コラム
認知症
2017年9月25日 公開 / 2020年11月9日更新
当院は昭和45年より広島市中区舟入(ふないり)で開業しております。したがって当院に46年間も通院されている患者さんがいらっしゃいます。中には100歳を超えてお元気な方もいらっしゃいますが年とともに我々は老いるものです。そのなかで「物忘れ」を訴える患者さんは数多くいらっしゃいます。しかし、意外と思われるかもしれませんが認知症の60%を占めるアルツハイマー病の患者さんの最初の訴えとして物忘れは少なく、頭痛やふらつきやめまいなどの訴えで受診されることが多いのです。なぜなら、初期アルツハイマー病の患者さんは物忘れを自覚しないのが特徴だからです。したがってアルツハイマー病の患者さんが物忘れで受診されるときは必ずといっていいほどご家族がつきそいで受診されます。ご家族が患者さんの物忘れに気づいてご心配されて受診されます。では年齢とともに増える気になる物忘れってなんでしょうか。もっとも多いのが「人の顔と名前が一致しない」とか「車の名前がでてこない」とか「あれ、それ」とかいったように言葉の名前がでてこないのです。これは意味記憶(いみきおく)といって加齢とともに低下するやむ得ないものです。トランプのゲームで神経衰弱というのがありますよね。お子さん(お孫さん?)と勝負したらやたらと子供の方が覚えてたということないですか。意味記憶のように単純な丸暗記的な記憶って年とともに衰えるのです。一方、「昨日は○○に行って××を食べて、その帰りに△△をした。」といった記憶って年をとっても衰えないのです。後者の記憶はエピソード記憶といってアルツハイマー病の初期に衰えていきます。
ですので、単純な物忘れはまだアルツハイマー病ではないのでご心配なく。
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