【親子問題】保護観察中の子と同居する家族の役割

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は、2026年9月時点の更生保護法・少年法などの法令に基づいて作成しています。更生保護制度については令和7年に保護司法等の改正法が成立しており、今後、運用が変わる可能性があります。


「息子が保護観察になり、家に戻ってきた。親として何をすればよいのか分からない」「保護司さんが来るたびに、どこまで話してよいのか迷う」。親子の問題のご相談の中で、こうした声をいただくことがあります。一方で、「子が約束を守っていないようだが、親が見張らなければいけないのか」と、負担の重さを打ち明ける方もいらっしゃいます。

 保護観察については、「家庭で見守りながら更生を目指す制度」と説明されることが多く、その説明自体は誤りではありません。ただ、家族にどのような法的な位置づけがあり、どこまでが家族の役割で、どこからが保護観察官・保護司の役割なのかは、あまり整理されていないように感じます。

 この記事では、保護観察中の子と同居する家族の立場に絞り、同居に関わる遵守事項、家族が担える役割、抱え込まないための線引きを説明します。保護観察付きの執行猶予が取り消される場面の詳細は、別の記事に譲ります。

保護観察の仕組みと、家族の立ち位置

保護観察を受けるのはどのような人か

 保護観察は、刑務所や少年院などの施設に入るのではなく、社会の中で生活しながら立ち直りを目指す制度です。対象となる人は、次の4つに分けられています(更生保護法48条)。

区分保護観察が始まるきっかけ期間の目安
保護観察処分少年家庭裁判所の保護処分(少年法24条1項1号)原則20歳まで(2年に満たない場合は2年)
少年院仮退院者少年院からの仮退院仮退院の期間中
仮釈放者刑事施設からの仮釈放残りの刑期の間
保護観察付執行猶予者判決で保護観察付きの執行猶予執行猶予の期間中


 保護観察処分少年の期間は、20歳に達するまで、それまでの期間が2年に満たない場合は2年が原則です(更生保護法66条)。18歳・19歳の特定少年は、6か月または2年の保護観察となります。子が成人していても、仮釈放や保護観察付きの執行猶予であれば保護観察の対象になり、実家に戻って生活を立て直すケースは少なくありません。

指導と支援を担うのは保護観察官と保護司

 保護観察は、面接などで生活の様子を把握し、必要な指示を行う「指導監督」と、住まいや仕事、医療などの面で自立を助ける「補導援護」によって行われます(同法49条・57条・58条)。これを担うのは、保護観察所の国家公務員である保護観察官と、法務大臣から委嘱を受けた民間の保護司です(同法61条)。

 つまり、子を指導し、遵守事項を守らせる役割は、法律上は保護観察官と保護司に置かれています。家族が「監督者」として何らかの義務を負う、という形にはなっていません。

少年の保護者には、指導・助言が行われることがある

 例外として、子が20歳未満の保護観察処分少年または少年院仮退院者である場合、保護観察所の長は、必要に応じて保護者に対し、監護の責任を自覚し改善更生に役立つよう、指導や助言などの措置をとることができます(同法59条)。これも、保護者に処分を科すものではなく、家庭での関わり方を一緒に考える仕組みと受け止めてよいと考えます。

同居に関わる遵守事項|家族が知っておきたい部分

届け出た住居に住むことが、遵守事項になっている

 保護観察を受ける人は全員、法律で定められた「一般遵守事項」を守る必要があります。そのなかには、住居を定めて保護観察所の長に届け出ること、その住居に住むことが含まれています(同法50条1項3号・4号)。仮釈放や少年院からの仮退院の場合は、釈放前に家族のもとへ帰ることを前提として住居が特定されることもあります(同法39条3項・42条)。

 実家が届出の住居になっている場合、子がそこに住み続けることは、本人にとって守るべき約束の一部です。家族の側から見ると、同居そのものが保護観察の土台になっている、ということになります。

転居や7日以上の旅行には、事前の許可が要る

 転居や7日以上の旅行をするときは、あらかじめ保護観察所の長の許可を受けなければなりません(同法50条1項5号)。そのため、家族が感情的になって「今日中に出ていって」と伝え、子が許可を得ないまま家を出てしまうと、本人が遵守事項に反する状況に置かれるおそれがあります。

 同居を続けることが難しいと感じたときほど、家族だけで結論を出さず、保護観察官や保護司に先に相談することが大切です。

特別遵守事項は、書面で内容を確認できる

 一般遵守事項のほか、人によって「特別遵守事項」が定められることがあります。犯罪や非行に結び付くおそれのある交際・場所への出入りをしないこと、仕事や通学を続けること、特定の処遇プログラムを受けることなどが代表的です(同法51条2項)。遵守事項の内容は、本人に書面で交付されます(同法54条・55条)。

 家族が内容を知らないまま生活すると、何に気を配ればよいのか分かりません。本人の了解を得たうえで、書面を一緒に見ておくと、家庭でのルール作りがしやすくなります。

同居する家族が担える役割

生活の土台を整える

 家族の役割として大きいのは、規則正しい生活を送りやすい環境を用意することです。起床や食事の時間、仕事や通学に出かけやすい雰囲気など、日々の生活リズムは、保護司との面接だけでは整えきれない部分です。更生保護法も、措置をとる際には本人の家庭環境や交友関係などを十分に考慮するとしています(同法3条)。

保護司とのやり取りに加わる

 保護司は、面接のために自宅を訪問することがあり、本人はこれに応じる必要があります(同法50条1項2号イ)。また、保護観察所は、保護観察のための調査として関係人に質問し、資料の提示を求めることができます(同法64条)。家族が保護司と話す機会があるのは、こうした仕組みによるものです。

 家族からも、困っていることや心配なことを保護司に相談して差し支えありません。子の様子を伝えることは「告げ口」ではなく、保護観察を実効性のあるものにするための情報共有と考えるとよいでしょう。

治療や支援につなぐ

 薬物やアルコール、ギャンブルなど、依存の問題を抱えている場合には、保護観察所が医療機関や相談機関と連携して指導や支援を行う仕組みがあります(同法65条の2・65条の3)。保護観察所によっては、引受人や家族向けの会を開いていることもあります。家族が一人で治療先を探すより、保護観察所の窓口を通じて情報を得るほうが、無理なく進められることが多いです。

抱え込まないための線引き

家族が「見張り役」になる必要はない

 保護観察中の子を心配するあまり、外出先や交友関係を細かく確認し続ける家族もいます。しかし、指導監督は保護観察官と保護司の役割であり、家族が同じことを担う必要はありません。家庭が監視の場になると、本人が家族に本音を話さなくなり、かえって変化に気づきにくくなることもあります。

暴力や金銭の要求があるときは、安全を優先する

 同居のなかで暴力を受けたり、繰り返し金銭を求められたりする場合は、保護観察中であることを理由に我慢する必要はありません。暴行や傷害には、財産犯のような親族間の特例はなく、刑事事件として扱われる可能性があります。危険が迫っているときは110番をためらわないこと、そのうえで保護観察官や保護司にも状況を伝えることが大切です。

 新たな罪を犯したことや遵守事項に違反したことは、保護観察付き執行猶予の取消しや仮釈放の取消しなどにつながる場合があります。取消しの要件については、保護観察付き執行猶予の遵守事項と、取り消される場面で詳しく解説しています。暴力を受けているときの初動は、【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録もご参照ください。

同居を続けられないときの選択肢

 家族の健康や安全を考えると、同居を続けることが難しい場合もあります。その場合でも、先に述べたとおり、転居には保護観察所の長の許可が必要です。保護観察には、住居や宿泊場所を得ることを助ける補導援護が含まれており(同法58条1号)、更生保護施設や自立準備ホームなどが検討されることもあります。

 同居をやめることは、支援をやめることと同じではありません。物理的な距離を取ることで、親子の双方に落ち着きが戻るケースもあります。子に家を出てもらうことの法的な整理については、【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで説明しています。

少年の場合の、遵守事項に違反したときの流れ

まずは警告、重い場合は家庭裁判所の手続へ

 保護観察処分少年が遵守事項を守らなかった場合、保護観察所の長は、守るよう警告を発することができます(更生保護法67条1項)。警告を受けてもなお守らず、その程度が重いときは、家庭裁判所に申請が行われ、児童自立支援施設や少年院への送致が検討されることがあります(同条2項、少年法26条の4)。

 一方で、成績が良好であれば、保護観察が期間の途中で解除されたり、一時的に解除されたりすることもあります(更生保護法69条・70条)。家庭での安定した生活は、こうした判断にも関わってきます。

家族が焦って結論を出さないこと

 違反の気配を感じたとき、家族が本人を問い詰めたり、逆に何も言わずに抱え込んだりすると、状況が悪化することがあります。本人に確認するか、保護司に相談するか、どちらを先にするかも含めて、保護観察官や保護司、必要に応じて弁護士と一緒に考えることをお勧めします。

よくあるご質問

保護司さんに、子の様子をどこまで話すべきですか?

 話す範囲を法律で決められているわけではありません。生活リズムや仕事・通学の状況、家庭内で困っていることなど、指導や支援に役立つと思われることは、率直に伝えてよいと考えます。本人との信頼関係が心配な場合は、「家族からこういう相談をした」と本人に伝えてよいかどうかも、保護司と相談しておくと安心です。

子が遵守事項を守っていないようです。黙っていると家族が責任を問われますか?

 更生保護法には、家族に違反を報告する義務を課したり、報告しなかった家族を罰したりする規定はありません。ただ、違反を隠す約束を本人とするのはお勧めしません。保護観察は、早い段階で問題を共有できれば、指導や支援の内容を見直すことができる制度です。

成人した子が仮釈放で戻ってくる予定ですが、同居を断ることはできますか?

 仮釈放の前には、保護観察所が家族を訪問するなどして、釈放後の住居や就業先を調整します(更生保護法82条)。引き受けるかどうかは家族が判断してよく、難しい事情があれば、その段階で率直に伝えることが大切です。家族が引き受けられない場合の考え方は、【刑事事件】家族が身元引受人になれない|代替の環境調整でも解説しています。

まとめ


  1. 保護観察を受けるのは、保護観察処分少年・少年院仮退院者・仮釈放者・保護観察付執行猶予者の4類型です(更生保護法48条)。
  2. 指導監督と補導援護を担うのは保護観察官と保護司で、家族が監督の義務を負う形にはなっていません(同法49条・61条)。
  3. 20歳未満の少年の保護者には、保護観察所から指導や助言が行われることがあります(同法59条)。
  4. 届け出た住居に住むこと、転居や7日以上の旅行に事前の許可を得ることは、本人の一般遵守事項です(同法50条1項3号〜5号)。
  5. 家族は、生活の土台づくりや保護司との情報共有、治療や支援へのつなぎ役を担えます(同法3条・64条・65条の2)。
  6. 暴力や金銭の要求があるときは安全を優先し、同居を続けられない場合も、保護観察所に相談したうえで住まいの調整を進めます(同法58条1号)。
  7. 少年が遵守事項に違反した場合は、警告を経て、家庭裁判所の手続に進むことがあります(同法67条、少年法26条の4)。


保護観察中のお子さんとの同居に悩んでいる方へ

弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。ひきこもりや家庭内暴力、金銭の要求など、ご家庭の中で抱えてきた問題について、親御さんの代理人として対応するほか、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、お子さんの住まいや仕事探しなど生活面の支援にもつなげています。少年事件の付添人活動もお受けしています。

保護観察中のお子さんとの同居を続けるべきか迷っている方、家族だけでは支えきれないと感じている方は、一人で結論を出す前にご相談ください。サービスの内容は、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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