【男女トラブル】相手のSNSを見続けてしまう|自分の行動が問題になる場面
本記事は2026年10月時点の法令に基づいています。2025年6月の刑法改正により、懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。
交際中に求められて送った写真や、二人で撮った動画。別れた後になって「あの画像は、まだ相手のスマートフォンに残っているのではないか」と不安になる方は少なくありません。相手が「消す」と言ってくれた場合でも、口約束のままでは後から確かめる手立てがなく、気がかりが続きがちです。
そこで考えられるのが、画像を削除し、第三者に見せたり公開したりしないことを、相手に書面で約束してもらう方法です。この記事では、そうした書面を作れるのか、何を書いておくとよいのか、作るときにどこに気をつけたいのかを、順を追って整理します。
削除を約束する書面は作ることができる
交際していた相手との間で、画像の削除や不拡散を約束する書面を作ることはできます。当事者どうしが内容に納得して署名すれば、その書面は契約としての効力を持ち、約束に反した場合には書面を根拠に責任を問うことができます。
「誓約書」か「合意書」かより、中身が大切
書面の題名には、相手が一方的に約束する形の「誓約書」と、双方が署名する「合意書」があります。どちらを選んでも法的な意味に大きな差はなく、効力を左右するのは題名よりも書かれている内容です。相手によっては、対等な立場で交わす合意書のほうが署名しやすいと感じることもあります。相手が受け入れやすい形を選ぶのも一つの考え方です。書面の効力全般については【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力で解説しています。
書面は相手が応じてはじめて成り立つ
注意したいのは、書面はあくまで相手の同意によって成り立つという点です。同意して撮影した写真や自分で送った画像を相手が手元に持っているだけの段階では、裁判などの手続で削除を強いるのは難しいとされています。弁護士ドットコムニュースで紹介された同種の相談でも、写真が相手の端末に保存されているだけでは法的に削除を求めるのは難しく、本人どうしや弁護士を通じた話し合い、民事調停で解決を図ることになるという弁護士の解説が載っています。
一方で、交際中に画像のやり取りを認めていたとしても、別れた後まで保存し続けることを認めたわけではありません。削除を求めること自体は正当な要望です。書面は、その要望を相手が受け入れたことを形にして残すためのものと考えるとよいでしょう。相手が削除に応じない場合の進め方は、【男女トラブル】元恋人に裸の写真を消すよう頼んでも消してくれないときは?で扱っています。
書面に入れておきたい項目
| 項目 | 書いておく内容の例 | ねらい |
|---|---|---|
| 対象の特定 | 交際期間中に撮影・送信された、本人の容ぼうや身体が写った写真・動画の一切 | 対象の漏れや解釈のずれを防ぐ |
| 削除の範囲 | スマートフォン本体、パソコン、クラウド、外付けの記録媒体、トーク履歴やアルバムを含めて削除したこと | 機種変更後の端末や別の保存先に残ることへの備え |
| 第三者への提供の有無 | これまで第三者に送信・提示していないこと | すでに広がっていないかを相手に確認してもらう |
| 今後の不拡散 | 今後、複製・公開・第三者への提供をしないこと | 将来の拡散を思いとどまらせる |
| 残っていた場合の措置 | 保存先が見つかった場合は速やかに削除し、その旨を報告すること | 削除漏れへの対応を決めておく |
| 違約金 | 約束に反した場合に支払う金額 | 違反したときの責任をはっきりさせる |
| 接触や口外の制限 | 必要に応じて、連絡や接触をしないこと、交際の事実を口外しないこと | 関係を終えた後の不安を減らす |
このほか、書面に定めたもの以外に互いに請求がないことを確認する「清算条項」を入れることもあります。清算条項は関係をきれいに区切るのに役立ちますが、入れると書面に書かれていない請求がしにくくなります。貸したお金の返還など、相手に対してほかに求めたいことがある場合は、清算の範囲を慎重に決めてください。
書面を作るときに気をつけたいこと
画像そのものを書面に付けない
対象をはっきりさせたいからといって、画像を印刷して添付したり、確認のために画像を送り合ったりするのは避けてください。書面の写しが増えるほど、画像が人の目に触れる機会も増えてしまいます。対象は「交際期間中に撮影・送信されたもの一切」のように、範囲で示すのが一般的です。
違約金は高ければよいわけではない
違約金の定めは、約束に反したときの賠償額をあらかじめ決めておくものとして、民法420条で認められています。ただし、事案の内容に比べて著しく高い金額を定めると、公序良俗に反するとして一部が無効とされることがあります。金額を上げすぎると相手が署名をためらい、書面そのものがまとまらなくなることもあります。思いとどまらせる効果と、実際に支払いを求める場面の両方を見すえて、無理のない金額を考えることが大切です。違約金を定めた書面をめぐる考え方は、【男女トラブル】交際中に書かされた「誓約書」を守らなかったら、お金を払う?も参考になります。
強く迫って書かせた書面は、後で争われることがある
不安が強いと、相手を責めたり、「書かなければ周りに知らせる」と迫ったりしたくなるかもしれません。しかし、強く迫られて署名した書面については、後になって相手から取消しを主張されることがあります(民法96条)。迫り方によっては、こちらの言動が強要などの問題とされるおそれもあります。立場は逆になりますが、迫られて書いた書面の扱いは【男女トラブル】別れ際に書いた誓約書を撤回したい|強く迫られて書いた書面で解説しています。相手を非難する言葉を控え、書面を交わすことが双方にとって区切りになると伝えるほうが、結果として応じてもらいやすくなります。
自分の住所などをどこまで書くか
書面には当事者の氏名や住所を書くのが一般的です。ただ、別れた後に引っ越していて、新しい住所を相手に知られたくないこともあるでしょう。弁護士が代理人になる場合は、連絡を弁護士経由にしたうえで記載の仕方を工夫し、相手に住所などを知らせずに手続を進められることがあります。書面を作る前に、相手に伝わる情報の範囲を確認しておいてください。
「すべて消した」かは、外から確かめきれない
相手が本当にすべての保存先から削除したかを、外から完全に確かめることはできません。目の前で消してもらう方法もありますが、見えるのはその端末のその時点の状態だけです。書面の役割は、削除を証明することではなく、約束を破ったときに何が起きるかを相手に意識してもらい、実際に破られた場合に請求する根拠を残しておくことにあります。
公正証書にするという選択肢と、その限界
約束をより確かなものにしたいとして、公証役場で公正証書にすることを考える方もいます。公正証書は公証人が本人確認と意思の確認をしたうえで作るため、後から「そんな書面は知らない」「無理に書かされた」と争われにくくなります。金銭の支払いについては、強制執行を受け入れる旨の文言(執行認諾文言)を入れておくと、裁判を経ずに強制執行の手続に進める場合があります。ただし、違約金は約束違反があってはじめて支払義務が生じるものなので、違反の事実を別に示す必要があり、すぐに執行できるとは限りません。
また、「画像を削除する」「公開しない」といった行為の約束そのものは、公正証書にしても直接の強制執行の対象にはなりません。相手にも公証人の手続に関わってもらう必要があるため、協力を得にくい事案では現実的でないこともあります。通常の合意書で足りるか、公正証書まで求めるかは、相手の態度や事案の内容を見て判断することになります。
相手が応じないとき、別の要求をしてきたとき
| 相手の反応 | 考えられる対応 |
|---|---|
| 削除はしたと言うが、書面は拒む | 削除を求めたメッセージと相手の返答を保存し、弁護士からの通知で改めて書面化を求める |
| 削除にも書面にも応じない | 弁護士からの通知のほか、簡易裁判所の民事調停での話し合いを検討する |
| 「書面にするならお金を払え」と言ってくる | その場で応じず、やり取りを保存して弁護士に相談する |
| 画像を使って脅す、復縁を迫る | 警察に相談し、脅迫・強要やストーカー規制法での対応を検討する |
| すでにネットに載せた、人に送った | 削除の申出とあわせて、警察への相談や損害賠償請求を検討する |
| 撮影されたときに18歳未満だった | 保護者や警察に早めに相談する |
性的な画像を不特定または多数の人に公表する行為は、私事性的画像記録提供等処罰法(いわゆるリベンジポルノ防止法)で処罰の対象とされ、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められています。公表させる目的で人に渡す行為も処罰の対象です。また、本人が気づかないうちに撮られていた場合や、同意のない状況で撮られた場合は、性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)が問題になることがあります。こうした場面では、書面を交わすことより先に、警察への相談を考えてください。
画像がすでにネットに出てしまった場合の削除の求め方は、【男女トラブル】性的な画像がネットに出てしまったら、どうやって削除を求める?で解説しています。
弁護士に依頼した場合の進め方
- ご相談の際に、画像の種類、撮影や送信の経緯、相手の連絡先、これまでのやり取りを伺い、書面化の見通しをお伝えします。
- 弁護士が代理人として相手に連絡し、削除と不拡散を書面で約束してほしい旨を伝えます。
- 相手の保有状況や意向を確かめながら、条項の内容や違約金の額を調整します。
- 双方が内容を確認したうえで書面を締結し、その後の連絡の窓口も弁護士が引き受けます。
弁護士を通じて進めると、ご本人が相手と直接やり取りせずに済むため、感情的な応酬になったり、話が別の要求に広がったりするおそれを抑えやすくなります。書面の文言も、後から解釈が分かれないように整えることができます。当事務所でも、【解決事例】マッチングアプリで渡した個人情報や画像が不安に|ご依頼当日に削除と不拡散の合意書を締結や【解決事例】元交際相手に撮影された性的な動画|転居先を確認し、削除と不拡散の誓約書を約1か月で取得した事例のように、相手方と書面を交わした例があります。なお、相手が話し合いに応じるかどうかは事案によって異なり、必ず書面がまとまるとは限りません。
よくあるご質問
自分で書面を作って、相手に送ってもよいですか
ご自身で作ることもできます。ただ、ネット上のひな型をそのまま使うと、削除の範囲が狭かったり、違約金の定め方があいまいだったりして、いざというときに役立たないことがあります。送る文面の書き方によっては、かえって相手の反発を招くこともあります。送る前に、一度内容を専門家に見てもらうと安心です。
画像を送ったのは自分ですが、削除を求めてもよいのでしょうか
求めてかまいません。自分で撮って送った画像であっても、別れた後も相手が持ち続けたり、人に見せたりすることまで認めたわけではありません。私事性的画像記録提供等処罰法も、本人が撮影した画像を保護の対象に含めています。送った経緯を気に病むより、これからの不安を減らす手立てを考えることが大切です。
口頭で「消した」と言われました。今から書面にできますか
できます。口頭で約束した内容を確認する形で、後から書面にすることは珍しくありません。約束したときのメッセージなどが残っていれば保存しておいてください。進め方は【男女トラブル】口約束で別れの条件を決めてしまった|後から書面にする方法で扱っています。
相手に知られずに相談できますか
弁護士に相談しただけで相手に伝わることはありません。弁護士には守秘義務があり、相手に連絡するかどうかは、ご相談のうえで決めていただけます。
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一人で抱え込まずにご相談ください
交際中に送った画像のことは誰にも話しにくく、一人で悩みを抱えてしまいがちです。削除と不拡散の約束を書面にしておくことは、相手との関係を穏やかに区切り、これからの不安を少しずつ小さくしていくための一つの方法です。相手にどう切り出せばよいか分からない段階でも、状況を整理するところからお手伝いします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


