【親子問題】一度相談したが動けなかった|時間が経ってから再開するとき
子の自立に向けて、家探しや仕事探し、日々の生活の立て直しを手伝ってくれる支援者を探すと、「自立支援カウンセラー」「ひきこもり支援員」「ライフコーチ」など、さまざまな肩書きに出会います。どの肩書きがどのような資格に裏づけられているのかは、親の側からは見分けにくいのが実情です。この記事では、親子問題の支援の場面で見かける資格の種類と、資格だけでは分からない点、支援者を選ぶときに確かめておきたいことを整理します。
本記事は2026年10月時点の法令・制度をもとにしています。資格制度や公的支援の内容は見直されることがあるため、最新の情報は各制度の窓口でご確認ください。
「自立支援カウンセラー」という国家資格はない
まず押さえておきたいのは、「自立支援カウンセラー」という名称そのものを定めた国家資格はないという点です。「カウンセラー」という言葉も、法律で名乗れる人が限られているわけではありません。そのため、民間団体が独自に講座や認定制度を設けて「〇〇カウンセラー」という資格を出していることもあれば、資格を持たずに長年の実務経験をもとに支援をしている人もいます。
肩書きに資格名が含まれていないことが、直ちに支援の質が低いことを意味するわけではありません。反対に、民間の認定資格を持っていることが、成人した子の自立を支える力を保証するものでもありません。肩書きは入口の手がかりの一つにとどめ、中身を確かめていく姿勢が大切です。
加えて、ひきこもりの人の自立支援をうたう民間事業者については、事業を監督する行政機関や、事業そのものを直接規制する法律がないことが、過去の訴訟の報道などでも指摘されてきました。誰でも事業を始められる分野だからこそ、親の側で確認しておきたい項目が増えます。
支援の現場で見かける主な資格
| 資格名 | 種類 | 主な活動領域 | 親子問題の支援で期待できる役割 |
|---|---|---|---|
| 公認心理師 | 国家資格 | 保健医療・福祉・教育・司法・産業 | 心理面の見立てや、本人・家族との面接 |
| 臨床心理士 | 民間資格 | 医療機関・相談機関など | 心理相談やカウンセリング |
| 精神保健福祉士 | 国家資格 | 精神科医療・精神保健福祉 | 医療機関や障害福祉サービスへのつなぎ |
| 社会福祉士 | 国家資格 | 福祉全般 | 生活保護や生活困窮者向け制度の活用 |
| キャリアコンサルタント | 国家資格 | 職業選択・能力開発 | 仕事探しや働き方の相談 |
| 産業カウンセラー | 民間資格 | 働く人の相談 | 仕事や職場に関する悩みの相談 |
表のうち国家資格とされているものは、いずれも「名称独占」と呼ばれる資格です。資格を持たない人がその名称を名乗ることは法律で禁じられていますが、相談に乗るといった業務そのものを資格者だけに限る「業務独占」の資格ではありません。つまり、資格がなくても似た内容の支援はできる一方で、「公認心理師」「精神保健福祉士」などと名乗っていれば、所定の試験や登録を経た人であることの一つの目安になります。登録証の提示を求めることも、失礼なことではありません。
民間資格は、認定する団体ごとに取得の要件が大きく異なります。大学院の修了を条件とするものもあれば、短期間の講座で取得できるものもあります。民間資格を名乗っている支援者には、認定団体の名称と取得の要件を尋ねてみると、資格の位置づけがつかみやすくなります。
資格だけでは分からないこと
成人した子の自立支援は、心理的な関わりだけで完結するものではありません。家を出た後の住まいを探す、仕事を探す、収入が足りなければ生活保護の申請を手伝う、毎月のお金の使い方を一緒に考える、といった生活全般に関わる支援が必要になる場面が多くあります。一つの資格がこれらすべてをカバーしているわけではないため、資格の有無に加えて、次のような点を確かめておくと判断の材料が増えます。
- 成人した子、とくに年齢が高くなった子の支援に携わった経験の有無。
- 家庭内暴力や金銭の無心がある家庭に関わった経験の有無。
- 医療機関や行政の窓口、必要に応じて警察と連携した経験の有無。
- 子が家を出た後に関わる期間と頻度。
- 親への報告の方法と頻度。
支援者の側が「必ず自立させます」「短期間で解決します」といった結果を約束する場合は、慎重に受け止めたほうがよいでしょう。子の状態や家族の状況によって、自立までにかかる期間や道筋は大きく変わります。誠実な支援者ほど、見通しを幅をもって説明するものです。
公的な窓口にいる支援者
民間の支援者を探す前に、公的な窓口でどのような人が相談に応じているかを知っておくと、比較の軸になります。都道府県や政令指定都市に置かれているひきこもり地域支援センターには、社会福祉士や精神保健福祉士、公認心理師などの専門職が配置されていることが一般的です。生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関では、国の養成研修を受けた相談支援員などが、住まいや仕事、家計の相談に応じています。地域若者サポートステーションでは、キャリアコンサルタントなどが働くことに関する相談を受けています。
公的な窓口は費用の負担が少なく、制度に基づいて運営されている安心感があります。一方で、自宅を繰り返し訪ねて子と向き合う、家を出た後の生活を日常的に支えるといった踏み込んだ関わりまでは、難しいこともあります。窓口ごとにできることとできないことは、【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないことや【親子問題】就労支援の選択肢|サポステ・就労準備支援事業の実際で解説しています。
民間の支援者に依頼する前に確かめたいこと
民間の支援者に依頼する場合、契約を結ぶのは親で、支援を受けるのは子という構造になることがほとんどです。この構造のもとでは、子本人の意思が置き去りにされたまま支援が進むおそれがあります。過去には、自立支援をうたう業者が本人の同意なく子を自宅から連れ出し、施設に留め置いたことについて、業者に損害賠償の支払いを命じる判決も出ています。この構造が抱えるリスクは【親子問題】契約するのは親、支援を受けるのは子|この構造のリスクで取り上げています。依頼する前には、少なくとも次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 本人の同意を得ないまま連れ出したり、施設に入れたりする方法をとらないこと。
- 実際に子と関わる担当者の氏名・資格・経歴が示されていること。
- 費用の内訳と、途中で解約した場合の精算方法が書面で示されていること。
- 支援の期間と、終了の目安が説明されていること。
- 子の状態によっては医療機関につなぐ方針があること。
こうした点を尋ねたときに説明をはぐらかしたり、契約を急がせたりする事業者には、慎重に向き合ったほうがよいでしょう。確認の項目は【親子問題】民間の自立支援施設を選ぶ前に確認すべきこと|契約・担い手・解約・本人の意思、裁判例の考え方は【親子問題】連れ出し型の支援をめぐる裁判例|「引き出し屋」訴訟で示された判断の枠組み、ホームページなどの情報の読み方は【親子問題】支援機関の情報をどう見分けるかでも解説しています。
支援者が担えることと、弁護士が担う部分
カウンセラーなどの支援者は、子の生活を立て直す場面で大きな力になります。ただし、法律の面では担えないこともあります。弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、他人の法律事件について代理や交渉などを行うことを原則として禁じています。たとえば、子が親に繰り返し金銭を求めてくる場面で親の代理人として子に対応すること、子が抱えた借金について債権者と交渉すること、親名義の家からの退去について条件を詰めることなどは、弁護士が担う領域にあたります。
また、弁護士には法律上の守秘義務があります。公認心理師や社会福祉士などの国家資格にも秘密を守る義務が定められていますが、資格を持たない支援者の場合、秘密の扱いは契約の内容次第になります。家庭の事情を詳しく伝える前に、相談した内容がどのように扱われるのかを確認しておくと安心です。
子の自立を支えるには、生活面を支える支援者と、法律面を担う弁護士が役割を分けて関わる形が考えられます。役割を分ける意味については【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由、お金の管理を第三者に任せる仕組みについては【親子問題】金銭管理を第三者が担う仕組み|日常生活自立支援事業と民間の支援者の違いでも取り上げています。
当事務所の取り組み
当事務所では、家庭内暴力やひきこもり、金銭の無心などに悩む親御さんからのご依頼を受け、弁護士が親の代理人として子と向き合う取り組みを続けています。子の側を孤立させないよう、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、弁護士は親への請求や暴力から親を守る役割を、カウンセラーは家探しや仕事探し、生活保護の申請のサポート、日々の金銭管理といった生活面の支援を担います。
子が家を出た後も、一定の期間は生活の基盤づくりに伴走することを想定しています。どの程度の関わりが必要かはご家庭ごとに異なるため、ご事情を伺ったうえで方針を決めていきます。サービスの全体像は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応、実際の関わり方は【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際でご紹介しています。
支援者を選ぶときは、肩書きや資格名だけで判断せず、誰が、どの範囲を、どのくらいの期間担うのかを具体的に確かめることが大切です。親御さんだけで支援者を比べるのが難しいと感じたら、状況の整理からご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


