マナーうんちく話553≪「和の作法」と「一回一動作」のお勧め≫
マナーは心と形が大切ですが、「なぜこうなるの?」という合理的な理由が必ず存在します。
その理由を正しく理解したうえで、臨機応変に対応するのがいいでしょう。
ところで食事の時に、料理を口に運ぶ途中で、汁やタレがこぼれて服が汚れたらいけないので、服に落ちないように手で受けて食べる人を多く見かけます。
これを「手盆」もしくは「手皿」といいますが、お勧めできません。
理由はこうです。
日本人は昔から食べ物は命を繋ぐ大変神聖なものだととらえています。
勿論今でもそうだと思いますが・・・。
だから神聖な食べ物を頂く手は常に清浄に保たれなくてはいけません。
あまり知られてないと思いますが、和食の際、テーブルナプキンではなく「お絞り」が用意される理由はそのためです。
食事の前にお絞りで手を清め、穢れや汚れを取り除いて綺麗にするわけです。
お宮参りの時にも「手水舎(てみずしゃ、ちょうずや、ちょうずしゃ)」と呼ばれる施設で、身を清め、すがすがしい気持ちで参拝するのと同じ理屈ですね。
折角清めた手を手盆にして、手を汚してしまっては元も子もありません。
従って手で受けるより、器を持って食べたほうがいいということになります。
器を手で持って食べるのは和食のマナーの特徴です。
ただし天ぷらや焼き魚が盛られている大きな器で、手で直接持てない場合は、懐紙を使用すればいいでしょう。
懐紙の使い方はすでに何度も触れましたが、いつもバッグの中に忍ばせておけば何かと便利です。
最後に会食をするということは、互いに理解しあい、仲良くなるためですから、食事が伴えば心を開いた会話もできます。
しかし和食は会食の中でも厳格なマナーや豊かな精神文化があり、かなりハードルが高いと思います。
だから手盆はマナー違反と理解していても、周囲の人が手盆で食すことは多々あります。
自分自身が「なぜ手盆はいけないのか」、その理由を理解しておけば、柔軟に周囲に合わすこともできるでしょう。