SNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れ

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

 元交際相手や知人から、SNSのダイレクトメッセージやLINEが繰り返し届く。ブロックしても別のアカウントから連絡がくる。コメント欄や別のサービスに書き込まれる――。こうした状況に、「これはストーカーなのだろうか」「警察は動いてくれるのか」と不安を抱く方は少なくありません。

 一方で、連絡を送っている側にも「復縁を求めているだけ」「まだ違法ではないはず」という感覚があり、どこからが法律の問題になるのかは、当事者双方にとって分かりにくいところです。

 この記事では、SNS・LINEの執拗な連絡がストーカー規制法の対象になるのはどのような場合か、そして警察による警告から禁止命令、刑事罰へと進む流れを、男女どちらの立場からも整理して解説します。

SNS・LINEの連絡も「つきまとい等」に含まれる

 ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、特定の相手への恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を満たす目的で行われる、執拗な行為を規制する法律です。この「目的」があることが、規制の前提になっています。

 法律が対象とする「つきまとい等」には、待ち伏せや押し掛けといった直接的な行為だけでなく、次のような連絡手段を使った行為も含まれます。

  • 無言電話、連続した電話・ファクシミリ
  • 電子メール・SNSのメッセージ・文書などを連続して送る行為

 電子メールは平成25年(2013年)改正で、SNSのメッセージやブログ・掲示板への書き込みは平成28年(2016年)改正で、それぞれ規制対象として明確化されました。現在では、LINEやX(旧Twitter)、Instagramなどを使った連続的な連絡も、条文上の「つきまとい等」に位置づけられています。

 ここでポイントになるのが、「拒まれたにもかかわらず、連続して」送っているかどうかです。相手が明確に拒否している、あるいはブロックされているのに送り続ける、といった事情があると、つきまとい等に該当しやすくなります。逆に、一度連絡しただけ、相手が拒否の意思を示していない段階の連絡は、直ちにこれに当たるとは限りません。

「つきまとい等」と「ストーカー行為」は何が違う

 法律は「つきまとい等」と「ストーカー行為」を区別しています。

  • つきまとい等……上に挙げたような個別の行為
  • ストーカー行為……同一の相手に対し、つきまとい等を反復して行うこと(第2条)

 つまり、一回一回のメッセージが「つきまとい等」にあたり、それが繰り返されて初めて「ストーカー行為」として刑事罰の対象になる、という構造です。SNS・LINEの連絡でいえば、拒否された後も繰り返しメッセージを送り続けている状況が、ストーカー行為と評価される典型例といえます。

SNS・LINEで問題になりやすい行為・そうでない行為

 同じ「連絡」でも、事情によって評価は変わります。目安として整理すると、次のようになります。

該当しやすいと考えられる例

  • 拒否・ブロックされた後も、DMやLINEを連続して送る
  • ブロックされると別アカウントを作って接触する
  • 「見ているぞ」「どこにいるか分かっている」など監視をほのめかす書き込みをする
  • 相手になりすましてアカウントを乗っ取る、無断で情報を公開する

直ちには当たりにくい・慎重な判断が必要な例

  • 恋愛感情や怨恨といった「目的」が乏しい、業務上・金銭上のやり取り
  • 相手がまだ拒否の意思を示していない段階の連絡

 ただし、恋愛感情等の目的が認めにくい場合でも、内容によっては脅迫罪や名誉毀損罪、各都道府県の迷惑防止条例など、別の法律・条例で問題になることがあります。「ストーカー規制法に当たらない=問題ない」とは限らない点には注意が必要です。

警察による警告・禁止命令の流れ

 SNS・LINEの被害で警察に相談した場合、対応はおおむね次のような段階で進みます。

① 相談の受理と行為の判断
 相談を受けた警察は、相手の行為が「ストーカー行為」に当たるのか、それとも「つきまとい等」の段階なのかを判断します。すでにストーカー行為に該当し、悪質と判断される場合は、事件として立件・検挙する対応もあり得ます。

② 警告(第4条)
 「つきまとい等」があり、さらに反復するおそれがある場合、警察本部長等は相手に対し、これ以上つきまとい等を行わないよう警告をすることができます。従来は被害者からの申出があった場合に限られていましたが、令和7年(2025年)の改正で、申出がなくても警察の職権で警告できるしくみが加わりました。被害者が申出をためらう場合でも、早期に対応しやすくなっています。

③ 禁止命令等(第5条)
 反復のおそれがあると認められる場合、都道府県公安委員会は、つきまとい等をしてはならない旨の禁止命令を出すことができます。警告と違い、禁止命令には従う法的義務があります。原則として相手方への聴聞を経て行われますが、身体の安全などのために緊急の必要があると認められる場合は、聴聞を経ずに命令を出し、事後に意見を聴くこともあります。

④ 違反した場合の検挙
 禁止命令に違反してさらに行為を続ければ、刑事罰の対象となります。

 このように、いきなり逮捕に至るのではなく、警告・禁止命令という段階を踏んで、相手に行為をやめる機会が与えられるのが基本的な流れです。裏を返せば、そうした段階を経ても行為を繰り返した場合は、悪質性が高いと評価されやすくなります。

罰則

 主な罰則は次のとおりです(刑法改正により、令和7年6月から「懲役」は「拘禁刑」に一本化されています)。

行為罰則
ストーカー行為をした(第18条)1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
禁止命令等に違反してストーカー行為をした(第19条第1項)2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
禁止命令等に違反した(ストーカー行為に至らない場合/第20条)6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

2025〜2026年の改正で強化された点

 近年の改正では、SNSやスマートフォンを使った被害の実情を踏まえ、被害者を守るしくみが順次強化されています。令和7年12月30日から施行された主な内容は次のとおりです。

  • 紛失防止タグ(AirTagなど)を悪用した位置情報の無承諾取得を規制対象に追加
  • 被害者の申出がなくても警察が警告できる「職権による警告」の創設
  • 被害者への援助の主体に、勤務先や学校を追加(努力義務

 さらに令和8年(2026年)3月10日からは、加害のおそれがある者に被害者の情報(住所やSNSアカウントなど)が渡らないよう、警察が第三者に情報提供を控えるよう求められるしくみも始まっています。

相談の前にしておきたいこと

 警察や弁護士に相談する際は、被害の状況を正確に伝えられる記録があると、その後の対応がスムーズになります。

  • 届いたメッセージや書き込みは削除せず、スクリーンショットで保存する
  • 送られてきた日時・回数・内容をメモに残す
  • ブロックや拒否の意思を伝えた事実も記録しておく

 証拠がそろっているほど、「拒否されたのに連続して送っている」という事情を客観的に示しやすくなります。

刑事だけでなく民事での対応もある

 ストーカー規制法による警告・禁止命令は、警察を通じた行政・刑事の対応です。これとは別に、弁護士名で接触をやめるよう通知する、当事者間で接触禁止を約束する合意書を交わす、面談の強要を禁じる仮処分を申し立てるといった、民事的な手段で連絡を止める方法もあります。状況に応じて、どの手段が適しているかは変わります。

まとめ

 SNS・LINEの執拗な連絡は、恋愛感情等の目的で、拒否されているのに連続して送られているといった事情があれば、ストーカー規制法上の「つきまとい等」にあたり、反復されれば「ストーカー行為」として規制の対象になり得ます。警察の対応は、警告・禁止命令という段階を経て刑事罰へと進むのが基本的な流れで、近年は職権による警告など被害者を守るしくみも強化されています。

 連絡を受けて不安を感じている方も、自分の行為が問題にならないか気になっている方も、早めに状況を整理し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。証拠の残し方や、刑事・民事のどちらで動くべきかも含めて、個別の事情に応じた見通しを立てることができます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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