【不貞慰謝料】子どもにどこまで伝えるべきか|情報管理の視点
「店で知り合った相手と、いつの間にか個人的に会うようになりました。別れ話になった途端、これまで渡したお金を返してほしいと言われています」。「交際しているつもりで援助を続けていましたが、関係が終わった後になって、あれはもらったものだと言われました」。当事務所には、渡した側からも受け取った側からも、こうしたご相談が寄せられます。
インターネット上では「プレゼントとして渡したものは返らない」「貸したお金は返してもらえる」といった説明をよく見かけます。どちらもそれ自体が誤りというわけではありません。ただ、接客の場で知り合った相手との間では、その手前にもう一つの問題が残ります。どこまでが客とキャストとしてのやり取りで、どこからが私的な交際だったのか、当人同士の認識が一致していないことが少なくないからです。
この記事では、接客の関係から私的な交際に移った後の金銭を、どのような順序で整理していくのかを扱います。だまし取られたのではないかという場面はキャストに金銭をだまし取られた|疑似恋愛と詐欺の境界で、店から罰金や違約金を求められた場面や、配偶者から慰謝料を請求された場面は、それぞれ別の記事で取り上げています。
交際に発展したことで、それまでの支出の性質が変わるわけではない
お金の意味は、渡した時点で決まる
ご相談の場では、「あの頃はまだ客だったのだから、店の料金と同じ扱いのはずだ」「もう交際が始まっていたのだから、生活の援助として渡したものだ」というように、後から意味を言い直そうとする主張が双方から出てきます。
しかし、渡したお金がどのような意味を持つのかは、渡した当時に二人の間でどのような話がされていたかによって決まります。関係がその後に変わったからといって、過去の支出の意味までさかのぼって塗り替えられるわけではありません。交際に発展した時点は、清算の場面では「そこから先はすべて別扱いになる区切り」ではなく、「やり取りの残り方が変わっていく地点」として意味を持ちます。
後から名目を付け替えることは難しい
別れ話がこじれた後に「あれは貸したものだ」と言い直したり、逆に「もらったものだ」と主張したりしても、当時のやり取りが残っていれば、そちらの内容が優先して読まれます。清算の見通しは、今どう呼ぶかではなく、当時どう伝えていたかに左右されます。渡したお金が贈与と貸付のどちらとして扱われるのかという点は、別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いでも取り上げています。
まず、渡したお金を一件ずつに分ける
「これまでに使った総額」から話を始めると、議論がかみ合わないまま長引きます。お金は一度に動いたわけではなく、時期ごとに違う理由で動いているためです。
| お金の形 | 典型的な場面 | 清算で問題になりやすい点 |
|---|---|---|
| 店の料金・指名料 | 店を通して支払ったもの | 店との取引に基づく支払いであり、相手個人への請求にはなりにくい |
| 店外で会ったときの飲食代・旅行代 | 二人で出かけた際に一方が負担したもの | その場の負担として扱われやすく、後から求めにくい |
| 貸したお金 | 返す約束をしたうえで渡したもの | 返す約束があったといえるかどうかが争点になる |
| あげたお金・品物 | 見返りを求めずに渡したもの | 渡し終えた後に取り消すことが難しい |
| 立て替えたお金 | 相手が払うべきものを一時的に肩代わりしたもの | 立て替えだと分かるやり取りが残っているか |
同じ日のお金でも、形が違うことがある
店で料金を支払った後、その日のうちに店外で食事をし、帰り際に現金を渡した、という流れは珍しくありません。この場合、三つの支出はそれぞれ別の意味を持ちます。まとめて一つの請求にせず、いつ、どちらの立場で、どういう理由で動いたお金なのかを一件ずつ特定していく作業が、清算の出発点になります。
どこからが私的な交際だったのか
線は一本ではない
店外で会い始めた時期、連絡先を個人のものに切り替えた時期、店を通さずに会うようになった時期、互いを交際相手と呼ぶようになった時期は、それぞれずれているのが通常です。どの時点を境目とみるかで、同じ支出の評価が変わることがあります。
店の外で会うことが、そのまま交際を意味するわけではない
店外で会うこと自体は、営業の延長として行われている場合もあります。渡した側が交際だと受け止めていても、受け取った側は仕事の続きだと考えていた、という食い違いは実際によく起こります。片方の認識だけで交際の始まりが決まるわけではありません。店外で深い関係になった場合の金銭の扱いは、キャバ嬢・ホストと店外で深い関係に|貢いだ金銭は返してもらえるかもあわせてご覧ください。
相手にどう伝わっていたかが手がかりになる
当時のやり取りの中に、二人の関係をどう呼んでいたか、将来について何を話していたか、お金についてどんな説明がされていたかが残っていることがあります。境目をめぐる主張は、こうした具体的なやり取りに支えられているかどうかで説得力が変わります。
私的な関係に移った後のほうが、かえって形が残らない
店を通していた時期は、予約の記録、料金の決済履歴、店のアプリや連絡手段に履歴が残ります。ところが個人的なやり取りに移ると、現金の手渡しや個人間送金が中心になり、第三者の記録が残らなくなります。
手元に残っているものを確かめる
清算の話し合いに入る前に、次のようなものが残っているかを確認しておくと、話が具体的になります。
- 口座の振込履歴や送金アプリの記録。
- 現金を渡した前後のメッセージのやり取り。
- 品物を買った際のレシートや購入履歴。
- 交際していた時期が分かる写真や予定のやり取り。
- 店を通していた時期の予約や決済の記録。
返還を求めやすい支出と、そうではない支出
どちらの立場であっても、見通しを立てるうえでは同じ物差しが使えます。返す約束や使い道の限定があったものほど求めやすく、関係を続けるために自発的に出したものほど求めにくい、という傾向があります。
- 返す時期や方法まで話し合っていたお金。
- 相手の借入や家賃など、使い道を特定して渡したお金。
- 相手が払うべき費用を、その場で肩代わりしたお金。
- 相手の説明が事実と異なっていたことが後から分かったお金。
- 関係を続けることを条件として、はっきり取り決めたうえで渡したお金。
当事務所では、店舗型風俗店のキャストに貸したお金について、やり取りの記録をもとに回収に至った事例を扱っています(【解決事例】店舗型風俗店のキャストに貸した200万円|LINE履歴と弁護士会照会で回収に至った事例)。
反対に、次のような支出は、返還を求めにくい部類に入ります。
- 二人で出かけた際の飲食代や交通費。
- 記念日などに贈った品物。
- 店を通して支払った料金や指名料。
- 理由を告げずに、繰り返し少額を渡していたもの。
交際に移る前、接客の場で渡していた分の扱いについては、キャストとの恋愛感情のもつれ|貢いだお金・プレゼントの返還で詳しく整理しています。
受け取った側から見たとき
請求のすべてに応じる義務があるとは限らない
まとまった金額を示されると、全体に応じなければならないように感じるかもしれません。ただ、請求の中身を一件ずつに分けると、返す約束が確認できる部分と、そうではない部分とに分かれるのが通常です。その場で金額を認める前に、内訳の提示を求めるだけでも状況は変わります。交際関係を理由に高額の支払いを求められた事案でも、根拠を確かめたうえで支払いに至らなかった例があります(【解決事例】メンズエステの交際関係を理由とした300万円の要求に、1円も支払わず対応した事例)。
求め方によっては、請求する側の立場が変わる
請求すること自体は正当な行為ですが、勤務先や家族に知らせると告げる、店の前で待つ、夜間に繰り返し連絡するといった方法が加わると、別の問題として評価されることがあります。請求する側であっても、伝え方については慎重な検討が必要です。
二人の間だけでは終わらない場合がある
店との関係が残っていることがある
店を通さずに個人で会うことは、多くの店で禁止行為とされています。清算の話が店に伝わったことをきっかけに、店から別の請求が向けられることがあります。二人の間の清算と、店との関係の整理は、切り分けて考える必要があります(風俗嬢と店外・プライベートで会ってトラブルに|「店を通さない」リスク)。
家庭がある場合には、第三者からの請求が生じ得る
どちらかに配偶者がいる場合、関係の内容によっては、配偶者から慰謝料を請求される可能性が出てきます。清算の話し合いの中で交わした説明が、そのまま別の請求の材料になることもあります。相手に配偶者がいると分かった後の身の振り方は、交際相手が既婚とわかった後、どうすべきか|「続ける」「別れる」それぞれの法的リスクで整理しています。
話し合いで清算するときの順序
感情の整理と金銭の清算を同時に進めようとすると、話がまとまりにくくなります。次の順序を目安にしてください。
- 渡したお金、受け取ったお金を、時期と形ごとに一覧にする。
- それぞれについて、当時のやり取りが残っているかを確認する。
- 返す約束があったといえるものと、そうではないものを分ける。
- 金額ではなく、対象となる支出の範囲から合意していく。
- 合意できた内容を書面にまとめ、以後は請求しない旨を明記する。
書面に残しておく意味
口頭での了解だけでは、後日あらためて請求が向けられることがあります。清算の範囲と、今後互いに請求しないことを書面に残しておくと、蒸し返しを避けやすくなります。書面の作り方は手切れ金を払って関係を終わらせる|口外禁止・清算条項付き合意書の作り方で具体的に扱っています。
避けたほうがよい対応
その場をしのぐための対応が、後の交渉で不利に働くことがあります。
- 内訳を確認しないまま、総額を認める発言をすること。
- 言われるままに、借用書や念書に署名すること。
- やり取りの履歴を消してしまうこと。
- 相手の勤務先や家族に連絡して解決を図ろうとすること。
- 一部だけを支払い、残りの扱いをあいまいにしたまま終えること。
よくあるご質問
交際が始まる前に店で支払った料金も清算の対象になりますか
店を通して支払った料金は、店との取引に基づくものとして扱われるのが通常です。その後に私的な交際へ移ったとしても、それだけで相手個人への請求に変わるわけではありません。
現金で手渡ししていたため、記録がほとんど残っていません
振込の記録がなくても、渡した前後のやり取りや、金額に関するメッセージが手がかりになる場合があります。記録の有無で進め方が変わりますので、残っているものを整理したうえでご相談ください。
請求されている金額が大きく、支払いに応じるか迷っています
金額の大小よりも先に、内訳のどの部分に根拠があるのかを確かめることをおすすめします。応じるかどうかの判断は、その整理を終えてからでも遅くはありません。
まとめ
- 渡したお金の意味は渡した時点で決まり、交際に発展したことでさかのぼって変わるわけではない。
- 清算は総額からではなく、時期と形ごとに一件ずつ分けることから始める。
- 私的な交際がいつ始まったかは、店外で会った時点だけで決まるものではない。
- 私的な関係に移った後は第三者の記録が残りにくく、当時のやり取りが手がかりになる。
- 返す約束や使い道の限定があった支出ほど、返還を求めやすい。
- 請求を受けた側も、内訳を確かめないまま総額を認める対応は避けたほうがよい。
- 店との関係や配偶者からの請求が同時に動くことがあり、切り分けた整理が必要になる。
キャストとの金銭の清算をお考えの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。接客の場で知り合った相手との金銭の清算は、支出の時期や形が入り組んでいることが多く、ご自身だけで整理するのが難しい分野です。
返還を求めたいとお考えの方も、請求を受けて対応に迷っている方も、やり取りの記録が残っているうちにご相談ください。お話をうかがったうえで、どの部分について何を主張できるのかを整理し、今後の進め方をご提案します。


