【親子問題】親が要介護になったとき、同居の子の生活はどうなるのか
本記事は2026年9月時点の法令に基づいて作成しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応はご相談のうえでご判断ください。
「娘がホストクラブで数百万円の売掛を抱えていると、突然知らされた」「店の関係者を名乗る人が実家に来て、親として何とかしてほしいと言われた」。子のホストクラブの売掛をめぐる親御さんからのご相談は、ある日突然、金額と一緒に問題が目の前に現れるという形をとることが少なくありません。
2025年6月に改正風営法が施行され、売掛の取立ての際に客を威迫することや、支払いのために性風俗店などで働くよう求めることには罰則が設けられました。もっとも、改正の解説の多くは客本人や店の立場から書かれており、親がこの改正をどう受け止め、どの順序で関わればよいかという視点からの整理は多くありません。
本記事では、ホストクラブの売掛に絞って、改正風営法を親の立場から読み直し、請求や訪問を受けたとき、肩代わりを考えるとき、子本人の交渉をどう進めるかを順に解説します。推し活やギャンブルを含めた支出先ごとの整理は、次の記事をご覧ください。
【親子問題】ホスト・推し活・ギャンブルへの支出が原因の場合
最初に確かめたいこと|誰の、誰に対する債務か
売掛の問題に向き合うとき、最初に確かめたいのは、その債務が誰のもので、誰に対するものかという点です。この二つが曖昧なまま話を進めると、払わなくてよいものを払ったり、払ったのに問題が終わらなかったりすることがあります。
支払義務を負うのは、原則として子本人
ホストクラブで飲食をした代金の支払義務を負うのは、店と契約をした子本人です。親子であっても法律上は別の人格ですので、親が保証人になっている場合などの別の根拠がない限り、親に売掛を支払う法的な義務はありません。この原則は次の記事で詳しく解説しています。
【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのか
請求してくる相手によって、注意点が変わる
ホストクラブの売掛は、店が客に代金を請求する形のほか、担当ホストが店に代金を立て替え、客は担当ホスト個人に返す形で運用されていることがあります。また、売掛の支払いのために、子が消費者金融などから借入れをしている場合もあります。請求してくる相手ごとに整理すると、次のようになります。
| 請求してくる相手 | 債務の形 | 親として注意したい点 |
|---|---|---|
| 店 | 飲食代金の後払い | 請求書の内訳と、注文や合意の内容を確かめる余地がある |
| 担当ホスト個人 | 立て替えた代金の返還 | 誰に支払えば債務が消えるのかを確かめる必要がある |
| 貸金業者 | 売掛の支払いに充てた借入れ | 親に対して代わりに返済するよう求めることは、貸金業法で禁じられている |
| 回収業者を名乗る者 | 店や担当ホストから回収を任されたと称する請求 | 弁護士でない者が報酬を得て他人の債権を回収することは、原則として認められていない |
売掛の廃止を打ち出す店が増えた一方で、「前入金」や「立替」といった別の名目で、実質的に後払いと同じ状態が作られている例もあります。名目にかかわらず、何の代金として、誰に、いくら負っているのかを確かめることが出発点になります。
改正風営法を親の立場から読む
2025年6月28日に施行された改正風営法は、ホストクラブなどの接待飲食営業について、二つの段階の規律を設けました。親として押さえておきたいのは、それぞれの規定が誰を守り、誰に向けられているかという点です。
店が守るべき事項|18条の3
一つ目は、営業者が守るべき事項として定められたものです。料金について虚偽の説明をすること、客の恋愛感情につけ込み、関係が終わる旨などを告げて困惑させて飲食をさせること、注文を受ける前に飲食物を提供して困惑させることが挙げられています(風営法18条の3)。この規定に違反した場合は、指示や営業停止といった行政処分の対象となりますが、刑事罰は定められていません。
取立てと「働かせる」要求の禁止|22条の2
二つ目は、禁止行為として刑事罰が設けられたものです。料金の支払いなどをさせる目的で客を威迫して困惑させること(風営法22条の2第1号)と、客を威迫し、または誘惑して、料金の支払いなどのために売春や性風俗店での勤務などをして金銭を得るよう要求すること(同条第2号)が禁じられました。違反した者には、6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科が定められています(同法53条2号)。
親の立場から注目したいのは、次の二点です。まず、ここでいう「料金の支払等」には、料金の支払いに充てるためにした借入れの返済も含まれます。子が消費者金融などで借りたお金の返済を迫られている場面も、規定の対象に入り得ます。次に、第2号は脅す場合だけでなく、「誘惑」する場合も含みます。穏やかな言葉で性風俗店での勤務を持ちかけることも対象となり得るため、子が「自分で決めたことだから」と話していても、それだけで店側の行為が問題にならないとは限りません。
違反があっても、売掛が当然に消えるわけではない
風営法は、営業のあり方を取り締まる行政上の法律です。店がこれらの規定に違反したからといって、売掛の支払義務が当然になくなるわけではありません。一方で、違反にあたる事実は、子本人が契約の取消しや無効を主張する際の材料として意味を持つことがあります。改正の全体像や、取立て・勤務要求の規制については、次の記事で解説しています。
- 【2025年6月施行】改正風営法で何が変わったか|色恋営業と売掛金の規制
- 【風俗トラブル】売掛の取立てで威迫された|22条の2と刑事罰が使える場面
- 【風俗トラブル】『売掛を返すために働け』と言われた|53条2項が正面から禁じた要求
親への取立てには、別の規律が及ぶ
22条の2第1号が守っているのは「客」、つまり子本人です。親が店側から支払いを迫られた場合は、この規定ではなく、刑法の脅迫罪や恐喝罪、退去を求めても住居から立ち去らない場合の不退去罪(刑法222条・249条・130条)などが問題になります。東京都の条例も、対象となる地域の営業について、粗野または乱暴な言動を交えた料金の取立てを禁じています。
なお、貸金業法は、貸金業者が債務者以外の者に対して、債務者に代わって返済するよう求めることを禁じていますが(貸金業法21条1項7号)、この規定の対象は貸金業者です。店や担当ホストが自分の飲食代を親に求める場面には、この規定は直接には及びません。ただ、それは親に支払義務が生じるという意味ではなく、親に義務がないという原則は変わりません。
子の年齢によって、使える手段が変わる
子本人の側で売掛を争えるかどうかは、子の年齢によって大きく変わります。親が状況を確かめるときも、まず子が何歳のときの売掛なのかを押さえておくことが大切です。
18歳未満の場合
風営法は、ホストクラブなどの営業所に18歳未満の者を客として立ち入らせることを禁じています(風営法22条1項5号)。18歳未満の子が親権者の同意を得ずにした契約は、原則として親権者が取り消すことができます(民法5条2項)。ただし、年齢を偽って店を信じさせていた場合は、取り消せないことがあります(同法21条)。取消しを検討する場合は、入店や注文の際に年齢確認がどのように行われたかを、子から聞き取っておくことが大切です。
18歳・19歳の場合
2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられたため、18歳・19歳の子は、未成年者であることを理由に契約を取り消すことはできません。一方で、20歳未満の者に酒類を提供することは、風営法でも禁じられています(風営法22条1項6号)。20歳未満の子に酒類が提供され、その代金が売掛の大きな部分を占めている場合、その事情は、請求の中身を争う際の材料の一つとなり得ます。
20歳以上の場合
成人した子の売掛についても、すべてに支払義務があるとは限りません。恋愛感情につけ込まれて契約をした場合の消費者契約法による取消し(消費者契約法4条3項6号)、詐欺や強迫による取消し(民法96条1項)、内容が著しく不当な場合の公序良俗違反による無効(同法90条)などが考えられます。
注意したいのは、消費者契約法による取消しには期間の制限があることです。追認をすることができる時から1年、または契約の時から5年を過ぎると、取消権を行使できなくなります(消費者契約法7条1項)。親が様子を見ているあいだに、子の側で使えたはずの手段が期間切れになることがあります。争える余地の見分け方は、次の記事で解説しています。
親に請求や訪問があったとき
店や担当ホストが、子と連絡が取れなくなったことなどをきっかけに、実家へ連絡してきたり、訪ねてきたりすることがあります。そうした場面で気をつけたい点を整理します。
その場で約束や署名をしない
「親として責任を取ってほしい」と求められても、親が保証人になっていなければ支払義務はありません。注意したいのは、その場で「払います」と約束したり、保証や分割払いの書面に署名したりすると、新たに親自身の義務が生じるおそれがあることです。保証契約は書面でしなければ効力を生じませんが(民法446条2項)、裏返せば、書面に署名すると、後からその効力を争うことは難しくなります。「持ち帰って検討します」と伝え、即答を避けるのが無難です。すでに署名してしまった場合は、次の記事をご覧ください。
【親子問題】保証人になってしまった後にできること
自宅に来た、脅すような言葉があったとき
自宅に押しかけられた場合は、はっきりと退去を求めてください。退去を求めても居座る場合は不退去罪にあたり得ますし、危険を感じたときは110番通報をためらう必要はありません。緊急ではない相談は、警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署でも受け付けています。
あわせて、日時、来た人の人数や名乗った名前、言われた内容を記録しておくと、後で状況を伝えやすくなります。インターホンの録画や、電話の録音も手がかりになります。貸金業者などからの取立てが家に来た場合の対応は、次の記事で解説しています。
【親子問題】闇金・違法な取立てが家に来た
「回収を任された」という人から連絡が来たとき
店や担当ホストから回収を任されたと称する業者が連絡してくることがあります。弁護士でない者が報酬を得る目的で他人の債権の回収を行うことや、回収のために債権を譲り受けて取り立てることは、原則として弁護士法で禁じられています(弁護士法72条・73条)。相手が何者で、誰の債権について、どのような権限で請求しているのかを確かめ、分からないまま支払わないことが大切です。
肩代わりを考えるなら|「払う」より「終わらせる」ことを優先する
親として、子の状況を見かねて支払いを考えるのは自然なことです。ただ、支払い方によっては、お金を出したのに問題が終わらないということが起こります。
払う前に、明細と受け取る権利のある相手を確かめる
まず、何の代金がいくらなのかを、請求書や伝票などの書面で確かめます。飲食代のほかに、遅延損害金、違約金、ペナルティといった名目が含まれていないかも確認したいところです。次に、支払う相手が、その債権を受け取る権利を持っているかを確かめます。たとえば店の債権なのに担当ホスト個人の口座に振り込むと、店との関係で債務が消えたといえるかが争いになることがあります。請求書の費目の見分け方は、次の記事が参考になります。
【風俗トラブル・ホストクラブ】ホストクラブの売掛を請求された|改正後に『払う必要のある売掛』を見分ける
支払うなら、清算の合意とあわせる
親が子の売掛を支払うことは、法律上、第三者による弁済として扱われ、支払った分だけ子の債務が減ります(民法474条1項)。ただ、一部を支払っただけでは、残りの請求や、別の名目での請求が続くことがあります。
肩代わりを決めた場合は、支払いと引き換えに、その金額で子の売掛の全部が清算されること、今後は名目を問わず請求しないことを書面で確認する形が望ましいといえます。子の債務の清算である以上、子本人もその合意に関わっておくことが大切です。領収書は、受け取った人の氏名と、何の支払いかが分かる形で受け取ってください。
子との間では、あげるのか貸すのかを決めておく
子に代わって支払ったお金を、子にあげたことにするのか、貸したことにするのかも決めておきたい点です。記録がないまま支払いを繰り返すと、後で返してもらう話をしたくても根拠が乏しくなり、きょうだいとの関係で不公平感が残ることもあります。
【親子問題】金銭要求に応じ続けた記録は、後で意味を持つか
肩代わりを検討するときは、次の順序で整理することをおすすめします。
- 請求の内訳を、請求書や伝票などの書面で確かめること。
- 請求している相手が、その債権を受け取る権利を持っているかを確かめること。
- 子の側で、取消しや無効を主張できる事情がないかを確かめること。
- 支払う場合は、清算の合意と領収書を書面で残すこと。
- 子との間で、あげるのか貸すのかを決めて記録すること。
- 親自身の生活資金や老後の資金に影響しない範囲かを確かめること。
子本人の交渉は、子本人の意思が出発点になる
売掛の減額や取消しを求める交渉は、誰が進めるのかという点も整理しておく必要があります。親が善意で動いたことが、かえって子の側の選択肢を狭めることもあるためです。
成人した子の債務について、親は代理人ではない
成人した子の売掛について店と交渉し、減額や取消しを求めることができるのは、原則として債務者である子本人か、子本人から依頼を受けた代理人です。親が「親だから」という立場だけで、子に代わって取消しを主張したり、和解をしたりすることはできません。
弁護士が子の売掛の交渉を担う場合も、子本人からの依頼と意思の確認が前提になります。費用を親が負担することはあり得ますが、交渉の方針は子本人の意思を尊重して決めることになります。親からのご相談の内容が子にどう伝わるかについては、次の記事で解説しています。
【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方
子が働くことや借入れを求められている様子があるとき
子が急に夜の仕事を始めた、消費者金融からの郵便物が届くようになった、担当ホストからの連絡が頻繁で落ち着かない様子がある。こうした変化が見られるときは、売掛の支払いのために働くことや借入れを求められている可能性があります。先に見たとおり、支払いのために性風俗店での勤務などを求めることは、改正風営法で禁じられています。
子が話したがらない場合でも、責める言葉を向けるより、困ったときに相談できる窓口があることを伝えておくほうが、次の一歩につながりやすくなります。消費者ホットライン(188)や警察相談専用電話(#9110)のほか、弁護士への相談も選択肢になります。
売掛の問題の背景にある、親子の距離
ホストクラブの売掛は、お金の問題であると同時に、子の生活や人間関係の問題でもあることが少なくありません。親が支払って一度は終わっても、原因が続いていれば同じことが繰り返されることがあります。また、子が親に繰り返しお金を求めるようになり、断ると声を荒らげるなど、親子の間の問題に広がっていくこともあります。
【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけ
当事務所では、家庭内暴力や金銭の要求に悩む親御さんからご依頼を受け、弁護士が親の代理人として子と向き合う取り組みを行っています。ただ、子を孤立させるだけでは自立につながりにくいため、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、カウンセラーが子の仕事探しや日々の金銭管理などを支える体制をとっています。人が関わることですので結果をお約束することはできませんが、親子の距離を取ることで、双方に変化が生まれることがあります。
【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応
よくあるご質問
店から「親が払わないなら、娘に働いて返してもらう」と言われました。どうすればよいですか
子本人に対して、支払いのために性風俗店での勤務などを求めることは、改正風営法で禁じられた行為にあたり得ます(風営法22条の2第2号)。親に対する言動の内容によっては、恐喝などが問題になることもあります。その場で支払いを約束せず、言われた日時や内容を記録したうえで、警察や弁護士に相談することをおすすめします。子本人にも、そのような要求に応じる必要はないことを伝えてください。
子に知らせないまま、店と話をつけて支払ってもよいですか
親が支払うこと自体は可能ですが、子本人が関わらないまま清算すると、店と子のあいだで何が終わったのかが曖昧になりやすく、後から別の名目で請求が続くことがあります。また、子の側で取消しを主張できた事情があっても、その機会が失われやすくなります。できる限り、子本人と話をしたうえで進めることをおすすめします。
すでに親が売掛を支払ってしまいました。取り戻すことはできますか
請求の中身に問題がなかったのであれば、取り戻すことは難しいのが一般的です。一方、恋愛感情につけ込まれた契約だった、暴利といえる内容だったなど、請求の中身に問題があった場合は、返還を求められる余地があります。ただし、契約の当事者は子本人ですので、子の意思を確認しながら検討することになります。
まとめ
- 子のホストクラブの売掛について、保証などの別の根拠がない限り、親に支払義務はありません。
- 店・担当ホスト個人・貸金業者・回収業者のどれからの請求かによって、確かめるべき点が変わります。
- 改正風営法は、取立ての際の威迫や、支払いのために性風俗店での勤務などを求めることを禁じ、罰則を設けました(風営法22条の2・53条2号)。
- 風営法違反があっても売掛は当然には消えませんが、子の側で取消しや無効を主張する際の材料になります。
- 18歳未満、18歳・19歳、20歳以上のどれにあたるかで、使える手段が変わります(民法5条2項、風営法22条1項6号、消費者契約法4条3項6号)。
- 親に請求や訪問があっても、その場で約束や署名をせず、記録を残して警察や弁護士に相談することが大切です。
- 肩代わりをするなら、明細と受け取る権利のある相手を確かめ、清算の合意とあわせて支払う形が望ましいといえます。
子の売掛が分かったとき、まず支払って終わらせたいと考えるのは親として自然なことです。ただ、支払う前に請求の中身と相手を確かめ、子本人の意思を確認しながら進めることが、結果として問題を本当に終わらせることにつながります。
同じような状況でも、子の年齢や経緯、残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


