【親子問題】子がお酒を飲むと暴れる、家族にできることは?
本記事は2026年10月時点の法令をもとに、成人した子を中心に一般的な考え方を整理したものです。個別の事情によって結論が変わることがあります。
子が近所の人ともめた、勤務先で問題を起こした、知人とお金のことでこじれた。そのたびに親が菓子折りを持って相手のところへ出向き、頭を下げる。こうした対応を何年も続けているというご相談は少なくありません。
最初は「親として当然のこと」と思って始めたことでも、回数が重なるにつれて「この先もずっと自分が謝り続けるのか」「本人は何も変わっていないのではないか」と迷いが生じてきます。
この記事では、子が起こしたトラブルについて親が法的にどこまで責任を負うのかを確認したうえで、謝罪を続けることで起きやすいこと、「いつまで」を考えるための目安、そして謝りに行く役割を手放すときの順序を整理します。
このようなことでお悩みではありませんか
- 子がトラブルを起こすと、相手から本人ではなく親に連絡が来る。
- 謝りに行くたびに、修理代や迷惑料を親が払っている。
- 本人は「親が勝手に謝った」と言い、自分では相手に向き合わない。
- 同じような問題が何度も起きていて、終わりが見えない。
- 謝りに行くのをやめたら、相手から責められるのではないかと不安がある。
成人した子のトラブルで、親が法的な責任を負う場面は限られる
「いつまで謝るか」を考える前提として、親が法律上の責任を負うのはどのような場面かを確認しておきます。
子が未成年の場合
子が自分の行為の責任を判断できない年齢であれば、親は監督義務者として、子が他人に与えた損害を賠償する責任を負うことがあります(民法714条1項)。また、子に責任能力がある年齢であっても、親が監督を怠ったことと損害との間に相当な因果関係がある場合には、親自身が不法行為責任(民法709条)を負うことがあるとした最高裁判決(昭和49年3月22日)もあります。
子が成年に達している場合
2022年4月から成年年齢は18歳に引き下げられています。成年に達した子が起こしたトラブルについては、原則として子本人が責任を負い、親であることだけを理由に賠償や謝罪の義務が生じるわけではありません。
例外として、親が子の借金の保証人になっている場合や、親名義の車や部屋が使われた場合など、親自身が契約や管理の当事者になっている場面では、親に責任が及ぶことがあります。また、精神疾患などのために責任能力に問題がある成人について、同居する家族の責任が争われた裁判例もありますが、家族の生活状況や関わり方を細かく見たうえでの判断であり、一般化できるものではありません。
| 子の状況 | 親の法的な責任 |
|---|---|
| 未成年で責任能力がない | 監督義務者として賠償責任を負うことがある |
| 未成年で責任能力がある | 監督を怠った事情があれば負うことがある |
| 成年に達している | 原則として負わない(保証人・名義人などの立場があれば別) |
成人した子の問題に親が関われる範囲については、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲でも整理しています。近所とのトラブルの具体例は、【親子問題】子が近所の人とトラブルを起こした|成人した子の賠償と親の責任をご覧ください。
謝罪と支払いは、分けて考える
親が相手に謝ること自体は、法的な責任を認めたことと同じではありません。ただし、謝罪の場で「親として責任を持って払います」と約束したり、書面に署名したりすると、その内容によっては親自身の支払いの問題が生じることがあります。保証の契約は書面でしなければ効力を生じないとされています(民法446条2項)が、念書や合意書に名前を書いた場合には、その文面がどのような意味を持つかを個別に確認する必要があります。
また、親が一度自分の判断で支払ったお金を、後から相手に返してもらうことは簡単ではありません。示談金の扱いについては【親子問題】示談金を親が払うべきか|払う場合の条件、借金については【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかで詳しく扱っています。
謝りに行くことを続けると起きやすいこと
親が謝りに行くことには、相手の怒りを和らげ、事態がそれ以上大きくなるのを防ぐという意味があります。一方で、それが長く続くと、次のような状態が生まれやすくなります。
- 相手にとっての連絡窓口が親に固定され、次に何か起きたときも親に連絡が来るようになります。
- 子が自分で相手に向き合い、結果を引き受ける機会がなくなります。
- 謝罪とあわせて金銭を求められることが増え、親の家計に負担がかかります。
- 口頭のやり取りが中心になり、何をどこまで約束したのかが記録に残りにくくなります。
- 親の心身の疲れが積み重なり、ほかの家族の生活にも影響が出ることがあります。
子の側から見ると、問題が起きても最終的には親が収めてくれるという経験が繰り返されることになります。本人に悪気がなくても、この構造が続く限り、同じ問題が起きやすい状態が保たれてしまうおそれがあります。
「いつまで」を考えるための4つの目安
親が謝りに行くことについて、法律で期限が決まっているわけではありません。ご家庭の状況によって判断は異なりますが、次のような事情は見直しを考えるきっかけになります。
子が成年に達し、自分で判断できる状態にある
子が成年に達しており、日常の判断ができる状態であれば、トラブルの相手に向き合うのは本来は本人の役割です。親が前に出ることが、本人の判断や責任を取り上げる形になっていないかを振り返ってみる時期といえます。
同じ種類のトラブルが繰り返されている
一度きりの出来事であれば、親が間に入ることで収まることもあります。しかし、相手や場所を変えて同じような問題が続いている場合には、謝罪では根本の原因に届いていない可能性があります。
相手が親に直接の支払いを求めてくる
「親なのだから払うべきだ」と、相手が親に金銭を求めてくるようになったら、謝罪の問題から金銭の問題に移っています。この段階では、親に支払う義務があるのかを確認し、窓口を整理することが優先になります。子の交際相手から求められる場面については、【親子問題】子の交際相手が金銭を要求してくる|親が支払う義務と、窓口を代える判断も参考になります。
親自身の生活や健康に影響が出ている
眠れない、仕事に支障が出ている、ほかの家族との関係が悪くなっているといった状態であれば、親の負担はすでに限界に近づいているかもしれません。【親子問題】子の問題で親自身が限界|親が先に休むための手配もあわせてご覧ください。
家族が担える部分・担えない部分
| 家族が担える部分 | 家族だけでは担いにくい部分 |
|---|---|
| 起きた事実を把握し、記録しておくこと | 相手との金銭の交渉や合意の取りまとめ |
| 子に「自分で対応してほしい」と伝えること | 子が繰り返す行動の背景にある問題への対応 |
| 相談先や支援機関を探すこと | 刑事手続が関わる場面での被害者との連絡 |
| 親として払えるもの・払えないものを決めること | 相手からの要求が強くなった場面での窓口 |
刑事事件として扱われている場面で親が被害者に連絡をとることには、別の注意点があります。【親子問題】被害者側への対応を親が担う場面の注意点と【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないことで詳しく解説しています。
謝りに行く役割を手放すときの順序
長く続けてきた役割をすぐにやめることは、親にとっても相手にとっても戸惑いを生みます。次のような順序で進めると、混乱を抑えやすくなります。
- これまでに起きたトラブルと、相手から求められている内容を書き出します。
- 親がすでに約束したこと、払ったもの、署名した書面があるかを確認します。
- 親に支払う義務があるのかどうかを、必要に応じて専門家に確認します。
- 相手に対して、今後は本人が対応すること、または代理人が窓口になることを伝えます。
- 子本人に、今後は親が謝りに行かないことと、その理由を伝えます。
相手に伝えるときの言葉の選び方
相手に伝えるときは、これまでの謝罪を否定するような言い方は避け、「今後のご連絡は本人に直接お願いします」「代理人を通じてご連絡いたします」といった形で、窓口が変わることだけを落ち着いて伝えるのが一般的です。相手の求めに応じて新たな約束をその場でしないことも大切です。
子に対しても、責める形ではなく「これからはあなた自身が相手と話す」という方針を淡々と伝えるほうが、受け止めてもらいやすい傾向があります。約束を書面に残す場合の考え方は、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界を参考にしてください。
同じ問題を繰り返さないための環境づくり
謝りに行く役割を手放すことは、子を突き放すことと同じではありません。トラブルが繰り返される背景には、お金の使い方、人との距離の取り方、依存の問題、精神的な不調など、さまざまな事情が隠れていることがあります。親が謝ることで表面を整えるのではなく、背景にある問題に本人が向き合える環境を整えることが、結果的に同じ問題を減らすことにつながります。
そのための方法の一つが、親と子の物理的な距離を見直すことです。同居を続けながら関係を変えるのが難しい場合には、子の独立を支えながら距離をとるという選択肢もあります。考え方は【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点、家庭が担える範囲については【親子問題】再犯を防ぐために家庭が担える部分・担えない部分で整理しています。
弁護士に相談することで変わること
弁護士が親の代理人になると、相手との連絡は弁護士が窓口として受けることになり、親が直接謝りに行ったり、その場で支払いを約束したりする必要がなくなります。親に支払う義務がない請求であれば、その旨を整理して相手に伝えることもできます。窓口を代えることの意味は【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で解説しています。
当事務所では、親子の問題について、弁護士が親の側の代理人として相手方や子との窓口を担い、自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支えるという形で、チームとして対応しています。親の負担を減らすことと、子が自分の問題に向き合える状態をつくることを、同時に進めることを目指しています。
子のために頭を下げてきたことは、決して無駄ではありません。ただ、それがいつまでも続く形になっているなら、親が謝る以外の方法に切り替える時期が来ているのかもしれません。何から見直せばよいか分からない段階でも、ご相談いただければ一緒に整理していきます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


