AV・アダルトライブ配信をめぐるトラブル|視聴・購入側の論点
この記事は、2026年10月2日時点の民法、刑法、弁護士法、個人情報の保護に関する法律の規定に基づいて書いています。刑法の法定刑は、2025年6月1日施行の拘禁刑への一本化を反映した表記です。個別の事情によって見通しは変わりますので、具体的な対応はご相談のうえで判断してください。
「利用した翌日、店からは何の連絡もないまま、担当したキャストから個人のLINEで『店に言えばもっと大ごとになる。私に直接払ってくれれば終わりにする』とメッセージが届いた」「店の公式アカウントではなく、個人のアカウントから金額と振込先だけが送られてきた。本当にあのキャストなのかも分からない」。風俗トラブルのご相談では、店を通さず、キャスト本人を名乗る個人のLINEから金銭を求められたという事情を伺うことがあります。
キャスト本人が受けた精神的な苦痛についての請求は本人がするものであり、店の損害とは分けて考える、という説明はすでに広く知られています。それ自体は誤りではありません。ただ、請求が個人のLINEで、店を通さずに届いたときに、誰が、何について請求しているのかをどう確かめ、そのやり取りの中で何に気をつければよいのかは、あまり整理されていません。「本人に払えば店にも知られずに済む」と考えて応じた後に、店から別に連絡が来て、問題が終わっていなかったと分かる場合もあります。
この記事では、風俗店やメンズエステなどを利用した客の方を想定し、キャスト本人から個人のLINEで金銭を求められたときの扱いを、請求の位置づけ、届く経路の見分け方、払って終わりにすることの危うさ、やり取りの注意点、合意するときの整え方の順に整理します。連絡先を交換してから会うまでの間に起きやすいこと、店の損害とキャスト個人の損害の区別の詳細、私的な交際に発展した後の清算は、それぞれ別の記事に譲ります。
【風俗トラブル】キャストから個人的な連絡先を渡された|応じた後に起きやすいこと
誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別
【男女トラブル】キャストと私的な交際に発展した後の金銭清算
まず結論|個人のLINEで請求が届いたときに意識しておきたいこと
最初に、この記事の結論をまとめておきます。詳しい理由は後の章で説明します。
- キャスト本人が自分の受けた損害について請求すること自体は、店を通さなくても成り立ち得る。
- ただし、店の損害は別に残るため、キャストに払っただけで店との関係が片づくとは限らない。
- 個人のLINEの相手が本当にキャスト本人なのか、店が事情を把握しているのかを、支払いの前に確かめる。
- LINEで送った「払います」「認めます」といった言葉は、合意や事実の承認として扱われることがあるため、その場で返信しない。
- やり取りは削除せずに保存し、こちらから連絡を重ねない。
- 合意する場合は、当事者の確認、店との関係、刑事面の扱い、清算条項を書面で整える。
キャスト本人が直接請求すること自体の位置づけ
本人の損害は本人が請求するもの
利用中の出来事によってキャストが精神的な苦痛を受けたと主張する場合、その損害の賠償を求める権利はキャスト本人にあります(民法709条、710条)。店が本人の権利を当然に行使できるわけではなく、本人が店を通さずに自分で請求してくることは、それだけで不当とは言えません。むしろ、弁護士でない店のスタッフが報酬を得る目的でキャストに代わって示談交渉を扱うことは、弁護士法72条との関係で問題になり得るため、本人が自分で話をしてくること自体には、筋が通っている面もあります。
店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点
請求の中身は別に確かめる
請求する権利が本人にあることと、求められた金額を払う義務があることは、別の問題です。どのような出来事について、何を根拠に、いくらを求めているのかは、請求が店から来た場合と同じように確かめる必要があります。**店を通していないからといって、確かめる手順を省いてよいことにはならない**という点を、最初に押さえておいてください。
店の名目が混じった金額が示された場合
キャスト個人のLINEで示された金額の中に、「店の罰金」「店への違約金」といった名目が含まれていることがあります。店が受けた損害について店に代わって請求や受領ができるのは、店から代理権を与えられている場合に限られます(民法99条1項)。キャストに払ったからといって、店への支払いとして扱われるとは限りません。名目ごとに分けて、誰に対する、何についての金額なのかを確かめることが出発点になります。
個人のLINEで請求が届く経路を見分ける
同じ「キャストの個人のLINE」からの請求でも、その背景によって、その後の見通しは変わります。ご相談を伺っていると、おおむね次の3つに分けられます。
| 考えられる経路 | 見分ける手がかり | 確かめておきたい点 |
|---|---|---|
| キャスト本人が自分の判断で送っている | 「店には言っていない」「店に知られたくない」といった言葉がある | 店が把握していない以上、後で店から別に請求が来る可能性が残る |
| 店の指示や了解のもとで個人のLINEが使われている | 店の規約や「店長と話した」といった言葉が出てくる、金額が店の示す基準と同じ | 店とキャストのどちらが当事者として話を進めているのか |
| キャスト本人を名乗る別の人物が送っている | 源氏名しか出てこない、利用時の具体的な出来事に触れない、振込先の名義が本人と結びつかない | 相手が誰なのかを確かめられるまで、金額の話を進めない |
店が把握していない場合に残ること
「店に言えば罰金がもっと高くなる。私に払えば店には言わない」という形の請求は、店が出来事を把握していないことを前提にしています。この場合、キャストと合意しても、後に店が出来事を知れば、店は店の立場で別に請求することができます。キャストとの合意は、店が合意に加わっていたり、店から代理権を与えられていたりしない限り、店を拘束しないからです。また、キャストが店に報告しないこと自体が、キャストと店との約束に反している場合もあり、後で双方の説明が食い違う原因になります。
相手が本人だと確かめられないとき
LINEのアカウントは、表示名やアイコンを自由に変えられます。店の関係者や、キャストの交際相手を名乗る人物、まったく別の第三者が、キャスト本人として請求してくることもあり得ます。本人であることを確かめないまま支払うと、後で本当の当事者から改めて請求を受けるおそれがあります。
【風俗トラブル】支払った後に相手が別人だと分かった|本人確認をしない示談の危うさ
教えていないのにLINEが届いた場合
客の側がLINEのIDを伝えていないのに、キャストからメッセージが届くことがあります。LINEには、設定によって電話番号から相手を探せる機能があるため、予約の際に店に伝えた電話番号がもとになっている可能性があります。店が予約のために預かった電話番号が予約以外の目的で使われたのであれば、店の個人情報の取扱いとして問題になり得ます(個人情報の保護に関する法律18条1項)。ただ、この点を相手に問いただすよりも、どの情報が相手に渡っているのかを整理し、それ以上の情報を渡さないことを優先してください。
個人のLINEで払って終わりにすることの危うさ
「店に知られずに済む」とは限らない
家族や勤務先に知られたくないという思いから、店を通さずにキャスト本人と話をつけたいと考える方は少なくありません。しかし、前の章で説明したとおり、キャストとの合意だけでは店の請求は残ります。また、LINE上の「これで終わりにする」というメッセージだけでは、何についての、どこまでの清算なのかがはっきりせず、後でキャスト本人から追加の金額を求められたときに、終わっていたことを示しにくくなります。
個人の口座への振込と、現金の手渡し
振込を求められた場合、口座の名義がキャスト本人と結びつかなければ、誰に払ったのかが後で争いになり得ます。一方で、振込の記録は支払ったことを示す材料として残る点では役に立ちます。現金を手渡しで受け取りたいと言われた場合は、店の外で会うことになり、その場で別の要求や書面への署名を求められることもあるため、受け渡しの方法を決める前に慎重に考えてください。
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支払いが刑事の見通しを決めるわけではない
お金を払えば警察には行かない、と言われることがあります。しかし、支払った後でも、被害を訴える側が警察に相談することを止める法的な仕組みはありません。不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は告訴がなくても起訴され得る罪であり、示談の中身は、処分を決める際の事情の一つとして考慮されるにとどまります。**払ったことと、問題が終わったことは同じではない**ため、刑事面について何を約束してもらうのかを、合意の中で明確にしておく必要があります。
LINEでのやり取りで気をつけること
メッセージだけでも合意が成立し得る
示談は、当事者が互いに譲り合って争いをやめる和解契約です(民法695条)。契約は書面がなくても、申込みと承諾が合えば成立し得るため(民法522条2項)、LINEで金額を示されて「分かりました、払います」と返信すると、その時点で合意したと主張されることがあります。同じように、謝罪のつもりで送った言葉が、指摘された出来事を認めたものとして扱われることもあります。求められたことにはその場で答えず、「考えて後で返事をします」と伝えるにとどめるのが基本です。
記録は消さずに残す
届いたメッセージは、相手の表示名やアカウントの画面、日時が分かる形で保存してください。相手がメッセージの送信を取り消すこともあるため、届いた時点で画面を保存しておくと安心です。自分にとって都合の悪いやり取りを削除しても、相手の手元には残ります。削除したこと自体が後で不自然に受け取られることもあるため、自分の送信分も含めてそのまま残しておいてください。
LINE・メール・録音データの保存と渡し方|消してはいけない理由
こちらから連絡を重ねない
納得のいかない請求を受けると、反論や事情の説明を何通も送りたくなるものです。しかし、感情的な言葉や長い説明は、後で文面の一部だけが取り上げられることがあります。また、すぐにブロックすると、その後に届く連絡の内容を把握できなくなり、相手が店や警察に話を持ち込むきっかけになることもあります。通知を切るなどして距離を取りつつ、記録は残し、返事の方針は落ち着いて決めてください。
要求の仕方によっては恐喝が問題になる
家族や勤務先に知らせることなどを示して、根拠のない金銭を求めたり、根拠があってもそれを大きく超える金額を求めたりする場合には、恐喝罪(刑法249条1項・10年以下の拘禁刑)が問題になり得ます。ただし、客の側にも指摘された出来事がある場合、どこまでが正当な請求の範囲なのかの線引きは簡単ではありません。言われた内容をそのまま記録し、自分だけで金額の交渉を進めないようにしてください。
店の請求が恐喝に変わる線引き|正当な権利行使との境界
キャスト本人と合意するときに整えておくこと
当事者と本人確認
キャスト本人と合意する場合も、まず相手が本人であることを確かめる必要があります。キャストが本名や住所を客に知られたくないと考えるのは自然なことですが、弁護士が間に入れば、本人の情報を代理人の間にとどめたまま本人確認を行い、本人の署名のある合意書を作ることができます。
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店との関係をどう扱うか
店がすでに事情を把握している場合は、店も当事者に加えた三者での合意にすることで、店からの請求が後に残らない形を目指せます。店が把握していない場合に、こちらから店に知らせるかどうかは、店から請求を受ける可能性や、知らせることによる影響を比べて判断することになり、一律の答えはありません。キャストが店の分まで含めて解決すると言う場合は、店から代理権を与えられているのかを確かめる必要があります。
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書面に入れておきたい条項
LINE上のやり取りだけで終えず、合意の内容は書面にまとめてください。個人のLINEで始まった請求では、とくに次の点を明確にしておくことが大切です。
| 条項 | 個人のLINEでの請求で果たす役割 |
|---|---|
| 当事者と支払先の特定 | 誰との合意で、誰に支払ったのかを後で示せるようにする |
| 清算条項 | この合意に定めたもの以外に、互いに請求しないことを確認する |
| 宥恕・被害届の扱い | 刑事面について何を約束したのかを明確にする |
| 接触禁止条項 | 個人のLINEを含め、今後の直接の連絡をやめてもらう |
| 口外禁止・データ削除 | やり取りの中で渡った個人情報や記録の扱いを決める |
風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かない
弁護士が入ると何が変わるのか
個人のLINEを窓口から外す
弁護士が依頼を受けると、相手に対し、今後の連絡は弁護士にするよう求める通知を送ります。相手の住所が分からない場合でも、請求が届いたLINEのアカウントや電話番号などを通じて、弁護士が代理人に就いたことを伝える方法をとることがあります。それ以降、ご本人がLINEに返信したり、金額の話に応じたりする必要はなくなります。
相手が誰なのかを確かめる
相手の本名や住所が分からない場合でも、電話番号や振込先の口座などの手がかりから、弁護士会照会(弁護士法23条の2)によって相手方を確かめられることがあります。相手がキャスト本人なのか、店の了解があるのかを確かめたうえで、請求の根拠と金額を検討し、必要な条項を入れた合意を目指します。
相手の店やキャストが分からない|請求相手を特定する方法
よくあるご質問
事情を確かめるために、自分から店に連絡したほうがよいですか
キャストが「店には言っていない」と伝えてきている場合、こちらから店に連絡すると、店が知らなかった出来事を店に伝えることになり、店から別に請求を受けるきっかけになることがあります。一方で、店がすでに把握しているのであれば、店も含めて解決したほうが後に問題が残りにくくなります。どちらがよいかは事情によって変わるため、ご自身で店に連絡する前にご相談ください。
キャストのLINEをブロックしてもよいですか
ブロックすること自体が違法になるわけではありません。ただ、ブロックすると、その後に相手が何を伝えてきたのかを把握できなくなり、相手が店や警察に相談するなど、別の動きに移るきっかけになることもあります。連絡を止めたい場合は、記録を保存したうえで、弁護士から窓口を移す通知を送る方法を検討してください。
店からの電話・LINEを無視し続けるとどうなるか|放置の先に起きることの時系列
すでにキャストの個人口座に振り込んでしまいました。これで終わったと考えてよいですか
支払った時点で合意書を作っていなければ、何についての支払いだったのか、それ以上の請求をしないことになっているのかがはっきりしない状態です。振込の記録とLINEのやり取りを保存したうえで、支払った後からでも、清算条項などを入れた合意書を作ることを検討してください。店から別に連絡が来る可能性も踏まえ、早めにご相談いただくと、その後の見通しを立てやすくなります。
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まとめ
- キャストが受けた損害の賠償を求める権利は本人にあり、店を通さない請求もそれだけで不当とは言えないが、金額の根拠は別に確かめる(民法709条、710条)。
- 店の損害についてキャストが請求や受領をできるのは店から代理権を与えられている場合に限られ、キャストとの合意だけでは店の請求は残り得る(民法99条1項)。
- 個人のLINEの相手が本人か、店が把握しているかによって見通しが変わるため、支払いの前に経路を見分ける。
- 示談は書面がなくても成立し得るため、LINEで「払います」「認めます」とその場で返信しない(民法522条2項、695条)。
- 家族や勤務先に知らせることなどを示した過大な要求は、恐喝罪が問題になり得る(刑法249条1項)。
- 合意する場合は、当事者と支払先、清算条項、宥恕や被害届の扱い、接触禁止を書面で整える。
- 弁護士が入ると個人のLINEを窓口から外せ、相手が分からない場合も弁護士会照会で確かめられることがある(弁護士法23条の2)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店やメンズエステなどの利用をめぐるトラブルのご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。店からの連絡がなく、キャスト本人から個人のLINEで請求が届いている段階でのご相談も承っています。
キャスト本人を名乗る相手から金額や振込先を示されて支払うかどうか迷っている方、すでに支払ったものの店との関係が片づいたのか不安な方は、返信や送金をする前に、お電話・メールでご連絡ください。


