【男女トラブル】借りたお金を分割で返しているのに、一括で返せと言われたら?
この記事は、2026年10月時点の法令と公表情報をもとにしています。生成AIで作られた性的な画像(いわゆる性的ディープフェイク)を正面から処罰する国の法律はまだなく、政府が2026年度中に対策をまとめる方針を示している段階です。今後の法改正により、扱いが変わる可能性があります。
別れた交際相手が、自分の顔写真をもとにAIで性的な画像を作り、共通の友人や職場、SNSに送ったり投稿したりする。こうしたご相談は、生成AIの普及とともに増えつつあります。画像が「作り物」であっても、受け取った人の目には本人の姿として映るおそれがあり、受ける被害は実際に撮影された画像と大きく変わらないことがあります。
ただし、合成された画像は、撮影された画像とは法律上の扱いが一部異なるため、使える手段を見極める必要があります。この記事では、元恋人から性的ディープフェイクをばらまかれたときに、最初に何をするか、どの法律で何を求められるのかを順に整理します。
元恋人による性的ディープフェイクで起きやすい場面
交際していた相手は、写真や動画だけでなく、共通の知人、勤務先、家族の連絡先まで知っていることが多く、見知らぬ人による被害に比べて、画像が届く先が身近な範囲になりやすいという特徴があります。ご相談の内容は、おおむね次のような形に分かれます。
| 場面 | 主な広がり方 | 検討の中心になる点 |
|---|---|---|
| 知人・職場・家族へ送られた | LINEやメールで個別に送信 | 受け取った人の範囲と、その先への転送 |
| SNSや掲示板に投稿された | 不特定の人が閲覧できる状態 | 削除の早さと、投稿者の特定 |
| 本人だけに送りつけられた | DMやメッセージで直接届く | 繰り返しの有無と、拡散の予告の有無 |
| 画像を示して要求された | 復縁や金銭と引き換えに持ち出す | 脅迫・強要にあたるか |
いずれの場面でも、相手が元交際相手で身元が分かっていることは、手続を進めるうえで大きな手がかりになります。一方で、「相手がやったはずだ」という推測と、それを裏づける記録とは別のものです。まずは記録の確保から始めることが大切です。
気づいたときに最初にすること
送られた事実を記録に残す
残しておきたいのは、画像そのものよりも「いつ、誰から、誰に、どのような形で届いたか」という事実です。
- 送信元のアカウント名・電話番号・メールアドレスが写った画面。
- 送信日時と、画像に添えられたメッセージの文面。
- 投稿の場合は、URL・投稿日時・アカウント名が一緒に写る画面全体のスクリーンショット。
- 画像を受け取った人の名前と、受け取った経緯。
- 元恋人とのやり取りのうち、画像の作成や送信をうかがわせる発言。
受け取った知人に協力を頼む場合は、画像の転送ではなく、送り主が分かる画面のスクリーンショットを撮ってもらう方法が考えられます。記録のための保存は必要な範囲にとどめます。
元恋人を直接問い詰めない
すぐに相手へ連絡して削除を迫りたくなるかもしれませんが、問い詰めた直後にアカウントやデータを消されると、後から送信の事実を示すことが難しくなる場合があります。反発した相手が、さらに別の人へ送ることも考えられます。直接のやり取りは、記録を確保し、方針を決めてからでも遅くはありません。
受け取った人への伝え方
職場の同僚や友人など、すでに画像を受け取った人がいる場合は、「AIで作られた偽の画像であること」「転送や保存をしないでほしいこと」を落ち着いて伝えておくと、それ以上の広がりを抑える助けになります。説明する範囲や言い回しに迷うときは、伝える前に弁護士に相談しておくと、後の手続と食い違いが生じにくくなります。
作り物の画像でも問題にできる法的な根拠
性的ディープフェイクそのものを禁じる法律はまだありませんが、既存の法律を組み合わせることで、刑事・民事の両面から対応を検討できます。
| 根拠 | 問題になりうる場面 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| 名誉毀損罪(刑法230条) | 本人の姿と受け取られる画像を、複数の人に送る・投稿する | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。親告罪 |
| 侮辱罪(刑法231条) | 一見して作り物と分かるが、本人をおとしめる形で広めた | 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金など。親告罪 |
| わいせつ電磁的記録頒布等罪(刑法175条) | 露骨な性的画像を送る・公開する | 画像の内容によっては該当しにくい |
| ストーカー規制法 | 恋愛感情やその恨みを背景に、性的羞恥心を害する画像を本人に送りつける | 繰り返されれば処罰の対象になりうる。警告・禁止命令の手続もある |
| 脅迫罪・強要罪(刑法222条・223条) | 「ばらまく」と告げて、復縁や金銭などを求める | 告げた内容と要求の中身で判断される |
| 不法行為(民法709条・710条) | 名誉・プライバシー・肖像の侵害 | 削除の請求や慰謝料の請求の根拠になる |
「本物ではない」ことは言い訳にならない
名誉毀損罪は、広められた内容が真実かどうかを問わず成立しうる犯罪です。精巧に作られ、見た人が本人の裸や性的な場面だと受け取るおそれのある画像であれば、「作り物だから問題ない」とはいえません。芸能人の顔と裸の画像を合成した、いわゆるアイコラ画像の掲載について、名誉毀損罪が適用された裁判例もあります。
反対に、一目で合成と分かる粗い画像の場合は、名誉毀損の成立が争われることがあります。その場合でも、侮辱罪や民事上の責任が問題になる余地は残ります。
限られた相手への送信と「公然性」
名誉毀損罪や侮辱罪は、「公然と」行われたことが要件です。SNSへの投稿のように不特定多数が見られる状態であれば分かりやすい一方、数人の知人や職場の一部にだけ送られた場合は、そこからさらに広がる可能性があったかどうかが検討されます。送り先が少ないから問題にできない、と早合点せず、送り先と人数、受け取った人どうしの関係などを記録しておくことが大切です。
リベンジポルノ防止法・撮影罪との関係
いわゆるリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)は、実際に撮影された性的な画像を対象としています。そのため、顔写真などから生成された画像には、原則として適用されないと考えられています。性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)も、撮影や撮影された画像の提供を処罰するもので、合成画像の作成・提供は対象外とされています。
ただし、交際中に撮影された実際の性的な画像を素材に加工している場合や、合成画像と一緒に実際の画像も送られている場合には、これらの法律が問題になることがあります。また、素材となった写真が18歳未満のときのものであれば、児童ポルノに関する罪が検討されます。どの画像が何をもとに作られたのかは、使える手段を分ける重要な事情です。
元恋人に対して民事で求められること
相手が元交際相手で身元が分かっている場合、民事では主に次のような事項を求めていきます。
- 手元にある画像データと、生成に使った元の写真の削除。
- 今後、画像を作成・送信・投稿しないことの約束。
- 画像を送った相手の範囲の開示と、受け取った人への削除依頼への協力。
- 名誉やプライバシーを侵害されたことに対する慰謝料の支払い。
- 本人や家族、勤務先へ接触しないことの約束。
これらは、話し合いで合意書にまとめる方法のほか、相手が応じない場合には訴訟や仮処分で求める方法があります。合意書では、約束に反したときの違約金や、削除を確認する方法を定めておくと、約束の実効性を高めやすくなります。慰謝料の額は、広がった範囲や期間、画像の内容、送られた先などによって大きく変わるため、一律の相場で考えることは難しいところです。
ネットに投稿されたときの削除と投稿者の特定
SNSや掲示板に投稿されている場合は、広がりを止めるための削除が最優先になります。各サービスの通報窓口から削除を求めるほか、情報流通プラットフォーム対処法に基づく削除の申出や、任意に応じてもらえない場合の削除の仮処分といった手段があります。大規模なプラットフォームについては、削除の申出に対して一定の期間内に判断し、結果を通知する仕組みが設けられています。
匿名のアカウントから投稿されていて、元恋人の仕業だと考えていても確証がない場合は、発信者情報開示の手続によって投稿者の特定を進めます。通信事業者のアクセス記録の保存期間は数か月程度とされることが多く、時間が経つほど特定が難しくなる点に注意が必要です。
警察への相談と、告訴の期限
被害の内容によっては、警察に相談し、被害届や告訴状を提出して捜査を求めることができます。相手が送りつけや連絡を執拗に続けている場合は、ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令を求める相談も考えられます。
注意したいのが告訴の期限です。名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪で、告訴は原則として「犯人を知った日から6か月以内」に行う必要があります(刑事訴訟法235条)。相手が元恋人だと分かっている場合、この期間は早い時期から進み始めている可能性があります。民事の交渉を先に進めるか、刑事手続を並行させるかは、この期限も踏まえて早めに方針を決めておきたいところです。
「AIで作っただけ」「自分ではない」と言われたら
元恋人に問いただすと、「冗談で作っただけ」「AIが勝手に作った」「送ったのは自分ではない」といった答えが返ってくることがあります。しかし、問題になるのは画像を送った・広めたという行為です。作った動機が冗談であったとしても、それだけで責任がなくなるわけではありません。
送信そのものを否定された場合は、送信元のアカウントや日時、受け取った人の証言、交際中のやり取りとの整合性などを積み重ねて示していくことになります。反論の材料を集める段階から弁護士が関わることで、交渉や手続の見通しを立てやすくなります。
弁護士に依頼した場合の進め方
当事務所では、元交際相手とのトラブルについて、ご本人が相手と直接やり取りをしなくて済むよう、弁護士が窓口となって対応しています。性的ディープフェイクの事案では、おおむね次のような流れで進めます。
- お手元の記録を確認し、画像の作られ方、送り先、相手の言動を整理します。
- 元恋人に受任通知を送り、以後の連絡を弁護士に一本化するよう求めます。
- データの削除、送信先の開示、不拡散と接触禁止の約束、慰謝料などについて交渉します。
- 合意できた内容は、違約金などの条項を含む合意書にまとめます。
- 相手が応じない場合や悪質な場合は、仮処分・訴訟や、警察への告訴を検討します。
ネット上に投稿されている場合は、これと並行して削除の申出や発信者情報開示の手続を進めます。
よくあるご質問
元恋人が作ったという確かな証拠がなくても相談できますか
ご相談いただけます。送信元や時期、交際中のやり取りなどから、どの程度まで相手を特定できるかを一緒に検討します。匿名で投稿されている場合は、発信者情報開示によって投稿者を確かめる手続を取ることもあります。
職場に送られてしまった場合、会社にはどう伝えればよいですか
画像が合成されたものであることと、被害として法的な対応を進めていることを、必要な範囲の担当者に伝えるのが一般的です。社内でさらに転送されないよう、削除と取扱いへの配慮を求めることも考えられます。
警察に告訴すると、元恋人との示談はできなくなりますか
告訴した後に示談の話し合いを行うこともあります。親告罪の場合、起訴される前に告訴を取り消すと処罰を求めないことになるため、示談の条件と告訴の扱いをどう結びつけるかは慎重に検討する必要があります。
画像を消してもらっても、また作られるのではないかと不安です
生成AIでは、元の写真があれば同じような画像を作り直せるため、その不安はもっともです。合意書に、画像だけでなく素材にした写真の削除、今後作成しないことの約束、違反したときの違約金を盛り込み、再発を思いとどまらせる仕組みを整えることが考えられます。
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おわりに
元恋人にAIで性的な画像を作られ、周囲に送られるという被害は、相手が身近な人であるだけに、誰にも言えずに抱え込んでしまう方も少なくありません。記録を残し、相手に直接反応せず、削除・民事・刑事をどの順で進めるかを早めに決めることが、広がりを抑える手がかりになります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


