認めた場合の処分の見通し|罰金・略式・不起訴の分かれ目
風俗店を利用したあとに、店から何度も電話がかかってくる。LINEやショートメッセージも届いている。出るのが怖くて放置しているうちに数日が過ぎ、着信だけが増えていく――こうしたご相談は少なくありません。
このとき多くの方が知りたいのは、「無視してよいのか」という善悪の判断ではなく、「このまま放置したら、この先どうなるのか」という見通しだと思います。この記事では、店からの電話やLINEに応答しない状態が続いた場合に、何が、どのくらいの時間軸で起こり得るのかを整理します。支払いを免れるための方法をお伝えするものではなく、放置という選択がどんな結果につながりやすいのかを、事実として把握していただくための記事です。
この記事が想定している場面
想定しているのは、性風俗店を利用した男性のお客様側で、利用後に店やキャストから連絡が来ているものの応答していない、という状況です。
- すでに逮捕されている、警察から呼出しを受けている場合は、段階が異なるため個別にご相談ください
- 相手が18歳未満だった可能性がある場合も、扱いが大きく変わるため個別の検討が必要です
- 店側・キャスト側のお立場の方は、本記事の前提と視点が異なります
「無視」はひとつではない――まず4つに分ける
「無視するとどうなるか」という質問には、そのままでは答えられません。誰からの連絡を放置しているのかによって、法的な意味がまったく違うからです。ここを分けずに「無視は危険」とまとめてしまうと、本当に急ぐべき場面を見落とすことになります。
| 放置している相手 | 典型的な形 | 放置したときの法的な意味 |
|---|---|---|
| 店・キャスト本人 | 電話、LINE、ショートメッセージ | 応答する法的義務はない。ただし相手が次の手段を選ぶ材料にはなる |
| 相手方の代理人弁護士 | 通知書、内容証明郵便 | 記載された期限は相手方が定めたもので、徒過が直ちに罰則につながるわけではない。ただし交渉が打ち切られ、手続に移りやすくなる |
| 裁判所 | 支払督促、訴状、期日の呼出状 | 期限が法律で定められており、放置がそのまま不利な結論に結びつくことがある |
| 警察・検察 | 電話、出頭の要請 | 応じない状態が続くこと自体が、身柄を確保する必要性を判断する材料のひとつになり得る |
この記事が主に扱うのは、いちばん上の段、つまり店やキャスト本人からの直接の連絡です。下の3つは、放置の危険度が段違いに高く、しかも期限が自分の都合では動きません。裁判所や警察からの書面・連絡だけは、他をどう考えるにせよ先に対応を決めることをおすすめします。
電話に出ないこと自体が、違法になるわけではない
まず前提として、私人からの電話やメッセージに応答しなければならないという法律上の義務はありません。店から着信があるのに折り返さないこと、LINEを既読にしないことは、それ自体で罪になるものでも、後の裁判で「悪質」と評価が決まるものでもありません。この点は、不安をあおられやすいところなので、はっきりさせておきたいところです。
ただし、応答しないことは「何もしない」ことと同じではありません。連絡が届かない状態が続けば、相手は次の手段を検討します。放置は、その後の展開の主導権を相手側に預ける選択である、という理解が実態に近いと思います。
着信拒否やブロックで、連絡が止まるとは限らない
着信拒否やブロックをすると、その番号・そのアカウントからの連絡は届かなくなります。しかし、連絡そのものが止まるかどうかは別の話です。実際には、別の番号や非通知からの架電、ショートメッセージ、自宅への郵便物といった形で経路が変わることがあります。
ここで見落とされがちなのが、経路が変われば、届く相手も変わり得るという点です。携帯電話への着信であれば自分だけが知る情報ですが、自宅に郵便が届けば同居のご家族の目に触れます。「知られたくない」という気持ちから連絡を遮断したことが、結果として周囲に知られる経路を増やしてしまう。この逆転は、実際によく起きます。
放置の先では、3本のレールが別々の速さで動く
風俗店とのトラブルは、ひとつの流れとして進むわけではありません。次の3つが、それぞれ別の理屈と速度で動きます。
- お金のレール(民事)――損害賠償や示談金の請求、その後の裁判上の手続
- 刑事のレール(捜査)――被害届や告訴、それを受けた捜査、呼出しや逮捕の検討
- 発覚のレール――家族・勤務先など、周囲に知られるかどうか
放置は、この3本のいずれも自動的に止めるものではありません。一方で、放置したからといって3本すべてが必ず進むわけでもありません。実際には、どのレールがどこまで動くかは、相手方が何を望み、どこまで手間とお金をかけるかに左右されます。ここを「無視すれば逮捕される」と単純化する説明も、「放置すれば消える」という説明も、どちらも実態からは離れています。
時系列で見る――放置が続いたときに順に起きうること
以下は、放置が続いた場合に典型的にたどられる順序です。期間はあくまで目安で、事案によって前後しますし、途中で止まることも珍しくありません。
| 時期の目安 | 典型的に起きること | この段階に残っている選択肢 |
|---|---|---|
| 直後~数日 | 店からの繰り返しの架電、LINE・SMSでの連絡、留守番電話への伝言 | 事実関係の確認、記録の保存、窓口の設定 |
| 数日~数週間 | 別番号や非通知からの架電、自宅への郵便物、「被害届を出す」との告知 | 請求内容の確認、条件交渉、示談の申入れ |
| 数週間~数か月 | 代理人弁護士名の通知書、内容証明郵便の到達 | 期限内の回答、交渉による解決 |
| 通知後~ | 支払督促の申立て、少額訴訟、通常の民事訴訟 | 督促異議の申立て、答弁書の提出、訴訟内での和解 |
| 判決等の確定後 | 預貯金や給与の差押えなど強制執行 | 不服申立ての手段は大きく限られる |
| (並行して) | 被害届・告訴の受理、捜査、警察からの連絡や出頭要請 | 供述の準備、被害弁償や示談の検討 |
住所や氏名は、思っているより早く分かることがある
「電話番号しか教えていないから、それ以上は特定されない」と考えて放置される方がいます。しかし予約時に伝えた電話番号や氏名を手がかりに、弁護士に依頼して調査が行われることがあり、自宅宛てに通知書が届く形で判明します。連絡が携帯電話だけで止まっている段階と、自宅に書面が届いた段階とでは、選べる対応の幅が変わります。
裁判所の手続には、自分の都合で動かせない期限がある
民事の手続に移ると、状況の性質が変わります。たとえば支払督促は、裁判所書記官が相手方の言い分を聞かずに発するもので、送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てないと、仮執行宣言が付され、最終的には確定判決と同じ効力を持ち得ます(民事訴訟法386条、391条、396条)。訴額が60万円以下であれば少額訴訟という簡易な手続が使われることもあります(同法368条1項)。
「受け取らなければよい」という発想も、残念ながら通用しません。書類を受け取らない場合には、就業場所への送達、書留郵便等に付する送達、公示送達といった方法が用意されており(同法107条、110条、112条)、受領しなくても手続自体は進みます。期日に出頭せず、答弁書も出さないままだと、相手方の主張を争わなかったものとして扱われることがあります(同法159条1項・3項)。逆に、仕事の都合で出頭できない場合でも、あらかじめ答弁書を提出しておけば、その内容を陳述したものとして扱われる仕組みがあります(同法158条)。「出られないから反論を諦める」必要はない、ということです。
差押えは、勤務先に届くことがある
判決などが確定した後の強制執行では、預貯金のほか給与が対象になることがあります。給与については、原則として手取り額の4分の3に相当する部分は差し押さえられません(民事執行法152条1項。手取りが政令で定める額を超える場合は、その額を超える部分が対象になります)。生活が直ちに立ち行かなくなる制度ではなく、範囲の変更を申し立てる仕組みもあります(同法153条)。
ただし、給与を差し押さえる手続では、勤務先に対して裁判所から書類が送られます。周囲に知られたくないという理由で連絡を放置していた場合、その目的からいちばん遠い結果になり得る、ということです。ここは、放置を選ぶ前に知っておいていただきたい点です。
刑事のレールは、金銭のやり取りとは別に動く
本番行為や盗撮などが問題になっている場合、店への支払いの有無とは別に、被害届や告訴が出されることがあります。性犯罪は2017年の法改正で親告罪ではなくなっており、「許すつもりだ」という被害者側の意思があっても、それだけで手続が自動的に終わるわけではありません。
また、逮捕されずに捜査が進む在宅の事件には、勾留のような法律上の日数制限がありません。そのため「何も言われていない期間」が長く続くことがあり、これは終わったことを意味しません。この点は、次の項目とあわせて読んでいただければと思います。
「何も起きないまま終わる」ことも、実際にはある
誠実にお伝えすると、店から数回連絡があったきりで、その後は何も起きずに時間が過ぎていく事案も現実にあります。相手方が手間や費用をかけてまで進めない、内容として立件が難しい、といった事情があるためです。「放置すれば必ず訴えられる」「必ず逮捕される」という説明は、実態を正確に表していません。
ただし、そこには2つの注意点があります。
1つは、終わったことは誰も通知してくれないということです。何も起きない状態と、終わった状態は、外から見分けがつきません。そのため不安だけが長期間続くことになります。
もう1つは、時間の経過で権利が自動的に消えるわけではないという点です。損害賠償の請求権は、損害と加害者を知った時から3年、行為の時から20年という期間の定めがあり(民法724条)、契約に基づく請求はまた別の期間で計算されます(同法166条1項)。しかも時効は当事者が援用して初めて効果が生じるもので(同法145条)、途中で催告があれば一定期間完成が猶予され(同法150条1項)、こちらが債務を承認すると更新されます(同法152条1項)。軽い気持ちで「少しなら払います」と伝えることが、期間の計算をやり直させてしまう場合がある、ということです。
放置が不利に働きやすい4つの場面
放置が一律に悪いわけではありませんが、次の場面では不利に働きやすい傾向があります。
- 身に覚えのない請求や、誤解に基づく請求を受けているとき――反論しないまま時間が経つと、相手方の中では事実として固まっていきます。後から覆すには、そのぶん手間がかかります
- 金額に納得できないとき――交渉ができるのは、話し合いの窓が開いている間です。手続に移った後は、争える範囲も進め方も限定されます
- 刑事事件になり得る内容のとき――被害弁償や示談は相手方の同意が必要で、時間が経つほど条件が整いにくくなる傾向があります
- 家族や勤務先に知られたくないとき――先に述べたとおり、放置は連絡の経路を増やす方向に働きやすく、目的と逆の結果になることがあります
逆に、すぐには応じないほうがよい場面もある
ここは誤解されやすいところですが、「無視をやめる」ことと「言われたとおりにする」ことは、まったく別です。放置をやめると決めた場合でも、次の対応は避けたほうが無難です。
- 電話口でその場の金額に同意する――口頭のやり取りでも、和解として扱われることがあります(民法695条)
- 一部だけ先に振り込む、分割払いの念書を書く――債務を認めたものと評価され、時効の計算に影響し得ます(同法152条1項)
- 身分証の画像や勤務先の情報を追加で送る――請求と直接関係のない情報が渡ることになります
- キャスト本人に直接連絡を取る――事案によっては、心証を悪くするだけでなく、別の問題を生むことがあります
なお、店がキャスト本人の慰謝料を代理して請求してくる形については、弁護士でない者が報酬を得る目的で示談交渉を行うことを禁じた弁護士法72条との関係が問題になり得ます。実際に2026年2月、無店舗型性風俗店の店長らが客と示談交渉を行ったとして弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられています。誰が誰の権利として請求しているのかは、確認しておいてよい点です。
放置をやめると決めたときの手順
- 記録を先に固める――着信履歴、LINEやSMSの画面、留守番電話、届いた封筒と中身を、消さずに保存します。不利に見える記録も、消すこと自体が別の評価につながる場合があります
- 求められている内容を1枚に書き出す――誰が、何について、いくらを、いつまでに求めているのか。分からない部分は「分からない」と書いておきます
- 期限のある書面を最優先する――裁判所からの書面、警察からの呼出し、代理人からの回答期限。これらは他の検討より先に扱います
- 窓口を一つにする――遮断でも全面的な応答でもない、第三の状態を作るということです。代理人を立てれば、以後の連絡先はそちらに一本化されます
- 家族や勤務先への説明の段取りを、先に決めておく――「知られたくない」という気持ちが判断を急がせている場合、ここを先に整理すると落ち着いて考えやすくなります
相手からの連絡が度を越えている場合は、別の問題として扱う
請求すること自体は、権利の行使であり、直ちに違法とはいえません。被害届を出すと告げることも同様です。ただし、次のような形になっている場合は、請求の当否とは別に検討すべき問題を含みます。
- 「勤務先や家族に知らせる」と告げたうえで金銭を求めている(刑法222条、249条に関わり得ます)
- 深夜の連続した架電や、自宅・勤務先への押しかけが続いている(退去を求めても帰らない場合は刑法130条後段の問題になり得ます)
- 金額の内訳や根拠を書面で示さないまま、極端に短い期限を切ってくる
このような場合は、自力での交渉を続けることのリスクが上がります。記録を残したうえで、早い段階で相談先を確保することをおすすめします。
まとめ
- 店からの電話やLINEに応答しないこと自体は、違法ではありません
- ただし放置は「何もしない」ことではなく、次の展開の主導権を相手方に預ける選択です
- 裁判所や警察からの連絡は、店からの連絡とは危険度が異なります。期限が自分の都合では動きません
- 放置の先では、お金・刑事・発覚の3本のレールが別々の速さで動きます
- 何も起きずに終わる事案も実際にありますが、終わったことは通知されず、時間の経過だけで権利が消えるわけでもありません
- 「無視をやめる」ことは、「言われたとおりに払う」ことではありません。窓口を移すという中間の選択肢があります
放置している時間は、状況が固定される時間ではなく、選べる手段が少しずつ減っていく時間です。まだ携帯電話への着信だけで止まっている段階であれば、選べることは多く残っています。ご自身の状況を整理するところから、始めていただければと思います。


