ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方
この記事は2026年9月1日時点の法令に基づいて書いています。ストーカー規制法は、紛失防止タグに関する令和7年12月30日施行の改正と、情報提供に関する令和8年3月10日施行の改正を反映しています。
待ち合わせをしたわけでもないのに、立ち寄った店の近くで相手と鉢合わせる。数日前に行った場所を、後になって会話の中で言い当てられる。気になってかばんの中も車の周りも調べてみたけれど、それらしい機器は出てこない。そうしたご相談をお受けすることがあります。
機器が見つからないと、そこで手が止まってしまう方が少なくありません。けれども、居場所が相手に伝わる経路は、持ち物に取り付けられた機器だけではありません。ふだん使っている端末の設定、家族向けのサービス、写真の保存先、車の通信機能といった、意識しにくいところに経路が残っていることがあります。
この記事では、機器以外の経路にどのようなものがあるか、どの順序で確認し、解除する前に何を残しておくとよいかを整理します。解除したあとに相手の様子が変わった場合の備えにも触れます。
「いま追われている」のか「後から分かられている」のか
最初に切り分けておきたいのは、相手が知っているのがいまの居場所なのか、過ぎた日の行き先なのかという点です。ここを分けずに探すと、疑う先を外すことがあります。
その場で現れる、こちらが移動すると追いかけてくるという知られ方であれば、現在の位置が相手に届いている可能性があります。一方、前日や数日前の行動を後から言われるだけであれば、その時々の位置ではなく、写真や履歴のように後から見られる記録が経路になっていることがあります。思い当たる知られ方から、確認する範囲をある程度絞ることができます。
| 知られている内容 | まず疑ってみる経路 |
|---|---|
| いる場所をその場で知られる | 端末の位置情報共有機能、見守り機能、位置情報を扱うアプリ |
| 前日や数日前の行き先を後から言われる | 写真の共有、クラウドの同期、地図アプリの履歴、決済や予約の記録 |
なお、かばんや車に機器や紛失防止タグを取り付けられていた場合は、法律上の位置づけも、確認や対応の進め方も変わってきます。その型についてはGPS・AirTagで居場所を追跡されたで扱っていますので、あわせてご覧ください。
機器以外に、位置が伝わり得る経路
端末にもともと入っている共有機能
スマートフォンには、専用のアプリを入れなくても自分の位置情報を特定の相手と共有できる機能が備わっています。共有は一度設定するとそのまま続くものが多く、期限を決めていなければ関係が変わった後も生きたままになります。
地図アプリには、目的地へ向かうときに到着予定を自動で相手へ知らせる設定を持つものもあります。この設定が残っていると、特定の場所へ行くたびに相手の手元へ通知が届きます。共有先を見るときは、共有中のものだけでなく、招待を出したまま保留になっているものも含めて確認しておくと見落としが減ります。
写真とクラウドに残る情報
写真には、撮影した場所の情報が記録されていることがあります。この情報が付いたまま写真を渡したり共有アルバムに入れたりすると、写っているものとは関係なく、撮影した場所が相手に伝わり得ます。
交際中や同居中に作った共有アルバムが残っている例も見受けられます。写真がクラウドへ自動で保存される設定で、その保存先を相手も見られる状態であれば、撮った直後に届くことになります。予定表を共有している場合も同じで、予定の場所欄がそのまま行き先を示します。
家族向けの機能と、契約の名義
家族向けの共有機能や見守り機能は、誰が管理者になっているかで見える範囲が変わります。管理者が相手のままだと、自分の端末の操作だけでは外しきれない項目が残ります。
通信会社が用意している家族向けのオプションも同様です。端末や回線の契約者・支払者が相手のままであれば、契約者としての手続きを通じて設定に触れられる余地も残ります。名義や支払いが絡む整理は時間がかかりますので、早めに着手しておくほうが動きやすくなります。
車や持ち物の通信機能
近年の自動車には通信機能を備えたものがあり、専用のアプリから車の位置や走行の記録を確認できる場合があります。アプリの登録者が相手のままだったり、相手の端末に登録が残っていたりすると、こちらが車を使うたびに記録が伝わることになります。
このほか、カーナビに残る目的地の履歴、腕時計型の端末やイヤホン、自転車に付けた機器など、位置が分かるものは身の回りに複数あります。ふだん自分では設定を触らないものほど、確認から漏れがちです。
アカウントそのものに入られている場合
もっとも広く見えてしまうのが、アカウントに入られている場合です。ログインできる状態であれば、位置の共有設定も、写真も、予定表も履歴もまとめて見られてしまいます。個々の設定を切っても、そこから戻されれば意味が薄くなります。
パスワードを知られたままである、二段階認証の受け取り先や復旧用の連絡先が相手のものになっている、といった状態が残っていないかを確認してください。他人のIDとパスワードを入力してサービスにログインする行為は、不正アクセス禁止法に触れるおそれがあります。どこまでが法律の対象になるのかは他人のIDでログインした|不正アクセス禁止法の成立範囲で整理しています。
どこから確認するか、順序をつける理由
思いついたところから設定を切っていくと、全体像が分からないまま一部だけを塞ぐことになりがちです。次の順序をおすすめしています。
- いま画面に出ている状態を、解除する前に残す。
- 自分の端末の共有先の一覧を見る(保留中の招待も含む)。
- アカウントのログイン履歴と、登録されている連絡先・認証の受け取り先を確認する。
- 写真、クラウド、予定表など、記録が共有される設定を見る。
- 家族向けの機能と、端末や回線の契約名義を確認する。
- 車や持ち物など、通信機能のあるものを見る。
前半の3つは自分の端末とアカウントの中で完結し、比較的短い時間で確認できます。後半は相手側の設定や事業者への手続きが関わるため、日数がかかることがあります。
もう一つの理由は、アカウントを押さえないまま個々の共有だけを解除しても、戻される余地が残ることです。共有を切ったのに数日後にまた見られている、という状況は、この順序が前後したときに起こりやすくなります。
解除する前に、画面を残しておく
確認の1番目に「残す」を置いているのには理由があります。共有先の一覧は、解除した瞬間に画面から消えます。誰が、いつから共有先に入っていたのかを後から示す材料が、そこで失われてしまいます。
警察への相談でも、弁護士から相手方へ通知を出す場面でも、判断の土台になるのは残っている記録です。次のようなものが手がかりになります。
- 共有先の一覧と、追加や招待の履歴が分かる画面。
- 共有が始まった時期をうかがわせる表示や通知。
- アカウントへのログイン履歴、見覚えのない端末の一覧。
- 相手が居場所を知っていることをうかがわせる発言(日時が分かる形で)。
- 気づいた経緯と日付を書き留めたメモ。
スクリーンショットや画面収録で記録を残すことは、端末メーカーが公開している安全のための案内でも紹介されています。撮影したあとも、元のデータは消さずに残しておいてください。
共有をやめてほしいと相手に伝えた場合は、そのやり取りも残しておくことをおすすめします。次に述べるとおり、いつ承諾を撤回したのかが評価の分かれ目になり得るためです。
法律上はどう位置づけられるのか
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、相手の承諾を得ないでその所持する位置情報記録・送信装置に係る位置情報を取得する行為などを、「位置情報無承諾取得等」として規制しています(法2条3項)。
ここでいう装置は、専用の機器に限られていません。警視庁の解説では、この類型の例として、相手のスマートフォン等を勝手に操作し、記録されている位置情報を画面上に表示させて見る行為が挙げられています。愛知県警察が公表している資料でも、相手方のスマートフォンに無断でインストールした位置情報アプリケーションを利用して位置情報を取得する行為が例に挙げられています。
交際していた時期などに自分から共有を許可していた場合はどうか、というご質問もよくいただきます。承諾は後から撤回できると考えられており、やめてほしいと伝えた後も見続けているのであれば、「承諾を得ないで」の取得と評価され得ます。撤回を伝えた事実が残っているかが分かれ目になりやすいのは、このためです。
なお、この類型には、つきまとい等の一部の行為に付いている「不安を覚えさせるような方法により行われた場合に限る」という限定が置かれていません。直接何かを言われていない、黙って見られているだけという状態でも、対象になり得ます。
| 行為 | 定められている刑 |
|---|---|
| ストーカー行為をした場合(法18条) | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 |
| 禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合(法19条) | 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金 |
| 禁止命令等に違反した場合(法20条) | 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
令和7年12月30日施行の改正では、紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等が規制対象に加わったほか、被害を受けている方からの申出がなくても警察が職権で警告を行える仕組みが設けられました。援助に努める主体には、その方を雇用している事業者や在学する学校の長が加えられています。令和8年3月10日からは、警察本部長等が、情報を提供するおそれのある者に対し提供しないよう求めることができるようになりました。
このほか、私生活上の行動を継続的に把握されていた場合には、民法709条・710条に基づく損害賠償の問題も生じ得ます。
解除したあとに相手の様子が変わったとき
共有の解除は、見えていたものが見えなくなるという点で、相手にとって「気づかれた」と分かるきっかけになることがあります。ここを想定しておかないと、解除した直後に落ち着かない時期を迎えることがあります。
態度の変わり方には、おおむね次のような型があります。
- 連絡の回数が増える、あるいは口調が変わる。
- これまで来なかった場所に直接現れる。
- 別の経路であらためて設定し直そうとする。
備えとしては、解除の前後で警察相談専用電話「#9110」に相談しておく方法があります。相談したこと自体が記録に残るため、被害届を出すかどうかを決めていない段階でも意味があります。先ほどの職権による警告は、申し出をためらう段階の方にとって、選べる手立てが一つ増えたものといえます。
勤務先や学校に事情を伝えておくことも、状況によっては現実的な備えになります。
解除にあたって相手へ何をどう伝えるかは、慎重に考えたいところです。伝え方によっては、やり取りが再開するきっかけになってしまうことがあります。接触を減らしながら関係を整理していく進め方については、ストーカーを刺激せず関係を断つでくわしく扱っています。
なお、事実を確かめたい気持ちから相手のアカウントや端末をのぞくことは、立場が入れ替わってしまうおそれがあるため避けてください。
位置情報の経路は、一つ見つけて塞げば終わり、というものではないことがあります。どこまで確認したか、何が残っているか、相手が何を知っているように見えるか。この3点を書き出すだけでも、次に打つ手は考えやすくなります。全部を確かめきれない段階でも、残っている記録から組み立てていくことはできます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


