マナーうんちく話521≪お心肥し≫
5月21日は二十四節気の一つ「小満」。
日ごとに気温も上昇し、新緑が万緑に変わる頃で、すべての命が生き生きとみなぎってくる絶好の季節です。
5月生まれの人は温厚で協調性があるといわれていますが、このような環境下で生を受ければ頷ける話ですね。
ちなみに今の日本の伝統色は460種以上あり、その一つ一つに根前がついているそうですが、奈良時代頃までの日本の色の基本形は白、黒、赤、青の4つのみだったとか。
また緑は、本来は瑞々しさを表現する言葉で、やがてそれが転じて新芽の色をさすようになったといわれています。
そんな緑の織り成すグラデーションが大変美しい時で、大きな深呼吸をして元気を自然から分けてもらいたいものです。
ところでこの時期は「五風十雨」と呼ばれるように、安定した天気が続くことが多いのですが、ぐずつく日も多々あります。
しかしいずれも命をはぐくんでくれる、天からの大切な贈り物です。
また二十四節気の名前でも大変ユニークなネーミングだと思うのですが、「小満」という意味は、秋に蒔いた麦の穂が少しだけ満ちてきて、それを確認したからやや満足できたという意味が込められています。
小さな満足という意味で、「小満」と名付けられたわけです。
暑さも加わり、多くの生き物が次第に成長し、野や山に咲いた植物たちが花を散らして実をつけ始める時期です。
梅雨も間近に迫り、田植えで忙しくなる頃でもありますね。
ところで古今東西「生きることは食べること」ですが、今のように食べ物に恵まれなかった時代は、日本人の主食である五穀は命に直結する食べ物です。
中でも米は筆頭格ですが、毎年米が豊作とは限りません。
そこで米が収穫を終えて次の田植えの期間まで、麦を育てた農家が多く存在していました。
いわゆる二毛作ですが、麦の穂が実ってくると100%の満足ではなくても、最低限ホッとするわけです。
そして初夏に麦の刈り入れをして、その後田植えとなるわけですね。
「麦秋」という言葉がありますが、麦にとっては収穫の秋になるわけです。
ちなみに「麦ごはん」は今でこそ健康食とされていますが、昔は庶民にとってのご飯は、ほとんど麦ごはんです。
米のご飯は大変神聖な食べ物で、「ハレ」の日のご馳走だったわけです。
美食の国、飽食の国といわれるように、世界屈指の贅沢な食生活を謳歌している今の日本人にはピンとこないかもしれませんね。
食料自給率が38%前後を推移している日本は、世界情勢が非常に不安定な今こそ、食べ物のありがたさを今一度認識する必要がありそうですね。
《いつも月夜に米の飯》という言葉があります。
昔は食べ物にも夜の明かりにも非常に苦労していたので、暗い夜道を照らす月夜の明かりや、空腹を満たし体力をつけてくれる米は大変ありがたいものですが、いつもあるものではありません。
つまり苦労なく、気楽な生活はとても困難であり、世の中そんなに甘くないという意味で使用されます。
今のような混沌とした世界情勢に、明るい未来を感じることはできません。
それこそ一寸先は闇になるかも。
食糧やエネルギーの大切さを思い知る必要がありそうです。
「足るを知る者は富む」といわれますが、麦の穂が成長した姿を見てホッとする先人の気持ちが理解できるような気がします。


