【親子問題】一人暮らしの子がひきこもって家賃を滞納している、親はどうする?
子が逮捕され、釈放の見通しが立ってきたとき、「家に戻ってくるのは困る」と感じる親御さんは少なくありません。家庭内で暴力があった場合や、同居を続けることで親子ともに追い詰められてきた場合には、なおさらです。一方で、「親が引き取らなければ釈放されないのではないか」「家に入れないと言えば子が不利になるのではないか」と迷い、言い出せないまま釈放の日を迎えてしまうこともあります。
この記事では、釈放後の子の住まいを親の家以外で確保できるのか、どの段階でどのような選択肢があるのか、親が気をつけたい点を順に整理します。
本記事は2026年10月時点の制度と一般的な運用をもとにしています。更生保護施設や居住支援の受け入れ状況は地域や時期によって異なり、個別の事情によって結論が変わることがあります。
親の家に戻ることは、釈放の条件ではありません
まず押さえておきたいのは、法律上、釈放された人が親の家に住まなければならないという決まりはないことです。成人した子であれば、どこに住むかは本人が決めることであり、親が同居を引き受けなければならない義務もありません。成人した子に対する親の扶養の範囲については、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで解説しています。
ただし、刑事手続の中では「住む場所がはっきりしているか」が重視されます。刑事訴訟法は、住居が定まっていないことを勾留の理由の一つに挙げており(刑事訴訟法60条1項1号)、帰る先が決まっていないと、身柄の解放を判断する側が慎重になりやすいためです。親の家が帰り先として想定されやすいのは、「住む場所」と「見守る人」をまとめて示しやすいからであり、親の家でなければならないわけではありません。
身元引受人についても同じことがいえます。身元引受人は、釈放後の生活を見守り、捜査機関などからの呼び出しに応じさせることを約束する人で、家族でなければならないという決まりはなく、同居していることも要件ではありません。もっとも、実際には「本当に本人の生活に目が届くか」が見られるため、離れて暮らす場合には、連絡の取り方や生活の様子をどう把握するかを具体的に示せることが望ましいでしょう。身元引受人を引き受けることの意味は、【親子問題】身元引受人になることの意味と責任で詳しく解説しています。
釈放の段階によって、住まいの問われ方は変わります
「釈放」と一口にいっても、どの段階で身柄が解かれるかによって、住まいの扱われ方は異なります。おおまかに整理すると、次のとおりです。
| 段階 | 住まいの扱い | 親の家以外の選択肢の例 |
|---|---|---|
| 逮捕・勾留中の釈放(処分保留・不起訴など) | 帰り先と身元引受人の有無が、釈放の判断材料の一つになる | 親族・知人の家、本人の賃貸住宅、更生緊急保護による宿泊先(起訴猶予の場合など) |
| 起訴後の保釈 | 裁判所が住む場所を「制限住居」として指定し、転居には許可が必要になる(刑事訴訟法93条3項) | 親族・知人の家、本人の賃貸住宅など、裁判所が相当と認める住居 |
| 執行猶予の判決 | 保護観察が付いた場合は、住居を定めて届け出ることが求められる | 本人の賃貸住宅、更生保護施設など |
| 少年事件 | 家庭裁判所の判断の中で、保護者による監護の状況が重視される | 試験観察での補導委託先など |
| 刑務所・少年院からの出所 | 仮釈放には帰住先の確保が欠かせず、保護観察所が生活環境を調整する | 更生保護施設、自立準備ホームなど |
表の内容はあくまで目安です。とくに逮捕・勾留の段階では釈放が急に決まることもあり、帰り先の準備が間に合わないまま釈放の日を迎えるケースもあります。逮捕直後に親が確認しておきたいことは、【親子問題】子が逮捕された|親が最初にすべきことにまとめています。
親の家以外に考えられる住まい
親族・知人の家
祖父母やきょうだい、おじ・おばなど、親以外の親族の家に身を寄せる方法です。受け入れる側に負担がかかるため、期間の目安や生活費の分担、何かあったときの連絡先をあらかじめ話し合っておくことが大切です。知人の家の場合も同様ですが、事件に関わった交友関係のもとに戻ることになる場合には、かえって生活が不安定になるおそれもあるため、慎重に考える必要があります。
本人が借りる賃貸住宅
本人に収入や貯えがあれば、自分で部屋を借りることも考えられます。ただ、身柄を拘束されている間は内見や契約の手続を進めにくく、釈放の直後にすぐ入居できるとは限りません。また、賃貸契約では保証人や保証会社の審査が求められることが多く、親が保証人を頼まれる場面も出てきます。引き受ける前に考えておきたい点は、【親子問題】家を借りる際の保証人・保証会社の問題|無職の子のために親が引き受ける前にで整理しています。
更生保護施設・自立準備ホーム
帰る場所のない人のために、国の制度として用意されている宿泊先もあります。起訴猶予となった人、執行猶予の判決を受けた人、刑期を終えて出所した人などで、親族からの援助を受けられない場合などに、本人の申出にもとづいて保護観察所が宿泊場所や食事の提供、就職の援助などを行う「更生緊急保護」という仕組みです(更生保護法85条)。期間は原則として6か月で、必要に応じて延長される場合があります。
宿泊先としては、法務大臣の認可を受けた民間の更生保護施設や、NPO法人などが運営する自立準備ホームが使われます。ただし、本人の申出が前提であり、施設の空き状況や本人の状況によっては希望どおりにならないこともあります。親が「家には戻せない」と考えている場合には、この制度が使えそうかどうかを早めに弁護人に確認しておくとよいでしょう。
生活保護を受けながら住まいを確保する
収入がなく、頼れる先もない場合には、福祉事務所に生活保護を申請し、その中で住まいを確保していく方法もあります。申請の際には、親族が援助できるかを確認する「扶養照会」が行われることがありますが、親の側で援助が難しい事情があれば、その旨を伝えることができます。申請の流れや扶養照会の実際は、【親子問題】生活保護の申請に同行するということ|扶養照会の実際をご覧ください。
障害がある場合や高齢の場合
子に障害がある場合や高齢の場合には、各都道府県に置かれた地域生活定着支援センターが、福祉サービスや住まいの確保について調整を行う仕組みがあります。刑務所などからの出所時だけでなく、起訴されるかどうかが判断される段階での支援も行われています。主治医や支援機関がいる場合には、早めに情報を共有しておくと調整を進めやすくなります。
「家には戻せない」と伝えるときに気をつけたいこと
親が同居を断ること自体は、責められることではありません。ただ、伝える時期や伝え方によっては、子の身柄の扱いや、その後の親子関係に影響することがあります。次の点を意識しておくとよいでしょう。
- 子本人に伝える前に、弁護人に親の意向と方針を相談しておくこと。
- 警察や検察から帰り先を尋ねられたときは、同居が難しい理由と、ほかに協力できることを分けて伝えること。
- 釈放の時期が見えてくる前に、帰り先の候補を弁護人と共有しておくこと。
- 受け入れを断った後に、誰がどの手段で子からの連絡を受けるかを決めておくこと。
「同居はできないが、住まい探しの初期費用の一部は援助する」「身元引受人として連絡は受ける」というように、同居とそれ以外の協力を切り分けて考えることもできます。すべてを引き受けるか、すべてを断るかの二択にしないことで、子の身柄の解放への影響を抑えつつ、親の生活を守る道が見えてくることがあります。親以外の身元引受人や生活環境の整え方は、【刑事事件】家族が身元引受人になれない|代替の環境調整でも解説しています。
親自身が子の暴力の被害者である場合には、親の安全を最優先に考える必要があります。保釈の場面では被害者との接触を禁じる条件が付けられることもあり、そもそも親の家を帰り先にすることが適当でないと判断される場合もあります。そのような場合でも、子の住まいを親がひとりで探す必要はなく、弁護士や支援機関と役割を分けて進めることができます。
釈放後の住まいを探す流れ
事案によって順序は前後しますが、おおまかには次のような流れで準備を進めます。
- 親として同居を受け入れられるかどうか、受け入れられない場合に何なら協力できるかを整理します。
- 弁護人に親の意向を伝え、身柄解放の見通しと帰り先の候補を確認します。
- 親族・知人の家、賃貸住宅、更生緊急保護などの中から、使えそうな選択肢を絞り込みます。
- 本人の意向を確かめ、受け入れ先との調整を進めます。
- 釈放後の連絡方法や生活費の負担について、取り決めた内容を書面などに残しておきます。
本人が「実家以外には行かない」と強く主張することもあります。その場合、親と子が直接言い合いになると対立が深まりやすいため、第三者を間に入れて話を進めることが考えられます。いったん離れて暮らすことの意味については、【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点もあわせてご覧ください。
弁護士とカウンセラーが関わる場面
当事務所では、家庭内暴力やひきこもり、お金の無心などに悩む親御さんの代理人として、親子の問題に介入する取り組みを行っています。子の刑事事件をきっかけにご相談いただく場合には、親の意向を整理したうえで、子との窓口を弁護士が担い、親への直接の要求や接触をできる限り遮る役割を果たします。
あわせて、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、家探しや仕事探し、生活保護の申請のサポート、日々の金銭管理など、子の生活の基盤づくりを支える体制をとっています。親の家を出た後の生活が立ち行かなければ、結局は親の家に戻ってくることになりかねないため、住まいの確保とその後の生活の支えを一体で考えることを大切にしています。どのような支援が合うかはご家庭ごとに異なり、結果をお約束できるものではありませんが、方針を一緒に考えるところからお手伝いできます。サービスの内容は、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご案内しています。
よくあるご質問
身元引受人にはなりたいが、同居はしたくない場合はどうすればよいですか
身元引受人は同居していることが要件ではないため、別に暮らしながら引き受けることも考えられます。ただし、離れて暮らす場合には、どのように本人の様子を把握し、呼び出しに応じさせるのかを具体的に説明できることが求められます。引き受ける前に、弁護人と役割の範囲を確認しておくと安心です。
更生保護施設には必ず入れますか
必ず入れるとは限りません。更生緊急保護は本人の申出が前提で、対象となる人の範囲や施設の空き状況、本人の状況などを踏まえて判断されます。利用を考える場合は、弁護人を通じて早めに確認しておくとよいでしょう。
実家以外で暮らし始めた子が、後から戻りたいと言ってきたらどうすればよいですか
生活が落ち着かないうちに、子が実家に戻りたいと言ってくることもあります。戻すかどうかは親が判断してよいことですが、その場の勢いで決めず、受け入れた場合に以前と同じ状態に戻らないかを考えてから答えることが大切です。断るときの考え方は、【親子問題】独立した子が家に戻りたいと言ってきた|再同居を断るときで解説しています。
関連する解説記事
釈放後の住まいは、親の家だけに限られません
釈放後の子の住まいは、親の家に限られるものではありません。親族や知人の家、本人が借りる部屋、更生保護施設など、段階や事情に応じた選択肢があります。大切なのは、釈放の日が近づいてから慌てるのではなく、親として受け入れられることと難しいことを早めに整理し、弁護人や支援機関と共有しておくことです。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


