マナーうんちく話342≪マナー美人⑨「旅館のマナー」≫
●それでも「しきたり」は令和の日本に必要なの?
この質問に対する答えはズバリ「イエス!」です。
「しきたり」は家族や地域のきずなを維持し、深める、目に見えないインフラであり、しきたりが存在することで、人は人として生きられるわけです。
戦後、物の豊かさを追い求め続けてきたおかげで日本は世界の経済大国になることができました。
でもそれだけではハッピーな暮らしはできません。
子どもが生まれればみんなで祝い、正月を寿ぎ、盆には先祖を弔い、豊作に感謝し、子孫繁栄を祈願し、四季折々の豊かさを謳歌し、そのような営みがあるからこそ人間は精神的な満足を覚えるわけです。
また時として「しきたり」はAI万能の時代に、大きな心のよりどころになります。
二十四節気や七十二候を生活に上手に取り込むことにより、心豊かな暮らしができるでしょう。盆や正月やお彼岸行事に前向きに向き合うことで、家族のきずなが深まります。
身内が亡くなって喪に服すことで、悲しみにしっかり向き合うことができます。
このように「しきたり」の及ぼす効能は計り知れません。
●ではどうすればいいの
先ずは今一度日本の美しい「しきたり」に関心を持っていただきたいものです。
そしてその意味や由来や意義を正しく理解することが大事です。
例えば宴席で隣の人にお酌をするか否か。
お酌を頭ごなしにセクハラ、パワハラと決めつけ否定するのではなく、本来の意味を正しく理解すれば、した方が良いのか、しなくていいのか判断できます。
そもそも「酌をする行為」は、相手の幸せを願う行為であり、相手に対する敬意や感謝や親密さを表現する、日本独特の振る舞いであり、人間関係を円滑にするための知恵ということが理解できれば、気持ちよく宴会を楽しむことができます。
年賀状や暑中見舞い、お中元やお歳暮も似たような意味です。
いずれにせよ「なぜそうするのか?」という、本来の意味を正しく理解し、それを自分の価値観に照らし合わせ、家庭や地域や職場、趣味の会などで再編集すればいいでしょう。
また「しきたり」はマナーと同じように不易流行的な側面を有します。
いくら時代が変化しても「守り続けなくてはならないしきたり」がある反面、今の仕事や生活の実態に合っていなくて「本来の目的からはずれているしきたり」や「安全面やコンプライアンスの面で支障があるようなしきたり」は一度見直してみることが大事です。
「守るしきたり」と「見直すしきたり」を分けて考えることが大事だということです。
加えて、地域のしきたりを古めかしい慣習とか、虚礼として切り離すことなく、地域活性化の軸にしていく発想も必要でしょう。
●最後に
20年近く年中行事やしきたり、礼節に関する講話や講演を、各地で行って痛感することは、今の大人は、あまりにも理解していないということです。
祭りの意味や意義、箸の持ち方、熨斗の意味、正月と盆と彼岸の違い、挨拶の仕方、節分の豆まきの意味などなど、挙げればきりがありません。
学校で学んでいないわけですから無理もありません。
ただこれでは次世代に伝えることは不可能です。
また戦後仁義なき商業主義が蔓延したことも確かです。
クリスマス、バレンタインデー、ハロウィンといった行事は大きく売り上げに貢献するので、例え他国の文化であっても儲けにつながるので、熾烈な戦略が展開され、それに伴い、日本の伝統文化の多くが影をひそめる結果になっています。
このような国が本当に幸せになれるでしょうか?
物質的にも大変豊かで、平和で、四季が美しく、長寿でありながら、幸福度ランキングは毎年世界で、50位台から60位台を推移している理由が理解できる気がします。
繰り返しになりますが、「しきたり」は一言でいえば、神様に感謝するとともに祈願することです。
健康長寿を喜び、幸せを祈るものです。
だからこそ、長い人生をよりよく生きるヒントが満載されているわけです。
利便性や合理性の追求に重きが置かれる今だからこそ、代々受け継がれてきた日本人の心に、もう一度関心を寄せて、改めて日本のすばらしさを評価したいものです。


