減った玄関庇と増えたオーバーハング④~出隅柱がないと2階に掛かる力はどこへ

鈴木敏広

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テーマ:住宅の変化

コラム「熊本地震で分かったこと⑪」に住宅の設計時に柱に掛かる力の計算式を書きました。以下の式です。

平屋の柱もしくは二階の柱
N=A1×B1-L
二階建て部分の一階の柱
N=A1×B1+A2×B2-L
A1、A2(1と2は階数)は計算する柱の両側の壁の壁倍率の差
B1、B2(1と2は階数)は0.5(出隅柱は0.8)
Lは0.6(出隅柱は0.4)

B1,B2とLは定数ですがどちらも出隅(平面図での角)にかかる力(N)が大きくなるようになっています。出隅柱は地震の時にそれだけ力がかかる、大事な場所ということなのです。

ところが前回の図の総二階の建物で玄関が外壁の隅をへこませた場合、一階の出隅の角に柱がないので出隅の柱は図の二カ所の柱になります。

玄関庇と④

この場合、耐力壁の配置よってはかなり掛かる力が変わります。上記の式のA2(二階の壁倍率の差)の値が変わるからです。A2は耐力壁の差ですから総二階の場合、1階の出隅柱は2階の出隅柱でもあるので、A1もA2も柱の片側は壁がないので開口部でない限り0にはなりません(図参照)。

計算は上記の通りなのですが、ただ私はこの計算式を考えた時に2階建ての1階の出隅に柱がない建物なんてそもそも考えていないのではと思っています。この計算式は2000年の法律改正からですが、その頃このような出隅に柱がないような家はほとんど見ませんでした。

このことはコラム「熊本地震で分かったこと⑫」に書いた私が以前見積もった住宅のように意図的に2階建住宅の出隅で耐力壁の上は開口部、開口部の上に耐力壁を設ける設計者もいますが、住宅の角は地震の時など大きな力がかかったときに大事な場所なのです。2階から掛かる力がなくなるわけではないですから、その力をどこで受けるのか考えて設計しないといけないと思います。

次回は、『減った玄関庇と増えたオーバーハング⑤~直下率から考えても』です。


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