マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
1月も中旬になりましたが、この時期になると歳神様は人の世界からかなり遠ざかります。
「七草粥」で無病息災を祈り、「鏡開き」で家族円満や発展をお願いし、そろそろ正月気分も薄れた方も多いのではないでしょうか。
しかし日本にはまだ正月と呼ばれる行事が沢山あります。
1月15日は「小正月」です。
1月1日は「大正月」や「男正月」と呼ばれますが、15日は「小正月」とか「女正月」と呼ばれます。
正月(大正月・男正月)の間、つまり七草の松の内の間は大正月・男正月で、女性はとにかく忙しい思いをして働くわけですから、それをねぎらうための正月というわけです。
年男が大活躍する男正月に対し、主婦がのんびり、ゆったりくつろぐ「女正月」は「小豆粥」や「火祭り」で祝う日です。
「小正月」といえば、小さい餅や団子を木の枝に付ける「餅花」が有名ですが、そもそも小正月は、お月様と農作業にゆかりが深い行事だからです。
餅花を飾り五穀豊穣を祈るわけですね。
さらに小正月には「小豆粥」をいただく風習があります。
小豆は邪気を払う力があると考えられていたようですが、太陽と火の色の赤色には、悪魔を払い、人を元気にする力が存在するので、結婚式や節供などのめでたい時の赤飯が誕生したわけです。
ちなみに「餅」は神様が宿る米同士がぴったりと密着するので、神秘的な力があるとされ、日本では今でも正月の「鏡餅」や多くの年中行事に登場します。
また小正月には「左義長」と呼ばれる火祭りがあり、今でも各地で火を焚いて、しめ飾りや門松や書初めなどを燃やし、豊作や息災を祈ります。
この火祭りは地域により日程も呼び名も異なりますが「どんど焼き」と呼ばれることが多いようで、門松やしめ飾りを燃やす際に出る煙に乗って歳神様が天上にお帰りになられると信じられていたのでしょう。
従って「小正月」は色々な行事がありますが、いわば正月行事の後始末の行事と言ってもいいのではないでしょうか。
さらに1月20日は本格的な正月の祝い納で「二十日正月」と呼ばれます。
小正月が過ぎても正月気分が抜けない人も多く、20日には綺麗さっぱりけじめをつけ働かなくてはいけません。
また、この日は正月のご馳走を食べきるわけで、お歳暮として歳神様にお供えした、塩鮭や鰤などの骨まですべて食べつくすので「骨正月」ともいわれます。
ただ「飽食の時代」ともいわれ、年中食べ物がある現在の台所事情には無縁の行事かもしれませんね。
ところで「旧正月」という言葉をご存じでしょうか。
日本でも70年くらい前までは地域によっては祝っていたようですが、明治5年まで使用されていた旧暦の正月の事です。
新暦(グレゴリオ暦)では正月は1月1日と決まっていますが、旧正月は1月中旬から2月中旬頃の間で「新月」になる日なので、毎年同じ日というわけには参りません。
令和7年の旧正月は1月29日です。
日本で旧暦から新暦に暦が変わったのは明治5年ですから、今では死語になりつつ言葉かもしれませんが、中国を始め台湾、韓国、ベトナム、シンガポールなどではお祝いします。
特に中国では「春節」といって一年で最も重要な祝日で、日本にも多大な影響を及ぼしています。
東南アジアでは旧暦の正月を重要視する国が多いようですが、恐らく西洋の太陽暦より古くから使用されており、農作業等に深く関わっていたからではないでしょうか。
また旧暦の正月頃に日本では「立春」がありますが、同じものではありません。
旧正月は太陰太陽暦がもとになり、太陽の動きをもとに季節を分類した立春は二十四節気の一つです。
四季が明確に分かれ、それが規則正しく巡る日本では、世界屈指の暦を大切にする国といわれますが、正月とは「太陰暦の第一の月」という意味で、特別な月です。
だから一年で最も行事が多い月になったわけですが、最も古い、最も愛でたい行事です。
いくら時代が変わろうとも大事にしたいものですね。