【親子問題】地方に住んでいても、東京の支援者に子の自立を頼める?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

地方にお住まいのご家庭から、「近くに頼れる支援先がない」「東京の弁護士や支援者に子の自立を頼むことはできるのか」というご相談をいただくことがあります。成人した子のひきこもりや家庭内暴力、お金の無心が続き、地元の窓口に相談しても状況が動かないとき、遠方の支援者に目を向けるのは自然なことです。
 結論から申し上げると、距離があることだけを理由に依頼ができなくなるわけではありません。ただし遠方からの依頼では、支援者が現地に来る頻度や費用、子がどこで暮らすか、地元の機関とどうつなぐかといった点を、近くで頼む場合よりも丁寧に決めておく必要があります。この記事では、地方のご家庭が東京の支援者に子の自立を頼むときに確かめておきたいことを整理します。

本記事は2026年10月時点の制度と当事務所の対応内容をもとにしています。支援の進め方や費用は、事務所や支援者ごとに異なります。


距離があっても依頼はできる、ただし変わる点がある

 弁護士の資格は全国で通用するため、東京の弁護士が地方に住むご家庭の代理人になること自体に制約はありません。初回のご相談や方針の打ち合わせは電話やオンラインで行えることが多く、親御さんが何度も東京へ足を運ぶ必要はない場合がほとんどです。当事務所でも、北海道から沖縄まで、各地のご家庭からのご依頼をお受けしてきました。
 一方で、遠方だからこそ変わる点もあります。主なものは次のとおりです。

  • 支援者が現地を訪れる回数と、1回あたりの滞在時間。
  • 交通費・宿泊費・日当といった、距離に応じてかかる費用。
  • 地元の警察・行政・医療機関との連携の取り方。
  • 自立後に子が暮らす場所の選び方。


 弁護士への依頼そのものが遠方でもできるかについては、【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際で詳しく扱っています。ここでは、子の自立までを見すえて東京の支援者に頼むときに特有の論点に絞ってご説明します。

東京の支援者に頼む前に確かめておきたい3つの点


誰が、どのくらいの頻度で現地に来るのか

 子の自立を支える支援は、一度の訪問で終わるものではありません。最初に本人と話をする段階、家を出る準備をする段階、新しい生活に慣れていく段階と、それぞれに顔を合わせる場面があります。遠方の場合、訪問は東京からの出張になるため、最初の訪問に誰が来るのか、その後の連絡は電話や通話アプリで行うのか、急な事態にはどう対応するのかを事前に確認しておくと、後で認識がずれにくくなります。
 特に、子が暴力をふるう傾向がある場合や薬物の使用歴がある場合は、訪問時の安全確保が欠かせません。誰が同行するのか、どのような状況なら訪問を見合わせるのかも、あわせて話し合っておくとよいでしょう。

交通費・宿泊費・日当はどう計算されるのか

 遠方への訪問では、弁護士費用や支援費用とは別に、交通費や宿泊費、移動にかかる時間に対する日当がかかるのが一般的です。訪問の回数が増えるほど負担も大きくなるため、見積もりの段階で次の点を確かめておくことをおすすめします。

  • 交通費・宿泊費が実費精算か定額か。
  • 日当の有無と、1回の訪問あたりの目安。
  • 想定している訪問回数と、それを超えた場合の扱い。
  • 弁護士費用と支援者の費用の請求のされ方。


 当事務所の費用の考え方は、【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご案内しています。

地元の警察・行政・医療とどうつなぐのか

 東京の支援者が関わる場合でも、警察への相談や通報、生活保護の申請、通院先の確保などは、子が暮らす地域の機関が窓口になります。支援者が遠くにいる分、地元の機関との連携をどう取るかが支援の進み方を左右します。
 たとえば暴力の危険がある家庭では、訪問に先立って地元の警察署に事情を伝えておくことがあります。また、ひきこもり地域支援センターや市町村の相談窓口とのつながりを残しておくと、東京の支援者の手が届きにくい日常の場面を補ってもらえることがあります。地元の窓口の役割については、【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないことや【親子問題】重層的支援体制整備事業とは|市町村窓口の使い方もあわせてご覧ください。

子がどこで暮らすか|地元か、支援者の近くか

 自立に向けて子が家を出る場合、新しい住まいをどこに置くかは大きな分かれ目になります。どの選択にも利点と注意点があり、一律にどちらがよいとはいえません。

住まいの場所考えられる利点注意しておきたい点
実家と同じ地域土地勘や知人があり、生活の変化が小さい親との距離が近く、再び実家に頼りやすい
支援者のいる東京周辺支援者が訪問しやすく、日常の相談に乗りやすい家賃などの生活費が高く、本人にとって環境の変化が大きい
実家から離れた別の地域親との距離を保ちつつ、生活費を抑えやすい場合がある地元にも支援者にも近くないため、見守りの手段を別に用意する必要がある


 どの場所を選ぶ場合でも、前提になるのは本人の意思です。本人が望まない土地への転居を親や支援者が決めてしまうと、新しい生活が続かないおそれがあります。
 住む場所は、使える制度にも影響します。生活保護は、原則として本人が暮らしている地域を所管する福祉事務所が実施し、その地域の基準で支給されます(生活保護法19条)。住民票の異動や国民健康保険の手続きも、転居先の市区町村で行うことになります。転居先を決める前に、収入の見込みと生活費の水準をあわせて検討しておくことが大切です。関連する手続きは、【親子問題】ひきこもりの子に生活保護は使えるのか|世帯分離の考え方や【親子問題】世帯分離とは|住民票・保険・年金の扱いで解説しています。

遠方の業者に頼むときに気をつけたいこと

 ひきこもりの「自立支援」をうたう民間業者のなかには、本人の同意を得ないまま自宅から連れ出し、遠方の施設に入れてしまうところがあり、たびたび裁判で争われてきました。東京地方裁判所は2019年12月、業者が女性を寮に無理やり入所させた事案について、連れ出しや施設での行動制限の違法性を認め、母親が支払った契約金の一部の返還などを命じています。別の訴訟でも、本人を無理やり施設へ連れて行き、監視付きの部屋に閉じ込めたことが不法行為にあたると判断されました。関東や沖縄に住んでいた男性たちが、神奈川県内の施設への連れ出しをめぐって起こした集団訴訟でも、業者の違法性が認められたと報じられています。
 遠方の業者に依頼すると、親は施設の様子を自分の目で確かめにくくなります。高額な契約金を前払いした後に業者が破産し、返金を受けられなかったという報道もあります。遠方の支援者に頼む場合は、次の点を確認しておくと安心です。

  • 本人の同意を得たうえで支援を進める方針であること。
  • 契約金の総額と内訳、途中で解約した場合の返金の扱い。
  • 支援の担い手と、その経験。
  • 親が本人の様子を知るための報告の方法と頻度。
  • 施設に入る場合、本人が外部と自由に連絡を取れる環境の有無。


 詳しくは、【親子問題】民間の自立支援施設を選ぶ前に確認すべきこと|契約・担い手・解約・本人の意思や【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならないもご参照ください。

当事務所が遠方のご家庭と進める場合の流れ

 当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子と向き合い、民間の自立支援カウンセラーが子の日常生活を支えるという役割分担で、親子の問題に取り組んでいます。遠方のご家庭の場合も、基本的な進め方は変わりません。

  1. 電話・メール・LINEなどでご相談をお受けし、ご家庭の状況を詳しくうかがいます。
  2. 弁護士とカウンセラーで対応方針を検討し、訪問の時期や費用の見込みをご説明します。
  3. 必要に応じて地元の警察とも連絡を取りながら、ご自宅を訪問して子と話をします。
  4. 子が家を出ることを受け入れた場合は、住まい探しや仕事探し、生活保護の申請などをカウンセラーが支えます。
  5. 家を出た後も、少なくとも半年程度を目安に、カウンセラーが生活の立て直しを見守り、親御さんへの報告を続けます。


 弁護士は、子から親への金銭の要求や連絡の窓口となり、親御さんを直接の衝突から守る役割を担います。カウンセラーは、家探しや仕事探し、日々の金銭管理の助言などを通じて、子が自分で生活していく力を身につける手助けをします。実際の取り組みの様子は、【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際で紹介しています。
 もっとも、子が家を出るかどうか、どの程度の期間で自立に至るかは、ご家庭ごとに大きく異なります。訪問を重ねても本人がすぐには応じないこともあり、支援は状況に合わせて組み立て直しながら進めることになります。

よくあるご質問


子が東京に行くのを嫌がった場合はどうなりますか

 子が東京で暮らすことを望まない場合、無理に転居させることはしません。地元で一人暮らしを始める、実家から少し離れた地域に住むなど、本人が受け入れられる形を一緒に探します。住まいが東京から遠くても、電話や通話アプリでのやり取りと定期的な訪問を組み合わせて、支援を続けることは可能です。

地元の支援機関と東京の支援者を同時に利用できますか

 併用は可能です。通院や生活保護の手続き、地域の居場所とのつながりなど、地元の機関でなければ担いにくい部分もあります。東京の支援者に依頼したからといって地元とのつながりを切る必要はなく、役割を分けて使うのが現実的です。

親が東京の事務所まで出向く必要はありますか

 ご相談や打ち合わせは電話やオンラインで行えることが多く、必ずしも来所していただく必要はありません。ご自宅への訪問は、支援者が現地に出向いて行います。対面での打ち合わせを希望される場合は、ご都合に合わせて日程を調整します。

地方にお住まいでも、まずは状況の整理から

 近くに頼れる支援先がないことは、地方のご家庭が抱えやすい悩みの一つです。東京の支援者に頼む場合も、訪問の頻度や費用、子が暮らす場所、地元の機関との分担を一つずつ決めていけば、距離による負担を抑えながら支援を進められることがあります。どこまでを遠方の支援者に任せ、どこからを地元で担うのかも含めて、ご家庭の事情に合わせて一緒に考えていきます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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