コラム
あれから3年…
2023年7月19日
紙とペンさえあれば作成できる「自筆証書遺言」。
手軽に書ける、費用負担がほとんどない、誰にも知られずに作成できるなどという観点から、自筆証書遺言を作成している人もいるかと思います。
ただし、自筆証書遺言には大きなデメリットが二つあります。
一つ目は、遺言作成者が亡くなった時に家庭裁判所で検認という手続きをしなければならないことです。
検認手続きとは、自筆証書遺言等の偽造や変造、紛失、盗難などを防ぐ目的でスキャナーでコピーを取るような手続きのことです。
金融機関や法務局では、検認をしていない自筆証書遺言等は手続きに使用することができないため、必ず必要となる手続きとなります。
※ 自筆証書遺言を発見した場合には、絶対に開封してはいけません!開封せずに家庭裁判所に持っていきましょう。検認手続きの前に開封してしまうと、5万円以下の過料が課せられる可能性があります。
二つ目は、表記がおかしければ使えない遺言になってしまうということです。
これまでの相談において使えなかった遺言の例として「任せる」という表記が挙げられます。
「任せる」とは財産をあげる意思で言っているのかを判断することが出来ないからです。
明確に「相続させる」などといった表記が必要だということです。
そんな自筆証書遺言のデメリットのうち、一つ目の検認手続きが不要になる自筆証書遺言保管制度なるものが令和2年7月10日から始まりました。
これは自分で作成した遺言を法務局に預け、自身が亡くなった後に相続人がそれを受け取ることで検認手続きをせずに名義変更手続きが進められる制度のことです。
この制度は数千円で利用できるため、数万〜数十万円の費用がかかる公正証書遺言と比較すると、手軽に手続きできるものだと思われます。
が、実際には令和4年1〜12月の自筆証書遺言保管制度の利用件数は16,802件(法務局の統計より)に対して、公正証書遺言の作成件数は111,977件(日本公証人連合会の統計より)でした。
手軽に手続き出来て、検認手続きも不要となる自筆証書遺言保管制度はなぜ少ないのか?
おそらく、自筆証書遺言の二つ目のデメリットである表記がおかしければ使えない遺言になってしまうことを心配しているのではないかと考えられます。
自筆証書保管制度を利用した場合では、表記の適正については確認することなく、形式不備がないかを確認するだけであるようです。
その反面、公正証書遺言では公証人(裁判官や検察官など法に長けた人が任命される)が遺言者の思いを文章にしてくれるため表記がおかしくなることはありません。作成者の認知機能等によっては使えないということもあるようですが、稀なケースです。
制度が始まってから3年が経ちましたが、これからも公正証書遺言の優位性は続くと思われます。
自分の思いを確実に伝えるには、遺言は公正証書で作る方が良いでしょう。
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