連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違い

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

「連絡したのは一度だけなのに、警察から連絡が来た」「一度だけ会いに行ったら、ストーカーだと言われた」。そうしたご相談は少なくありません。

 ストーカー規制法は、「つきまとい等」と「ストーカー行為」を別の概念として定めています。刑罰の対象になるのは後者で、こちらには「反復して」という要件があります。ですから「一度だけだった」という事実は、たしかに意味を持ちます。

 ただし、その「一度」の数え方は、多くの方が思っているものとは違います。この記事では、疑いを向けられた側の立場から、二つの概念がどう違うのか、そして「一度だけ」がどこまで効いて、どこから効かなくなるのかを整理します。一般的な説明であり、個別の事案の結論を示すものではありません。

先に結論|「一度だけ」が効く場面と、効かない場面


刑罰の対象になるのは「反復して」行った場合


 ストーカー規制法が刑罰を定めているのは「ストーカー行為」に対してです。ストーカー行為とは、同一の者に対し、つきまとい等または位置情報無承諾取得等を反復してすることをいいます(法2条4項)。反復がなければ、この罪は成立しません

それでも「一度」で動く手続がある


 一方で、警察の警告や公安委員会の禁止命令には、「すでに反復して行われたこと」という要件がありません。要件は、つきまとい等をして相手方に不安を覚えさせたことと、さらに反復して同じ行為をするおそれがあると認められることの二つです。つまり、行為が一度でも、繰り返すおそれがあると判断されれば、警告や禁止命令の対象になり得ます

そもそも「一度」の数え方が違う


 最も見落とされやすいのがこの点です。法律上の「回数」は、ご本人が「一度」と数えているものと一致しないことがあります。後の章で詳しく述べます。

法律が分けている三つの層


 ストーカー規制法の規制対象は、次の三つに分かれています。

概念回数の要件罰則
つきまとい等(法2条1項)なしそれ自体にはない
位置情報無承諾取得等(法2条3項)なしそれ自体にはない
ストーカー行為(法2条4項)反復が必要1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金


つきまとい等の8類型


 特定の者への恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、次のいずれかを行うことが「つきまとい等」とされています。

  • つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがること、住居・勤務先・学校などの付近での見張り、押し掛け、みだりにうろつくこと(1号)
  • 行動を監視していると思わせるような事項を告げ、または知り得る状態に置くこと(2号)
  • 面会や交際など、義務のないことを行うよう要求すること(3号)
  • 著しく粗野または乱暴な言動をすること(4号)
  • 無言電話、または拒まれたにもかかわらず連続して電話をかけ、文書・ファクシミリ・電子メール等を送ること(5号)
  • 汚物や動物の死体など、著しく不快または嫌悪の情を催させる物を送るなどすること(6号)
  • 名誉を害する事項を告げ、または知り得る状態に置くこと(7号)
  • 性的羞恥心を害する事項を告げ、文書や画像を送るなどすること(8号)


 なお、ストーカー行為として処罰されるには、1号から4号までと5号のうち電子メールの送信等に係る部分については、身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法で行われたことが必要とされています。

法3条は「禁止」だが、それ自体に罰則はない


 法3条は、つきまとい等または位置情報無承諾取得等をして、相手方に前記の不安を覚えさせることを禁止しています。ただし、この規定に違反したこと自体には刑罰が定められていません。警告や禁止命令という行政上の手続につながる位置づけの規定です。

 また、行為の時点で相手方が気づいていなくても、後でそれを知って不安を覚えたときは、同じく3条違反になると解されています。留守中に自宅へ行った場合などが想定されています。

「反復して」の意味|行為の種類をまたいで通算される


同じことを繰り返した場合に限られない


 最高裁は平成17年11月25日の決定で、ストーカー行為とは、条文に列挙された各号の行為のうちいずれかの行為をすることを反復するものをいい、特定の行為あるいは特定の号に掲げられた行為を反復する場合に限られないという趣旨の判断を示しています(刑集59巻9号1819頁)。

 これを受けて、警察庁の解釈運用に関する通達も、各号に定められた行為が全体として反復したと認められればストーカー行為が成立する、としています。令和8年3月付けの改訂版では、位置情報無承諾取得等の各号も含めて全体として判断する旨が明示されました。

具体的にどう数えられるか


 たとえば、次のような経過を考えてみます。

  1. 自宅の前でしばらく待っていた(1号)
  2. 数日後、返信がないまま電話とメッセージを立て続けに送った(5号)
  3. その翌週、相手のSNSの投稿にコメントを書き込んだ(5号)


 ご本人の感覚では「待ったのは一度、連絡したのも一度、コメントも一度」かもしれません。しかし法律上は、種類の違う行為であっても全体としてまとめて評価されます。「それぞれ一度ずつ」という数え方は、そのままでは通りません

期間の目安は条文にない


 「どのくらい間隔が空いていれば反復にならないのか」というご質問をよく受けますが、条文にも通達にも期間の定めはありません。行為の回数、間隔、態様、当事者の関係などを踏まえ、事案ごとに判断されます。数か月空いていれば必ず別々に扱われる、というものではありません。

「連絡は一度だけ」が最も意味を持つのは5号のとき


5号だけ、条文そのものに「連続して」が入っている


 8つの類型のうち、電話やメッセージに関する5号だけは、条文の中に「連続して」という言葉が組み込まれています。「拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること」という書き方です。

 したがって、拒まれた後に一通だけメッセージを送ったという場合、そもそも5号のつきまとい等に当たらないという整理があり得ます。「一度だけだった」という事実が最も効くのは、この場面です。

ただし、四つの留保がある


 この整理には、いくつも条件が付きます。

  1. 無言電話は「連続して」の対象外です。相手が電話に出たのに何も言わない、あるいは何も言わずに切るという行為は5号の前段に当たり、一度でも該当し得ます
  2. 「連続して」とは「短時間や短期間に何度も」という意味とされており、何回からという明確な線は引かれていません
  3. 手段が違っても合算されます。電話を一度、LINEを一度、メールを一度という組み合わせでも、連続して行われたと評価され得ます
  4. 「拒まれた」には黙示の拒絶も含まれます。はっきり「やめてほしい」と言われていなくても、既読のまま返信がない、着信を拒否されているといった事情から拒絶と評価されることがあります


「届いていないはず」は理由になりにくい


 着信拒否の設定をされていても、着信履歴から電話をかけたことが認められれば「電話をかけ」に当たると解されています。メッセージについても同様で、受信拒否や通知オフの設定がされていて相手がその都度気づけない状態であっても、受信履歴などから送信の事実を認識できるのであれば該当するとされています。

 また、5号の「電子メールの送信等」には、電子メールやSMSのほか、LINEやSNSのメッセージ機能、相手のブログやホームページへの書き込み、相手のSNSのページへのコメントも含まれると解されています。「メールは送っていない」という説明が通用する範囲は限られます。

拒絶を伝えたのが警察であってもよい


 拒絶は、相手方本人から直接伝えられた場合に限りません。相手方が警察に相談し、警察から「相手は拒んでいる」と告げられて、それを認識した場合も含まれると解されています。警察から連絡を受けた後の一通は、それ以前の一通とは意味が変わります

一度でも「つきまとい等」に当たる類型がある


 5号以外の類型には「連続して」という限定がありません。回数にかかわらず、一度でも「つきまとい等」に当たり得ます。

  • 自宅や勤務先に押し掛ける、付近で見張る、うろつく(1号)
  • 行動を把握していると相手に思わせる内容を伝える(2号)
  • 会ってほしい、やり直したいと要求する(3号)
  • 著しく粗野または乱暴な言動をとる(4号)
  • 強い不快感や嫌悪感を催させる物を送る(6号)
  • 名誉を害する事項を告げる、知り得る状態に置く(7号)
  • 性的羞恥心を害する事項や画像を送る(8号)


 「押し掛け」については、相手が在宅していたかどうかを問わないとされています。会えずに帰ったから何もしていない、とはなりません。3号の「要求」も口頭に限らず、手紙やメッセージによるものを含みます。

一度でも、警告や禁止命令の対象になり得る


要件に「すでに反復されたこと」は入っていない


 警告(法4条1項)と禁止命令(法5条1項)の要件は、法3条に違反する行為があると認められること、そしてその行為をした者がさらに反復して同じ行為をするおそれがあると認められることの二つです。すでに反復されたことは要件ではありません。

 なお、警告については令和7年の法改正で、相手方の申出がなくても警察の職権で行えることとされました。報復や逆恨みを恐れて申出をためらう場合があることを踏まえた改正です。相手が届出をしていないから何も起きない、とは限らなくなっています。

警告や命令の効力は「すべての号」に及ぶ


 ここは特に見落とされやすい点です。警告や禁止命令の内容は、実際に行った行為だけを禁じるものではありません。いずれかの号に該当する行為があり、反復のおそれが認められれば、条文に定めるすべての号の行為をしてはならない旨が伝えられる運用とされています。

 つまり、電話一度をきっかけに警告を受けた場合でも、その後は待ち伏せも、手紙も、SNSへの書き込みも、位置情報の取得も、すべてが禁じられた行為になります。「電話をやめればよい」という理解は正確ではありません。

禁止命令が出た後は、罰則の構造が変わる


場面条文罰則
反復してつきまとい等をした(命令なし)18条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
禁止命令に違反してストーカー行為をした19条2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
上記に当たらない禁止命令違反20条6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金


 注目したいのは19条2項です。禁止命令に違反してつきまとい等をした場合において、命令の対象になった行為と命令違反の行為を通じて評価した結果としてストーカー行為が成立しているときは、この規定が適用されるとされています。命令後の行為が一度であっても、命令前の行為と合わせて反復と評価されることがあるということです。

 もっとも、命令違反の認定は、違反に当たる行為が命令の原因となった行為の反復と評価できる場合に行うこととされています。命令を受けた後の行動が何でも直ちに違反になる、という運用ではありません。

反復がなくても成立し得る罪がある


刑法などの罪


 ストーカー規制法に当たらないことと、何の責任も生じないこととは別の話です。一度の行為でも、次のような罪が問題になり得ます。

  • 住居や敷地内に立ち入った場合の住居侵入罪、退去を求められて応じなかった場合の不退去罪
  • 危害を加えることを告げた場合の脅迫罪、義務のないことを求めた場合の強要罪
  • 身体に対して有形力を行使した場合の暴行罪
  • 持ち物を壊した場合の器物損壊罪
  • 社会的評価を下げる事実を広めた場合の名誉毀損罪、公然と侮辱した場合の侮辱罪


軽犯罪法には反復の要件がない


 軽犯罪法1条28号は、他人の進路に立ちふさがったり、不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとったりした者を、拘留または科料に処するとしています。ここには反復の要件も、恋愛感情等の目的の要件もありません

条例には反復の要件があることが多い


 都道府県の迷惑防止条例にも、つきまといに関する規定を置くものがあります。たとえば東京都の条例は、妬みや恨みその他の悪意の感情を充足する目的で一定の行為を「反復して」行うことを禁じており、こちらにも反復の要件があります。一度だけであれば条例にも当たらないという整理はあり得ますが、条例の内容は都道府県ごとに異なるため、その地域の条文を確認する必要があります。

実務では他の罪での検挙のほうが多い


 警察庁が令和8年3月に公表した令和7年の対応状況によれば、ストーカー事案で検挙されたもののうち、ストーカー規制法違反は1,546件であるのに対し、刑法犯その他の特別法犯は2,171件でした。内訳は住居侵入437件、脅迫292件、暴行159件などです。「反復していないから規制法には当たらない」という見立てだけでは、状況を見誤ることがあります。

「一度だけ」を説明するときに整理しておきたいこと


 回数を主張するのであれば、回数そのものよりも、経過を再現できる形にしておくことが役に立ちます。

  1. 日時と手段(いつ、電話か、メッセージか、直接行ったか)
  2. その行為に至ったきっかけ(何を見て、何を思って行動したか)
  3. 相手からの反応の有無と内容(返信、ブロック、第三者を介した連絡)
  4. 拒絶を伝えられた時点があるかどうか、あるとすればいつ、どのような形か
  5. 警察や相手方の代理人から連絡を受けた時点があるかどうか


 通信履歴やメッセージの画面は、削除しないでおいてください。自分に不利に見える記録であっても、消してしまうと経過そのものを説明できなくなり、かえって不利に働くことがあります。

 なお、「不安を覚えさせるような方法」に当たるかどうかの判断では、当事者の人的関係、行為の態様、同種の行為の回数や頻度に加えて、警告や禁止命令の前か後かという先後関係も総合的に勘案されるとされています。同じ内容の連絡でも、警告を受けた後の一度は、それ以前の一度と同じようには評価されません。

この段階で避けたい行動


  • 誤解を解くために、もう一度だけ連絡する(その「もう一度」が反復の評価に直結します)
  • 共通の知人や家族に伝言を頼む(第三者を経由しても、行為をしたのは本人と評価され得ます)
  • 相手のSNSを見に行き、投稿に反応する(書き込みは5号に当たり得ます)
  • 交際中に共有していた位置情報アプリや、貸したままの機器をそのままにする(承諾がなくなった後の取得は位置情報無承諾取得等に当たり得ます)
  • 相手に取下げや撤回を求める(その接触自体が新たな行為と評価されます)


弁護士に相談する意味


 この類型では、事実関係そのものよりも、その事実がどの号に当たり、全体として反復と評価されるのか、という法的な評価が問題になります。ご本人が「一度だけです」と説明しても、警察が把握している経過と数え方が違えば、話がかみ合いません。

 弁護士に依頼した場合、次のような対応が考えられます。

  • 手元の記録から経過を時系列に整理し、どの行為がどの号に当たり得るかを切り分ける
  • 警察や検察に対して、事実関係と法的な評価についての意見を書面で示す
  • 相手方への連絡の窓口を代理人に移し、ご本人が直接接触しない状態をつくる
  • 警告や禁止命令の手続に入った場合に、聴聞や意見の聴取での対応を準備する


 特に、ご本人が相手方に直接連絡することは、意図にかかわらず状況を悪化させやすい行動です。窓口を移すこと自体に意味があります。当事務所では24時間の相談受付と初回無料相談を行っておりますので、迷われた段階でご相談ください。

よくある質問


一度だけの連絡でも逮捕されることがありますか


 ストーカー行為罪については反復が要件ですので、一度の連絡だけでこの罪により逮捕されることは、通常は想定しにくいところです。ただし、その一度の行為が住居侵入や脅迫などの別の罪に当たる場合や、すでに禁止命令が出ている場合には、別の判断になります。

相手が「一度でも怖い」と言えば、それだけで犯罪になりますか


 相手方が不安を覚えていれば法3条に違反したことにはなりますが、3条違反それ自体には刑罰が定められていません。もっとも、警告や禁止命令の要件は満たし得ますので、「何も起きない」ということではありません。

半年前に一度、先週に一度であれば反復にはなりませんか


 期間の定めは条文にありません。間隔が空いていることは判断材料の一つですが、それだけで反復が否定されるとは限らず、行為の内容や当事者の関係、その間のやり取りの有無なども踏まえて判断されます。

送ったのは一通だけですが、電話は何度かかけました


 法律上は、手段が違っても全体として評価されます。電話とメッセージを合わせて連続して行われたと評価されることがあり、「一通だけ」という説明は、そのままでは通りにくいと考えられます。

まとめ


  1. 刑罰の対象は「ストーカー行為」であり、反復が要件です。一度だけであれば、この罪は成立しません
  2. ただし「反復」は号をまたいで全体として判断されます。「それぞれ一度ずつ」という数え方は通りません
  3. 電話やメッセージの5号は条文に「連続して」が入っているため、一度だけという事実が最も効く場面です。ただし無言電話は一度でも当たり得ます
  4. 警告や禁止命令には反復の要件がなく、一度でも対象になり得ます。しかもその効力はすべての号に及びます
  5. 住居侵入や脅迫、軽犯罪法など、反復がなくても成立し得る罪があります


 「一度だけだった」という説明は、事実であれば意味のある主張です。ただしそれは、経過の全体をきちんと示せて初めて説得力を持ちます。連絡を重ねる前に、記録を保存したうえで、早い段階でご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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