マナーうんちく話2320≪9歳の子が該当しないのはなぜ?七五三に秘められた深い意味》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:冠婚葬祭のマナー

収穫に感謝する秋祭りも終わり、この時期の神社は「七五三」でにぎわうようになります。

年々子どもの数が少なくなる中、子どもが晴れ着を着て、親に連れられて、参拝に訪れる姿を見るのは微笑ましい限りです。

物質的に豊かな国になった今、数ある年中行事でも実施率が高い七五三ですが、その由来や意味をさらに理解していただけたら、もっと・もっと充実すると思います。

そこで2回にわたり、七五三について詳しく触れてまいります。

●7歳までは神の子
七五三が3歳、5歳、7歳を対象にする理由は、3・5・7が縁起のいい奇数だからです。

陰陽道では万物を「陰」と「陽」に分けて考えますが、数字は奇数が縁起のいい陽数となるので、3歳、5歳、7歳を祝うのは腑に落ちるわけですね。

ちなみに「五節句」も1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日で、すべてが奇数です。

そして陽数(奇数)の中で最も格式が高いとされるのは「9」です。
従って、9が重なる9月9日の「重陽の節句」は、五節句の中でも一番格式が高い節句で、「マナーうんちく話」でも何度も詳しく触れています。

ではなぜ七五三では、9歳の子は該当しないのでしょうか。

今の日本では、乳幼児の死亡率は非常に低く、子どもを産んで、育てる環境は世界の中でも大変恵まれています。

ただ昔は栄養・衛生状態が非常に悪く、医療も整ってなかったので、せっかく生まれても、2歳になる頃までには2割を超える子が亡くなっていたと推定されています。
そのため、子どもが誕生しても、元気で育つか否かは誰にもわからず、神のみが知ると考えられており、7歳までの子は「神の子」とされていたわけです。

つまり7歳までの子は神の領域であったわけで、江戸幕府が制定した、近親者が亡くなった時の、忌中、喪中の範囲と期間を定めた「服忌令」でも、7歳未満の子がなくなっても、喪に服する義務はなかったようです。

●神社に参る理由
生まれた子が7歳の峠を越え、元気に育つということは大変幸運だったわけです。

だから成長過程の節目・節目に当たる3歳、5歳、7歳になった時点で、氏神様に無事3歳、5歳、7歳を迎えたことを報告し、感謝し、今後の健やかな成長を祈願したわけです。

つまり神社に参拝する理由は、報告、感謝、祈願のためということです。

●7歳を超えたら「氏子」になる
そして無事7歳を超えたら、いよいよ「神の子」から「氏子入り」します。

地域を守ってくださる氏神様の子になるということで、めでたく地域の一員になれるわけです。

そしてこの時点で、江戸時代の戸籍簿といわれ、村や町ごとに作成された「人別帳」に記載されるわけです。

また7歳までの「神の子」の時には、非礼があっても責任を問われることはありませんでしたが、氏子入りしたら、責任を伴うようになります。

平均寿命が30代から40代の時代の話ですから、頷ける話ですね。

●「七五三の行事」が始まったのはいつ?
「子どもは神の子」は民俗学的な観念ですが、歴史的に七五三を眺めてみると、今のような行事になったのは、まだ歴史は浅く百年前後だといわれています。

地域差はあるものの、広く普及したのは戦後しばらくたってからだと思います。

もちろんその素地になる儀礼には古い歴史があり、3歳になれば「髪置き」という儀式があります。
それまで刈り上げていた髪を伸ばし始めるわけですが、貴族階級と武家とは多少異なっていたようです。

さらに初めて袴をつける「袴着」、その後和服の紐を解いて、単体の帯を使用する「帯解き」の儀礼が行われたようです。

このような流れを受け、戦後になって今のような儀礼が普及し、今では晴れ着を着て記念写真を撮る家族が多くなりましたね。

●「子どもは風の子、大人は火の子」
江戸時代になると物が豊かになり、一日に3食食べるようになると、今までとは様子がかなり変わってきます。

子どもも、武士の子は藩校、庶民の子は寺子屋で学べるようになり、元気で遊びまわる子も多くなってきます。

この頃の慣用言葉に「子どもは風の子、大人は火の子」があります。

冬の寒い日であっても子どもは外で元気に遊び、大人は寒いので火の側を離れないという意味です。

つい数十年前までは、江戸時代から使われてきたなじみのある言葉だったのですが、今ではこの言葉も影を潜めた気がします。

そもそもこの言葉は、子どもらしい活発さや、のびのびと外で遊ぶ元気さを褒める言葉です。

だから本来子どもは、暑い夏の日でも、寒い冬の日でも元気で外で遊ぶ姿が、子どもの真の姿だと思うのですが、今の子どもの姿は本当に変わりましたね。

核家族化、少子高齢化、人口減少、過疎化、デジタル化に加え、共同体重視から個人主義へと大きく時代が変わったことに伴い、冠婚葬祭の在り方も激変しました。

七五三しかりです。

従来の通過儀礼から、家族の記念行事になってきた感があります。

本当にこれでいいのでしょうか?

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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