【親子問題】闇金・違法な取立てが家に来た
家庭内の暴力などで子が逮捕され、その後に釈放されると知ったとき、「また同じことが起きるのではないか」「家に戻ってきたらどう接すればよいのか」と不安を抱く親御さんは少なくありません。被害届を出したのが親自身であれば、顔を合わせることに恐れを感じるのは自然なことです。
この記事では、釈放の意味と時期の知り方、身元引受人を頼まれたときの考え方、子が戻ってくる場合の備え、そして距離を置くという選択肢について、親の立場から整理します。
本記事は、成人した子が親や同居の家族に暴力をふるい、刑事手続の対象となった場面を中心に解説しています。18歳・19歳の子の場合は少年法の手続が適用されるため、流れが一部異なります。
釈放は「事件が終わった」という意味ではない
「釈放」という言葉からは、事件が終わったような印象を受けるかもしれません。しかし実際には、捜査が続いたまま身柄の拘束だけが解かれる場合も多くあります。どの段階で釈放されたのかによって、その後の見通しも変わります。
| 釈放の場面 | その後の手続 | 親が確認しておきたいこと |
|---|---|---|
| 逮捕後、勾留されずに釈放 | 在宅のまま捜査が続くことが多い | 捜査がどの程度続く見込みか |
| 勾留の満期に処分保留で釈放 | 起訴・不起訴の判断が後日に持ち越される | 処分が決まる時期の目安 |
| 不起訴・略式の罰金で釈放 | 刑事手続は区切りを迎える | 本人の帰住先と今後の連絡方法 |
| 起訴後に保釈 | 裁判が続き、保釈の条件が付く | 住む場所の指定や接触禁止の条件の有無 |
逮捕後は、警察で最大48時間、検察で最大24時間を経て勾留請求の有無が判断されます。勾留が認められると原則10日間、延長されるとさらに最大10日間、身柄の拘束が続きます。この流れのどこかで釈放されることがあるため、「いつ帰ってくるのか」が事前に分かりにくいのが実情です。
また、起訴される前の釈放には、保釈のように裁判所が条件を定める仕組みがありません。捜査機関が本人に被害者と接触しないよう求めることはありますが、それだけで自宅に戻ることが止められるわけではない点は、知っておいたほうがよいでしょう。一方、起訴後の保釈では、被害者との接触禁止や住む場所の指定が条件になることがあり、違反すると保釈が取り消されることがあります。
処分保留の意味については処分保留で釈放された|終わったわけではない状態、保釈の条件については保釈の条件(制限住居・接触禁止・渡航制限)に違反したらどうなるかで解説しています。
釈放の時期を知り、迎える準備をする
捜査の担当者に「戻ってくるのが怖い」と伝える
被害者として事情を聴かれている親御さんは、取調べの際や担当の警察官と連絡を取る機会に、釈放後に子が家に戻ることへの不安を具体的に伝えておくことが大切です。警察は再被害を防ぐ観点から、被害者への連絡や自宅周辺の見回りなどの対応をとることがあります。
釈放の時期を必ず事前に知らせてもらえるとは限りません。それでも、不安を伝えておくことで見込みについて情報を得られたり、当日の対応を相談できたりすることがあります。
検察庁の被害者等通知制度を利用する
検察庁には、被害者やその親族などが希望した場合に、事件の処分結果や裁判の日時・結果などを知らせる被害者等通知制度があります。希望すれば、不起訴の理由の骨子や、勾留・保釈といった身柄の状況も通知の対象になります。ただし、捜査に支障が生じるおそれがある場合など、検察官が相当でないと判断したときは通知されないこともあります。
事件が検察庁に送られた後は、担当検察官や検察庁の被害者支援員に通知を希望する旨を伝えておくと、処分の時期を見通しやすくなります。
身元引受人を頼まれたら、引き受けるかどうかは選べる
子の弁護人や警察から、親に身元引受人になってほしいと打診されることがあります。身元引受人は本人の生活を見守り、捜査機関からの呼び出しに応じさせる役割を担う立場です。引き受けると、同居して監督することを前提に受け止められやすくなります。
身元引受人になるかどうかは親が判断してよく、被害を受けた立場で引き受けられないと伝えることは問題ありません。その場合は、ほかの親族に頼む、本人の住む場所を別に確保するといった方法が検討されます。起訴猶予などで釈放された人は、本人の申出により、保護観察所が宿泊場所の確保などを行う更生緊急保護の対象となることもあります。
詳しくは【親子問題】身元引受人になることの意味と責任、【刑事事件】家族が身元引受人になれない|代替の環境調整もご覧ください。
子が家に戻ってくる場合に備えておくこと
鍵を替えて戻らせないことはできるのか
「家に入れなければよい」と考えて、鍵を替えたくなるかもしれません。しかし、子がその家で生活してきた場合、親名義の家であっても、子の居住を一方的に断つことは自力救済として問題になる可能性があります。子に家を出てもらうには、話し合いや、場合によっては明渡しを求める法的な手続を経ることになります。
なお、配偶者などからの暴力には保護命令の制度がありますが、親子間ではこの制度を使うことができません。子の接近を法的に止めたい場合は、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てるなど、別の手続を検討することになります。
差し迫った危険を感じる場合は、子を締め出すのではなく、親の側が一時的に別の場所へ移るという方法もあります。【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界、【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択もあわせてご覧ください。
釈放の日までに整えておきたいこと
- 子が戻ったときに家族の誰が対応するかの取り決め。
- 身を寄せられる親族宅や宿泊先の候補。
- 通帳・印鑑・身分証・常備薬など、持ち出す物の置き場所。
- 最寄りの警察署と事件の担当者の連絡先。
- 内側から施錠できる部屋の確保。
- これまでの被害の記録(診断書・写真・メモ・警察への相談記録)の保管。
とくに被害の記録は、その後に警察へ相談する場面や、子に家を出てもらうための手続を進める場面で、経緯を説明する材料になります。記録の残し方は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録や【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続で解説しています。
再び危険を感じたときは通報をためらわない
一度事件になったことで、「また通報すると子の処分が重くなるのでは」とためらう親御さんもいます。しかし、身の危険を感じたときに110番をすることは、親自身と家族を守るための正当な行動です。通報の判断や伝える内容は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかを参考にしてください。
また、釈放後に本人や関係者から被害届の取下げや供述の変更を強く迫られることもあります。事件の関係者に対して正当な理由なく面会を強く求めたり、威圧的な態度で迫ったりする行為は、証人等威迫罪にあたる場合があります。そうした働きかけがあった日時や内容は記録し、担当の警察官に伝えてください。
「怖い」と「見捨てたくない」の両方を抱えているとき
子が怖いと感じる一方で、親として子の将来を案じる気持ちが消えるわけではありません。逮捕は子にとって大きな衝撃であり、その後の親子関係の転機になりうるため、警察だけでなく医療・行政・福祉などの関係機関にも相談しながら方針を考えることが望ましいと指摘する弁護士の解説もあります。
18歳・19歳の子の場合、事件は家庭裁判所に送られ、少年審判では本人をどのような環境に戻すかが重視されます。家庭で引き取ることが難しいときは、自立援助ホームなど家庭以外の帰住先を探すことも考えられます。
距離を置くことは、子を見捨てることと同じではありません。物理的に離れることで、互いに落ち着いて関係を考え直せる場合もあります。考え方は【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点、具体的な進め方は【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順で紹介しています。
子の弁護人と親の立場は異なる
子に弁護人がついている場合、弁護人は子の利益のために活動します。帰住先の調整について親に相談が来ることもあれば、示談や被害届の取下げについて打診されることもあります。応じるかどうか判断に迷うときは、親の側に立って助言する弁護士に相談し、子の弁護人とのやり取りを任せるという方法もあります。【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択もご参照ください。
当事務所では、弁護士が親の代理人として子との連絡の窓口となり、自立支援カウンセラーとチームを組んで、子の住まい探しや仕事探しなど生活の基盤づくりを支える取り組みを行っています。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
よくあるご質問
子が釈放されるとき、警察から必ず連絡はありますか
必ず連絡があるとは限りません。釈放の時期は捜査の状況によって決まるため、事前に分からないこともあります。担当の警察官に不安を伝えておくことや、検察庁の被害者等通知制度の利用を希望しておくことで、情報を得やすくなります。
被害届を出したのは私なのに、身元引受人を頼まれました。断ってもよいのでしょうか
断ることは可能です。身元引受人は本人の生活を見守る立場であり、被害を受けた親が引き受けなければならないものではありません。引き受けられない理由を率直に伝え、ほかの帰住先を検討してもらうよう求めてよいでしょう。
子が戻ってくるなら、親のほうが家を出るしかないのでしょうか
一時的な避難は安全を確保するための選択肢の一つですが、それだけではありません。子との話し合いを第三者に任せる、子が別の住まいで生活できるよう支援する、法的な手続で明渡しを求めるなど、事情に応じた方法があります。【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しもご覧ください。
まとめ
- 釈放は事件の終わりを意味せず、在宅のまま捜査が続く場合もあります。
- 釈放の時期は、担当の警察官に不安を伝えることや被害者等通知制度を利用することで、見通しやすくなります。
- 身元引受人を引き受けるかどうかは親が判断でき、断ることも可能です。
- 鍵を替えて締め出すことには法的な問題が生じうるため、避難先や記録の準備を先に進めることが大切です。
- 距離を置くことは見捨てることではなく、親の代理人として弁護士が間に入る方法もあります。
釈放を前にした不安は、一人で抱え込むほど大きくなりがちです。子が戻ってくる日を待つだけでなく、その前に整えられることから一つずつ進めていきましょう。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


