【親子問題】親の年金で生活している子|年金が止まった後の設計
本記事は、2026年9月時点の法令にもとづいて作成しています。個別の事情によって取れる手段は異なりますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
成人した子が借金を返せなくなり、貸金業者やいわゆる闇金(登録を受けずに貸付けを行う業者や、法律の上限を大きく超える金利で貸し付ける業者)の関係者が実家を訪ねてくる、自宅の電話が鳴り続ける、といったご相談があります。玄関先で「親なら払うべきだ」と言われると、応じなければ事態が悪くなるように感じるかもしれません。しかし、返済義務が誰にあるのか、取立てのどこからが法律に反するのかを整理すると、親として取るべき行動と、取らなくてよい行動が見えてきます。
本記事では、子の借金の取立てが家に来た場面を親の立場から取り上げ、支払義務の有無、貸金業法が禁じている取立て、闇金だった場合の考え方、警察と弁護士の使い分けを順に解説します。借りた本人の側から取立てを止める方法は、闇金・ソフト闇金の取り立てを止めるには|法的な根拠と、止まらないときの現実的な選択肢で詳しく扱っています。
親に返済する義務があるのかを先に確かめる
借金の返済義務を負うのは、原則として契約した本人です。親子であっても、親が当然に子の借金を引き受ける仕組みはありません。親にも義務が及びうるのは、親自身が保証人になっている場合など、家族であること以外の根拠がある場面に限られます。
| 親の立場 | 返済義務 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 緊急連絡先として書かれていただけ | ない | 連絡先として記載されただけかどうか |
| 契約にまったく関わっていない | 原則としてない | 申込書や契約書に親の署名・押印がないか |
| 保証人として署名した | ありうる | 保証契約の書面があるか |
| 自分の名義を子に使わせた | 争いになりうる | 名義を貸したのか、無断で使われたのか |
保証人になった覚えがない場合、口頭で「面倒を見る」と言っただけでは保証契約は成立しません。保証は書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じないとされているためです(民法446条2項・3項)。相手が保証を主張してきたときは、署名した書面の写しを示すよう求め、その場で認めたり、新たな書面に署名したりしないことが大切です。家族の名義で届く請求全般については、【不当要求対応】同居していない家族の名義で請求が来た|誰の債務なのかも参考になります。
貸金業法が禁じている取立て
貸金業法21条1項は、貸金業を営む者やその委託を受けた者が債権を取り立てる際に、人を威迫したり、私生活や業務の平穏を害する言動をしたりすることを禁じ、その具体例を列挙しています。この規定は登録の有無を問わず「貸金業を営む者」に適用され、違反には刑事罰も定められています(同法47条の3)。家に取立てが来た場面と関わりの深いものを整理すると、次のとおりです。
| 号 | 禁止されている行為の要旨 | 家に来た場面での例 |
|---|---|---|
| 1号 | 正当な理由なく、午後9時から午前8時までの間に電話や訪問をすること | 深夜や早朝に実家の電話を鳴らす |
| 4号 | 退去を求められたのに立ち去らないこと | 帰ってほしいと伝えても玄関先から動かない |
| 5号 | 借入れの事実などを、債務者以外の者に明らかにすること | 近所に聞こえるように借金の話をする、貼り紙をする |
| 7号 | 債務者以外の者に、代わりに返済するよう求めること | 保証人でない親に「親が払え」と迫る |
| 8号 | 居所や連絡先を知らせるなどの協力を断られたのに、さらに求めること | 子の居場所は教えないと伝えた後も聞き出そうとする |
| 9号 | 弁護士などに依頼した旨の通知を受けた後に、債務者へ直接請求すること | 受任通知の後も子本人に連絡し続ける |
なかでも7号は、保証人でない親に子の代わりの返済を求めること自体を禁じています。「親なら払うのが当然だ」という求め方は、法律上の根拠を欠くだけでなく、この規定との関係が問題になりうるものです。
相手が登録業者か、闇金かで考え方が変わる
登録を受けた業者からの請求の場合
登録を受けた貸金業者や債権回収会社であれば、借入れ自体は有効で、返済義務は子本人にあります。親としては、自分には支払義務がないことを伝えたうえで、取立ての方法が先の規定に反していないかを見ていくことになります。登録の有無は、金融庁のウェブサイトにある登録貸金業者情報検索サービスで確認できます。
闇金の場合
登録を受けずに貸金業を営むことは禁じられており(貸金業法11条1項)、闇金はそれ自体が違法な営業です。また、貸金業を営む者が業として年109.5%を超える利息を約束した貸付けは、契約自体が無効とされています(同法42条1項)。最高裁判所は、著しい高金利で貸し付けたヤミ金融業者に対する損害賠償請求において、借主が受け取った元本相当額を損害額から差し引くことは許されないと判断しました(最判平成20年6月10日)。こうしたことから、闇金からの請求については、元本も含めて支払う必要はないと一般に考えられています。
ただ、法的に支払う必要がないことと、取立てがすぐに止まることは別の問題です。闇金は電話番号や口座を替えながら、勤務先や近所への連絡などで圧力をかけてくることがあるため、法的な整理とあわせて、止めるための実務的な手当てが必要になります。
家に来たとき・電話が来たときの対応
取立てが実家に来た場面では、次の順で対応を考えると落ち着いて動きやすくなります。
- 玄関のドアは開けず、インターホン越しに応対します。
- 「私は契約者でも保証人でもないので支払いません」と、支払わない意思を短く伝えます。
- 子の住所・勤務先・連絡先は伝えず、今後も協力しないと告げます。
- 業者名、担当者名、電話番号、振込先口座、日時と内容を記録し、可能であれば録音します。
- 帰るよう求めても立ち去らない場合や、脅すような言動があった場合は110番通報します。
- 一部でもお金を渡したり、借用書や念書に署名したりはしません。
一部だけでも支払うと、「この家は払う」と受け止められ、請求が続くきっかけになることがあります。子のためを思っての支払いであっても、その場の判断で応じることは避け、まず状況を整理することをおすすめします。警察を呼ぶかどうかの判断については【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるか、立ち去らない相手への対応は職場・自宅に押しかけられた|住居侵入・不退去・業務妨害の使い方で解説しています。
警察と弁護士の役割の違い
警察は、脅迫や恐喝、居座りといった犯罪にあたる行為に対応する機関です。「払わないと子どもがどうなっても知らない」といった発言や、立ち去らない行為があれば、110番通報や最寄りの警察署への相談が考えられます。記録しておいた振込先口座の情報が、口座の利用停止などにつながることもあります。
一方で、借金の支払いをどうするかという民事の問題には、警察は立ち入りにくい面があります。弁護士は、借りた本人の代理人として業者に受任通知を送り、以後の窓口を引き受けることで、本人への直接の請求を止める根拠をつくります(貸金業法21条1項9号)。親への取立てが続く場合には、親の代理人として、支払義務がないことと連絡の停止を業者に通知することもできます。
| 相談先 | 主に対応できること |
|---|---|
| 警察 | 脅迫・恐喝・居座りなど犯罪にあたる行為への対応 |
| 弁護士 | 本人や親の代理人としての通知・交渉、支払義務の整理、債務整理 |
| 金融庁・財務局 | 登録業者かどうかの確認、違法な業者に関する情報の受付 |
それぞれの窓口の違いは、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担でも整理しています。
代わりに払うことが、次の要求につながることもある
取立ての圧力を受けると、子の借金を肩代わりして事態を収めたいと考えるのは自然なことです。しかし、闇金に手を出すに至った背景に、収入の不足や浪費、ギャンブルなどの問題がある場合、借金だけを片づけても同じことが繰り返されるおそれがあります。親が支払うたびに子からの求めが大きくなり、親の蓄えが減り続けていく、という経過をたどることもあります。
成人した子に対する親の扶養義務には限りがあり、子の借金を返す義務までは含まれません(【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのか)。また、返済に追い詰められた子が、闇金から「返済の代わりに」と違法な仕事を持ちかけられることもあります。子の様子に気になる変化があるときは、【親向け】子どもが闇バイトに関わっているかもしれない|兆候と最初の対応もあわせてご確認ください。
子の借金の整理は、最終的には子本人が債務整理などの手続に向き合う必要があります。親にできるのは、支払いを肩代わりすることよりも、親自身の生活を守りながら、子が自分で問題を解決する道筋を支えることだといえます。
当事務所の取り組み
当事務所は、ひきこもりや家庭内暴力、金銭の要求など、成人した子をめぐる親子の問題について、親御さんの代理人として介入する取り組みを続けてきました。取立てが実家に及んでいる場面では、親御さんの代理人として業者への通知や警察との連携を行い、親御さんを取立ての窓口から外すことを目指します。
あわせて、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、子の側の金銭管理や生活の立て直し、仕事探しなどを日常的に支える体制をとっています。結果をお約束することはできませんが、親子の距離を適切に取ることで、双方の状況が変わっていくこともあります。弁護士が入ることで何が変わるのかは【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択、ご相談の内容が子に伝わるかどうかは【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で説明しています。
よくあるご質問
子の居場所を教えないと、親が責任を問われることはありますか
親が子の居所を業者に伝える法律上の義務はありません。協力を断った後になお教えるよう求めることは、貸金業法21条1項8号で禁じられている行為にあたりえます。
子が同居している場合も、親は支払わなくてよいのですか
同居していても、保証人などになっていなければ親に返済義務はありません。ただし、実家が子本人の住まいでもあるため、取立てが繰り返されやすい面があります。夜間の訪問や居座りなど規定に反する方法には、記録を残したうえで、警察や弁護士に相談することが考えられます。
取立てが家に来て困っている親御さんへ
子の借金の取立てが家に来たとき、親がまず確かめたいのは、自分に返済義務があるかどうかと、取立ての方法が法律に反していないかの2点です。その場で支払いや署名に応じる前に記録を残し、状況を専門家に伝えてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


