【男女トラブル】交際中に相手の家族と金銭のやり取りがあった|別れた後の清算

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は2026年9月時点の法令を前提に、一般的な考え方を整理したものです。実際の結論は、お金が動いた経緯と残っている記録によって変わります。


交際が終わったあとの金銭の清算というと、二人の間で動いたお金だけが対象になりそうに見えます。ところが実際のご相談では、交際相手の親やきょうだいとの間でもお金が動いていた、という事情が後から出てくることが少なくありません。
 「彼の母親に立て替えてもらった分が残っている」「彼女の父親に貸したままになっている」「結婚の準備として先方の親から援助を受けた」。交際中は家族ぐるみの付き合いが自然に生まれますが、別れた後になると、この部分だけが宙に浮きます。本稿では、交際相手の家族との間で動いたお金について、何がどこまで清算の対象になるのかを整理します。

交際相手の家族とのお金が問題になる場面

 ご相談の中で実際に出てくるのは、次のような形です。

  • 交際相手の親から現金を借り、借用書は作っていません。
  • 交際相手の親が、こちらの家賃やカードの支払いを立て替えました。
  • こちらが交際相手の親に頼まれてお金を貸し、返済が止まっています。
  • 結婚の準備として、相手の親から新居の費用や結納金を受け取りました。
  • 相手の実家で同居し、生活費として毎月一定額を渡していました。
  • 車や保険の契約が、相手の親の名義のままになっています。


 いずれも「二人の問題」として始まりながら、清算の段階では当事者が二人ではなくなっている点が共通します。ここを整理しないまま元交際相手とだけ話を進めても、後から家族の側で蒸し返されることがあります。なお、交際相手本人との間で動いたお金の扱いについては交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?で整理しています。

最初に分けるのは「誰と誰の間の話か」

 お金のやり取りは、渡した人と受け取った人の間に生じます。交際相手を介して手渡されたお金であっても、出したのが親であれば、返す相手は親です。逆に、こちらが相手の親に貸したお金を、別れた元交際相手に請求することはできません。

お金の動き当事者になるのは誰か返還を求められる立場にある人
相手の親から本人が借りた相手の親と本人相手の親
相手の親が本人の支払いを肩代わりした相手の親と本人相手の親
本人が相手の親に貸した本人と相手の親本人
相手の親から交際相手に渡り、交際相手が使った相手の親と交際相手相手の親(交際相手に対して)
二人の共通の出費を相手の親が負担した負担の趣旨により異なる趣旨により異なる


 まとめて処理したいのであれば、その前提として、誰が誰に対して何を求めているのかを一つずつ書き出す作業が必要になります。誰の債務なのかを確かめるという考え方は、【不当要求対応】同居していない家族の名義で請求が来た|誰の債務なのかでも扱っています。

渡し切りだったのか、返す約束があったのか

 金銭のやり取りの性質は、大きく贈与貸付けに分かれます。贈与は、無償で財産を与える意思を示し、相手が受け取ることで成立します(民法549条)。書面によらない贈与は各当事者が解除できますが、すでに履行が終わった部分についてはこの限りではありません(民法550条)。実際に渡ってしまったお金は、後から「やはり贈与をやめる」と言っても戻らないのが原則です。
 一方、貸付けにあたる金銭消費貸借は、同じ額を返すと約束して受け取ることで成立します(民法587条)。ここで重要なのは、返す約束があったことは、返還を求める側が示す必要があるという点です。両者の見分け方は別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで整理しています。
 交際相手の親が出したお金には、援助の意味合いが混ざっていることがあります。当時のやり取りに「返さなくていい」という言葉があれば贈与を、返済時期に触れた文面があれば貸付けを裏づける材料になります。どちらもない場合は、金額の大きさや渡された経緯といった事情から評価されます。

相手の家族が肩代わりして支払った場合

 交際相手の親が、こちらの家賃やローンを代わりに支払っていたケースです。債務の弁済は第三者もすることができます(民法474条1項)。ただし、弁済について正当な利益を持たない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができません(同条2項)。親族や知人であるというだけでは、ここでいう正当な利益にはあたらないと考えられています。
 肩代わりが有効に行われた場合、支払った側は本人に対して返還を求める立場に立ちます。頼まれて支払ったのであればその費用の償還を、頼まれずに支払ったのであれば本人が支払いを免れた分について不当利得の返還(民法703条)を求める形が考えられます。いずれにしても、支払った人が、支払ってもらった人に対して求めるという関係です。肩代わりが複数回ある場合は、どの支払いがどの債務に対応するのかを明細の形で突き合わせておくことが交渉の基礎になります。肩代わりや連帯保証の扱いは交際相手の借金を肩代わり・連帯保証したとき|返済義務の有無と、払ったお金の取り戻し方でも解説しています。

結婚を前提に出されたお金

 結納金、新居の初期費用、式場の申込金、家具や家電の購入費といった支出は、婚姻が成立することを前提に出されている点で、通常の贈与とは性質が異なります。婚姻に至らなかった場合には、目的が達せられなかったものとして返還の対象になり得る、というのが一般的な整理です。結納金そのものの扱いは結婚を前提に渡したお金・結納金は返還請求できるかで詳しく扱っています。
 ただし制限があります。婚約が解消される原因を自ら作った側が返還を求めることは、信義則に照らして認められにくいと考えられています。別れに至った経緯そのものが、返還の可否に影響するということです。また、両家の顔合わせの有無や日取りの決まり具合などから、そもそも婚約が成立していたといえるかが争われることもあります。
 式場や新居の契約に違約金が発生している場合は、契約の名義が誰になっているかも確認が必要です。名義人が相手の親であれば、支払義務を負っているのは第一次的には親であり、そこからこちらへの請求が成り立つかは別の検討になります。

相手の実家で同居していた期間のお金

 相手の実家に住み、生活費として毎月一定額を渡していた、という形も珍しくありません。渡していたお金は住居と食事の提供に対応する性質を持つことが多く、別れた後にさかのぼって返還を求めることは通常難しいと考えられます。
 反対に、家に入れていた額が少なかったとして、後から差額を請求されることもあります。夫婦の間の費用分担を定めた規定は、婚姻していないカップルに当然には及びません。取り決めのないまま経過した負担の偏りを後から精算するのは、容易ではないのが実情です。なお、関係の実態が内縁と評価される場合には、別の考え方が及ぶ余地があります(【男女トラブル】内縁・事実婚を解消するとき|法律上の夫婦と何が同じで、何が違うのか)。

元交際相手が家族の分までまとめて請求してきた場合

 「母が貸した分も含めて全部で○○万円返してほしい」という形で請求が届くことがあります。親が貸したとされる部分について請求する権利を持っているのは、親本人です。元交際相手がその部分を自分の名前で請求するには、親から権利を譲り受けてその旨を通知するか、債務者の承諾を得ておく必要があります(民法467条1項)。あるいは、親の代理人として動いていることが分かる形が必要です。
 ここを確かめないまま元交際相手とだけ合意し、清算条項を入れた書面を交わしても、その書面は親との間の関係を終わらせるものにはなりません。後日、親本人から改めて請求が届く余地が残ります(清算条項を入れても蒸し返される場面|条項の射程の限界)。金額の交渉に入る前に、内訳のうちどれが誰の請求なのかを示してもらうことが先になります。内訳の提示を求めることは、支払いを拒むことではありません。

記録から確かめられること、確かめられないこと

 手元の記録がどこまでを示すのかは、冷静に見ておく必要があります。

残っている記録そこから言えることそこからは言えないこと
銀行の振込履歴その日にその額が渡ったこと返す約束があったかどうか
現金手渡しのやり取り渡した事実も争いになり得る金額や時期の特定
LINE・メールの文面当時の認識や約束の有無文面にない部分の合意内容
借用書・念書返還の合意があったこと実際に渡った額との一致
自分で作った集計表請求する側の主張の整理合意があったことの裏づけ


 別れた直後は相手とのやり取りを消してしまいたくなりますが、金銭の話が残っているのであれば、消す前に保存しておくことをお勧めします。

いつまで請求できるのか

 貸付けにあたるお金の返還請求は、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年で時効にかかります(民法166条1項)。返す時期を定めていなかった場合、貸した側は相当の期間を定めて返還を求めることができます(民法591条1項)。請求の種類ごとの年数は男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるかにまとめています。
 注意したいのは、一部でも支払うと、そこから時効が改めて進み始めるという点です(民法152条1項)。「とりあえず少しだけ払って様子を見る」という対応が、全体の支払義務を前提とした行動と受け取られることがあります。一部を支払うかどうかは、全体の見通しを立ててから判断するほうが安全です。

話がまとまらないときに使われる場

 当事者間で決まらない場合、次のような手続に進むことがあります。

  • 内容証明郵便は到達の記録が残りますが、それ自体に支払いを強制する力はありません。
  • 支払督促は、裁判所から届いた書面を放置すると手続が進むため、2週間以内に督促異議を申し立てるかを判断します。
  • 少額訴訟は、請求額が60万円以下の場合に利用できる簡易な手続です。
  • 通常の訴訟は、請求額が140万円以下なら簡易裁判所、それを超えると地方裁判所が窓口になります。
  • 民事調停は、話し合いによる解決を裁判所の場で試みる手続です。


 結納金の返還など婚約に関わる部分については、家庭裁判所の調停で話し合う道もあります。一つの事案に性質の異なる請求が混在していると、進める場所が分かれることがある、という点は押さえておくとよいでしょう。

返事をする前に決めておくこと

 請求が届いた段階で、その場で金額の話に入る必要はありません。次の順序で整理することをお勧めします。

  1. 請求しているのが元交際相手本人か、その家族かを確かめます。
  2. 総額だけが示されている場合は、内訳の提示を求めます。
  3. 振込履歴、やり取りの文面、契約書類の名義を集めます。
  4. 渡し切りだった部分と、返す約束があった部分を仕分けます。
  5. 連絡の窓口を一つに決め、返答が食い違わないようにします。
  6. 合意する場合は、誰との間で何が終わるのかを書面にします。


よくあるご質問


相手の親から届いた請求に、返事をしないままでいてよいですか

 個人からの請求書や内容証明郵便それ自体に、支払いを強制する力はありません。返事をしないという選択も可能です。ただし、裁判所から支払督促や訴状が届いた場合は扱いが異なり、放置するとこちらの言い分が示されないまま手続が進むおそれがあります。差出人が裁判所かどうかで対応を分ける、という区別が大切です。

交際相手にすでに返したお金を、その親からもう一度請求されています

 まず確かめるのは、そのお金が誰から渡されたものだったかです。親から渡されたものであれば、返す先も親になります。交際相手に渡したことで清算が済んだといえるかは、交際相手が受け取りの権限を与えられていたか、親がその受領を認めているかによって変わります。

借用書がないので、返す必要はないと考えてよいですか

 借用書がないことと、返す約束がなかったことは同じではありません。書面がなくても、やり取りの文面や当時の会話から返還の合意が認定されることはあります。一方で、合意を示す材料がない状態で請求する側が立証を尽くすのは簡単ではありません。書面の有無だけで決めず、残っている材料の全体で判断するのが現実的です。書面がない場合の回収の進め方は恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?をご覧ください。

まとめ


  1. 交際相手の家族とのお金は、二人の間の清算とは別の関係として整理します。
  2. 渡した人と受け取った人が誰かによって、返還を求められる立場にある人が決まります。
  3. 渡し切りだったのか返す約束があったのかが出発点であり、約束の存在は請求する側が示すことになります。
  4. 肩代わりされた支払いは、支払った本人からの償還の問題として扱われます。
  5. 結婚を前提に出されたお金は返還の対象になり得ますが、別れに至った経緯によって結論が変わります。
  6. 元交際相手がまとめて請求してきた場合、家族の分についての権限があるかを確かめてから交渉に入ります。
  7. 一部の支払いは時効の進み方に影響するため、全体の見通しを立ててから判断します。


 交際相手の家族との金銭のやり取りは、記録が残りにくいまま金額だけが大きくなっていることがあります。誰との間の何のお金なのかを切り分けていけば、応じるべき部分とそうでない部分は見えてきます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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