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熊本地震で分かったこと⑪~N値計算の問題

鈴木敏広

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テーマ:地震

N値計算とは柱に取り付ける金物の計算方法です。2000年に改正されるまでは、山形、T型、L型の金物しかなく、とにかく上記の金物で固定しなさいという基準だったのです。

2000年の改正で個々の柱について計算する方法としてN値計算が決めら、掛る力に応じて金物が決められました。N値計算の計算式が下です。式を使って何を求めているかを知るよりも、何で計算しているかを見てください。

(1) 平屋の1階の柱、もしくは2階の柱のN値計算式
N=A1×B1-L
A1=計算する柱の両側の壁倍率の差、B1=0.5(出隅の柱は0.8)、L=0.6(出隅の柱は0.4)

(2) 2階建て部分の1階の柱のN値計算式
N=A1×B1+A2×B2-L
A1=計算する柱の両側の壁倍率の差、B1=0.5(出隅の柱は0.8)
A2=計算する柱に連続する2階の柱の両側の壁倍率の差、B2=0.5(出隅の柱は0.8)、L=1.6(出隅の柱は1.0)

難しそうに見えても式に入れる値は、柱の両側の耐力壁の壁倍率の差A1と上階の耐力壁の壁倍率の差A2だけであとは決められた定数です。壁倍率とは、耐力壁に造り方によって決められている数字で、数字が大きいほど強度があります

熊本地震で分かったこと⑪

問題は(2)の式で、計算する柱の左右、上下の壁倍率の差で計算します。つまり、2階建ての1階の柱は直下率が高い家ほど2階の影響を受けて大きくなります。計算する柱に連続すると書いてありますから、連続していない、柱の上に柱がなければ上記の式のA2×B2は0となるためです(下の図参照)。
熊本地震で分かったこと⑪-2

本当は、直下率が低い柱ほど危険で、ずれていれば力の流れは複雑になり、より強度のある金物を付けないのかもしれませんが、N値計算では直下率が高いほど値が大きくなってしまいます。

次回は、熊本地震で分かったこと⑫~私の経験、直下率の低い家 です。

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専門家

鈴木敏広(一級建築士)

まちの大工さん 鈴木工務店

木造住宅からマンション、市の施設まで建築業界の最前線で培った経験を生かし、安心、安全、快適で長く暮らせる住環境を提案。大工経験から現場の声を大切にする家づくりは職人にも施主にも好評。リピート率も高い。

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