マナーうんちく話2317《喜びと別れを映す「冠婚葬祭」の基礎知識とイマドキの振る舞い方》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:冠婚葬祭のマナー

●はじめに
日本は世界に先駆け人生百歳時代を迎えていますが、長い一生には喜怒哀楽がつきもので、お目出度いこともあれば、悲しみに暮れることもあります。

古来、人生には4大儀式、つまり「冠礼」「婚礼」「葬儀」「祖先の祭祀」の冠婚葬祭がありますが、中でも婚礼と葬儀はきわめて厳粛な儀式とされてきました。
こうした礼式やしきたりは、人と人との交わりや付き合いには必要不可欠な意味や内容を含んでおり、祖先から受け継いだ大変貴重な文化財といえますが、マナーには不易流行的な側面があります。

冠婚葬祭に関する多くの作法が封建社会の中で確立され、根付いてきたので、AI全盛の時代には、それにふさわしいマナーが誕生するのも、自然な成り行きかもしれませんね。
先人が長い月日をかけて築き上げた、古くからのしきたりの価値を改めて見つめなおし、しっくりと新旧が融合した快適な暮らしを実現するには、それぞれの良さを上手に取り入れることが大切ではないでしょうか。

今回は「冠婚葬祭の基礎知識」をはじめ、「冠婚葬祭が激変した理由」「昔と今では、どう変わったか」、そして最後に「それでも冠婚葬祭が必要不可欠である理由」と「今どきの振る舞い方」等に触れてみます。

●4つの儀礼をまとめた言葉「冠婚葬祭」
成人・結婚・葬儀・祖先供養など、人生の大きな節目に行う4つの儀礼を纏めた言葉が「冠婚葬祭」です。
平たく言えば、人が生まれ、成人して結婚し、年を重ねて亡くなるわけですが、その後に行われるもの(法要、盆、お彼岸、祖先を祭る行事など)まで含めた催し物全般と、捉えていいと思います。
もとは中国儒教の「四礼」が広く東アジアに伝わり、これらの礼が、日本で人生における通過儀礼を表す総称として定着したといわれています。

「冠」は昔の元服で今の成人式、「婚」は結婚式、「葬」は葬式、「祭」は祖先の祭礼のことですが、今でもこれらの場面は「ハレの日」とされ、正装や晴れ着を着用し、格式あるマナーが要求されることが多々あります。
ただし、これらは地域や家族、宗教などの慣習差があり、マナーも「これが正解」というわけにはいきません。

●冠婚葬祭が激変した理由
AI全盛の時代になり、冠婚葬祭を虚礼や因習として、置き去ってしまえばいいという考えもあるようですが、冠婚葬祭は今でも人間同士の交わりに必要不可欠であり、生活を豊かにしてくれる素晴らしい知恵であることには変わりありません。
ただここ数十年で、冠婚葬祭が激変したことは確かで、どのように対応すればいいのか、戸惑っている人も多いことでしょう。

そこでまず、冠婚葬祭が激変した理由を探ってみることにします。
結論から言うと、冠婚葬祭が変化してきた大きな原因は、社会全体が、共同体重視から、個人重視に移つり、人付き合いの距離感が大きく変化したからです。
昔は個人より共同体を優先する暮らしが強く、家や地域のつながりの中で生活し、助け合いや仕事や様々な行事を一緒に行うのが一般的でした。
農作業や家づくり、さらに冠婚葬祭などは皆が協力するのが自然だったわけです。ひとりで生きるより、みんなの中で生きる社会だったわけですが、このことは非常に心強く安心な面がある一方、個人の自由は二の次になり、時代とともに個人中心へと移行したのでしょう。

核家族化が進行し家族が小さくなるとともに、高齢化や少子化も同時に進行し、さらにお金の優先順位まで変化し、決定打として「コロナ禍」がありましたね。
人が集まるのではなく、人が遠ざかるようになったわけですから無理もないのですが、不思議なことにコロナが落ち着いても、元の鞘に収まる様子が見えません。

●結局、冠婚葬祭は昔とどのように変わったの?
マナーには不易流行的側面があると述べましたが、暮らしの形が変わると、冠婚葬祭も当然変化してきます。
昔は、家や地域のつながりが深く、親族をはじめ、ご近所の人が広くかかわってきましたが、現在は個人や家族単位で小さく行い、費用も低めの形が多くなってきました。結婚式にせよ、葬儀にせよ、簡素化や少人数化が進んでいるということです。
家や地域のための儀礼から、本人や家族主体の儀礼になったといえるでしょう。

ただ、各地で冠婚葬祭に関する講演をして感じることは、昔も今も、節目を大事にすること自体は変化していないということです。
また行事の本来の意味や、実用的な振る舞いを把握したいという需要は高まってきているような気がします

●AI全盛の時代でも冠婚葬祭は必要なの?
昔に比べると格段に、物が豊かで便利な時代になりましたが、人との節目は大事にしたいものです。
しかし全てを昔のスタイルで続ける必要性は薄れていると考えます。
例えば情報伝達等はAIやデジタルの方が効率的な場合も多々あります。
ただ感謝を表現し、喜びや悲しみを共有することは、昔と変わりないでしょう。

さらに、結婚式や葬式は、本人だけでなく、家族や親族、周囲の人々との関係を整える場であることには変わりありません。
つまり部分的にはAIの力を借りるとしても、関係そのものの重みはAIやデジタルでは代替え不可能だということです。

また結婚式や葬式のような儀礼は、喜びや悲しみを整理する時間でもあるので、ここに便利さを追求しても意味がないでしょう。
総じて冠婚葬祭は、家や地域ごとの価値観が反映される場でもあり、これらをすべて拭い去ることはできないと考えます。

大切なことは、それぞれの本来の意味や意義を正しく理解し、豪華さを競うのではなく、節目をどのように表すかではないでしょうか。
AIは今後ますます普及するであろうと考えられますが、その一方で、人と人とのつながりや儀礼の意味や意義が、現代社会でも引き続き重要視されているということです。

超少子高齢化、過疎化、核家族化、人口減少は益々進展し、夫婦や家族、地域や職場における会話や協調が薄れ、近隣との付き合いも疎遠になり、無縁社会、孤独死、無縁仏、墓じまいなど、大変由々しきキーワードが氾濫する今こそ、先人が長い月日をかけ築き上げた、古くからのしきたりを改めて見つめなおし、暮らしの知恵を深め、対人関係の礼儀作法を身につけ、次世代につなげたいものです。

●冠婚葬祭、イマドキの振る舞い方
冠婚葬祭の今どきの作法は、それぞれの行事の意味や意義を正しく理解し、昔ながらのスタイルを押さえつつ、相手に対する配慮が大事なポイントになります。
「マナーうんちく話」で何度も触れていますが、「なぜそうするのか?」という合理的な理由を把握しておけば、多様なシーンで臨機応変に対応できるでしょう。
〇共通する基本的な姿勢
・先ずは事前確認をしてください。
・服装は、控えめで、清潔感の漂う身だしなみを心がけてください。
・言葉遣いは丁寧語や敬語がおすすめです。
・デジタル利用か、面倒でも人の力に頼るかを賢く判断してください。
※例えばメールで済ますか、電話や対面にするかなど?
・迷ったらその場にいるスタッフや親族に、静かに尋ねるのもいいでしょう。

振る舞い方は地域性などもあり、「これが正解」ということはありません。
マナー教本通りでなくても、相手が不快にならないことを優先してください。
また服装や祝儀や香典にしても、清潔、そして誠実を心がけ、静かに振舞ってください。
ポイントは「派手より地味」「話すより聞く」「撮るより見守る」がおすすめです。

〇「冠」に関する姿勢
冠は「加冠の儀」が由来で、今では成人式をさしますが、派手さを競うより式典にふさわしい清潔感と礼節が大事です。
昔は社会的な身分や役割の切り替えが強かったようですが、今は本人や家族が成長を祝う意味が濃くなりました。
「冠」が通過儀礼から、記念行事になったということです。

〇結婚式に関する姿勢
結婚式も大変多様化しています。新郎新婦の思いを尊重するよう心掛けてください。また結婚式における最大のマナーは、新郎新婦を主役にすることです。
従って服装も華やかさをもとめつつ、新婦より目立たないよう心掛けてくださいね。返信や祝儀袋などは基本を守ることが大事です。
受付や会場ではお祝いの言葉を笑顔で発してください。
最後に幅広いお祝い事の祝儀袋の表書きには「御祝」が使用されますが、結婚式は「寿」と表現されます。これは結婚を祝う気持ちと、末永い幸せを祈る気持ちが込められているからです。最上級の喜びを表現してくださいね。

〇葬儀に関する姿勢
通知する側も、訃報を受け取る側も、人が亡くなれば、葬式を行い、遺骨は墓地に埋葬されるもの・・・。と決まっていたのが、ライフスタイルの変化、価値観の多様化、コロナなどが影響して、葬式の常識が多様に変化し、昔の常識が通じなくなってきています。
そして最近は小規模や家族葬が増加傾向にあるので、参列してもいいかどうか、さらに香典も受け取ってもらえるか、どうかなどを確認する姿勢が大切です。
つまり喪主や遺族の気持ちに寄り添うということです。

また最近は通夜と葬儀で装いの考え方は共通しているようですが、落ち着いた正式感が漂う服装を心がけてください。
遺族には短くお悔やみの言葉を伝えるのは、今も昔も変わりません。
なお、お悔やみの言葉に関しては、次回の「マナーうんちく話」で詳しく触れる予定です。
香典も喪主の意向をくみ取ることが大事です。
香典を辞退されるようだったら、それを尊重すればいいと思いますが、ある程度時間がたって、お悔やみの手紙や弔問するのもいいと考えます。

〇「祭」に関する姿勢
祭は、今では年中行事の総称になっていますが、地域のしきたりを守るものから、無理なく参加するものになっています。
以前はそれぞれのしきたりの意味を理解していることが求められましたが、暮らしが変わるにつれ、大分柔らかくなってきて、イベント的要素も加わり、外部の参加も歓迎されるようになってきた感があります。人口減少の影響でしょう。

共同体のしきたりから、地域性を尊重しながら参加しやすくなったということです。
ただ依然として独自のルールが強く残る祭礼や神事もあるので注意が必要です。
また子供の参加は、楽しさより、先ずは安全と迷子対策を優先してください。
理想は親が子に、行事の意味を丁寧に教えてあげれば持続可能にもつながるのですが・・・。

●あとがき(冠婚葬祭の意味を知れば鬼に金棒)
私たちの生活は、核家族化が進んだ今でも「家族」が一つの基本単位であり、そこから地域や学校や職場へと、社会生活の輪が広がっています。
その中で織りなされる人の一生には様々なドラマが展開され、喜怒哀楽、慶事・弔事の一大叙事詩といえるのではないでしょうか。

そして「冠婚葬祭」は人生の節目や、家族の大事な行事をまとめた言葉で、その意義は単に形式をまもることではありません。
礼儀作法の本質は「相手を思う心を具体的に表現する」ことですが、冠婚葬祭は大切な節目を家族や社会で共有し、感謝や敬意、別れの気持ちを形にすることです。
従って冠婚葬祭の意味を正しく理解することは、様々な行事の意味や意義を知るとともに、人を大事にする姿勢を学ぶことにつながるということです。
特に日本では令和の今でも、生活文化として位置づけられています。

〇冠婚葬祭の意味や意義を理解すれば
・その場にふさわしい振る舞いが自信をもってできる
・相手や家族に敬意が示せる
・行事の意味を表面だけで終わらせずに受け止められる
・不必要に業者の営業戦略に乗らずに済む
・総じて人との関わり方がとても丁寧になり、ひいては周囲と良好な人間関係が築け、人生百歳時代をハッピーに過ごせるということです。
宗教教育や礼節教育の必要性を痛感します。
ちなみに五節句の一つ3月3日の「上巳の節句(桃の節句)」に、お雛様を飾る家も多いと思いますが、終わったら人形をすぐにかたづけなければいけません。
理由をご存じでしょうか?
「娘の婚期が遅れるから」というのが一般的な理由なのですが、本当の意味は、本来の「ひな人形」の意味は、人の体に溜まった災い物(邪気)を移した人形だから、早く片付けないといけませんよということです。
天候や都合でどうしてもすぐに片づけられない場合は、「人形を後ろ向き」にします。これで「女雛がお帰りになった」という意味になります。

日本には世界屈指の年中行事が存在するといわれていますが、それぞれ本来の意味を有しています。「なぜこうするのか」という合理的な理由を知れば、まさに鬼に金棒ということです。
また冠婚葬祭に関するもの、例えば、お節料理、襖の開けたて、三三九度、神社参拝の作法、祝儀袋などは大変手間暇がかかっています。手間暇をかければかけるほど絆が太くなるからです。
見返りを求めず、手間暇を惜しまない。
これが、先人が教えてくれた良好な人間関係の築き方です。

平松幹夫の「マイベストプロ」に掲載中の、「マナーうんちく話・冠婚葬祭」(検索)をぜひ参考にしてください。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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