マナーうんちく話553≪「和の作法」と「一回一動作」のお勧め≫
昔から日本人女性の美しさは花にたとえられていましたが、どちらも美しくて選ぶのに迷う喩になった花をご存知でしょうか?
答えは「菖蒲(あやめ)」で、「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」という諺があります。いずれも美しくて選ぶのに迷うという意味です。
二十四節季をさらに三等分した七十二候では、今は菖蒲(あやめ)が美しく咲くころだとされています。
端午の節句は別名「菖蒲(しょうぶ)の節句」ともいわれ、菖蒲湯に浸かりますが、この花を「アヤメ」と呼ぶことが多かったようですね。
しかし、やがて今頃のアヤメ科の菖蒲(アヤメ)を指すようになったとか。
いずれにせよ本当に解りづらいです。
ところで、食事の際に使用する「おしぼり」と「ナプキン」の役割の違いをご存知でしょうか?
どちらも拭くという目的で使用するので、大した違いはないと思われがちですが、実は和食の「お絞り」と洋食の「ナプキン」の役割は大きく異なります。
違いをしっかり理解して頂き、美しく食事をして下さいね。
【お絞りとおもてなしの心】
喫茶店やレストランに入ると、注文しなくても出て来るお絞り。
しかも請求書にも記されません。
日本ではすっかり当たり前になっていますが、海外ではそうはまいりません。
水やお茶もしかりでしょう。
いかに日本人が、お客様に対する「おもてなしの心」を大切にしているかということです。従っておしぼりや水を出されたら「ありがとうの言葉」を忘れないようにしたいものです。
【おしぼりの歴史】
では、このおしぼりは何時ごろから使用されているのでしょうか?
非常に古い歴史を有していますが、名前の由来は濡れた手拭を絞るからです。
江戸時代に、旅人が「はたご」と呼ばれる旅館にチックインする際、汚れた足を洗う為に出されたてぬぐいと、桶に水を張った者が出るわけですが、洗った足を、手拭を絞って綺麗に拭くから「お絞り」と呼ばれるようになりました。
当時は今のような靴はなく藁でできた「草鞋」を履いていたので、足がとても汚れます。だから部屋に上がる時には足を洗う必要があったわけですね。
【お絞りの役目】
江戸時代は足を拭いていましたが、現在は足を拭く習慣はなく、手を拭く役割へと変わりましたね。但しあくまでも手を拭くものですから、基本的には汗で汚れた顔や体を拭くものではありません。勿論テーブルを拭くものでもありません。
このように今では手を拭くものを言うイメージが強いお絞りですが、和食文化では「手を清める」役目があります。食事をする行為は動物や魚や野菜等、食材の命を頂くわけですから、感謝及び敬意を込めて手を清めるわけです。
神聖な食べ物を食すのだから手を清め、手を汚さないのが基本になるということです。だから「手盆」はNGなのです。
手盆をする行為は、わざわざ手を汚しに行くことに繋がります。