大学院受験は不安と孤独と折れそうになる心との闘い

井上博文

井上博文

テーマ:京都コムニタスとはどんな塾か?

大学院受験は孤独との闘いでもあります


前回の不安を感じたら私たちに相談することを述べたコラムのこともあってか、何人かから、「孤独」に関する相談を受けました。塾生ならば、私たちのそばで勉強してもらえますし、同じ目標を持った人もたくさんいますので、当塾では比較的孤独感は少なくなると思います。
当塾の合格体験記でも多くの方が一緒に勉強した仲間とのつながりについて書いてくれています。
例えばこちら
これはコロナ時代に入ってからも継続できています。
臨床心理士指定大学院や公認心理師養成の大学院受験に限ったことではありませんが、一般に大学院受験(編入も同様でしょう)は孤独と不安との闘いもあります。これは入学後もある程度あると思います。見知らぬ環境に入って、見知らぬ先輩(なぜか凄そうに見える)と机を並べて環境に慣れていかねばなりません。研究の世界に入ると、まず孤独とのたたかいです。孤独になれておくことは必要です。また大学院に行くと様々な不安がよぎります。まず勉強、時間、そしてお金です。お金は正直私も苦労しました。所持金が1500円を切り、実家にも帰れなくなったときにはさすがに不安になりました。毎日うどんを食べ、食堂のおばちゃんに「あんた、またうどんかいな」と言われたこともあります。そうなった理由は、後先考えずに本を買ったからなのですが、本を買うことと生活は、この業界にいる人ならば、必ず隣り合わせになります。

入学後でもこのような孤独と不安があるのですが、受験も同様です。多くの人は就職活動をしているのに自分だけが受験勉強をしていると思ってしまうと、途端にモチベーションが低下したという話もよく聞きます。当塾では同じ目標を持っている同志とも言える人と出会えます。そこで、一生の友人になったという人もいます。このような出会いは大人になってからはあまりありません。その意味でも大人が勉強をできる環境は、出会いの場としても重要なのです。大学受験とはまた違った出会いが、孤独と不安を緩和させてくれると考えられます。

仲間との関わりが折れないように心を支える

これまでも何度か折れない心について書きました。こちらも参照ください。
最近、レジリエンスに関する本はたくさん出ており、研究状況はかなり進んでいるように思えます。その意味では折れない心の作り方や、あり方に関心は高まっていると言えると思います。怒る人、あるいは怒りをコントロールできない人、あるいはできなくなると、心が折れやすくなると考えられますが、不安も同様でしょう。例えば不安が高じて怒りも生じる、というのはよくある話ですし、話をしているうちにだんだん腹が立ってくるという現象は、それ以前の感情に起点があるということになります。
毎年、当塾では、数名の人が修論、卒論、大学院に行ってからのレポートなどを作るために、塾に来られています。特に論文を初めて書く人は、よく「心が折れそうです」と訴えます。それに対して私はいつも「折れないようにしてください」と言います。もちろん、それだけでは事の解決にはなりませんから、その後それぞれの対処をするわけですが、疲れてくると、まず何かをする以前に「心が折れそう」と感じるところに特徴の一つがあります。だから、何かをするより先に「折れないようにしてください」と声をかけておき、支えの存在を示しておきます。

心が折れやすい人の特徴

私が見るところの、折れやすい人の特徴をいくつか挙げると、
①「他人の意見を受け入れられない」
要するに他人の話を聞か(け)ない人です。この受容は、いろいろなところで指摘されるように、極めて重要なものです。REBTでも無条件受容を説きます。受容するのに、条件をつけないことがポイントです。「●●してくれたら××する」≒「合格するなら勉強する」というのは、条件つきの類ですが、逆を返せば、「合格できないなら、勉強しても無駄」などという思考が頭の中に残っているということを意味します。無論、こういった人はもろいということになります。それよりも他人の意見を柔軟に受け入れて、いいとこ取りしよう、くらいのたくましさが欲しいところです。

②「(わざわざ)孤独になる」
京都コムニタスでは、周囲と仲がよくなり、互いに支え合うということは平常ですが、生徒さんは、授業がなくても毎日のように塾に来ますから、互いの顔を見るだけで安心感が得られることもよくあります。心が折れそうかな、と思える人は、周囲とコミュニケーションを取ろうとしなくなります。それを「切る」とか「人間関係を整理する」といった系統の言葉で表現し、あたかも自らが切ったことを正しいかのように、また別の人にそれを説明をするというシーンに何度も出会いました。それはプライドなのかもしれないのですが、結局のところ、「私は友達がいない」「私は孤独だ」という方向に持って行ってしまいます。そして「相談できる人がいない」「一人で抱え込んでしまう」、そして「折れた・・・」となってしまいます。自分からわざわざ孤独にならないことも重要です。適切な頼り方を覚えるだけで、かなり変わるはずです。

③「失敗を引きずる」
以前、完璧主義よりベスト主義というコラムを書きましたが、完璧主義は心を折りやすくします。折れない人は、ミスをしてもそれを認みるところからスタートし、同じことをしないだけではなく、対処方法について考えたり、失敗を検証します。いわゆる「頭を切り換える」ことができる人ということになります。心が折れる人は、引きずってしまい、いつまでも悩んで、なかなか前に進むことができません。

④「理想のつもりが最初から妥協になっている」
③と矛盾しているように見えるかもしれませんが、矛盾はありません。そもそも完璧などないというところに立脚するならば、「理想」を設定しても、それは追い求める最終地点であって、届かないと言えばそうだけれど、やや理想論的目標というニュアンスになります。あまりに非現実的な理想とはもちろん異なります。私立大学で言えば、建学の精神というものがありますが、これに近い類です。建学の精神通りの学生など、そうは輩出できないでしょうが、大学の理想として、これを掲げることは大学のアイデンティティでもあるのです。例えば、大学が建学の精神を、「どうせ、うちにくる学生なんて」という観点から、「必要最低限のことができる学生を作ります」なんていう風に設定してしまうと、そんな大学に誰も魅力は感じないでしょう。かりにそんな卑屈な精神を持った大学があるならば、すぐにこの厳しいご時世ですから、折れてしまうでしょう。その意味で、理想を掲げたつもりが、最初から妥協にならないようにしておいた方が、折れにくい状態を作ることができるのです。

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井上博文
専門家

井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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