別れた相手が家族や友人に接触してくる|第三者を巻き込む嫌がらせへの対応

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

 交際が終わったあと、相手からの連絡が自分にではなく、実家の親、きょうだい、共通の友人のところへ届く——。ご相談のなかには、こうした形で問題が表面化するケースがあります。

 本人への連絡は着信拒否やブロックで一度は止められても、家族や友人の連絡先までは遮断できません。しかも「心配している」「話を聞いてほしいだけ」といった体裁をとられると、受け取った家族や友人の側も、どう扱ってよいか判断がつきません。結果として、本人が知らないところでやり取りが進み、住所や勤務先といった情報が渡ってしまうことがあります。

 この記事では、別れた相手が家族・友人という第三者に接触してくる場面について、法的にどう位置づけられるのか、そして周囲にどう協力を求めればよいのかを整理します。

なお、「家族に危害を加える」と告げられた段階(実際の接触には至っていない段階)の話は、脅迫罪の保護範囲という別の問題になります。そちらは当事務所の別コラムをご覧ください。本稿は、すでに家族や友人のところへ接触が及んでいる場面を扱います。

1. 「第三者を巻き込む」には二つの意味がある

 家族や友人への接触を整理するとき、混ぜずに考えたい側面が二つあります。

 ひとつは、家族・友人が被害を受けているという側面です。 深夜の電話、実家への訪問、SNSでのメッセージ。これらは、本人ではなく家族・友人自身が直接受けている被害です。

 もうひとつは、家族・友人が情報の経路になってしまうという側面です。 悪意がなくても、「今どこに住んでいるの」「まだあの会社にいるの」といった問いかけに何気なく答えることで、本人が伝えていない情報が渡ります。相手が家族や友人を選んで接触してくる背景には、この経路を期待している場合があります。

 対応の優先順位は、この二つのどちらが前面に出ているかで変わります。押しかけや威圧的な言動が中心なら、家族自身の安全確保と警察対応が先に来ます。穏当な口調で近況を尋ねる形が中心なら、情報の流れを止めることが先に来ます。

2. 家族・友人への接触も、ストーカー規制法の射程に入る

 「自分ではなく親に電話がかかってきているだけだから、ストーカーの問題ではない」と考えて相談をためらう方がいらっしゃいますが、条文の作りはそうなっていません。

 ストーカー規制法2条1項は、規制の対象となる「つきまとい等」を、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、「当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者」 に対して行われる行為として定めています。警察庁や各都道府県警の広報では、この部分が「その家族等」と説明されています。

 つまり、本人だけでなく、家族や、社会生活上密接な関係にある人に向けられた行為も、はじめから法の対象に含まれています。 同居していない親、きょうだい、長年の友人などが「密接な関係を有する者」に当たるかは個別の判断になりますが、対象外と決まっているわけではありません。

 家族・友人への接触で問題になりやすいのは、次のような類型です。

  • 実家や友人宅に押し掛ける、その付近をみだりにうろつく
  • 「本人に会わせてほしい」と面会や復縁の仲介を求める
  • 拒まれたにもかかわらず、連続して電話をかける
  • 本人の名誉を害する事項を家族や友人に告げる

 なお、「ストーカー行為」として処罰の対象になるのは、これらを反復して行った場合です。本人に向けられた行為と家族に向けられた行為をどう評価するかは、経過全体をみたうえでの個別判断になりますので、「家族への連絡は数えられない」と自己判断せずに、経過をひとまとめにして相談されることをおすすめします。

 また、押し掛けやうろつきなどの類型については、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」で行われたことが問われます。記録するときは、回数だけでなく態様(何時ごろか、どこで、どのくらいの時間いたか、どんな様子だったか、こちらはどう対応したか)を残しておくと、判断材料になります。

 つきまとい等の類型全体や、警告から禁止命令に至る手続の詳細は、別コラムで解説しています。

3. 家族・友人は、自分の名前で動ける立場でもある

 見落とされやすいのが、家族や友人は「巻き込まれた人」であると同時に、その人自身が被害者として相談・通報できる立場だという点です。

 家族や友人に向けられた行為が、次のような犯罪に当たる場合があります。

起きていること問題となり得る罪法定刑
実家や友人宅に入る/退去を求めても出ない住居侵入・不退去罪(刑法130条)3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金
家族の店舗や職場での業務を妨げる偽計業務妨害・威力業務妨害罪(233条後段・234条)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
家族・友人自身に害を加えると告げる脅迫罪(222条)2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
本人の評判を落とす事実を言いふらす名誉毀損罪(230条)・侮辱罪(231条)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金/1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金など
義務のないことを強いる/金銭を要求する強要罪(223条)・恐喝罪(249条)3年以下の拘禁刑/10年以下の拘禁刑

 ここで実務上意味を持つのは、住居侵入・不退去や業務妨害については、被害を受けた家族や友人自身が、自分の名前で110番通報や被害届の提出をできるという点です。ご本人が「自分が前に出ると相手を刺激する」と感じている場合でも、家族の側から手続を進められる余地があります。

 一方で、注意点もあります。名誉毀損罪・侮辱罪は親告罪であり、告訴期間は犯人を知った日から6か月です(刑法232条、刑事訴訟法235条1項)。民事の損害賠償請求の時効(民法724条)より短いため、「様子を見ているうちに期間が過ぎていた」ということが起こり得ます。

 民事についても、家族や友人が直接の対象となった行為であれば、その家族・友人自身が慰謝料を請求できる場合があります。他方、本人が受けた被害について家族が固有の慰謝料を請求できる場面は限られており、こちらは別の枠組みの問題になります。

4. 家族・友人に何を伝え、何を頼むか

 この場面でもっとも実務的な差が出るのが、周囲への伝え方です。何も言わないまま連絡が届くと、家族や友人は善意で対応してしまいます。

伝えておきたいこと

 交際の経緯を細かく説明する必要はありません。共有すべきなのは、これから起きうることと、そのときどうしてほしいかです。

  1. 誰から、どういう連絡が来る可能性があるか
  2. こちらはすでに連絡を断る意思を伝えていること
  3. 連絡が来たときにしてほしい対応
  4. 記録を残してほしいこと
  5. どうなったら110番してよいか(居座る、大声を出す、帰らない、危害をほのめかす など)

お願いしておきたい対応

  • 取り次がない。 「本人に代わって」「連絡先を教えて」には応じず、対応できない旨だけを伝える
  • 伝言役にならない。 「こう言っていた」を運ぶこと自体が、やり取りの継続になります
  • 情報を渡さない。 住所、勤務先、生活のリズム、SNSのアカウント、交際状況。世間話の流れで出てしまいやすい部分です
  • 会わない、呼び出しに応じない。 「一度だけ話せば終わる」という提案には応じない
  • 記録を残す。 着信日時、内容、対応をメモし、メッセージはスクリーンショットを保存する

「良かれと思った対応」が招くこと

 家族や友人が、本人のためを思って相手を説得したり、事情を聞き出そうとしたりすることがあります。しかし多くの場合、次のような結果につながります。

  • やり取りの窓口ができてしまう。 一度応答すると、そこが継続的な連絡先になります
  • 情報が渡る。 説得のために近況を語ることで、意図せず経路になります
  • 家族の側が法的に不利な立場に立つおそれがある。 相手の自宅へ乗り込む、強い言葉で要求する、といった対応は、こちら側が住居侵入や脅迫・強要を問われる余地を生みます。「話をつけてくる」という申し出は、丁重に止めるのが安全です

5. 手元にない証拠をどう確保するか

 第三者を巻き込む嫌がらせに特有の難しさが、証拠が自分の手元にないことです。

 家族に届いたメッセージは家族の端末にあり、着信履歴は新しい着信で押し出されていきます。友人がやり取りを削除してしまうこともあります。「あとで必要になるかもしれないから、消さずに残しておいてほしい」と早い段階で伝えておくことが、後の選択肢を広げます。

  • メッセージは、家族・友人の端末に元データを残したうえで、スクリーンショットを共有してもらう
  • 着信履歴は、画面を撮影して日時が分かる形で残す
  • 訪問があった場合は、日時・滞在時間・言われた内容・こちらの対応をその日のうちにメモしてもらう
  • 集約先を一つ決めておく(本人か、代理人となる弁護士か)

 家族や友人にとっても、記録を残すこと自体が「自分が当事者として相談できる材料」になります。

6. 使える制度と、その限界

警察に相談する

 まずは警察相談専用電話「#9110」、緊急時は110番です。ストーカー規制法では、警察本部長等による警告(4条)、公安委員会による禁止命令等(5条)という手続があり、禁止命令に違反した場合の罰則も定められています。

 令和7年の改正法(2025年12月30日施行)では、被害者の申出がなくても警察の職権で警告ができる仕組みが設けられました。 「自分が申し出たと相手に知られたくない」という理由で相談をためらってきた方にとって、選択肢が広がった部分です。

 また、2026年3月10日施行の規定により、警察本部長等は、ストーカー行為等をするおそれのある者に情報を提供するおそれがある者に対し、情報提供を行わないよう求めることができるようになりました。ただし、これは主に探偵業者等を念頭に置いた仕組みであり、家族や友人経由の情報の流れを直接止めるものではありません。 そちらは、前述のとおり周囲への働きかけで対応することになります。

裁判所の保護命令(同居していた相手の場合)

 交際解消前に生活の本拠を共にしていた相手であれば、配偶者暴力防止法(DV防止法)の保護命令を検討できる場合があります。

 このなかに、被害者の親族等への接近禁止命令(10条4項)があります。被害者の親族(成年の子を含みます)や、被害者と社会生活において密接な関係を有する人につきまとうこと、その住居や勤務先の付近をはいかいすることを禁止する命令です。

 実務上、押さえておきたい点が二つあります。ひとつは、この命令の申立てには、対象となる親族等本人の同意が必要であること(15歳未満の場合は法定代理人の同意)。もうひとつは、本人への接近禁止命令が出ていることが前提であり、その効力が続く期間に限られることです。

 同意が必要ということは、家族や友人に事情を話さないままでは使えない制度だということでもあります。「知られたくない」という気持ちと、制度を使えるかどうかが直結する場面です。

 なお、同居していなかった交際相手はDV防止法の対象外です。ストーカー規制法とDV防止法のどちらで対応するかについては、別コラムで整理しています。

弁護士に依頼する

  • 窓口の一本化:代理人名義で通知を出し、以後の連絡先を弁護士に集約します。家族や友人に「弁護士に依頼したので、そちらへ」と伝えてもらう形をとれます
  • 接触禁止条項を含む合意書:本人だけでなく、家族・友人への接触も対象に含めた形で取り決めます
  • 面談強要禁止の仮処分:人格権に基づき、面会の強要や押しかけの差止めを求める方法です
  • 損害賠償請求:精神的苦痛についての慰謝料のほか、実害が生じている場合はその賠償

 どの手段が適しているかは、相手との関係、経過、そして「処罰を求めたいのか」「静かに関係を断ちたいのか」という優先順位によって変わります。

7. よくあるご質問

Q. 家族に知らせたくないのですが、黙っておくことはできますか。

 お気持ちは理解できますが、すでに家族へ接触が及んでいる場合、伏せておくことのリスクのほうが大きくなります。家族が事情を知らないまま善意で応答し、情報が渡ってしまうためです。交際の詳細まで話す必要はなく、「連絡が来ても取り次がないでほしい」という一点だけでも共有しておく意味があります。

Q. 相手は「心配して連絡しただけ」と言っています。それでも問題になりますか。

 動機として述べられた説明と、法的な評価は別です。ストーカー規制法では行為の目的(好意の感情や怨恨の感情を充足する目的)が要件となりますが、その判断はやり取りの内容や経過全体からなされます。本人が明確に連絡を断っているにもかかわらず、家族を通じて接触が続いている、という経過そのものが評価の対象になります。

Q. 友人は「密接な関係を有する者」に当たりますか。

 一律に決まるものではなく、関係の深さや交流の実態から個別に判断されます。長年の親友や、日常的に行き来のある相手であれば該当する余地があります。仮に該当しないと判断される場合でも、住居侵入・不退去や業務妨害、名誉毀損といった別の枠組みで対応できることがあります。

Q. 家族から「もう連絡しないでほしい」と伝えてもらうのは有効ですか。

 拒否の意思が示されたという事実は、後の手続で意味を持ちます。ただし、やり取りが往復すること自体がリスクでもあるため、一度、簡潔に、記録が残る形で伝えるにとどめ、それ以降は応答しない形が安全です。繰り返しの説得や交渉は、専門家を窓口にしたうえで行うことをおすすめします。

まとめ

  • 家族や友人への接触も、ストーカー規制法の対象からはじめから外れているわけではありません
  • 家族・友人は「守る対象」であると同時に、自分の名前で相談・通報できる立場でもあります
  • 周囲には、交際の経緯ではなく「連絡が来たときの対応」を具体的に共有しておくことが有効です
  • 良かれと思った説得や交渉は、窓口を作り、情報を渡し、こちら側の立場を悪くすることがあります
  • 証拠が手元にないという特有の問題があるため、「消さずに残す」を早めに伝えておくことが後の選択肢を広げます

 一人で、あるいはご家族だけで対応しようとすると、判断に迷ううちに接触が続いてしまうことがあります。経過を整理した段階で、早めに専門家にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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