別れた相手が裸の画像を持っている|拡散される前に削除させる交渉

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

 別れた相手が、交際中に撮った自分の裸や性的な画像・動画を持っている――。まだどこにも公開されてはいないけれど、「いつ拡散されるかわからない」という不安を抱えている方は少なくありません。

 この記事では、画像がまだ相手の手元にあるだけの「拡散される前」の段階に焦点を当て、削除させるための交渉の進め方と、その限界、そして「拡散するぞ」と脅された場合や実際に公開されてしまった場合の対応までを、男女どちらの立場にも共通する形で整理します。

まず知っておきたい「拡散される前」と「公開された後」の違い

 対応を考えるうえで、最初に押さえておきたい前提があります。画像が「まだ公開されていない=相手の手元にあるだけ」の段階と、「実際に拡散・公開された後」の段階では、取れる手段が大きく変わるという点です。

 いわゆるリベンジポルノ防止法(正式名称:私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)が処罰の対象としているのは、性的な画像を不特定または多数の人に「公表」する行為や、公表させる目的で第三者に「提供」する行為です。裏を返せば、相手が画像を持っているというだけでは、原則としてこの法律の処罰対象にはなりません。

 そのため、まだ公開されていない段階では、裁判所の力で「削除しろ」と一方的に強制することは容易ではなく、基本的には相手との話し合い(交渉)による解決が中心になります。ここは、公開後であれば削除請求などの手段が使えるのとは事情が異なる部分で、過度な期待をせずに現実的な進め方を選ぶことが大切です。

拡散される前にできる削除交渉の進め方

 「必ず消させられる」と断言できるものではありませんが、拡散前の段階でも次のような働きかけが考えられます。

1. 削除の依頼と、データの所在の確認

 まずは相手に削除を求めることが出発点です。このとき見落としやすいのが、画像がどこに保存されているかです。撮影に使ったスマートフォンだけでなく、パソコン、タブレット、クラウドストレージ、バックアップ、SNSのダイレクトメッセージ内など、複数の場所にコピーが残っていることがあります。「どこに、いくつ残っているか」を確認したうえで、そのすべてを削除してもらうことが望ましい対応です。

2. 合意書(念書)を交わす

 口頭の約束だけでは、後から「消していない」「まだ持っている」という状態を確認できません。削除したことの確認に加え、今後は同様の画像を撮影・保存・提供・公表しないことを書面(合意書・念書)にまとめ、違反した場合の取り決めを盛り込むことで、抑止力を高められます。

3. 弁護士名義の通知を使う

 当事者同士では感情的になりやすく、話が進まないこともあります。弁護士の名義で削除を求める通知を送ることで、「本気で対応している」という意思を伝え、やり取りを記録として残すことができます。相手が応じやすくなる場合もあります。

「拡散するぞ」と脅されたら

 「言うことを聞かないと画像をばらまく」といった言葉が出てきた場合は、単なる画像の保有とは別の問題に発展しています。

 こうした言動は、内容によっては脅迫罪(刑法222条)にあたる可能性があり、何かを要求する形であれば強要罪(同223条)、金銭を求めるものであれば**恐喝罪(同249条)**が問題になることもあります。

 大切なのは、脅しのやり取りを消さずに証拠として残すことです。LINE・メール・SNSのメッセージは、日時がわかる形でスクリーンショットを保存しておきましょう。

 なお、別れた後にしつこく連絡が続く、つきまとわれるといった状況を伴う場合は、接触自体をやめさせる手段を検討する余地があります。

すでに公開・多数に見せられていたら

 万一、画像がネット上に投稿された、あるいは複数の友人などに見せられていた場合は、段階が変わり、次のような手段が視野に入ります。

 刑事面では、リベンジポルノ防止法の公表罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)や、公表目的で第三者に渡す公表目的提供罪(1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)が問題になり得ます。ネットへの投稿だけでなく、多数の人に見せる行為も対象になり得るとされています。これらは告訴が必要な親告罪です。内容によっては名誉毀損罪などが併せて問題になることもあります。
 ネット上の削除については、旧プロバイダ責任制限法を改正した**情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法、2025年4月1日施行)**の枠組みに基づき、サイト運営者への削除申請(送信防止措置の依頼)を行います。指定された大規模プラットフォーム事業者には、申請受付から原則7日以内に対応を判断する義務が課されました。投稿者が誰かを特定する必要がある場合は発信者情報開示を、急いで削除させたい場合は裁判所への仮処分の申立てを検討します。

 民事面では、精神的苦痛に対する慰謝料などの損害賠償を請求できる場合があります。金額は画像の内容、拡散の範囲、悪質性などによって大きく変わるため一概には言えませんが、事案によっては数十万円から数百万円が認められた例もあります。

証拠として残しておきたいもの

 交渉でも、その後の対応でも、記録は大きな支えになります。相手が画像を持っている・送ってきた事実がわかるやり取り、削除の約束をした際のメッセージ、脅しの文面などを、日時がわかる形で保存しておきましょう。相手を刺激することを恐れて自分から証拠を消してしまわないよう注意してください。

感情的な対応は避け、早めに相談を

 拡散前の交渉は、相手の任意の協力に頼らざるを得ない、繊細な場面です。感情的に相手を責めたり、自分から金銭や条件を差し出す約束をしたりすると、かえって不利になったり、相手に「材料」を与えてしまうことがあります。

 まだ公開されていない段階だからこそ、こじれる前・拡散される前の初動が重要です。一人で抱え込まず、状況の整理と交渉の進め方について、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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