【親子問題】保証人になってしまった後にできること

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

「息子に頼まれて、事業資金の借入れの連帯保証人になった。最近、金融機関から通知が届くようになったが、本人は大丈夫だと言うばかりで状況が分からない」。「娘の借金の保証人になったことを後悔している。今からでも責任を軽くする方法はないのか」。子の借金の保証をめぐって、親御さんからはこうした声が寄せられます。

 インターネット上では「子の借金を親が返す義務はない」「保証人になっていれば払わなければならない」という説明がよく見られます。どちらもそれ自体は誤りではありません。ただ、すでに保証人になった親御さんが知りたいのは、その先にある「今の契約は本当に有効なのか」「有効だとしたら、どこまで、どのように払うのか」という点ではないでしょうか。

 この記事では、すでに子の借金の保証人になっている親御さんを対象に、保証の効力を争える場面と、争えない場合の現実的な出口を整理します。成人した子に対して親がどこまで法的な責任を負うかという全体像は、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで解説しています。

本記事は2026年9月時点の法令に基づいて作成しています。2020年4月1日に施行された改正民法により保証のルールが大きく変わったため、契約を結んだ時期によって結論が異なる場合があります。


最初に確認したい、保証契約の中身

 保証人になった後にとれる手段は、契約を結んだ時期、保証の種類、保証した借金の性質によって大きく変わります。まずは手元の書類で、次の点を確かめるところから始めます。

契約書の控えをそろえる

 署名した書類の控えが見当たらない場合は、債権者に写しの交付を求めます。貸金業者には、保証契約を結ぶ前と結んだときに、保証人へ契約内容を記した書面を交付することが法律で義務づけられています(貸金業法16条の2、17条)。自宅に届いた書面が残っていないか、あわせて確認しておくとよいでしょう。

2020年4月1日より前の契約か、後の契約か

 改正民法の保証人保護のルールの多くは、2020年4月1日以降に結ばれた保証契約に適用されます。それより前の契約には、原則として改正前のルールが適用されます。同じ「子の借金の保証」でも、契約日によって使える手段が異なる点に注意が必要です。

連帯保証か、どのような借金の保証か

 書面に「連帯保証人」とあれば、連帯保証です。金融機関や貸金業者の保証は、多くがこの連帯保証です。また、子の事業のための借入れなのか、生活費や遊興費のための個人的な借入れなのか、賃貸住宅の契約のように継続的な取引の保証(根保証)なのかによっても、使えるルールが変わります。

確認する項目書類のどこを見るか結論に影響する点
契約を結んだ日保証契約書の日付2020年4月1日以降の契約には改正後のルールが適用される
連帯保証かどうか「連帯保証人」の記載連帯保証では「先に子に請求してほしい」と求める権利がない
保証した借金の性質借入れの目的・契約の名称子の事業のための借入れかどうかで、使えるルールが変わる
根保証かどうか「極度額」「根保証」の記載継続的な取引の保証では、上限額の定めが必要になる
自分で署名したか署名欄の筆跡・押印署名していない場合は、保証が成立していない可能性がある


 保証人としての責任の有無は、「親だから」ではなく、契約の中身で決まります。書類をそろえることが、以下で説明するどの手段を検討する場合にも出発点になります。

保証の効力を争える場面

 保証契約は、いったん結べば一方的にやめることはできません。ただし、法律が定める要件を満たしていない場合や、契約の過程に問題があった場合には、効力を争える余地があります。

法律が定める形式を満たしていない場合

 保証契約は、書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じません(民法446条2項・3項)。口頭で「保証する」と言っただけでは、保証人にはなりません。

 個人が継続的な取引の保証(根保証)をする場合は、保証する上限額(極度額)を書面で定めなければ効力を生じません(同法465条の2第2項・3項)。子の賃貸住宅の保証などで、極度額の記載がない契約書に署名している場合は、確認する意味があります。

 子の事業のための借入れを親が保証する場合、2020年4月1日以降の契約では、契約の前1か月以内に、親自身が公証役場で保証の意思を表明する公正証書(保証意思宣明公正証書)を作成していなければ、保証は効力を生じません(同法465条の6)。ただし、子が経営する会社の取締役になっている場合や、会社の議決権の過半数を持っている場合などは、この手続が不要とされています(同法465条の9)。親が子の会社の役員に名を連ねているかどうかは、見落とされやすい点です。

子の説明に事実と異なる点があった場合

 子が事業のための借入れについて親に保証を頼む場合、子は自分の財産や収支の状況、ほかの借金の有無や返済状況などを親に説明しなければなりません(同法465条の10第1項)。説明がなかったり、事実と異なる説明がされたりしたために親が誤解して保証した場合で、そのことを債権者が知り、または知ることができたときは、親は保証契約を取り消すことができます(同条2項)。

 事業のための借入れ以外でも、子にだまされて保証した場合は詐欺による取消し(同法96条)が問題になります。ただし、だましたのが債権者ではなく子である場合、取消しができるのは、債権者がその事情を知り、または知ることができたときに限られます(同条2項)。重要な点について誤解があった場合の錯誤による取消し(同法95条)も同様に、認められるハードルは低くありません。

自分で署名していない場合

 子が親の実印や印鑑証明書を持ち出して、親に無断で保証契約を結んでいた場合、代理権のない者がした契約として、原則として親に効力は及びません(同法113条1項)。ただし、請求を受けて一部でも支払うと、契約を事後に認めた(追認した)と評価されるおそれがあります(同法116条)。また、実印などを容易に持ち出せる状況であった場合には、表見代理(同法110条など)として契約が有効とされる可能性も否定できません。支払う前に、書類の署名や押印の経緯を確かめることが大切です。

争点主な根拠押さえておきたい点
書面がない民法446条2項口頭の約束だけでは保証は成立しない
極度額の定めがない民法465条の2個人の根保証に限られる
公正証書がない民法465条の6子の事業のための借入れで、2020年4月1日以降の契約に限られる。子の会社の役員などは対象外
子の説明が事実と異なる民法465条の10子の事業のための保証に限られ、債権者側の事情も要件になる
子にだまされた民法96条2項債権者が事情を知り、または知ることができた場合に限られる
自分で署名していない民法113条支払うと追認と評価されるおそれがある


 表のとおり、争える場面の多くは、子の事情だけでなく、債権者の側の事情や契約の時期も要件になっています。「子にうそをつかれた」という事実だけで、保証が当然に無効になるわけではありません。

請求を受けている段階で確認できること

 保証の効力自体は争えない場合でも、請求の内容や金額について確認できることがあります。

債権者に子の返済状況を問い合わせる

 子に頼まれて保証人になった親は、債権者に対して、子が返済を滞らせていないか、残額はいくらか、そのうち支払期限が来ている額はいくらか、といった情報の提供を求めることができます(民法458条の2)。子が「ちゃんと返している」と言うだけで実情が分からない場合に、子を介さずに状況を確認できる手段です。この制度は2020年4月1日以降に結ばれた保証契約が対象です。

一括請求の通知と遅延損害金

 子が返済を滞らせて分割払いの権利(期限の利益)を失った場合、債権者は、そのことを知った時から2か月以内に、個人の保証人に通知しなければなりません(同法458条の3第1項)。通知が遅れた場合、期限の利益を失った時から通知までの間に生じた遅延損害金の一部は、保証人に請求できないとされています(同条2項)。請求書の遅延損害金の計算期間を確認する意味があります。

子が主張できる反論は、保証人も使える

 保証人は、子が債権者に主張できる反論を、自分の反論として使うことができます(同法457条2項)。たとえば、子の借金が時効期間を過ぎている場合は、保証人も時効を主張できる立場にあります(同法145条)。ただし、子が一部を返済したり、裁判手続がとられたりすると時効の進行は仕切り直しになり、その効果は保証人にも及びます(同法457条1項)。時効が成立しているかどうかは個別の事情で結論が変わるため、慎重な確認が必要です。

 連帯保証ではない通常の保証であれば、「まず子に請求してほしい」「子の財産から先に回収してほしい」と求めることができます(同法452条・453条)。保証人がほかにもいる場合は、人数で割った額に責任が限られる場合もあります(同法456条)。いずれも連帯保証には認められていないため、保証の種類の確認が前提になります。

争えない場合の現実的な出口

 保証が有効で、請求額にも争う点がない場合、親としては支払をどう組み立てるかを考えることになります。

債権者と支払方法を話し合う

 一括での支払が難しい場合、債権者との間で分割払いを話し合う余地があります。ここで気をつけたいのは、親御さん自身の老後の生活資金とのバランスです。子の借金を完済するために親の生活が立ち行かなくなれば、今度は親が支援を必要とする立場になりかねません。支払える額を見極めたうえで交渉することが、結果として家族全体を守ることにつながります。

子の債務整理が保証人に与える影響

 子が債務整理をする場合、どの手続を選ぶかで、保証人である親への影響が変わります。

子が選ぶ手続保証人である親への影響
任意整理保証人のついた借入れを交渉の対象から外せば、親への請求を避けられる場合がある
個人再生子の返済額が減っても、親の保証債務は減らず、残額について請求を受ける
自己破産子が免責を受けても、親の保証債務は残り、一括での請求を受けることが多い


 子が自己破産や個人再生をしても、保証人に対する債権者の権利には影響しないと定められています(破産法253条2項、民事再生法177条2項)。どの手続を選ぶかは子自身が決めることであり、親が代わりに決めることはできません。成人した子の問題に親がどこまで関われるかについては、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲をご覧ください。

 奨学金のように、借りた本人が返還の猶予や減額を申請できる制度のある借金もあります。子が制度を使えば、保証人への請求が先送りされる場合があるため、子に手続を促すことも一つの方法です。

親自身の債務整理と、払った後の求償

 保証債務の額が親御さんの返済能力を大きく超えている場合は、親自身が任意整理や個人再生、自己破産を検討することも現実的な選択肢になります。また、保証人として支払った親は、その分を子に請求する権利(求償権)を持ちます(民法459条)。子にすぐ返す力がなくても、支払った日や金額の記録を残しておくことは、後の話し合いや相続の場面で意味を持ちます。「払うか、払わないか」の二択ではなく、払い方と、払った後の整理まで含めて考えることが大切です。

親子関係の中で起きやすいこと

 子の借金の保証は、法律の問題であると同時に、親子関係の問題でもあります。当事務所に寄せられるご相談でも、保証をきっかけに親子の間の金銭のやり取りが複雑になっている例が見られます。

保証を理由にした金銭の要求

 子から「払わないと保証人のお母さんに請求が行く」「今お金を渡してくれれば迷惑はかけない」と言われ、求められるままに現金を渡してしまう例があります。子に渡したお金が実際に返済に充てられたかどうかは、親からは分かりません。保証債務を支払う場合は、債権者に直接支払い、記録を残す形が望ましいといえます。保証とは関係のない金銭の要求が続いている場合は、【不当要求対応】親族からの金銭要求|扶養義務はどこまでかもあわせてご覧ください。

新たな保証や借入れの依頼を断る

 一度保証人になったからといって、次の保証や借入れの依頼に応じる義務はありません。また、貸金業者が、保証人になっていない家族に対して、本人に代わって支払うよう求めることは禁止されています(貸金業法21条1項7号)。保証していない借金について請求を受けた場合の考え方は、【不当要求対応】同居していない家族の名義で請求が来た|誰の債務なのかで解説しています。貸主が登録のない業者である疑いがある場合は、闇金・ソフト闇金の取り立てを止めるには|法的な根拠と、止まらないときの現実的な選択肢も参考になります。

親が亡くなった後の保証債務

 保証債務は、保証人である親が亡くなると、原則として相続人に引き継がれます。借りた本人である子のほか、そのきょうだいも相続人として保証債務を負う可能性があります。相続人は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所で手続をすれば、相続放棄をすることができます(民法915条1項、938条)。なお、個人の根保証は、保証人の死亡によって保証の対象となる元本が確定し、それ以降に生じた債務は保証の対象になりません(同法465条の4第1項3号)。保証の存在をほかの家族が知らないまま相続が始まることもあるため、書類の保管場所を家族と共有しておくことも検討に値します。

よくあるご質問

 子の借金の保証について、親御さんからよく寄せられる質問をまとめました。

保証人を途中でやめることはできますか

 保証契約は、保証人の側から一方的に解約することは原則としてできません。債権者が同意すれば、代わりの保証人や担保と差し替えることで保証人から外れられる場合がありますが、債権者に応じる義務はありません。賃貸住宅などの根保証で期間の定めがない場合などは、契約の内容によって扱いが異なるため、契約書を確認する必要があります。

保証人として支払ったお金は、子に返してもらえますか

 支払った分を子に請求する権利(求償権)はあります(民法459条)。ただし、子に返済する余力がなければ、実際の回収は難しいのが実情です。支払った日、金額、支払先の記録を残しておくことが、後の話し合いの前提になります。立て替えたお金の取り戻し方の考え方は、交際相手の借金を肩代わり・連帯保証したとき|返済義務の有無と、払ったお金の取り戻し方でも解説しています。

子の借金の状況が分からないまま、裁判所から書類が届きました

 裁判所からの書類は、放置しないことが大切です。たとえば支払督促は、受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、強制執行ができる状態に進みます(民事訴訟法391条1項)。一方で、内容を確認しないまま一部を支払うことも、後の対応の幅を狭めるおそれがあります。書類を受け取った日付を記録し、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ


  1. 保証人の責任は「親だから」ではなく契約の中身で決まるため、まず契約書の控えをそろえ、契約日・連帯保証の有無・借金の性質を確認する。
  2. 書面がない保証、極度額のない個人の根保証は効力を生じない(民法446条2項、465条の2)。
  3. 子の事業のための借入れの保証では、公正証書の有無や、子の説明が事実と異なっていたかが争点になり得る(同法465条の6、465条の10)。
  4. 子に無断で署名された場合は原則として効力が及ばないが、一部でも支払うと追認と評価されるおそれがある(同法113条、116条)。
  5. 2020年4月1日以降の契約では、債権者に子の返済状況を問い合わせることができ、通知の遅れた遅延損害金は一部請求されない(同法458条の2、458条の3)。
  6. 子が自己破産や個人再生をしても保証債務は残る(破産法253条2項、民事再生法177条2項)。
  7. 支払う場合は債権者に直接支払い、記録を残す。支払った分は子に求償できる(民法459条)。


子の借金の保証でお悩みの親御さんへ

弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。保証の効力を争えるかどうかの確認から、債権者との支払方法の交渉まで、親御さんの立場からご相談いただけます。遠方にお住まいの方は【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際を、ご相談の準備については【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報をご覧ください。

 子の借金の問題は、子の金銭管理や生活の立て直しと切り離せないことが少なくありません。当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子との窓口を担い、民間の自立支援カウンセラーがチームを組んで子の生活面の支援にあたる取り組みを行っています。結果をお約束することはできませんが、親と子がそれぞれ自立する道筋を一緒に考えます。取り組みの詳細は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼