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コラム
格闘技の真実―あの試合、モハメド・アリの心情―Ⅰ
2018年3月17日
以前、テレビで1976年6月26日行なわれたアントニオ猪木対モハメド・アリの「格闘技世界一決定戦」の再現放送を見たことがあります。
試合の調印に至る経過、その後の両者の駆け引き、お互いの陣営の舞台裏や二人の心情、等等、様々な角度から取り上げていました。
その中で私が「あっ!」と思ったのは、モハメド・アリが、試合前「え、エキシビションマッチじゃないのかよ!」と驚いている場面だったのです。
当初、アリは軽いショーのようなイベントと捉えていたらしいのです。
ところが、猪木側がこの試合に半端じゃなく本気でかかっている、と知ってかなり戸惑ったのではないか、と思ったのです。
「本気で戦え・・・と言われても・・」
と、アリは思ったのかも知れません。
ボクシングヘビー級の世界王者というのは、昔も今も格闘技界の頂点だろうと思います。
ほかのいろいろな格闘技があったとしても、ボクシングの世界チャンピオンは別格、と彼らは思っているのではないでしょうか。
特にヘビー級はさらにその頂点ということにまります。
背負っている歴史への責任や強烈なプライド持っていても不思議な話ではありません。
今ほど、いろいろな格闘技が百花繚乱だったわけでもない当時、ほかの世界からのボクシングチャンピオンへの挑戦を、一種のショーくらいに受け止めても仕方なかったのではないでしょうか。
そしてとうとう試合当日はやってきました。
ここで私がよくわからないのは、アリが4オンスという極めて薄いグローブをつけたことです。
こんな薄いグローブでヘビー級ボクサーがまともに殴ったら相手は命を失いかねません。
アリは、迷った末
「いくら自分が本気になれないからと言って、無様な負け方をするわけにはいかない。
勝利を確実なものにするには4オンスのグローブで行くか。」
と、考えたのではないでしょうか。
しかし一方で
「この試合、相手を叩きのめしたところで自分にとって何のプライドも満足させることにならない。
自分はボクシングヘビー級の世界チャンピオンという頂点を極めている。
この試合に勝ったとしてもそれ以上のステイタスが手に入るわけではない。
何で、これがお遊びのショーじゃなかったんだ、まったく!」
と、悔やんだのではないのかと推測したのです。
つづく
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