マナーうんちく話2297《田の神様のおもてなし係、聖なる女性「早乙女」と「田植え文化」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

6月6日は二十四節気の一つ「芒種」で田植えが忙しくなる時期ですが、南北に細長い日本では田植えの時期は、地域により多少のずれがあります。
気候や自然環境等により異なるということです。

最近、食育の一環として幼稚園児や小学生が、田んぼに入って田植えをするシーンがテレビで紹介されることが多くなりましたが、このような行事は大歓迎で、米を主食にしている日本人であれば、生涯に一度は田植えを経験していただきたいものです。

●山の神、田の神という日本古来の信仰
日本には、春になると「山の神」が人里に降りてきて「田の神」になって、田植えから収穫までを見守り、秋になって収穫を見届けると山に帰って山の神になるという信仰があります。

つまり一つの神に「山の神」と「田の神」という二つの霊格があるということですが、稲の生長具合により田の神と山の神になられるわけです。
またこの神は祖霊(先祖霊)とも結びついているともいわれています。

ちなみに春に「花見」をするのは村人が山の神を迎えに行って、その依り代となる桜を囲んで飲食を共にし(神人供食文化)、より山の神と仲良くなって、豊作を祈願するためだという説があります。

●「さ」は田の神様の意味
昔は田植えを行うのは「早乙女」の役割です。

今でも「田の神様」に、今年の豊作を祈願する「田植え」の神事が執り行われるところがあります。

赤い帯を締め、花笠を被った早乙女が田植えを行い、男性は笛や太鼓でそれを盛り上げている姿が、夏の風物詩としてマスメディアで紹介されますね。

以前「さくら」の「さ」は「田の神様」で、「くら」は「鎮座されるところ」と紹介しましたが、「さおとめ」の「さ」も同じ意味で田の神様を表します。

苗代で稲の苗を育てて、それを田んぼに植え替える田植えのスタイルが、日本の稲作文化の基盤になっており、その稲作文化で栄えた日本には田の神の信仰が根付いていたわけですね。

稲=命の根という考えも頷けます。

そして昔の「田んぼ」は単なる農地ではありません。
田の神をお迎えする神聖な場所です。
神社でも鳥居をくぐったらそこからは神聖な場所になりますが、これと同じ理屈ですね。

そこで早乙女が田の神の依り代となる早苗を丁寧に植えていくわけです。

●聖なる女性「早乙女」
ではなぜ田植えは女性がするのでしょうか。
「早乙女」となって、田の神様のおもてなしをする役目を担うからだといわれています。

今でも神社に参拝するときには先ず「手水舎」で身も心も清めますが、田の神様をおもてなしするとなれば、身を清めなくてはいけません。

家に籠って慎み深い生活をする必要があるわけですが、家の屋根に菖蒲を置いて清めたという説もあるようです。

端午の節句に蓬や菖蒲で邪気を払いますが、それと関連があるのでしょう。

●田植えは村にとって大変大切な行事
旧暦5月は「皐月」とか「早苗月」とよびますが、まさにこの月が田植えをする月であり、早乙女が田の神様をおもてなしして、一年の豊作を祈願する大事な月でもあったわけですね。

いまでこそ田植えも機械化されており、個々に田植えをする農家も多いようですが、昔は多くの地域で、一年の中でも最も大事な行事ととらえ、村中が一致協力して一斉に行ったわけで、絆を深める月でもあったのだと思います。

さらに秋になって収穫が済むと、収穫に感謝する目的で村を上げて「秋祭り」を行い、ここでも絆を深めるわけですね。

以上のように稲作文化で栄えた日本の田植えには、多くの由来が込められています。

田植えは単なる労働でなく、田の神様をお迎えし、向こう一年の豊作を祈願する大変重要な行事でもあるわけです。

経済的側面からのみでなく、文化としても関心を深めたいものですね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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