者の個人情報を本人の同意なく他の利用者に伝えることには慎重で、問い合わせただけで開示されることは通常ありません。弁護士会照会や裁判所の手続を通じて情報の提供を求める方法もありますが、応じるかどうかは運営会社の判断や手続の内容によります。貸す前に相手の情報を確かめておくことが大切なのは、このためです。
まとめ
- 返す約束をしてお金を渡すと金銭消費貸借となり、借用書がなくても契約は成立するが、貸したことを示す材料は残しておく必要がある(民法587条)。
- 返還を求める手続は、相手の氏名と住所が分かっていることが前提になる。
- 「貸す」のか「あげる」のかを曖昧にしたまま渡すと、後で贈与と主張されたときに反論しにくい(民法550条)。
- 返す時期を決めなかった場合も相当の期間を定めて催告できるが、時期は最初に決めておくほうがよい(民法591条1項)。
- 口座や名義、携帯電話を使わせてほしいという依頼は貸し借りではなく、応じること自体が法律に触れるおそれがある(犯罪による収益の移転防止に関する法律)。
- 貸すと決めたときは、借用書、本人名義の口座への振込、やり取りの保存をそろえておく。
- 返す権利は原則として5年で時効にかかるため、返す期限は書面に残しておく(民法166条1項1号)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。マッチングアプリで知り合った相手との金銭の貸し借りについても、貸すかどうか迷っている段階から、返してもらえずに困っている段階まで、状況に応じてご相談いただけます。
お金を貸した側の方も、借りたことで返還を求められたり「詐欺だ」と言われたりしている側の方も、一人で判断する前にご相談ください。


