同棲中に飼っていたペットはどちらが引き取る?ペットの帰属トラブル
本記事は、2026年10月時点の法令(ストーカー行為等の規制等に関する法律、刑法、民法、民事保全法)と、ストーカー規制法の解釈・運用について警察が示している留意事項(令和6年10月の通達)に基づいて作成しています。2025年6月1日施行の改正刑法により懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されており、本文の刑の記載はこれに合わせています。
「別れた元交際相手が、いまの交際相手にLINEやSNSで連絡している」「付き合い始めた相手の元恋人から、突然メッセージが届くようになった」。ご相談の現場では、元交際相手との関係を終えたご本人と、連絡を受けている新しい交際相手、その双方からこうしたお話を伺います。
世間では「ブロックすればよい」「相手にしなければそのうち収まる」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、連絡の矛先が本人ではなく新しい交際相手に向かっている場合には、誰が当事者として動くのか、どの法律がどこまで使えるのかが、本人への連絡とは少し違った形になります。
この記事では、元恋人が新しい交際相手に連絡してくる場面に絞り、法的な位置づけと、止めるための段階的な手順、二人での役割分担を整理します。家族や友人など新しい交際相手以外の第三者への接触は別れた相手が家族や友人に接触してくる|第三者を巻き込む嫌がらせへの対応、職場への連絡は元恋人が職場へ電話・押しかけ|会社を巻き込む嫌がらせへの対応で扱っています。
新しい交際相手への連絡は、どのような形で現れるのか
よくある連絡の内容
新しい交際相手に届く連絡には、いくつかの典型があります。
- 交際中の出来事や本人の性格・私生活を、一方的に伝えてくる。
- 「まだ関係は続いている」「早く別れたほうがいい」と、別れを促してくる。
- 本人への伝言を頼む、本人に会わせるよう求めるなど、仲介役をさせようとする。
- 交際中の写真や、性的な内容を含む画像を送ってくる。
- 新しい交際相手その人を中傷する、あるいは危害をほのめかす。
どの形であっても、新しい交際相手にとっては身に覚えのない立場で巻き込まれていることに変わりはありません。一方で、法的にどう評価されるかは、内容と頻度によって大きく変わります。
連絡の背景にあるもの
背景として多いのは、本人への未練や、別れを受け入れられないことへの恨みです。新しい交際相手の存在を知ったことで、二人の関係を揺さぶろうとする動機が生まれることがあります。復縁を求める連絡が本人に向かっている場合については復縁を執拗に迫られる|復縁強要とストーカーの境界で解説しています。
また、荷物の返還やお金の清算を名目にして連絡してくる場合もあります。用件そのものに理由があることもありますが、その用件を新しい交際相手を通して伝える必要があるかは、別に考えるべき問題です。
「一度だけ」と「繰り返し」の違い
一度だけ届いたメッセージと、何度も繰り返される連絡とでは、とれる手段が異なります。一度の連絡ですぐに法的手段へ進むよりも、記録を残しながら様子を見て、連絡が繰り返されたり内容が悪質になったりした段階で次へ進むのが、多くの場合の現実的な流れです。この区別は、後で説明するストーカー規制法の「つきまとい等」と「ストーカー行為」の違いにも関わります。詳しくは連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いをご覧ください。
ストーカー規制法は、新しい交際相手への連絡にも及ぶのか
「密接関係者」という考え方
ストーカー規制法は、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われる「つきまとい等」を規制しています。対象となる相手は、その特定の者本人に限られず、配偶者や親族のほか、「社会生活において密接な関係を有する者」も含まれます(ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項)。
警察の運用上の留意事項では、この密接関係者の具体例として、恋人、友人、職場の上司などが挙げられています。元恋人が、あなたへの未練や恨みから新しい交際相手に連絡している場合、新しい交際相手は「密接関係者」として、この法律の保護の対象になり得ます。
対象になり得る連絡の種類
新しい交際相手への連絡で問題になりやすいのは、次のような行為です。
- 「別れろ」「本人に会わせろ」など、義務のないことを要求する(同法2条1項3号)。
- 断られたにもかかわらず、連続してメッセージや電話を送る(同項5号)。
- 名誉を害する事項を告げる、または知り得る状態に置く(同項7号)。
- 性的羞恥心を害する事項や画像を送る(同項8号)。
このうち名誉を害する事項については、運用上、事実を具体的に摘示するところまでは必要とされていません。後で触れる刑法の名誉毀損罪は「公然と」行われることが要件ですが、ストーカー規制法の7号は、新しい交際相手一人に宛てた連絡であっても対象になり得るという点で、使える場面が異なります。
この法律が及びにくい場面
一方で、ストーカー規制法は「好意の感情」や「それが満たされなかったことへの怨恨」を充足する目的があることを前提にしています。元恋人の敵意が新しい交際相手その人だけに向けられていて、本人への感情と結びつかないような場合には、目的の要件が問題になり、この法律の対象から外れることがあります。
そのような場合でも、内容によっては次の章で触れる刑法や民法の問題として扱える余地があります。どの法律で考えるかは、連絡の文面だけでなく、それまでの経緯も踏まえて判断することになります。
ストーカー規制法以外に問題となる法律
中傷や私生活の暴露
元恋人が新しい交際相手に、本人の過去や私生活について否定的な話を伝えてくる場合、刑法の名誉毀損罪が思い浮かぶかもしれません。ただ、名誉毀損罪は「公然と」事実を摘示することが要件です(刑法230条1項)。新しい交際相手一人に宛てた連絡は、それだけでは公然性が問題になり、刑事事件として扱われるかは事案によります。
民事では、私生活上の事柄をみだりに伝える行為や、名誉感情を傷つける行為が、不法行為として損害賠償の対象になる余地があります(民法709条、710条)。SNSなど不特定多数が見られる場所に投稿された場合は、交際中の写真・動画をSNSに晒された|肖像権・プライバシー侵害での削除もあわせてご覧ください。
危害をほのめかされた場合
脅迫罪は、本人またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に害を加える旨を告知することで成立します(刑法222条)。元恋人が新しい交際相手に対して「あなたに何かする」と告げた場合は、新しい交際相手本人への脅迫として問題になります。
他方で、元恋人があなたに対して「新しい恋人に何かする」と告げた場合は、恋人が「親族」に含まれないため、脅迫罪の条文の対象とは別に考える必要があります。この点は家族・恋人への危害をほのめかされた|脅迫罪の保護範囲で詳しく解説しています。危害のほのめかしがある場合は、法的な評価を待たずに、身の安全の確保と警察への相談を優先してください。
性的な画像を送られた場合
交際中に撮影された性的な画像を新しい交際相手に送る行為は、ストーカー規制法の8号に当たり得るほか、拡散のおそれがあれば削除や不拡散の約束を求める交渉が必要になります。元恋人が画像を持っていること自体への対応は、別れた相手が裸の画像を持っている|拡散される前に削除させる交渉で扱っています。
止めるための手順① 二人でできる初動
記録を残す
最初に行いたいのは記録です。連絡を受けている新しい交際相手の手元で、メッセージの画面を日時、送信者のアカウント名、URLが分かる形で保存しておきます。ブロックや削除をする前に保存しておくことが大切です。
- メッセージ全体が分かるスクリーンショットと、送信日時。
- 送信元のアカウント名・ID・電話番号。
- 電話の着信履歴と、通話した場合はその内容のメモ。
- 連絡を受けて生じた出来事(眠れない、外出を控えたなど)の記録。
保存の方法はLINE・メール・録音データの保存と渡し方|消してはいけない理由、証拠としての整え方は男女トラブルの証拠の集め方|LINE・録音・写真を法的に有効にするで解説しています。
拒絶の意思を一度だけ伝える
身の危険を感じない状況であれば、新しい交際相手から元恋人へ、「今後の連絡はお断りします」と短く一度だけ伝える方法があります。反論や説明を加えず、やり取りを続けないことがポイントです。
ストーカー規制法の5号は「拒まれたにもかかわらず」連続して連絡することを対象にしています。運用上、本人が直接拒む場合だけでなく、警察から相手方に拒絶の意思が伝えられた場合も含まれると解されています。拒絶を明確にしておくことは、その後も連絡が続いたときに、法的な手段へ進むための土台になります。直接伝えることに不安があれば、この段階を飛ばして弁護士や警察に相談してかまいません。
本人が元恋人に直接言いに行かない
新しい交際相手が困っている姿を見ると、あなたが元恋人に直接抗議したくなるのは自然なことです。ただ、感情的なやり取りは連絡の口実を与え、事態を長引かせることがあります。相手を刺激せずに関係を断つ考え方はストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方をご参照ください。
止めるための手順② 第三者の力を借りる段階
弁護士からの通知
記録と拒絶の後も連絡が続く場合、最初の一手として考えられるのが、弁護士から元恋人への通知です。通知では、弁護士が代理人に就いたこと、新しい交際相手や本人への直接の連絡をやめるよう求めること、今後は弁護士を窓口とすること、続く場合には警察への申出や法的手続を検討することを伝えます。
第三者である弁護士が窓口になることで、元恋人が新しい交際相手に連絡する理由そのものがなくなり、多くの場合、ここで連絡が止まります。通知の仕組みは受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるか、実際に通知で嫌がらせが止まった例は【解決事例】元交際相手からの恐喝・なりすまし被害|受任通知で嫌がらせを止めた解決事例で紹介しています。
警察への相談と警告・禁止命令
連絡が繰り返される、内容が悪質になる、危害をほのめかされるといった場合には、警察への相談を並行して進めます。ストーカー規制法では、警察が相手方に「更に反復してはならない」と警告する手続(同法4条)と、公安委員会が禁止命令を出す手続(同法5条)が設けられています。禁止命令の効力は1年で、必要があれば延長されます(同条8項、9項)。
警告の申出は、つきまとい等を受けた人が行うのが基本です。新しい交際相手に連絡が向かっている場合は、新しい交際相手ご本人が警察に相談する形になり、あなたは事情を知る立場として同行し説明を補う役割を担えます。ストーカー行為をした場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法18条)、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(同法19条1項)とされています。手続の流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで解説しています。
裁判所の手続
ストーカー規制法の要件に当たらない場合や、警察の手続と並行して民事でも歯止めをかけたい場合には、裁判所に連絡や接近の禁止を求める仮処分を申し立てる方法があります(民事保全法23条2項)。精神的な苦痛に対する損害賠償を請求することも考えられます。警察の手続と裁判所の手続の使い分けは、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで整理しています。
あなたと新しい交際相手、二人での動き方
誰が当事者として動くのか
連絡を受けているのは新しい交際相手であり、法的な手続の多くは新しい交際相手ご本人が当事者になります。一方で、元恋人の動機や経緯を知っているのはあなたです。弁護士への相談は二人そろって行い、事情の説明はあなたが、連絡の記録や受けた影響の説明は新しい交際相手が担うと、話が整理しやすくなります。
弁護士への依頼も、二人が共同で依頼する形をとれる場合があります。その際は、二人の間で方針が食い違ったときにどうするかを、最初に確認しておくと安心です。
連絡先が伝わった経路を確認する
元恋人がどこから新しい交際相手の連絡先やアカウントを知ったのかを確認しておくことも大切です。共通の知人、SNSでのつながり、あなたの投稿に写り込んだ情報などが経路になっていることがあります。経路をふさがないまま連絡先だけを変えても、同じことが繰り返されるおそれがあります。居場所や個人情報が伝わる経路の止め方は、【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるも参考になります。
避けたい対応
困っている側であっても、対応の仕方によっては自分が責任を問われる立場になりかねません。
- 元恋人に繰り返し抗議の連絡をする。
- 元恋人のことをSNSで公表したり、批判したりする。
- 元恋人の家族や勤務先に連絡して、やめさせるよう求める。
- 新しい交際相手に、元恋人とのやり取りを続けるよう頼む。
止めるための対応は、記録・拒絶・第三者による通知という順序で、こちらからの接触を最小限にしながら進めるのが基本です。
よくあるご質問
元恋人に、私から直接「やめてほしい」と伝えたほうがよいですか。
あなたから直接伝えると、それをきっかけに元恋人との連絡が再開し、かえって連絡の口実を与えることがあります。拒絶の意思は連絡を受けている新しい交際相手から一度だけ短く伝えるか、弁護士や警察を通じて伝える方法をおすすめします。
ブロックしたら、別のアカウントから連絡が来るようになりました。
別のアカウントからの連絡も、記録を残しておけば、同じ人物による一連の行為として評価される余地があります。新しいアカウントからのメッセージも、ブロックの前に保存しておいてください。名義やルートを変えた接触への対応は、【不当要求対応】相手が別の名義・別のルートで接触してきたでも扱っています。
元恋人が「荷物を返したい」「お金を清算したい」と言って、新しい交際相手に連絡してきます。
清算の用件そのものに理由がある場合でも、その連絡を新しい交際相手を通して行う必要はありません。窓口をあなた自身か弁護士に一本化し、新しい交際相手には今後連絡しないよう伝えるのが現実的です。運用上、正当な権利に基づく要求であっても、権利の濫用に当たる態様であればストーカー規制法の対象になり得るとされています。用件がある側から見た線引きは【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で解説しています。
まとめ
- 元恋人が本人への未練や恨みから新しい交際相手に連絡する場合、新しい交際相手は「密接関係者」として保護の対象になり得ます(ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項)。
- 「別れろ」などの要求、拒絶後の連続した連絡、名誉を害する事項の告知、性的な画像の送付が問題になりやすい行為です(同項3号、5号、7号、8号)。
- 名誉毀損罪は公然性が要件のため、一人に宛てた連絡は刑事では扱いにくい一方、民事の不法行為として賠償の対象になる余地があります(刑法230条1項、民法709条、710条)。
- 脅迫罪の保護は本人と親族に及び、恋人への危害をほのめかされた場合は別の枠組みで考えます(刑法222条)。
- 対応は、記録を残す、拒絶の意思を一度だけ伝える、弁護士から通知するという順序が基本です。
- 続く場合は、警察の警告・禁止命令(同法4条、5条)や、裁判所の仮処分(民事保全法23条2項)を検討します。
- 手続の多くは連絡を受けている新しい交際相手が当事者となるため、二人で役割を分けて進めることが大切です。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。元交際相手から新しい交際相手への連絡にお悩みの方、交際相手の元恋人から連絡を受けて困っている方、どちらのお立場からのご相談にも対応しています。
記録の整え方から、弁護士名での通知、警察への相談の進め方まで、状況に応じて一緒に検討します。お二人でのご相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。


