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平松幹夫

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平松幹夫(ひらまつみきお) / マナー講師

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

コラム

マナーうんちく話2156《旅行にお土産は必要なの?大切にしたい「みやげ」に込められた和の心》

2022年11月6日

テーマ:贈答のマナー

コラムカテゴリ:くらし

行楽シーズンに加え国の観光需要喚起策「全国旅行支援」のお陰で、全国の観光地が非常ににぎわっているようですね。

もともと日本人は昔から旅行が好きですが、現在では国内旅行の旅行消費額は20兆円を超えているとか・・・。

特に知らない土地への旅行は、いつもと異なる非日常の空間に触れることができます。

現地での様々な文化、食べ物、景色、それに人との出会いは格別で、感受性が豊かになり、行動的にもなれそうです。
もてなしの心にもふれることができるでしょう。

そして旅行といえば「お土産」ですが、そうでなくとも、このところの物価高で支出が気になる人も多いのではないでしょうか。

日本の贈答に関する習慣で、最も頻繁に行われるものの一つに「旅行のお土産」がありますが、そもそも旅行のお土産は買って帰らなくてはいけないのでしょうか?

改めて旅行や「お土産」の起源に触れてみます。

縄文・弥生の時代に狩猟生活をしていた頃は、獲物を求めて、生きるために移動生活をしていたようですが、やがて朝廷ができ役人たちが赴任地に移動するような旅も生まれました。

さらに室町時代頃には「信仰」が目的での移動も存在したようです。

もともと日本における多くの文化は、神道や仏教の影響を強く受けていますが、日本の庶民の旅行の始まりは実に「お参り」だったと思います。

そして信仰の中心になるのが伊勢神宮で、江戸時代になると「お伊勢参り」に庶民がこぞって出かけるようになったわけです。


ところで「観光」とは、光を観ると書きますが、知らない土地に行って、そこの土地のいいものをたくさん見て、それを自国に持って帰り、活かしたのでしょう。

ただ当時は物にも恵まれず、知らない土地に行くには多くの危険が待ち受けていたと思います。

一方様々な文化や価値観にも触れることができるので、大いに魅力的でもあったのではないでしょうか。

旅の目的が「信仰」にあったという点も大きな特徴だと思います。

また交通の便も通信手段もない時代ですから、リスクとともに多大な経費が掛かります。
農業を生業としている一個人が簡単に工面できる金額ではありません。

出発地から伊勢神宮までの距離にもよりますが、徒歩での往復には多くの時間が必要です。

お洒落でクッションの良いスニーカーがあるわけでもありません。
「草鞋」を履いて、徒歩での往復です。

関所を超える手形も必要でしょう。
だから旅に出るということは、それなりの準備と覚悟が必要だったわけです。

それでも、村の発展や村人の幸せな生活を築く上でも、「お参り」は必要不可欠と考えられたのでしょう。

村人の中から選ばれた元気な人が、村を代表してお伊勢参りに出かけるようになったのも頷けます。

加えて、当時は少しずつ旅費を積み立てる「講」という制度もあったようです。
この制度は昭和の半ばまでは存在し、この制度で、私も幼い頃には町内旅行に連れて行ってもらった記憶があります。

ところで当時は、村を代表してお伊勢参りに出かける人は、リスクも責任も重大です。
では、どうする?

旅行前夜は家族や親族で「水盃」を交わしたそうです。

ちなみに「水盃」とは、儀式の一種ですが、二度と会えないかもしれない別れの時に、酒の変わりに、互いの杯(盃)に水を入れて飲み交わすことです。

飲み終われば、使用した杯を地面に投げて割ります。
(ケースバイケースで割らない場合もあります)
まさに永遠の別れのような覚悟で旅立つわけですね。

宿泊は「旅籠」がですが、一泊2食が基本だったようです。

宿につけば先ず「洗い桶」が用意され、草鞋を脱いで足を洗います。
その時に用意された手拭いを絞って足を吹くわけですが、この手拭いが「お絞り」の語源になったという説があります。

そして旅の楽しみは夕食ですが、ご飯、汁物、漬物、魚のおかずのような食事が中心だったようです。

その後床に就きますが、「お江戸日本橋七立ち」とうたわれているように、早朝に宿を立ち、夕方に次の目的地に着くまで、ただ歩け、歩けの旅です。

個人差はあるでしょうが、恐らく30㎞くらいは一日に歩いたといわれています。
山あり、谷ありの道をひたすら歩き続ける旅が続くので、体力は必要です。

また当時は娼婦も多かったそうで、いろいろな誘惑もあったかもしれませんね。


こうしてお伊勢参りを果たしたら、当然確かにお参りしたという証が必要です。

その証として伊勢神宮の「お札」を持参するわけで、これが「みやげ」の起源です。
漢字では「宮笥」と表現します。

竹冠がついていますから、恐らくお宮で戴いた大切なお札を、竹で編んだ籠に入れて、用心深く故郷にもって帰ったのでしょう。
幸せ感や責任感に浸りながら・・・。


このようにして旅が次第に身近になり、多くの参拝者が行き来するようになると、大きなビジネスチャンスが生まれます。

七五三の「千歳飴」も同じような背景から誕生したわけですが、有名神社の近所には、地域の特産物などを商う「おみやげ屋」が多く出現し、商売に精を出すようになります。

伊勢神宮に限らず、いろいろな神社への参拝目的の旅が盛んになり、その土地の特産物を商う「みやげ屋」が出現し、それにつれて「宮笥」から「土産」と表現されるようになったのでしょう。

たとえば比較的裕福な武家階級の旅行では、かんざしやたばこ入れ、さらにお茶などが土産として好まれたといわれています。

そして明治になり鉄道網が敷かれると、旅行も格段に増加し、すっかり定着したわけですね。


現在と江戸時代では「旅行」も「おみやげ」の意味も大きく変化し、加えて地域共同体も希薄になりましたが、いずれにせよ、旅先で出会った素晴らしいものを、日頃から親しくしている人にもお裾分けしたいという気持ちは大切にしたいものです。

私も旅行が好きですが、できる限り相手の顔を思い浮かべながら、限られた予算で、あれこれと迷いながら旅先での土産を購入し、コミュニケーションを深めるようにしています。

この記事を書いたプロ

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