【親子問題】子が性犯罪の加害者側になった場合|改正後の罪名と、親が関われる範囲

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は2026年9月時点の法令に基づいて作成しています。刑法の「懲役」「禁錮」は2025年6月1日から「拘禁刑」に一本化されているため、本文では拘禁刑の表記で統一しています。


「警察から、息子に話を聞きたいので署に来てほしいと電話があった」「成人して家を出た子が盗撮で逮捕されたと知らされたが、親として何をすればよいのか分からない」。親子の問題のご相談の中には、子が性犯罪の加害者として疑われる立場になったという連絡を受け、動揺したまま来所される方がいらっしゃいます。

 インターネット上では「逮捕されたらすぐ弁護士に」という説明が多く見られ、それ自体は誤りではありません。ただ、性犯罪の分野は2023年に罪名と要件が大きく改められ、しかも子が14歳未満か、17歳以下か、18歳・19歳か、成人かによって手続がまったく別の道筋をたどります。親が「何をしてよく、何をしてはいけないのか」も、その分岐によって変わります。

 この記事では、改正後の罪名体系、子の年齢ごとの手続の違い、親が関われる範囲と関わるべきでない範囲、民事上の責任が親に及ぶ場面を整理します。個々の罪の成立要件や示談金の考え方については、それぞれを扱った記事に委ねています。

2023年改正後、性犯罪の罪名はどう変わったのか

 2023年7月13日に施行された改正刑法により、性犯罪の条文は大きく組み替えられました。報道や警察の説明で耳にする罪名が、以前とは異なっている点にまず注意が必要です。

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪への再編

 従来の強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」(刑法176条)に、強制性交等罪・準強制性交等罪は「不同意性交等罪」(同法177条)にそれぞれ統合されました。暴行・脅迫があったかどうかではなく、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせた、またはその状態に乗じたかどうかが中心的な要件となり、その原因となる行為や事情が8つの類型として条文に列挙されています。どの類型で扱われているかによって争点が変わるため、詳しくはどの類型で立件されているのか|不同意性交等罪の8つの要因の読み方をご覧ください。

若年層で問題になりやすい罪

 改正では、16歳未満の者に対してわいせつ目的で面会を要求する行為や、性的な画像の送信を要求する行為を処罰する規定(刑法182条)が新設されました。また、同じ時期に施行された性的姿態撮影等処罰法により、ひそかに性的な姿態を撮影する行為は「撮影罪」として全国一律に処罰されるようになっています。SNSでのやり取りやスマートフォンでの撮影など、若い世代の日常に近いところで成立し得る罪が増えたといえます。

 なお、13歳以上16歳未満の相手との性的な行為については、行為者が5歳以上年長である場合に処罰の対象となる仕組みがとられています。同年代どうしの場合の考え方は16歳未満との性的行為|「5歳差要件」と年齢の錯誤で、撮影罪の対象の範囲は「性的姿態」とは何か|撮影罪の保護対象の範囲で取り上げています。

罪名主な内容法定刑
不同意性交等罪(刑法177条)同意しない意思の形成等が困難な状態での性交等5年以上の拘禁刑
不同意わいせつ罪(同法176条)同様の状態でのわいせつな行為6月以上10年以下の拘禁刑
16歳未満の者に対する面会要求等罪(同法182条)わいせつ目的での面会要求、性的な画像の送信要求など1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(面会した場合は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)
撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条)ひそかに性的な姿態を撮影する行為など3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金


公訴時効の延長

 公訴時効も延ばされ、不同意性交等罪は15年、不同意わいせつ罪は12年となりました。さらに、被害を受けた人が当時18歳未満であった場合には、その人が18歳になるまでの期間が加算されます(刑事訴訟法250条3項・4項)。子が中高生のころの行為が、数年後に問題として持ち上がる可能性もあるということです。

子の年齢で手続は大きく分かれる

 同じ行為であっても、子の年齢によって適用される法律と手続が異なります。親が最初に確認すべきなのは、行為の時点で子が何歳だったかという点です。

行為時の年齢手続の概要
14歳未満刑事責任を問われない(刑法41条)。触法少年として警察の調査や児童相談所への通告の対象となり、家庭裁判所の審判に付されることもある
14歳〜17歳少年事件として扱われる。逮捕・勾留されることもあり、捜査が終わるとすべての事件が家庭裁判所に送られる
18歳・19歳(特定少年)少年法が適用されるが、一定の重い罪は原則として検察官に送り返され(逆送)、成人と同じ刑事裁判を受ける
20歳以上成人の刑事手続。起訴・不起訴を検察官が判断する


少年事件では「示談すれば終わる」とは限らない

 成人の事件では、被害者との示談が成立して不起訴になることがあります。これに対し少年事件では、犯罪の嫌疑がある限りすべての事件が家庭裁判所に送られます(少年法42条1項)。示談ができても事件そのものは家庭裁判所に係属し、審判で不処分、保護観察、少年院送致などの判断が下されます。少年事件での示談は「事件を終わらせるもの」ではなく、家庭裁判所が処分を決める際に考慮する事情の一つと理解しておくとよいでしょう。

 また、家庭裁判所に送られた段階で、少年鑑別所に収容される「観護措置」がとられることがあります。期間は原則2週間で、更新されると通常4週間、一定の事件では最長8週間に及びます(同法17条)。

18歳・19歳は成人扱いでも少年扱いでもない

 2022年4月の少年法改正により、18歳・19歳は「特定少年」と位置づけられました。特定少年のときに犯した罪のうち、法定刑の下限が1年以上の拘禁刑にあたる事件は、原則として検察官に逆送されます(同法62条2項2号)。不同意性交等罪は法定刑が5年以上ですから、この対象に含まれます。逆送されて起訴された場合には、少年の実名等の報道を禁じる規定の適用が外れる点にも留意が必要です(同法68条)。

成人した子の場合

 成人した子の事件は、通常の刑事手続で進みます。被害者との示談の有無や内容が、起訴・不起訴の判断や量刑に影響する点は、少年事件よりも直接的です。一方で、親が法的に手続に組み込まれる場面はほとんどなく、関わり方は親自身が選ぶことになります。この点は【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲でも整理しています。

親が関われること

 子が疑われる立場になったとき、親が法的に果たせる役割は想像以上に限られていますが、その中でも親でなければできないことがあります。

弁護士を選ぶことは親の立場でできる

 被疑者の直系の親族は、本人とは独立して弁護人を選任できます(刑事訴訟法30条2項)。これは子が成人していても同じです。家庭裁判所に送られた後は、保護者が付添人を選任できます(少年法10条1項)。逮捕直後や接見禁止が付いた場合には家族が面会できない時期があり、その間に子と会えるのは弁護士だけです。最初の動き方は家族が逮捕されたと連絡が来た|最初の24時間にやること、面会が制限された場合については接見禁止がついて家族が会えない|解除に向けた動きをご覧ください。

家庭裁判所の調査と審判での役割

 少年事件では、家庭裁判所調査官が少年本人だけでなく保護者とも面接し、家庭環境や監督の状況を調べます。審判の期日には保護者も呼び出され(少年審判規則25条2項)、家庭裁判所は保護者に対して訓戒や指導などの措置をとることができます(少年法25条の2)。家庭でどのような見守りができるのか、専門の治療やカウンセリングにつなげられるのかといった具体的な体制は、処分を決めるうえで重視される事情です。再発防止と治療の関係は繰り返してしまう|痴漢・盗撮の再犯と治療の位置づけで取り上げています。

示談の費用を親が用意する場合

 子に資力がない場合、示談金を親が用意することは少なくありません。後で述べるとおり、親に法的な支払義務があるとは限らないため、出すかどうか、どこまで出すかは親が判断してよい事柄です。また、被害を受けた人が同年代の未成年であることも多く、その場合の示談の相手方は被害者本人ではなく親権者となります。書面の作り方は未成年の被害者と示談する|親権者の同意と書面の当事者で解説しています。

親が関わるべきでないこと

 子を思う気持ちから取った行動が、かえって子の立場を悪くしたり、親自身が法的な問題を抱えたりすることがあります。

被害を受けた人やその家族へ直接連絡すること

 謝罪のつもりであっても、加害側の親からの直接の連絡は、被害を受けた人やその家族に大きな負担を与えます。言い方や頻度によっては、証人等威迫罪(刑法105条の2)として扱われるおそれもあり、捜査機関から証拠隠滅のおそれがあると見られれば、子の身体拘束が長引く要因にもなり得ます。連絡は弁護士を通じて行うのが原則です。その理由は性犯罪の示談交渉を弁護人に任せる意味|本人が連絡してはいけない理由で詳しく説明しています。

スマートフォンのデータなどに手を加えること

 子の端末の画像ややり取りを消去したり、子に口裏を合わせるよう求めたりする行為は、証拠隠滅罪(刑法104条)に問われる可能性があります。親族が犯人の利益のために行った場合には刑を免除「することができる」とする規定(同法105条)はありますが、これは裁判所の裁量による免除であり、必ず免除されるわけではありません。何より、子の処分を判断するうえで不利な事情として扱われかねません。

弁護人と子の間の話をすべて把握しようとすること

 親が費用を負担して弁護士を選任した場合でも、弁護人が守るべき依頼者は疑いを受けている子本人です。弁護士には守秘義務があり、子が親に伝えてほしくないと話した内容を、親にそのまま伝えることはできません。相談内容の扱いについては【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方もあわせてご覧ください。

民事上の責任はどこまで親に及ぶのか

 刑事責任はあくまで行為をした本人が負うものであり、子の犯罪を理由に親が刑罰を受けることはありません。問題となるのは、被害を受けた人からの損害賠償請求です。

未成年の子の場合

 自分の行為の責任を理解する能力(責任能力)がない未成年者が他人に損害を与えた場合、監督義務者である親が、監督を怠らなかったことを証明しない限り賠償責任を負います(民法714条1項)。責任能力はおおむね小学校高学年から中学生ごろに備わるとされることが多く、それ以降の年齢の子については子自身が責任を負うのが原則です。ただし、親の監督義務違反と損害との間に相当な因果関係が認められる場合には、親自身の不法行為責任(同法709条)が認められることがあります(最高裁昭和49年3月22日判決)。子が中高生の場合でも、事情によっては親に賠償責任が及ぶ余地があるということです。

成人した子の場合

 18歳以上の子は民法上の成年であり、行為の責任は原則として子自身が負います。親が示談金を支払うのは、法的な義務ではなく親の判断による任意の協力と位置づけられます。支払う場合には、子との間で返済の約束をするのか、贈与とするのかも含めて整理しておくと、後々の親子間の金銭トラブルを避けやすくなります。

被害を受けたのが家族だった場合

 きょうだい間など、家庭の中で被害と加害が生じることもあります。この場合、親は加害側の子と被害側の子の双方の保護者という難しい立場に置かれます。

優先すべきは被害を受けた子の安全

 被害を受けた子が18歳未満であれば、児童相談所への相談が一つの選択肢となります。親だけで事実関係を問いただそうとすると、被害を受けた子の負担が大きくなるうえ、話の内容が後で正確に確認できなくなるおそれもあります。まず被害を受けた子の生活の安全を確保し、専門の機関に委ねることが大切です。

加害側の子との距離の取り方

 同じ家で生活を続けることが難しい場合、加害側の子の生活の場を一時的に分けることを検討する場面があります。成人した子であれば、住まいや仕事の確保を含めて親から離れた生活を組み立てる支援も考えられます。当事務所の取り組みは弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

よくあるご質問

子の事件は学校や勤務先に知られるのでしょうか。

 捜査機関から学校や勤務先に必ず連絡が入るわけではありませんが、少年事件については警察と学校が情報を共有する制度が多くの地域で設けられています。身体拘束が長引けば、欠席や欠勤から事実上知られることもあります。詳しくは会社・学校に知られるのはどの段階か|通知の仕組みと事実上の経路をご覧ください。

子は「相手も同意していた」と言っています。どう受け止めればよいですか。

 改正後の不同意性交等罪では、同意の有無は相手の状態や当時の状況から判断され、本人の認識だけで結論が決まるものではありません。親が一方的に否定したり、逆に子の言い分をそのまま信じて動いたりする前に、弁護士に事実関係を整理してもらうことをおすすめします。争点になりやすい事情は「同意があったと思っていた」|不同意性交等罪で争点になる事情で解説しています。

少年院に入ると前科になるのでしょうか。

 少年院送致や保護観察は刑罰ではなく保護処分であるため、いわゆる前科にはあたりません。ただし、捜査機関や家庭裁判所には記録が残ります。特定少年が逆送されて有罪判決を受けた場合には前科となります。違いについては前科と前歴はどう違い、どこに残るのか|期間と照会される場面をご参照ください。

まとめ


  1. 2023年の改正で、性犯罪は不同意わいせつ罪(刑法176条)・不同意性交等罪(同法177条)に再編され、16歳未満への面会要求等罪(同法182条)や撮影罪も新設された。
  2. 公訴時効は延長され、被害者が18歳未満の場合は18歳になるまでの期間が加算される(刑事訴訟法250条3項・4項)。
  3. 14歳未満は刑事責任を問われず(刑法41条)、14歳以上の少年事件はすべて家庭裁判所に送られるため、示談だけで事件は終わらない(少年法42条1項)。
  4. 18歳・19歳の特定少年は、不同意性交等罪などで原則として逆送の対象となる(同法62条2項)。
  5. 親は子が成人していても独立して弁護人を選任でき(刑事訴訟法30条2項)、少年事件では付添人を選任できる(少年法10条1項)。
  6. 被害者側への直接の連絡や証拠に手を加える行為は、子の立場を悪くするうえ、親自身が罪に問われるおそれがある(刑法104条・105条の2)。
  7. 責任能力のない未成年の子の賠償責任は親が負うことがあり(民法714条1項)、責任能力がある場合でも監督義務違反があれば親の責任が問われ得る(同法709条)。


お子さまが性犯罪の疑いを受けているご家族へ

弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。未成年のお子さまの少年事件での付添人活動、成人したお子さまの刑事弁護のいずれにも対応しています。

 「子に何が起きているのか分からない」「親としてどこまで動くべきか迷っている」という段階でも構いません。お子さまの年齢と現在の状況をお聞きしたうえで、手続の見通しと、ご家族が担える役割・担わなくてよい役割を一緒に整理いたします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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