マナーうんちく話2315《「月の出」を愛でる文化と「お月見」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

日本の暦は国際基準に合わすために、明治5年に旧暦から今の新暦、つまりグレゴリオ暦にかわったわけですが、すべて旧暦の文化が急に変わるわけではありません。

例えば「睦月」「如月」「弥生」とか「神無月」や「師走」といった和風月名は、今でも日常生活の中で生きています。

さらにAI全盛の時代でも、旧暦でないといけない文化も存在しています。
「お月見」ですね。

ちなみに旧暦は「太陰太陽暦」と呼ばれ、月の満ち引きがもとになっているので、十五夜も月の動きをもとに日付が決まります。

また旧暦では秋は7月、8月、9月ですから、7月が初秋、8月が仲秋、9月が晩秋ということになります。

その8月は空気が澄んで一番月がきれいに見えるので、旧暦の8月15日の月が「中秋の名月」になります。

旧暦の8月15日は、新暦ではおおむね9月の中頃から10月の初め頃ですが、令和8年は9月25日(金)です。

ところで令和の今でも、正月に「初日の出」を拝する文化は根強く残っていますが、月の出を愛でることはすっかりなくなりましたね。

しかし旧暦の頃は「月の出」を楽しんでいたようです。

旧暦は月の満ち引きをもとにしているので、当然頷けますが、当時の人がいかに月の出を楽しんでいたかということは、名月前後につけられた名前から推察できます。
代表的な名前を紹介しておきます。

〇「待宵の月」⇒旧暦の14日で、十五夜を待つ宵の月。

〇「十五夜」⇒旧暦15日で、満月でまん丸い月がほぼ日没に上り、太古よりいろいろな行事が執り行われてきました。

〇「十六夜(いざよい)」⇒旧暦16日月です。
月の出は一日に50分くらい遅れるので、満月の次の月は、満月よりかなり出るのが遅くなります。だからお月様が出るべきか、出ない方がいいのか、ためらうわけです。だから「十六夜の月」と書いて「いざよいの月」と呼ぶようになりました。

〇「立待月(たちまちづき)」⇒旧暦17日で、十七夜は十六夜の月よりさらに出るのが遅くなるので、月の出を立って待ちます。

また十八夜の月になると座って待つようになるので「居待月(いまちづき)」、十九夜は寝て待つので「寝待月」と呼ばれます。

昔から「満月に晴れ間なし」といわれるほど、満月の時は天気が悪いのですが、雨天で美しいお月様が見えないことを「雨月」、曇りで見えないことを「無月」といいます。

一夜一夜の月や、天気によって名前を付けるほど、当時の人にとって、月は身近に愛でる存在だったのではないでしょうか。


このように江戸時代の終わり頃までは、月のリズムで人々の暮らしが成り立っていたわけですが、特に「満月の日」は大変大切な日とされていました。

照明が不十分の頃ですから、満月の日は全国的に明るい夜になるので、この明るさがとても貴重なものだったわけですね。

だから、いろいろな行事が積極的に執り行われたようです、

中でも旧暦の8月15日の満月の時、暑くもなく、寒くもなく、虫の美しい鳴き声も聞こえ、さらに実りの頃ですから、美しい月を愛でるには最高のひと時です。

本来は月を愛でる文化は中国の風習でしたが、それが日本に伝わり、最初は貴族階級の間で広まったといわれています。

美しい月を眺めながら美酒をいただき、和歌を詠んでいるような、とても雅やかな宴の様子が目に浮かびます。

やがて武家社会を経て庶民にも伝わり、「秋の七草」や「酒」や米粉で作った「団子」などを備えて、収穫に感謝する、奥の深い文化になって今に至ります。

《名月を取ってくれろと泣く子かな》 小林一茶

親の背中に背負われた小さな子が、秋の澄んだ空に、くっきりと浮かんだ大きな月を指さして、あの美しいお月様を取ってくれと、ねだっているのでしょうか。
幼い子にとっても月の存在は大きかったのでしょうね。

物に満ち溢れた今の子は、このようなおねだりは、まずしないでしょう。

さらに当時は、お月見の時にお供えされた「団子や果物などは盗んでもいい」とされた「お月見泥棒」という風習がありました。

月の神様に、収穫を感謝し、来年の豊作を祈願してお供えするわけですが、お供え物がなくなるということは、月の神様がそれを食べて下さったので、願い事がかなうと信じられたわけです。
昔の人の生活の様子がしのばれます。

参考までに、お月見団子の供え方に触れておきます。

お月見団子は満月にちなみ、丸い形をしています。
それを、同じく十五夜に合わせ15お供えします。
無理なようでしたら5個くらいでもいいでしょう。

「三方」があればいいのですが、それがなければお盆でも構いません。
出来れば白い紙を敷いてください。
一番下に9個(3列×3個)、その上に4個、一番上に2個がいいと思います。

そしてお月見の行事が終われば、家族一同で感謝の気持ちを分かち合いながら頂いてください。

出来ればこの「うんちく」などをお話しいただければ嬉しい限りです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

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