交際中の写真・動画をSNSに晒された|肖像権・プライバシー侵害での削除

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

 交際中に撮った写真や動画を、別れたあとに元交際相手がSNSや掲示板に投稿してしまう。当事務所には、男女を問わずこうしたご相談が寄せられます。

 「性的な画像ではないから、法律では守ってもらえないのではないか」と考えて相談をためらう方が少なくありませんが、そうとは限りません。ツーショット写真や旅行中の動画、会話画面のスクリーンショットであっても、肖像権やプライバシーの侵害として削除や損害賠償の対象になり得ます。

 一方で、「投稿さえ消せば終わり」と考えて動くと、あとで責任を追及するための材料を自分で失ってしまうこともあります。

 この記事では、晒された写真・動画をどう評価し、どの順番で手を打つべきかを整理します。

この記事の要点

  • 「撮影に同意したこと」と「公開に同意したこと」は別に判断される
  • 性的な画像かどうかで、使える法律と刑事の可否が変わる
  • 削除を急ぐ前に、証拠を確保する順番を守る
  • 削除には、本人・プラットフォーム・裁判所の3つのルートがある
  • 相手が誰か分かっていても、匿名アカウントなら発信者の特定手続が必要になることがある

まず押さえておきたい3つの前提

「撮影に同意した」=「公開に同意した」ではない

 交際中に笑顔で写真に写っていた、自分から送った写真だった——こうした事情から「同意していたはずだ」と反論されることがあります。

 しかし、撮ることを受け入れたことと、不特定多数に公開されることを受け入れたことは、法的には別の話です。二人の間だけで共有する前提で撮った写真を、別れたあとに第三者に見える場所へ投稿する行為は、当初の同意の範囲を超えていると評価される余地があります。

 ただし、相手が「黙示の同意があった」と主張してくること自体は珍しくありません。交際中に「載せていい?」「これは二人だけね」といったやり取りが残っていれば、その反論を封じる材料になります。

性的な画像かどうかで、使える法律が変わる

 ここが最も誤解されやすい点です。整理すると次のようになります。

晒されたもの主に使える法的根拠刑事の可能性
性的な画像・動画リベンジポルノ防止法、肖像権・プライバシー侵害あり(公表罪など)
顔が写った日常写真・動画肖像権侵害、プライバシー侵害添えられた文章次第(名誉毀損・侮辱など)
会話画面・DMのスクショプライバシー侵害、名誉毀損内容次第
実名・勤務先・住所などの個人情報プライバシー侵害内容次第

 つまり、性的な画像でなくても民事上の請求や削除請求は可能である一方、刑事事件として扱われるかどうかは別途の判断になる、という構造です。

消させることを急ぐと、追及の材料が消える

 投稿が消えれば安心ではありますが、削除されると同時に、誰が・いつ・何を投稿したのかを示す証拠も失われます。相手を特定する手続にも、損害賠償を請求する場面にも、この記録が必要になります。

 順序としては、保存が先、削除の要求は後です。

晒された写真・動画は、法的にどう評価されるか

肖像権の侵害

 「肖像権」という条文が刑法や民法にあるわけではありませんが、判例上認められた人格的な利益です。

 最高裁は、人はみだりに自分の容ぼう等を撮影されない人格的利益を有するとしたうえで、撮影が違法かどうかは、撮影された人の社会的地位、活動内容、撮影の場所・目的・態様・必要性などを総合考慮し、その侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかで判断すべきとしています(最高裁平成17年11月10日判決)。そして、撮影が違法と評価される場合には、その写真を公表する行為も違法性を持つとされています。

 この枠組みに照らすと、私的な空間で撮られた、公共の関心事とはいえない写真を、本人の意思に反して公開する行為は、受忍限度を超えると評価されやすい類型といえます。近時の裁判例でも、私的領域で撮影された情報を公表し、それが公共の利害に関する事項でない場合を、違法となり得る典型として整理する考え方が示されています。

プライバシーの侵害

 プライバシー侵害は、一般に、①私生活上の事実または事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準として公開を欲しないと認められること、③まだ一般に知られていないこと、という要素で判断されてきました。

 注意したいのは、内容が真実であることは反論になりません。むしろ、真実の私生活が公開されたからこそ侵害が成立する、という関係にあります。「本当のことを書いただけだ」という相手の言い分は、プライバシー侵害の場面では通りにくいものです。

名誉毀損・侮辱

 写真そのものより、添えられた文章が問題になることもあります。社会的評価を下げる具体的な事実を摘示すれば名誉毀損(刑法230条/3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)、事実を示さずに侮辱的な表現をすれば侮辱罪(同231条/1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金等)が問題になり得ます。

 名誉毀損も、内容が真実であっても成立し得ます。免責されるのは、公共の利害に関する事実で、専ら公益を図る目的があり、真実であること等が認められる場合に限られますが、私人同士の交際に関する投稿でこれが認められる場面は限定的です。

 また、公開の範囲が少人数でも、そこから広まる可能性があれば「公然と」の要件を満たすと判断されることがあります(伝播性)。鍵付きアカウントや小さなグループだから安全、とは言い切れません。

性的な画像・動画の場合

 いわゆるリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)は、第三者が撮影対象者を特定できる方法で、性的な画像を不特定または多数の者に提供する行為を公表罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)、拡散させる目的で第三者に渡す行為を公表目的提供罪(1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)として処罰しています。

 押さえておきたいのは次の3点です。

  • 対象は「性的な」画像に限られ、日常写真は含まれない
  • 相手が画像を持っているだけでは処罰の対象にならない(公表・提供が処罰対象)
  • 親告罪であり、告訴がなければ起訴されない

 顔にモザイクをかけていても、背景や音声、添えられた情報から本人が分かる場合には「特定できる方法」と評価される余地があります。

著作権が使える場合と、使えない場合

 意外に見落とされるのが、写真の著作権は原則として撮影した人に帰属するという点です。

 自分で撮った自撮り写真を相手が無断で公開した場合には、肖像権に加えて著作権の侵害も主張できる可能性があります。反対に、相手が撮った写真であれば、著作権の主張はできません。使える武器が事案によって変わるということです。

削除を求める3つのルート

ルート1:投稿した本人に求める

 元交際相手が投稿者だと分かっている場合、本人に削除を求めるのが最短ではあります。

 ただし、感情的なやり取りになると、次のような不利益が生じ得ます。

  • 削除と同時に証拠が消える
  • 「消さないと会社に言う」といった言い方は、こちらが脅迫・強要を問われかねない
  • 繰り返しの連絡が、つきま証拠を保存したうえで、弁護士名義の書面で削除と再投稿の禁止を求める方法をとると、記録が残り、やり取りの窓口も一本化できます。
  • とい行為と評価されるおそれがある

 証拠を保存したうえで、弁護士名義の書面で削除と再投稿の禁止を求める方法をとると、記録が残り、やり取りの窓口も一本化できます。

ルート2:プラットフォームに削除を申し出る

 X、Instagram、TikTok、YouTube、掲示板などの多くには、権利侵害を理由とする削除申出の窓口が設けられています。

 2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)により、総務大臣から大規模特定電気通信役務提供者として指定された事業者には、削除申出の窓口を設けて公表すること、削除基準を分かりやすく公表すること、申出に対する調査結果を一定期間内に申出者へ通知することが義務づけられました。この「一定期間」は、法律上は申出を受けた日から14日以内の範囲で総務省令に委ねられており、省令では7日間と定められています(2025年3月11日公表の省令・ガイドライン)。

 指定事業者にはGoogle(YouTube)、LINEヤフー、Meta(Facebook・Instagram・Threads)、TikTok、X、ニコニコ、Amebaブログ、Pinterest、爆サイ.comを運営する事業者などが含まれています(総務省公表)。

 もっとも、この制度は事業者に「必ず削除せよ」と命じるものではなく、判断して通知する義務を課すものです。削除しないという回答が返ってくることもあります。削除依頼の方法が分からない場合は、総務省の支援事業である違法・有害情報相談センターに相談する方法もあります。 

ルート3:裁判所に仮処分を申し立てる

 任意の削除に応じてもらえない場合、人格権に基づく差止めとして、裁判所に投稿削除の仮処分を申し立てる方法があります。通常の訴訟に比べて短期間で結論が得られるため、拡散が進んでいる事案で用いられます。

 なお、相手が元交際相手だと分かっていても、匿名アカウントからの投稿であれば、その人が投稿したことを裁判で立証するために発信者情報開示の手続が必要になることがあります。「犯人は分かっているのだから開示は要らない」とは限らない点は、あらかじめ知っておいてください。

削除と並行して検討できること

  • 損害賠償(慰謝料)の請求:民法709条・710条に基づく請求です。金額は、公開の範囲、期間、内容の性質、実際に生じた不利益などによって幅があります。
  • 再投稿の禁止:削除だけでは、別のアカウントで再投稿されるおそれが残ります。合意書の中に、再投稿の禁止、画像データの削除、違反時の取り決めを盛り込むことを検討します。
  • 刑事の告訴:性的画像であればリベンジポルノ防止法違反、投稿内容によっては名誉毀損罪・侮辱罪が問題になります。いずれも親告罪です。

期限に注意が必要な4つの数字

 対応が遅れるほど選択肢が狭まります。

内容期限の目安
名誉毀損罪・侮辱罪、リベンジポルノ防止法違反の告訴犯人を知った日から6か月
民事の損害賠償請求(不法行為)損害と加害者を知った時から3年(行為時から20年)
通信ログの保存期間おおむね3か月から6か月程度とされる
大規模事業者への削除申出に対する通知原則7日以内

 特に、刑事の告訴期間6か月は、民事の3年よりはるかに短い点に注意が必要です。

避けたい対応・先にとりたい対応

避けたい対応

  1. 相手の写真を晒し返す(立場が入れ替わり、双方が責任を負う事態になり得ます)
  2. 保存する前に削除だけを求める
  3. 感情的なDMや電話を繰り返す
  4. 自宅や職場に押しかけて直接談判する
  5. 「そのうち消えるだろう」と放置する

先にとりたい対応

  1. 投稿URL、アカウント名、投稿日時が分かる形で画面を保存する(スクリーンショットに加え、URLの控えも)
  2. 転載や引用がないか、範囲を確認して記録する
  3. 撮影・公開に関するやり取り(同意の有無が分かるLINEなど)を保存する
  4. プラットフォームの削除申出窓口を確認する
  5. 生活上の実害(退職、通院など)が生じたら、その記録も残す

よくあるご質問

Q. 交際中は「載せていいよ」と言っていました。撤回できますか。

 同意はその時点の関係を前提としたものであり、撤回できないものではありません。撤回の意思を伝えた事実を記録に残しておくことが重要です。ただし、当時の同意の有無や範囲が争点になりやすいため、やり取りの保存が効いてきます。

Q. 顔が写っていない写真でも対象になりますか。

 顔が写っていなくても、体型、ほくろ、部屋の様子、背景、添えられた氏名や勤務先などから本人が分かる場合には、権利侵害と評価される余地があります。「顔が写っていないから諦める」必要はありません。

Q. 男性が被害を受けた場合も同じですか。

 同じです。肖像権、プライバシー、名誉毀損、リベンジポルノ防止法のいずれも、性別による区別はありません。ご相談をためらう方が多い分、対応が遅れて期限を過ぎてしまう例が見られます。

Q. 相手が「削除するかわりに金を払え」「復縁しなければ消さない」と言ってきました。

 削除を人質にした要求は、内容によって脅迫罪や強要罪、恐喝罪の問題になり得ます。その場で応じたり支払ったりせず、やり取りを保存したうえでご相談ください。

おわりに

 写真や動画を晒された状況では、「早く消したい」という気持ちと、「きちんと責任を追及したい」という気持ちが同時に生じます。この二つは、順番を誤ると両立しません。

 まず保存し、範囲を確認し、そのうえで削除と請求を組み立てる。この順序を守るだけで、選択できる手段は大きく変わります。判断に迷う段階でも、証拠が残っているうちにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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